悪魔で霊な元人間   作:P223

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ホテルヘルヘイム側は完結後の時系列です。


58 ようこそ、 ホテルヘルヘイム へ

 

「ホテルヘルヘイム……?」

 

「えぇ、このホテルの名前です まずはチェックインをお願いします」

 

「えっと、予約とかしてないんですけど? ……ってそうじゃなくて!!」

 

いつまで経っても横たわるのもなんなので飛び起きる……って

 

「わぁっ!」

 

飛び起きた反動でそのまま数mは飛び上がった

 

「お客様!? 田中さん、なんですかあの方!?」

 

「どうやら普段と身体の感覚が違うご様子、一旦補助が必要ですね」

 

空中にいる俺をタナカという悪魔(ひと)が回収してくれた

 

「ありがとうございます」

 

「いえ、ホテルマンたるものどういった状況にも対応できなければなりませんから」

 

「ただ……ちょっと驚きましたけど、私普通に飛べますよ?」

 

飛行は悪魔の共通能力だ、得意不得意はあれど誰だってそうだとは思うのだが……

まぁ人間っぽいイルマの場合は流石に別だろうが、なんだろうかこの違和感

 

……そういえば冥界とか言っていなかっただろうか

タナカさんが降ろしてくれたので聞いてみることにした

 

「あの、ちょっと確認したいのですが さっき冥界って言いました?」

 

「えぇ、ここは冥界 お客様が元々いた場所とは違う世界になります」

 

「田中さん田中さん」

 

「はい、なんでしょうか支配人」

 

「この方って、冥界の方じゃないんですか?」

 

「そうですね、それはお客様に直接説明していただきましょうか どうやらパニックも収まったようですので」

 

そう言ってこちらを見るタナカさん、悪意は無いようだし頼ってもいいのだろうか

俺としても情報共有はしておきたいので説明するのはいいが、最近は元祖返りによく会う。

彼らは己の欲が最優先なので嘘なんかも平気でつくから警戒はしておかないといけない

 

念の為に魂視を発動……なんかしづらいが発動した。

元祖返りではない……のだが見たことが無い魂だ、どこか惹かれるようでどこか近すぎる

何だろうかこれは、でも大半の要素はわかる……彼は人間だ、しかしそれだけではなくどこかもっと俺と親近感がある部分がある気がする

 

他の人たちもどうやら俺の知らない色んな種族がいるようだ、悪魔も一応居るようなのでそこは安心かもしれない

 

……賭けにはなるが、今の俺に出来ることはあまりない

善意を信じよう

 

「わかりました、説明します」

「私は悪魔、ガイスト・レイラと言います。 魔界で住んでおり、ウォル…とある遊園地に行った際に事件に巻き込まれて、その対処中に命を落としました」

「その前後の事は()()()()()()()()()()が、元祖返りと呼ばれる危険な悪魔に殺されたってことは覚えています。 すみませんが、それくらいです」

 

「なるほど、ガイストの……」

 

「悪魔って言うとベヘモットさんと同じですよね、なら迷子の方ですかね? ところで魔界とは?」

 

「我々三界*1とはまた別の世界です、元支配人の知り合いもいらっしゃいますよ、しかしガイストの方とあれば納得しました」

 

「! ガイストを知っているんですか?」

 

「えぇ、しかし お客様はガイストと冥界の関係についてはご存じでない様子ですので一度ご家族に確認を取らせてもらいます。」

 

「「連絡が取れるんですか!?」」

 

「なんでそっちも驚いているんですか」

 

「いやー……ははは」

 

大丈夫だろうかこの支配人の子は、ともかくタナカって人はガイストと連絡が取れるらしい、ならば俺も一緒に話がしたい

 

「私もおとさまと話したいんですが、一緒に行ってもいいですか?」

 

「ええ、構いません ですがその前にチェックインを」

 

「あっ、はい」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「ここが冥界……」

 

「初めての場所で気になるかもしれませんが、危険もありますので離れぬようお願いします」

 

「そういうのは後で、ですよね?」

 

「お望みとあらば」

 

タナカさんに案内されたのはパス門とかいう空間転移を可能とする門を通った先、冥界の中央らしい場所だった。

見る限りは前世の世界とも魔界とも似ているようでどこか違う印象をうける街並みだ

 

「ではこちらへ」

 

通されたのはやや古めの建物、しかし中は違った

木製の壁に床と簡素な屋敷をイメージするようなレイアウトだが、その中心には鏡が一つ不自然に置かれていた。

 

タナカさんがトンッと鏡に人差し指を触れると、水のように波紋を描き、次第に人影が見えた

 

「誰だ……田中か、なんのようだ」

 

「はい田中でございます、グレイブ様 至急ご連絡が必要かと思い連絡させていただきました」

 

映った人物はガイスト・グレイブ、俺の父だった

見知らぬ世界で少し不安になっていた所での初めての見知った顔、俺は思わず鏡に飛びついた

 

「おとさまッ!」

 

「……はぁ!? なんでお前がッ……んんっ! 何故レイラが冥界に、それも田中といるんだ?」

 

「えっと、あれで ウォルターパークで色々あって!」

 

「どうやら御息女様は何者かに殺害未遂を受けたようです」

 

「何? 詳しく聞かせろ」

 

空気が変わった、通信越しだろうにここまで届く殺気、考えなくてもわかるほどに父は怒っている

一人娘の俺が殺されたのだから当然だとも言えるが、それがどうしようもなく嬉しいと感じるのは間違いではないと思いたい。

 

「実は──」

 

魔界に生まれ変わってから今まで両親には迷惑をかけ続けてきた、悪魔としての暮らしや性別が変わったことによる戸惑い、他にも俺が起こした問題ごとなんかもちゃんと聞いて答えて一緒に考えてくれた。

そんな両親に隠し事なんてしたくない、つつみ隠さず俺が覚えている限りのことを伝えた。

 

モデビルの仕事のこと、元祖返りに出くわしたこと、そして死んだ事もだ

 

「……そうか、怖かったな、痛かっただろう その場にいられなくて本当にすまない」

 

「いや、私が無理をしたから……ごめんなさい、おとさま 本当にッ……ごめんなさいッ!!」

 

視界が霞む、痛みではなく悲しみの涙で。

無理はしないように立ち回ってきたつもりだが、今回は明らかに無理をした。

その結果がこれだ、死後の世界に来て、もう、みんなにも……

 

「うぅー!! うぇぇぇぇん!!!」

 

子供のように泣いてしまう、怖かったし痛かったし辛かった。

なんであんな事をしたんだと何度も何度も繰り返す。

 

「あぁ、いくらでも泣いていい だが、お前がそこまでしたってことは必要だったんだろう、なら後悔はするな お前は間違っていない」

 

「やだよ! 死にたくないぃー!! エイコにもガーコにも会えないのは嫌だぁ!!」

 

「ん? ……ちょっと待て、何か勘違いしていないか?」

 

「ヒック 勘違い……? ヒャック」

 

勘違いも何も、俺が死んで友達に会えなくなったのは事実だろう

 

「別に死んでないぞお前? というかガイストに物理的な死はない、寿命が来たら自然と次の代に任せて転生するがそれくらいだ」

 

「え……?」

 

ガイストは寿命以外で死なない?

そんな事悪魔として生まれてから一度も聞いた事なかった、意味がわからない

 

「まぁ、そういう反応になるよな 言わなかったのは、死なないとはいえ命を大切にして欲しかったからだ」

 

確かに死なないと知っていれば、今よりもっと危険な事をしてきたかもしれない

例えば間違えれば死ぬ禁忌魔術とかがわかりやすいか

顔が気持ち悪いので拭こうとしたらタナカさんがハンカチを渡してくれたのでそれで拭う

 

「ガイストは死ぬと肉体ごと冥界に行く、その理由は……まだ言えんが とにかく、冥界に行くだけで冥界のガイストの屋敷から帰って来れる」

 

「本当?」

 

「愛するお前に嘘はつかないさ、だがこれは誰にも言うなよ、テレサにもだ」

 

「おかさまも知らないって事?」

 

「まぁな、テレサは俺の妻でお前の母だがガイストの血が流れているわけじゃない これを知っているのは魔王様と三傑だけだ、バルバトスら御三家すら知らない事、絶対に言うなよ」

 

「わかった、これはおかさまにも内緒にしておく……?」

 

待って欲しい、この場にはもう1人いるのだがそれは良いのだろうか

 

「あぁ、私は知ってたので問題ありませんよ、一応ガイストの方とも関係がありますので」

 

「あぁ、田中の事は気にしないで良い ……ふむ、丁度いいか」

 

「おとさま?」

 

「1週間ほどそのまま冥界にいろ、確かモデビルの仕事も入っていなかっただろう」

 

「おとさまァ!? え、上げて落とすのほんとやめて欲しいんだけど!?」

 

すぐにでも魔界に帰れると思った瞬間にこれだ、こういう思いつきで周りを振り回すのはやめろと母にも言われてるだろうにこの父は!

 

「田中、今はどこで働いている? どうせお前のことだ、どこかのホテルだろう」

 

「はい、今は"ホテル ヘルヘイム"で働かせてもらっております」

 

「確かこの前"パス門星(モンスター)ガイド"に追加されたホテルだったか……なるほど、お前が関わっていたのか。 わかった、そこに7日間娘を任せる、いいな?」

 

「かしこまりました、チェックインは済ませていただいていますので控えと請求はグレイブ様に回します」

 

そういえばホテルなんだから当然請求はあるよな

気が動転していてそこまで考えていなかったが、もし払えなかったらどうなっていたんだろう。

魔界の金が使えるのなら、モデビルの仕事で稼いだのがあるのだが、冥界だから不安だ

 

「魔界のお金は使えませんが、換金は出来ますよ かなり少ないですが魔界のお客様もいらっしゃいますので」

 

「エスパーかなんかですか?」

 

「いえ、ホテルマンです」

 

何者なんだこの人は、絶対普通の人間じゃない

 

「田中、頼みがある」

 

「なんなりと」

 

「仕事な合間で良いから娘を鍛えてやってくれ、しばらくは大丈夫だろうが生きているとバレればまた襲われる可能性もある。 その時に身を守る手段は必要だ、いいな?レイラ」

 

「……わかった、でも欲を言うならモデビルに支障がないようにしてほしいかな」

 

「かしこまりました」

 

一言だが全て了承したという気持ちが伝わってきた、元祖返りに目をつけられたという事なら確かに対処法は必要だし仕方ないだろう、それにエイコ達に被害がいかないように守る力は俺も欲しい、逃げる事すら出来ないのはもう嫌だ

 

「田中、7日後お前の判断で渡しても良いと思えば我が家宝をレイラに渡してくれ 頼む それとその時はガイストの秘密をお前に伝えよう」

 

「かしこまりました」

 

「家宝……? 秘密?」

 

「その時になったらわかる、ではそろそろ仕事に戻らないといけないので切るが不安になったらいつでもここに来い、その道具の使い方は田中に聞けばお前ならすぐに使えるだろう じゃあな」

 

そうして鏡はただの鏡に戻った。

タナカさんに聞くとこの鏡は魔界と連絡をとるようのもので繋がりを持つものなら念じて触れれば繋がるらしい、試してみたがちゃんと繋がった。父は早いなと笑って言っていたが確認のためというと納得していた。

 

屋敷の場所の地図と合鍵をタナカさんが渡してくれたのでいつでもここにきて父と話せる状態となった、冥界にはまだ不安があるが一安心と言ったところ

 

「では、グレイブ様の依頼としてレイラ様を鍛えさせてもらいますが よろしいですね?」

 

念を押される、きっとここで俺が嫌と言えば全て無くなり7日後に普通に帰れるのだろう

ただ、俺は折角の7日間を無駄にはするつもりはない

 

「お願いします」

 

「わかりました……ガイストの家宝を渡しても良いと思えたときは私の秘密も一つ教えましょうか」

 

そうして俺の一風変わった夏休みが始まったのだった

*1
冥界・天界・地獄




飽くまで魔入間の二次創作なのでホテルヘルヘイムはそこまで長くするつもりは無いですが、書きたいだけ書くつもりなので長くなったらすみません
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