「私が……元祖返り?」
「はい、最も確定とまでは言えませんが きっとグレイブ様なら知っているでしょう、後で確認しても構いません」
俺が元祖返りと聞いてしっくりきた、しっくり来てしまったのだ
さっきとウォルターパーク時の愉しさや入学式の時などであった諍いの煽動など、前世の俺では考えられない事だったが元祖返りだったとすると納得だ。
「でも、私には悪周期もあるんです 元祖返りは常に悪周期の悪魔、それはなんでかわかりますか?」
「普段抑えているとは言えど常にそうとは限りません、なにかしらのきっかけがあった場合は多少なりとも元祖返りの部分が出るものです、それが強くあらわれてしまっているのがレイラ様の悪周期なのでしょう、似ているようで他の悪魔のそれとは違います」
タナカさんが何でこんなことに詳しいのかは知らないが、詳しいのであれば聞いておきたいことがある。
「この先、私が完全な元祖返りになることってあるんですか?」
もし、なるのであれば俺はエイコ達と一緒には居られないだろう
友達を自分の意志で傷つけるのはきっと俺は耐えられない。
「絶対にないとは言えませんが、少なくとも人間としての記憶が残っている間はあり得ませんので安心してください」
「そうですか、本当に良かった……」
「ですが、レイラ様の不安や異常への対処 そして、それの応用が可能です」
「対処と応用ですか」
不安はふとした時に元祖返りの部分が出てしまって周りに被害が行くことだろう、応用とはどういうことなのかわからない
「元祖返りの悪魔は常時悪周期であることからも普通の悪魔と比べても強い力を持っています、それは悪周期の悪魔が強くなるのと同じなので把握済みかもしれませんが」
「確かに……例外も要るっぽいですけど」
あれで強化済みなんだったらアミィ先輩は本当に不憫にも思えてくる、それでも
「ですので、レイラ様には元祖返りとしての感覚に慣れて掌握してもらいます」
「元祖返りを掌握?」
「現状、レイラ様は他者に攻撃を仕掛けると相当な負荷がかかる状態、ですのでその負荷がかからないように制御すると言う事です、最も悪周期のように魔力の向上は無いので強化とまではいきませんが」
「まぁ別に積極的に戦うつもりなんてないので別に良いですけど……何をするんですか?」
「単純な話です、悪意に慣れるだけ 正確には正しい悪意の使い方を覚える事です 人間的な認識と悪魔的な認識が一致していれば心の負荷は起こりませんので」
言いたい事はわかった、それが出来れば確かに負担は無くなるんだろう
ただ、それはつまり自分が元々善人だと言うようなものでもあるので少し恥ずかしい
とはいえ言ってられないのでやる事はやるが
「これから慣れるために行うのはこの闘技の間と呼ばれる闘技場での戦闘行為の習得、それと……
「戦闘と悪戯……イタズラ?」
「サプライズと言い換えても良いかもしれませんが認識通りのものです」
イタズラをやった事くらいはあるが、それで何かが起きた事はない。
それに慣れると元祖返りだからこその反動が無くなるということなのだろうか
「悪意を出力する行為というのは物理的な行為と精神的な行為の二つがありますので、それぞれの対処となればこうなります これから行うのは物理的な方です、幸いにも鍛えるという名分もありますし」
「わかりました、昼にも言いましたがモデビルもといモデルの仕事があるので変に筋肉が付かない方が嬉しいのですが大丈夫ですか?」
「そこは問題ありません、確かに格闘術を収めれば筋肉は付きますがガイストの方は半霊体なのでそもそも殆ど筋肉が付きませんので」
「あー……それは聞いたことがあります、通りで足が治ってるわけだ」
元祖返りと戦った時に自分で焼いた足、いつのまにか綺麗さっぱりと傷跡が無くなっていた。
最初は死んだせいかと思っていたが、ガイストの特異体質の所為なのだろう
そのせいで父も常に美形なのかもしれない、美容好きな悪魔に殺されてしまいそうだ、死なないけど
「ではこちらをお持ちください、ガイストの方ならこの武器が1番使いやすいはずですので」
「これは大鎌? ……重い」
渡されたのは俺の身長を優に超えるほどの2mはある大鎌だった
こんなもの重すぎてとてもじゃないが使えない
「これは
負けん気があれば持てるのかもしれないが、使うものは使う
という事なので早速魔術で軽くしたら、簡単に持ち上げられた
「まずはこの藁人形を斬ってみましょうか」
「わかりましたッ!」
思いっきり振りかぶって150cmほどの高さの藁人形を横に斬る
しかし上手くいかず、刃が藁人形に食い込んだところで止まってしまった
「重さをずっと軽くしているせいですね、振る時に重さを調整してみてください、また戦鎌は内側に刃があり引くときに斬る武器なのでそれを意識した立ち回りも大事です」
「はい、よーい……しょッ!!」
スパンッ!!
遠心力がかかっている時に重量を重く調整した結果刃は加速し、背中側を斬りつけたの確認した後に全身を使って引くことで藁人形を両断することが出来た。
生き物相手にやったわけでもないせいか、気持ち悪さはないようだ。
「良くできました、では次は生き物相手に使いましょうか」
「え、ちょっと早くないですか!? まだ生物相手じゃ多分発作が起きそうなんですけど」
「大丈夫です、私が無理矢理抑え込むので遠慮なくやって下さい グレイブ様もそれが目的で私に頼んだはずです」
父が……ならばやるしかないか
「……わかりました、このまま放置していつか暴走するとかになったら嫌ですしやります!」
「はい、では明日から頑張りましょうか」
「明日から? 今日からじゃないんです?」
「今日は今日でやる事がありますが、明日からレイラ様には個々の闘技に出てもらいます そして、そこにいる"双剣"と呼ばれる闘士に一撃加える事、これを今回の修行の最終目標とします」
一撃と聞けば簡単に感じるが、おそらく相応の難易度なんだろう、双剣というのがどういう人なのかはわからないが油断はならないだろう
「他の闘士とも戦ってもらいますが、そちらの方たちは殺しても構いませんし場外があるのでそちらを狙ってもいいです」
「殺しても……? どういうことですか?」
「冥界人は死にませんので遠慮なくやっていいってことです、もちろん向こうも殺す気で来ますからお気を付けください」
「そりゃそうなりますよね……私大丈夫なんですか?」
「冥界人は肉体が破壊されると魂だけの状態になり閻魔殿で再生ができます、しかしガイストの方はその肉体自体が霊体とも言えるものなので自己修復が可能なのです、もっとも冥界にいる間に限定されますが」
これは知っている、そもそもガイストの霊体化というのは肉体の維持を無くす行為だ、普段は無意識的に行なっているのが正式には反霊体化と言った方が近い
完全霊体化の魔力消費量が高いのは霧散するような感覚を抑えて維持するためなのだが、本当は冥界に行きそうだったのを耐えていたりするのだろうか
今度父に聞いてみよう
ともかくそういう事なら俺としても気にせずできるし問題ない
「わかりました、では明日からはその闘技に出ます」
「はい、今日のところは色々試すとしましょう」
そう言ってタナカさんはジャラジャラと色んな武器を取り出した、剣や槍といったわかりやすいものから銃と刀が合体したような変な武器まである
「色々ありますね」
「これを全部使ってもらいます、全部使い終わるまでは寝れませんのでそのつもりで」
「お、お手柔らかに……」
その後結局全部使ってみたが俺に合ったのは大鎌だけだった。