「さ、作ろうか」
「よろしくお願いします!」
師団室から少し離れて空室を借りて料理を作っていく事にした
エイコとガーコも呼ぼうと思ったのだが単純に部屋がそこまで大きくないのと「一緒に料理はまだ無理!」とのことでまた別の日になり、ガーコもエイコの方についているそうだ。
アスモデウスとクララに関してはイルマが前のお返ししたいからと待っててもらうことになったので俺とイルマだけになったというわけだ
「じゃあ何作ろうか、鶏肉は結構買ったし他にも色々作れるよ」
「そうだなぁ……あ!それなら親子丼とかどうかな?」
「親子丼かぁ、量出来るけどありだね じゃあ私は別でチキン南蛮でも作ろうかな」
「チキン南蛮かぁ…! ぼくも手伝うよ!」
「ん、お願いね じゃ、やるかぁ」
他にも簡単な焼鳥や照り焼きチキンなんかも作ることにした。
どれも定番と言える鳥料理だが、それだけに個人の色が出る料理とも言える
チキン南蛮なんかはタルタルソースも作るつもりなので尚更俺の色が出るだろう
因みに俺の料理の腕は良くもなく悪くもなくと言ったところだ、前世ではいわゆるキャンプ飯なんかは作っていたのだがそれ以外は殆ど料理はしていなかった、今世では母と交流も兼ねてよく料理を作っているのでそういう意味では自信がある。
「じゃあまずは卵割っておいてくれる? その間に私は付け置き加速魔具に肉セットしてるから」
「わかった!」
イルマに卵を渡して俺は肉を樽型魔具アクセルポッドに付け置きに行く
本来肉の漬け置きは早くても30分長いのは2時間程度はかかるのだが、俺が作ったこの魔具は加速魔術を利用したもので中の時間を疑似的に加速することが出来るのだ、大体2倍~5倍くらいは早くなるのでかなり優秀な魔具なのだ
因みにサイズを大きくして生物を入れたところで寿命の消費速度が加速したり、〇神と×の部屋みたいに使うのは無理なので悪しからず
因みにこれはコネで商品化もしてもらっているが、量産するのが難しく値段が張るのでそこまで売れていない
──ゴシャッ!!
「え? 何の音!?」
突然何かが潰れるような音がした
ゴシャ! ゴシャ! ゴシャ!
続いて何度か同じ音、流石に気になるのでそちらの方を見ると
「うーん、これくらいかな? ……全部でいいか」
ゴシャ!!
イルマが卵をボウルに叩きつけている……なんならパックごと叩きつけている。
何が起きているのだろうか、まったくわからない
「……なにしてんの?」
「あ、レイラさん 卵はこれくらいでいい?」
「いいって言うか何というか……」
ボウルを見ると、殻は入っているわプラスチックのパックが混ざっているわでとても食品と言える状態ではない
「イルマくんってもしかしてえげつないレベルの不器用?」
「えぇ!?」
「えぇじゃないが」
イルマってもしかしてとんでもない箱入り息子だったのかもしれない
だが流石にここまで食品を無駄にするのはダメだろう
「とりあえずパックは食べられるようなもんじゃないから取り出そうか、殻もね」
「え?」
「え?じゃない! さっさとやる!!」
「ひっ ハイッ!!!」
イルマが慌ててパックを取り出す
殻は欠片になってしまっているので大きいのはサッととって小さいのは丁寧に取るしかないだろう
「イルマくんとりあえず聞いておきたいんだけど、なんでこんなことしたの?」
「えっと卵を入れるって話だったから……とりあえずこれで良いかなって、殻も食べれるし」
「まず、とりあえずとかまぁいいかで入れるのをやめようか」
「でも」
「い い ね?」
「ハイ」
まさかここまでイルマが料理が出来ないと思わなかった。
話の流れから察するにアスモデウスとクララの二人はそれなりに作れるのだろうし、唐揚げも美味かった
エイコとガーコはたまに一緒に料理を作るが、どちらも結構上手に料理を作る
誰にでも弱点はあるとは思うが何というか意外だ、イルマは魔具の組み立てなどは完璧にこなせるし結構器用だと思っていたので何故料理だけこんななのだろうか
それとも、元々イルマはこういうタイプでやむを得ずスキルを身に着けて来たのかもしれない
「大体取れたけど……」
「殻がちょっと残ってるね、んじゃ魔具使おうか」
吸引型魔具ポイントバキュームを取り出す、大きいスポイトのようなこれは登録した物のみを吸い寄せることが出来る魔具である。
こういう時にも使えるし、落とし物をしたときにも使える魔具である
「最初からそれ使えばよかったんじゃ」
「あのね、確かにこういう道具は便利だけど苦労することで覚えることもあるんだよ 殻取るのめんどくさかったでしょ?だから二度とやりたくないと学習出来るってわけ」
「…それもそっか ごめんね」
「まぁ私も圧が強かったかも、ごめん」
実際俺もケガをしたり大きな失敗をしたりで学んだことは多いがやりすぎるとトラウマにもなったりするので楽しく覚えれればそれが一番いいのだが、そちらで教えれるほど俺も腕があるとは言えない 悪いなイルマ
「よし、取れた!」
「じゃあ次にタレ作ろうか、ちょっと心配だし一緒にやろう」
「うん、お願いします」
これで後に引きずらないのはイルマの才能だろう
そのままイルマとタレを作っていくが、教えたことに対する吸収はとても速いように感じる
ただ、本来の性格なのか裁量なんかは大雑把になっているので何というか変わったやつだなと感じる
「出来た!」
「…うん、美味しい 完璧だ、じゃあ野菜と肉を切っていこうか まずは見てて」
「はい!」
「まず包丁はこう握る、で、切る時は間違っても振りかぶらないでこうね」
今ちょっとイルマが驚いていた気がするのだが振りかぶって切る物と思っていたのだろうか、今までどこで生きて来たんだ彼は
イルマにも包丁を使わせようと思ったがまずは野菜をプラスチックナイフで切らせるところからにしよう、使うつもりは無かったがまだあった筈だ
「じゃあはい、これでた魔ねぎ切ってくれる?」
「うん、えっと振りかぶらないで」
「それだと指切るね、ちょっと手に触れるよ」
背中越しにイルマの手に被さる様に持って教えていく、やはりこれに関してもイルマの学習速度は優秀ですぐに一人でも切れるようになった
…今のやつはエイコには黙っておこう、多分女子が憧れるシチュエーションの一つだろうし胸もがっつり当たってたので多分殺されてしまう
イルマは気にしてないというか必死だったので気付いていないようだが次からはやらないようにしておこう
「切れたよレイラさん!」
「うん上出来だ、やればできんじゃん!」
「レイラさんが教えてくれたおかげだよ」
「そりゃどうも、っと次は火を使うから私がやるね、これも怪我するからね」
「鍋は作れるから火は大丈夫…のはずです!」
「ま、そこは今度ね、今回は私がやるよ そこは後で家の人にでも教えてもらって欲しいな」
もしこれでイルマに怪我でもさせようものなら俺の首が飛びかねない、まぁそれくらいじゃ……っと話が逸れた
実際魔界における人間の扱いは恐ろしいものなので、イルマの指が切れて血が出たとしてもその血自体が相当な価値を持つだろう
そんなものが流れるような状況に俺の責任下でイルマを置くのは少し怖いので勘弁してほしい
とりあえずそんなこんなしているうちに親子丼が完成した。
米も先に炊飯器にセットしてあったので大丈夫だ、他の料理もタイミングも見て作っていたのでそろそろ完成と言えるだろう
「よし、じゃあそろそろ他の皆も呼んできて運んでもらおうか」
「あ、じゃあぼく行ってきます」
「うんよろしくね、さーってと味見味見……完璧だ」
ふと思うが俺が教える前にイルマだけで料理をする機会がもしあったとしたらどうなったのだろうか、俺みたいに教えてくれる人がいたらいいのだがそうでない場合は……想像するだけでも恐ろしい
とはいえ考えるだけ無駄だろう、料理も完了したのだしさっさと盛り付けてしまおう
料理ってのは便利な道具を使うのもいいが一番重要なのは愛だ、そういう意味では100点満点だったと言える それでいいじゃないか