悪魔で霊な元人間   作:P223

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28 アクドルライブは前途多難

 

アクドルくろむ

今をときめくトップアクドルとも言える彼女だが、その正体は俺の友人でもあるバビルスの一年のクロケル・ケロリだ

そんな彼女と今()はライブ会場で面を向かって話をしている

 

「それじゃ、よろしくね」

 

「これくらいならお安い御用、いい経験になるしね」

 

今回はくろむへの借りを返すための仕事でもある、とは言えこちらもプロ(仮)、やるからにはハイクオリティなものを返さねばならない

 

「じゃ、行ってきまーす」

 

そうして俺が向かったのはライブ会場………ではなく、放送室だ

 

「あ、あーあーあー ……よし」

 

喉調子は好調だ

 

『本日は、ご来場頂き誠にありがとうございます。開演に先立ちましてお客様にお願いと──』

 

さて、くろむに頼まれた仕事がこれだ

これは何だというのだが、これはライブ前の諸注意などをお知らせする影アナや影ナレというものだ

オープニングアクトなどと呼ばれる前座などもライブによっては存在するのだが、私はアクドルではないのでそこまでダンスも歌も極まっていない

とはいえ話すのは得意なのでこの仕事に抜擢されたという訳だ

 

仕事は仕事とのことでこなしていき、休憩等のアナウンスを終え午前の部を完了させる

 

今回のライブは午前と午後の二部構成らしいのだが俺の仕事は午前の部のみらしくライブ中はほとんど客席で見てよいとの事なのでこの後の部は客として楽しむつもりだ

 

『──以上、会場アナウンスはモデビルRAIN(レイン)が担当いたしました。それでは開演まで今しばらくお待ちくださいませ』

 

これで仕事は半分完了、一旦控え室に戻ることにした

 

……のだが

 

「なんか寒くない?」

 

ライブ会場は悪魔が多く集まるので多少熱気が生まれるため軽い冷房はかかっている、だがそれにしても寒すぎる、冷房が壊れでもしたのだろうか

ちょうどよく控え室からマルさんが出てきたので聞いてみる事にする

 

「あ、RAIN(レイン)お疲れ様」

 

「何かあったんですか?なんか寒いんですけど」

 

「それがね……」

 

どうやらファンとの交流イベントが午後のライブ前にあったらしく、それでヒートアップしたくろむが暴走してダウンしてしまったらしい

 

「一大事じゃないですか」

 

「一大事なのよ……」

 

なんか大変そうなことになってしまった、私に出来そうな事があればするがやれる事はあるものか

 

「何か手伝いましょうか? とりあえず放送戻ります?」

 

「本当? なら歌って踊って「無理です」……なら、とりあえず開始が遅れる旨をお願いします」

 

「了解しました、行ってきます」

 

歩きながら考えるが、正直ファンイベントをライブ中にするのが問題なのでは???

私は門外漢ではあるが、モデビルのイベントなら出たこともあるしなんならローカルではあるがバラエティ番組も出た事がある。

そういうのでも予定に余裕をもって(マネちゃんが)組んでいるがこんなパターンは無かった気がする、大抵がイベント後のコーナーだ

 

アクドルの場合はこんなものなのだろうか、謎だ

 

ともかく私のやる事は時間稼ぎというよりはいつだって問題の予防だ

 

「──よし」

 

『お客様へ重要なご連絡となります──』

 

内容は、くろむがトラブルにてすぐには午後のライブが開始出来ないこと、このままライブが開催出来なければ払い戻しを行うこと、出来る限り静かに信じて待っていて欲しいこと

それをできる限り穏やかに伝えた……が、結果はこうだ

 

「ふっざけんなぁぁぁ!!」

 

「こちとら悪周期でイライラしてんだ!!くろむを出せ!!」

 

「く・ろ・む!!く・ろ・む!!」

 

外部からの防音がしっかりしている放送室ですら聞こえてくるほどの怒声、日本のライブとかは行った事はないが多分ここまでの事にはならないだろうが彼らは悪周期の悪魔がほとんどだ

 

そもそも、アクドルというのは悪取るから来ており、悪周期の悪魔の発散が目的の職業なのでトラブルが起きた際に自制が出来ないものが多いのである。

悪魔らしく暴力で収めることも出来るのだが、それをするとくろむの人気に響くので出来ない……八方塞がりだ、他のスタッフに任せるかくろむが迅速に復帰するしかない

 

「ちっ、ままならないな……」

 

そんな悪態が思わず出てしまう、だが私が出来るのはこれが限界だろう。仮に私がくろむやギャリーレベルのアクドルなら解決出来ただろうが、私はアクドルではなくモデビル、私じゃ代役も前座すら不可能なのだ

 

協力してくれた放送スタッフに感謝と謝罪をしてstaffカードと認識阻害サングラスをかけて客席の方に向かう、せめて暴動が起きた時の対処を手伝うために事前に控えておくためだ、暴力による実力行使は苦手だが悪周期でない悪魔の避難誘導くらいならRAIN(レイン)を使えば目立って出来るだろう

 

ギャァァァ

 

客席についたが怒声は止まってない、当然だろう、何も問題は解決していないのだから

 

「失礼、何か問題が起きたのでしょうか よければ協力させていただきたいのですが……」

 

「……はい?」

 

急に声をかけられた、流石に客に協力を求めるのは違うと思うので流石に断ろうとそちらの方を向くとそこには赤く長い髪の()たちがよく知る悪魔がいた

 

「アメリ会長……?」

 

「会長…? 何処かでお会いしましたでしょうか?」

 

「あー……」

 

今はRAIN(レイン)の仕事中だったのでいつもの髪飾り魔具を使用していない*1

その為、きっとレイラの方は知っているであろうアメリ会長でも今の俺を上手く認識できていないのだろう。

 

でも……まあ……いいか

アメリ会長は人格者とも聞くし、師団(バトラ)披露(パーティ)の時に事故に遭ったエイコを助けてくれたと聞く

そんな悪魔(ヒト)なら俺の事を伝え回るなんてことはしないだろうし、訳を話せば黙っててくれるだろう。

 

というわけでアメリ会長を壁にする形で一旦サングラスを外す。

 

「君は……確かモデビルのRAIN(レイン)ですか?」

 

「あ、知ってるんですね。 そうです、一応モデビルやらせてもらってますRAIN(レイン)です」

 

「debidebiは私も愛読させてもらっているので、後さっきまでのアナウンスで それで、私の事をご存じで?」

 

「ちょっとわかりづらいかもなんですが……」

 

とりあえず自分がバビルスの生徒であることと普段は特殊な認識阻害魔具で別人として過ごしている事を伝えておく、ガイスト・レイラだってことは一旦保留だ。

 

「なるほど、では深い詮索はやめておきましょう それで話を戻しますが、協力は必要でしょうか これでも魔関署(まかんしょ)*2勤務の父を持ちますので暴動の対処くらいは可能ですが」

 

「いえ、不要です これはこちらの問題ですので、関係者のみで対処しますので 今貴女はお客様なので……」

 

──RRR! RRR! RRR!

 

ここでマネちゃんから電話が来たので受ける

 

「失礼少し電話が…… もしもし?」

 

『あ、RAIN(レイン)さん マルさんからの連絡です、今どこにいますか?』

 

「今は客席の方です、避難誘導でもしようかと」

 

『何やってるんですか!RAIN(レイン)さんはタレントなんですからそんな事しなくていいんです!怪我でもしたらどうするんですか!!』

 

「ううっ……ごめんなさい」

 

『まぁ、この話は後でいいです とりあえず問題は解決(?)したらしいのでそのまま客席にいていいそうですよ』

 

「そうなの? くろむは大丈夫?」

 

『……まぁ、見てたらわかるので それじゃッ!』

 

──ツー ツー ツー

 

電話が切れた、なんだったんだろうか

とりあえず解決したそうなので、それを伝える

 

「なんかわからないんですけど、解決したそうですよ」

 

「! それは良かった、では私は大人しく席に戻ることにします」

 

アメリ会長と一対一で話すのは案外貴重な機会かもしれない、折角なので提案をする

 

「なら、これから私も客としてみて言いそうなのでご一緒してもよろしいですか?」

 

「それはぜひ、恥ずかしながらアクドルライブに来るのは初めてでして……」

 

「来るイメージあんまりないですもんね、なら不明点とかあったら気軽に聞いてください あ、後敬語とかじゃなくていいですよ 年下ですし後輩ですし」

 

「そうか? 助かる、二つの意味でな」

 

そんなわけでアメリ会長と一緒にライブを見ることになった

で、くろむの事はぼかされたがどう解決したんだろうか。気になるが、待ってみよう。

 

そして待つこと数分、ステージに三人の悪魔が入ってきた。

 

「あ、始まるようですね」

 

「あぁ ……?なんか見覚えがあるような」

 

「会長もですか?モニターにまだ映ってないんで分かりづらいですが、私もそうですね……テレビで見たのかな?」

 

その既視感は直ぐに解消される

 

『皆様!お待たせして申し訳ありません!! これより前座のショーを行います』

 

「前座が間に合ったって意味──」

 

「我ら! イルミとゆかいな仲間たち!!!」

 

「「!?!?!?!?」」

 

「なんか知り合いにものっ凄く似ているのが出てきたのだが!?!?」

 

「奇遇ですね会長!私もそうです!!」

 

そう言いながら魂視を発動、見てみると一目瞭然だ、離れていても()()()()なんて一瞬でわかる。

あれは間違いなく、イルマだ 他の二人はアスモデウスとクララだろう

 

あのイルマが……女装して………ライブステージに……?

 

「ふっ……くくくっ」

 

「だ、大丈夫か?」

 

「あはははっ!! 大丈夫ですよ!大丈夫になりました! ははっ」

 

あの人間はまたなんかやらかすのだろう、それが面白くて仕方ない。

さて、この状況を解決するのはわかるがどんなものを見せてくれるんだろうか、それが何であれ全力で客として盛り上げるばかりだ

 

「いいいっ、いくよっ!」

 

*1
重量制御用の小型魔具は使用している

*2
魔入間の警察みたいなの




閑話でも察せますが、モデビルモードのレイラは地の文も私になります
逆に会話でも俺になるパターンもあったり……

薄いですがTSですからね、いい感じの味変になれば幸いです
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