長々と説明しているので必要箇所をまとめたものを後書きに記載しています、面倒であれば後書きだけでも見てもらえればと思います
「こちらです、どうぞ」
ホテルヘルヘイムの闘技場、よくここで試合が行われており試合の勝敗を賭けた賭け事なんかもできる施設らしい
修行の時間になったのでタナカさんに伝えると案内されたのがこの施設である。
「まず前提としてお聞きしますが、レイラ様は何か護身術など戦闘に役立つ技術は修めておりますか?」
「いえ、精々飛行が得意なので逃げるのと防御魔術くらいですね」
【
一応戦闘にも使えるんだったか、やった事はないしやるつもりもないが
「使えるものは使うべきです……もしや」
タナカさんは何か思い浮かんだようだ
「試しに私の顔を殴ってみてもらえますか?」
「は? え? 顔を?」
突然何を言い出すんだこの人は、なんで理由なく殴らなければならないんだ
「あぁ、大丈夫です 傷が残らないように受けれますので、ほら」
「えぇっ……とですねぇ……」
なんというか、すごく嫌な予感がする
前世でもボクシング番組とか人が戦っているのをみる分には良かったんだが、喧嘩すらしたことが無い……筈なのだが、変な感じだ
「ほら早く、始めれませんので」
だが俺の修行を受けてくれたタナカさんを信頼しよう、きっと何とかしてくれると。
「わかりました……ごめんなさいッ!」
ベシッ!
俺の拳がタナカさんの頬に命中する、傷が残らないようにとは言っていたが少しだけ赤くなってしまっている
──ドクン
「え? あ……」
ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!
何だこれは……
俺が直接暴力を加えた、その事実が頭に反響する。
俺が残した傷跡をもっと見たい、もっと傷つけたい、嫌な顔をして欲しい
そんな気持ちがあふれてくると同時に、申し訳ない、傷つけたくないなんて言う気持ちも同時にあふれる
「頭が痛い……」
相反する二つの感情が同時に強くあふれてきて何とも言えない気持ち悪さのせいでその場でうずくまってしまう。
動けそうにない、動きたくない。
愉しい、哀しい、わからない、気持ち悪い 気持ち悪い 気持ち悪い!!
「そこまで」
ぽん、とタナカさんが手を俺の上に乗せたことで気持ち悪さや相反した感情が霧散する、落ち着いてわかったが俺は笑いながら泣いていたようだった。
「申し訳ございません、私の認識違いでした レイラ様は他者に危害を加えるのが嫌なのだと思っていたのですが、それだけではなく逆でもあったのですね、更にそれは無自覚なようです」
「タナカさん……?」
「今この場には他のスタッフもいませんし、利用者もいませんので私達二人きりです。 それを前提としてお聞きしたいことがあります。」
「え? ……はい」
とても真剣な表情で言われたので断ったり茶化したりなんてことはする余裕も無い。
そのまま聞いてみることにした。
「レイラ様は悪魔と人間のハーフですか?」
「……」
これは……どう答えればいいのだろうか、いや、信頼すると決めたからには応えよう。
「……少し違います。 この体は悪魔の物です、しかし私には前世の記憶があります。」
「続けてください」
「はい、前世では私は人間でした、いつも通り過ごしていたところ気が付いたら突然悪魔として転生しました、産まれた直後の記憶もあります。」
「ずっと戸惑いながらも生活してきて今、ガイスト・レイラという悪魔はここにいます。私が何者かと言われたら間違いなく悪魔です、ただ、私は……俺は悪魔でなく人間だったという過去は捨てるつもりは無い」
「……これでいいですか?」
「十分です、ではまず一つガイストの悪魔についてお教えしたほうがよろしいですね」
「ガイストの?」
タナカさんがどこからともなくホワイトボードを持って来た。
そこに悪魔と書かれた丸と人間と書かれた丸が並んでいる、多分マグネットの用で動かせるみたいだ
横線で分けてそれぞれ人間界、冥界、魔界と書いてあり、悪魔の丸は魔界、人間の丸は人間界にあった
「まず、それぞれ人間界の魂と魔界の魂は完全に別物です、転生しても同じ世界に送られます。」
「しかしどちらも死亡した場合は一旦この冥界に集められます、天界と地獄などに振り分ける為ですね」
丸がどちらも冥界に移動していく
「人間界の魂も魔界の魂も自然と死ぬと冥界に上って来ます。しかし、どちらの世界も当然何らかの理由で上って来れない魂もあるのです」
丸が途中で止まった
「この来れない魂を連れてくるのが死神の役目、更に言えば魔界でその役目を持つ家系がガイストとなります、聞いたことはありますか?」
「え、いや……ただ私は、うちの家業は墓守だとだけ 一応墓の管理方法とかは聞いたことありましたし、親に連れられて関係者と挨拶もしましたがそれくらいです」
「そうでしたか、ではその辺りももう少し詳しく知りたいときは質問してもらえれば答えますので」
「わかりました」
「では続けます、人間界は魔力が薄く普通の死神でも行き来しやすいのですが、魔力が強い魔界は違います。ガイストにはそういう仕事をする為に冥界と魔界を頻繁に行き来できる能力を持つ特別な魂が必要になってくるのです。その魂は自然には発生せず、特別な素材を使い作ります、そしてその素材をどこから仕入れるか……それがこれです」
冥界に来ていた人間の丸を指差した、つまりはガイストの悪魔の魂の素材は人間が使われていることになる。
「正確には人間である必要はないです、現にグレイブ様の前世は狼ですので ただ、人間界から来た魂である必要はあり、なおかつ悪魔に転生するのに特別適性が高く質のいい魂でなければなりません」
「じゃあ私はその適性が高い魂だったてことですか?」
「そうですね、でもそれだけではありません あくまでベースがその魂ってだけです、悪魔として生まれるためにはもう一つ手間が必要です」
そう言って悪魔の丸を取ってみせてくる
「当然悪魔の身体には悪魔の魂しか使えません なので魂を悪魔に変換する必要があるのです」
「悪魔に変換?」
「はい、もっともそれはこの冥界でも簡単ではないですが、閻魔大王様にしか出来ない事ですので」
閻魔大王って本当にいるのかとかもあるが、それ以上に俺の魂が弄られていたことの驚きの方が強い。
「特別な人間の魂に特別な悪魔の魂を混ぜ込み、加工する事でガイストという悪魔の魂になります……正確にはそれだけじゃないですが、まだ言えることではありません」
「じゃあ私には少なくとも人間と悪魔の二つ分の魂があるってことですか? それにしては別に二重人格になったとかそういう感覚は無いのですが、それに魂視でおとさまを見た時は一つの魂に見えました、確かにちょっと他の悪魔と違う感じはありましたがそんなに気にするほどじゃなかったはずです」
「いえ、二つ分という事にはなりません 強度は一般的な魂と比べても圧倒的に高いですが、複数の魂を混ぜ合わせた新しい一つの魂になります」
タナカさんは人間の丸と悪魔の丸をパチンッと合わせて裏返すとガイストと書かれた丸が現れた。
「こういった特殊な処理を行うこともあってガイストの方々には前世の記憶が残りやすいのです、大半は人間などの知性が強い生物ではないので意味は無いですが」
「つまり私は超レアケースと」
「はい、そうなります……ただこれは運が良かったとも言えます、ただ私の予想という注釈は付きます」
「運がいい?」
ある意味二回目の青春を得られたという事は確かに運が良かったと言えるがそれだけなんだろうか。
「ここからは少し話は変わりますが、悪魔の魂にもちょっとした種類があるのは知っていますか?」
「種類? 性別とか種族とかで変わりますがそれですか?」
魂視は結構よく使うので色々見て来た、悪魔の魂は特徴的だが悪魔の中でも種族の違いや性別の違いは特にわかりやすい、後は悪周期の時はより純粋になるからわかりやすいとも言える。
「魔界の悪魔には一時的に魂が純粋になる時期……たしか、悪周期と呼ばれるものがありますよね」
「え、まぁはい」
「悪周期以外にも常に魂が純粋な悪魔がいますね?」
「……はい」
何が言いたいんだこの人は
「レイラ様の魂に使われた悪魔はその純粋な魂の悪魔が使われています、これに関しては偶然でしょう、特別な人間界の魂と混ぜ合わせられる特別な悪魔の魂もまた希少ですので」
「はい?」
「今のレイラ様の魂もその悪魔の影響を受けてか純粋な状態が通常となっています、それが表に出てこないのは人間だったから、人間だった魂が人間の記憶と結びついているおかげで表に出る余裕がないからです」
「すみません……ちょっとわからなくなってきましたので簡潔にお願いします」
この答えは予想出来るが外れていて欲しい、そんなことは無いと否定してほしい
しかしタナカさんは合わせた丸をずらして悪魔の丸の裏を見せて来る、そこに書いてあったのは予想通りだった。
「わかりました、レイラ様は前世が人間でかつ記憶が残ったため善性を失わなかっただけの純粋な悪魔──元祖返りです」
【スキ魔】
以下、まとめ件補足解説となります。
1. 人間界の生物+悪魔=ガイストとなりますが、レイラの場合は人間+元祖返り=ガイスト(元祖返り)となっています、魂配分は人間6:悪魔2:他2くらいの割合です。
2. 普段はレイラに含まれる人間成分(つまりは前世)が強く出ているので元祖返りとしての特徴が出てこなかったってことになります。
つまり、前世の記憶が無ければ……
3. 殴った時に気持ち悪いとなるのは引き出された元祖返りの感情に対して人間の感情が抵抗した結果そうなっています、なお、二重人格とかではないです。
4. 田中さんの質問(レイラはハーフなのか)はレイラの自己認識がどの種族にあるかの確認の為です、そこから分析した彼はすごいホテルマンという事です。当然それだけが理由じゃないですがね