「うちの生徒がすまないな、怪我はないか」
「大丈夫ですクラスメイトですしね、二人も大丈夫?」
「大丈夫よ」
「私も……あ、ちょっと手が切れてる」
エイコの指がちょっと切ってしまったようで、血が出てしまっている
「私絆創膏もってるよ、はい」
「ありがと」
「ちょっと待て、まず一度手を洗うんだ」
雑菌が入る可能性を考えると確かにそうだ、エイコとガーコを連れて手を洗いに行く
ついでなので俺も手を洗っておいた
「じゃあ絆創膏はるね」
「お願いレイラ」
「いや、それも問題ない 少し触るぞ……【
ブエル先生がそう言うとみるみるうちにエイコの怪我が治っていく、どうやら回復系魔術を行ったのだろう
前世では有名だが今世では聞いたことがない呪文……家系魔術だろうか
「察しているとは思うが私の家系能力の【
「凄い……こんなにすぐに治る回復術初めてかも!」
「ありがとうございます先生」
「あっ ありがとうございます!」
「ああ、他の生徒もこれくらい素直なら楽でいいのだがな……」
そういうブエル先生は苦い顔をしているので、きっとさっきの子たちなのだろうが随分と手がかかる
だが、その表情からは本気で嫌って感じはしないので生徒としては可愛いのも本心と言ったところか
「それで、今回は何のようなんだ?」
「ほら、エイコ」
「あ、あの 薬学の事を教えてほしくて……」
「薬学か、なら大丈夫だ 何が知りたいんだ?」
「教え方の教え方です」
「は?」
そりゃそうなる
俺も最初は何を言っているんだとなってものだ、しかし冷静に考えるとそこまで難しいことではない、細かく説明しよう
「先生、エイコは好きな人に勉強を教えたいらしいです ただ、それには確実に教えるためにちゃんとした知識が必要なので、こういう教えることが得意そうな先生に頼みに来たんです」
「そうなのか?」
「は、はい!!」
「……そうか、それは私でいいのか? 専攻とまではいかないがモモノキ先生などの女性のほうが良いのではないか? その……恋の為なのだろう?」
そこはちょっと俺が訂正
「そこは私がこうしたほうが良いって言ったんです、モモノキ先生に恋の相談をするのはアリですが、今エイコに必要なのは知識のはずなので」
「それならばいいだろう、では場所を変えようか、時間はあるか?」
「はい、いいよね二人共?」
「うん、大丈夫だよ」
「私も大丈夫よ、行きましょ」
二人の了承もとれたのでブエル先生につれられて場所を移動する
着いた場所は空き教室の様でそこで少し待つように言われた
「こういうの初めてかもしれない……」
「え?何が?」
エイコが突然ぽつりと言葉を漏らした
「今までってこういう感じに先生にわざわざ頼んで教えてもらう事ってしなかったなぁと思ってさ、まぁバビルスに入る前の学校でレイラがそういうことをしてたのは知ってたんだけどね」
「あぁ、まぁそうだね」
前世では俺も全然していなかったが、大人になってからもっと勉強していればよかったと思って一度調べたことがある。
色々調べた結果統計的に先生というのはこういう風に自分から学ぶ意欲を見せていけば授業外でも案外色々と教えてくれるのだ
当然、先生方の予定などを加味する必要があるし、人によってはそういうのは嫌で断られることもあるが、やるだけタダだノーリスクハイリターンである
とはいえ、学生の頃は遊びたい盛りだし勉強なんて面倒で仕方ないのも確か、俺がこうして先生に話せるのも前世の記憶があるからに違いない、精神性に大人の部分が含まれているからこそこうして勉強を続けられているに違いない。
「でもこれで本当にイルマさんの力になれるのかなぁ」
「へぇ、ちゃんとイルマくんの力になりたいってのもあったんだ、てっきりラブコメしたいだけだと思ってた」
「そりゃあるよー イルマさんってすごいけど勉強はそこまでだってわかったしね、それにイルマさんって魔王になるんでしょ? だったら勉強ももっと出来たほうが良いなって私思うもん!」
本当にイルマが魔王になりたいのかは知らないがエイコの気持ちはわかった、イルマの為になった上で自分の欲も満たす両取りがしたかったのだ
それなら俺がやったおせっかいもちゃんと機能しそうでよかった、実の所教える展開でのラブコメだけをしたいのであれば、逆にイルマに教えてもらうって言う手もあるのだ。
教えてもらう場合ならここまで面倒なことはせずに、イルマ相手に知らないふりでもして頼めば簡単に勉強会が出来るだろうし距離も近づけるとは思う、ただ嘘をつくことになるので将来的にエイコが罪悪感に駆られるだろうからこの案はやめておきたいというのが本音だ
「私は、そういうのまだわからないわね 好きな
「ガーコって好きな
「うーん、まったくいなかったって訳じゃないけどね 告白して付き合ってとしたいってなると居ないかも」
「ガーコって結構モテるのに意外」
「あんたのせいもあるのよ?」
「私?」
俺のせいか、心当たりがないでもないが一応答え合わせも兼ねて聞き返しておく
「因みになんでか聞いてもいい?」
「隠す事じゃないしね、あんたの方がモテるってだけの話よ 近づいて来た男子もいつの間にかレイラの方にいくんだから、失礼しちゃうわよね」
「私もあったなぁ、ラブレター貰った!って思ったらレイラ宛だったとか」
「やっぱそれかー そういうやつって大体私の顔目当てなんだよねー ブサコンばっか」
俺は自分の美貌に自身があるし、その自分磨きも怠らないのでそういう軽い方面でのモテ方は結構していた、そういう方面で惹かれた来るやつらはよこしまな思いで近づいてくるので俺的にも
もっと純粋な欲ならいいのだが、変な支配欲ばかりで勘弁してほしい。そういう方面で付き合うのならゼゼ君くらい自分に自信を持ったうえでそれをさらに磨くためとかであってほしいものだ、ぶっちゃけそもそもそれで付き合うのであればゼゼ君でいい
ガララッ
「待たせたな、では始めようか」
そこで丁度ブエル先生が戻ってきた、手にはいくつかの教材を持っているので必要そうなものを持ってきてくれたようだ。
予想通りとはいえ、ここまでちゃんと準備をしてくれるのは純粋に嬉しいし感謝している。その心に応えるためにも俺もちゃんと学ぶようにしようと思う
「授業というわけではないからな、順番に分からない場所を無くしていこうと思うがどこが苦手なのかとかはわかるか?」
「そうですね、一応勉強ついでに皆でテストをしあってて……その採点したのがこれです、どうぞ」
鞄から俺達三人の自己テストの答案リストを先生に渡す、先生はそれを受け取って確認をしていく
「ふむ、ガイストは流石にこれくらいじゃ躓かなさそうだな、エイコは気体を利用する配合が苦手、ガーコは逆に液体だな よし分かった」
そう言うと手慣れた様子で紙に色々と書いていく、こうしてみるとやはりバビルスの教師と言う物は他の学校と比べても圧倒的にレベルが高い、その生徒たちが求めるものを素早く認識し対処法を求めている。これは、一朝一夕で見に着くような技術ではない、まさしく教育に全てを捧げた悪魔と言えるだろう。
「ほら、まずはこの問題を答えてみてほしい」
俺達三人にそれぞれ別の問題が書かれたテストを渡される、時間は言われていないのでいくらかけてもいいのだろうが変に時間をかけずに解いていくことにする、他の二人も同じように解いている
「え? えぇーーっと んぅ?」
「ぅわ うそ、全然……」
二人はかなりの苦戦を強いられているようだが俺の方はと言うと
「いやわかるけどさ……なにこれ」
完全にテスト範囲から外れている、内容だけ見れば多分三年くらいがするテストだった。
俺自身薬学が得意なうえ、魔具制作に使うために事前にバビルスを卒業出来るくらいには学んでいたのでいけたが、そうでなければ平気で0点すら取れる程の超難問である
「出来ました」
「速いな、どれ……」
先生が採点をしていく、その速度も相当だった
「大体80点と言ったところだな、薬学は得意だったか?」
「はい、でも80点なんですね……ちょっと悔しいかも」
「大半は凡ミスだな、こことかは20gではなく22gだ 20gで配合すると上手く機能しなくなる」
「あー……完全に抜けてました」
その後も、俺が間違っている部分を丁寧に訂正してくれる。分かりやすい上に優しいので大助かりだ
「先生出来ました!」
「私も……」
まだ元気なエイコと疲れた様子のガーコもテストが終わったようでブエル先生の方に答案を持って行く
「エイコは15点、ガーコは20点だな まぁ苦手そうな問題だけ出したのでこんなものだろう、気を落とすなよ?私がわざとこうなるようにしたんだ」
「大丈夫です! 私自身苦手分野がわかってよかったので!」
「同感だけど、ちょっと流石にこの点数は精神的にクるわね……」
二人とも普段はもっといい点数を取れるので辛そうではあるが単純にブエル先生が凄いだけだ、俺も薬学なら100点は当然のように取れるのに80点だったし
「では、二人にも同じように苦手な部分がなぜ苦手なのかを紐解いていこう、それで理解できるようになるはずだ」
そうして二人相手にもブエル先生はゆっくりと丁寧に教えていくのだった
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「よし、こんなところでいいだろう今できる範囲でテスト範囲なら他者に教えるのも出来るはずだ、よく頑張ったな」
「「「ありがとうございました!」」」
ブエル先生の特別授業は本当にためになった、時間ももうかなり遅い時間になってしまったのもあるがそれくらいになるまでずっと俺達三人に時間を使ってくれたのも感謝しかない
「苦手な部分は後でまた復習したほうがいいからな、テストまで気を抜かないように」
「はい! 本当にありがとうございました、今度またお礼をさせてください!」
「不要だ、我々バビルス教師は生徒の自主性を重んじてより良い方向に導いていくことを信条とした悪魔 こういうことが本懐なのだ、それに私の野望は"教え子を一人前にする"ことだからな」
そう言って笑う先生はとても美しいものだった、改めて俺はこの学校に来てよかったと思う。こんな素晴らしい教師たちの元これからも学べるというのだから
「では、私はこれで お前たちも早く帰るようにな」
そうしてブエル先生は去っていった、残された俺たちも帰路につく事にした
「ブエル先生ってすごいんだね、私こんなに分かりやすく教えてもらったの初めてかも」
「あたしも、次のテストは薬学だけは満点取れちゃいそう」
「普段はどの先生も全体に向けて教えるからね、個人に対して教えるのと差があって当然なんだよね、私がテストの点高い理由わかったでしょ?」
俺は当然同じようなことをしょっちゅう行っているのである意味全教科で別の家庭教師についてもらっているようなものだ、そこまでしても勝てないバビルスの学力TOP3は化物だとすら思うのだが、まぁ薬学に関しては同率1位だが
さて、そんなこともさておきだ
準備はすべて完了した、これで心置きなく次のステップへと向かえる
さぁ、イルマとエイコのドキドキ♡勉強会の始まりだ!