冥界滞在
今日の夜は闘技の間というところで戦うらしいが日中は暇である
そういう事もあり今俺は冥界の中央区を散策している。
昨日といえば昼には買い物で夜は闘技の間の試合に出たのは出たんだが……
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「嬢ちゃんが出るのかよ? 赤紙を受け取ったからには手加減はしねぇぜ?」
ガラの悪いハゲの大男が相手だった、出場権(強制)代わりの赤紙を受け取ればそれがだれであれ闘士として認められるらしい、武器も自由だが場外負けがあったり死亡しても問題ないなどルールが少し変わっている
「手加減とかいるかぁ? まぁ嬢ちゃんには無理だがよぉ」
「いいからやりましょう」
大鎌を取り出して両手で構える、かなりのサイズの為刃を背に背負うようにしておりかなり振りかぶった状態だ
対して相手はモーニングスター、大柄な体にその武器はとても映えるいいものに見えた
「試合開始!」
「行くぜッ!」
モーニングスターが真っすぐ飛んでくるのを横に回避、戻って来る前に鎌で鎖部分を刈り取る。
大きなサイズに重力変化を混ぜたこれは見た目も派手だがそれ以上の威力を発揮する
パキンッ!
鎖がちぎれることでモーニングスターは戻ってこない、作戦通りだ
「チッやるな嬢ちゃん! だが素手だって強いんだぜぇ!!」
「フゥ……ッ!!」
円運動を意識するように拳を回避、そのまま回転の力を利用して相手の背後に刃が来るように大鎌を回す
「とどめ!」
胴体を真っ二つにするように鎌を引く、鎌は相手の背後からこちらへと……来なかった
「上手い事は上手いがよ……別に持ち手部分は無くなってねぇんだわ」
背中に棒が挟まる様に後ろで防がれてしまった。
一度刃を戻そうにもサイズが大きすぎて時間がかかる
「じゃあ覚悟は良いか?」
「……お手柔らかに?」
がしっと頭を持たれて振り回される、痛さはそこまでないが頭がシェイクされて目が回る
「オラ飛んでけッ!!」
「ほぎゃ!!」
そのまま場外へと投げられてしまって俺の負けとなったのだった。
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「普通さー、ああいう筋肉だるま系の最初の敵ってかませじゃん! 普通に強いんですケド!」
ぷんすこぷんという擬音が出るような感じで怒ってみる、こういうのは美少女に産まれた特権だ
さておき、敗因は完全に戦闘経験の差、相手は闘士という圧倒的な経験者で俺は素人がちょっといい武器貰って調子に乗っただけ、勝てるわけがないのだ。
その辺をどうするかとかを考える必要はあるのだが、中々に思いつかない
正直、正攻法でいっても二の舞だろうし筋トレなどはモデル体型に傷がつく……何か他の方法が必要だ
冥界を歩いていると何か参考にならないかとも思い歩いているが……中々上手いこといかない
ふと気が付くと雰囲気が変わっていた、どうやら変なところに入ってしまっていたようだ
「一応地図は貰ってるし連絡用の道具?も貰ってるから大丈夫だけど」
ス魔ホもウォルターパークで無くした上にこの冥界ではらしく、タナカさんに渡されたのが
ムームーと可愛い声も出すこれだが、お腹を押すと他の通信鬼と繋がって会話が出来るらしい。
いざとなればこれを利用すれば帰れるし、少しこのまま歩いてみることにした
少し歩くと特別目立つ建物があった。
「ヴォラクスカジノ……?」
カジノとはあのカジノだろうか……入ってみることにした
まだ学生だが俺は悪魔なので悪事を働くのが普通、それに悪いことになれた方がいいと言われたので仕方ない
……建前はこれくらいでいいだろう
「【チェルーシル】」
魔術で服をドレスに変更、こういうところはドレスコードとかがいるのが相場で決まっている、身長は163cmな俺だったりするが大人でもこれくらいの
中に入るとそこは完全な別世界だった、色んな種族がそれぞれの場所で勝負に興じている。
一流の賭博場、そんな言葉が最も似合う場所である。
「どうぞ」
「あ、どうも」
サービスだろうか、お酒が入ったグラスを渡された
……飲んでも良いのか?酒を飲んでも良いんじゃないか?
何を隠そう俺は結構な酒好きだ、転生してからは子供ということもある上に前世の死因らしく、家族に止められているので飲んではいないが今は誰もいない……
良いんだよな、酒を飲んでも
「い、いただきます……!」
「ハイストップ」
「あぁっ!」
グラスを取り上げられた、もう少しだったのだが残念で仕方がない
グラスを取り上げたのはバニーガールとディーラーを足して二で割ったような女性だった、耳は無いけど
「ここはカジノよ、子供が来るような場所じゃないわ」
「……ですよね、賭けないんで見学だけでもしちゃダメですか?」
正直賭け事には忌避感がある、人生を決めるのに運は必要だが運だけで人生を決めたくは無い
前世でもパチンコとかは行ったことがあるが数分で千円が消えたのを見た時は戦慄した、怖すぎる
「見学? ……どうしようかしら」
「いいんじゃない? ただ、賭けないように見張る必要があるけどね」
ぴょこっと女性の肩から小さい兎の悪魔っぽいのが出てきてそういう、この小さいのが責任者だろうか
「ようこそお嬢さん、私はこのヴォラクスカジノの代表取締役のヴォラーノ、こっちは娘のヴィヴィアンだ」
「私はガイスト・レイラと申します、今は観光中でホテルヘルヘイムに滞在しています。」
「ヘルヘイムの……成程、田中様のご紹介でしょうか」
「違いますね、たまたまです」
「そうでしたか、失礼しました」
やはりタナカさんは顔が相当に広い、ただのホテルマンとは到底思えないがそういうのは後でまとめて聞くとしよう
「ヴィヴィアン案内してあげなさい、子供とはいえ将来のお客様になるかもしれないし一人では危ないからね」
「うん……では、こちらへ」
「わがままを聞いていただきありがとうございます」
なんとかカジノから追い出されるのは回避した、酒も飲みたかったが今は賭博の世界というものを見学していこう、魔界にもジャカポという学校があり、そこでは賭博や討論なんかがメインに行われている程度には悪魔にとっても賭けというのは重要なのだ
魔界で生きる以上必要な知識の一つと言えよう
「にしても貴女やけに礼儀正しいわね、まだ若く見えるのに」
「まぁ、見た目以上の年齢ですしね、それに一応仕事もやってるので」
「仕事? 何やってるの?」
「モデルです、この辺では有名じゃないですけどね」
「あー、美人だものね貴女……将来うちの宣伝も頼もうかしら?」
ふとブラックジャックをしているところを見ると、早技だがディーラーがカードを入れ替えている所が見えた、完全にイカサマだ
「あれ良いんですか? イカサマですよね」
「見えたの? ……確かにそうだけど、ああいうのは暗黙の了解でその場でバレなきゃいいのよ、ズルく見えるかもしれないけど勝負の世界って結局そんなものよ」
そんなものか
やはり賭博とは運だけで進むものではないようでイカサマなどの技を含めての駆け引きが大事なのだろう、良い勉強になるのでよく見ておこう
「とりあえずそうね、案内すると言っても入っちゃいけない場所もあるし……何が見たいの?」
「そうですねー……さっきみたいな人の駆け引きはもっと見たいです、特に強い人がいれば最高ですね」
「なら私かお父様が一番強いわね」
「え、そうなんですか?」
「私たちの家系は
傍にあった空きテーブルから一つのトランプの束を取って来て俺に渡してくれた、見る限りは普通のトランプのようだ、カジノらしく新品らしい
座っていいらしいのでプレイヤー側に座った、ヴィヴィアンはディーラー側だ
「それを私に見せないように良くシャッフルして頂戴、気になるならシャッフル前に見てもいいわよ」
「わかりました」
念の為に中身を確認するとジョーカーを含まず52枚のカードが欠けなくあった。
その後にシャッフルをしていく、見せないようにとのことだったのでテーブルの下なんかも含めてシャッフルだ
シャッフルが終わったので、テーブル上にトランプを戻した。
「ありがとう、じゃあそうね」
トランプを裏のまま5枚抜き出して表にした
その5枚はポーカーの役でも有名なものだった
「ロイヤルストレートフラッシュ……」
ハートの10JQKAが揃っている、最強の役だ
「イカサマなんてしてないわ、これが私の家系 運が無ければ一族にすら入れないヴォラク家のチカラなのよ、最も今は家宝が無いのと私が未熟なのもあってハートのロイヤルストレートフラッシュだけどね」
これがただの運だとすると相当なものだ、彼女と賭け事は正面からは絶対にしないようにしよう
そういえばうちの学校のオリアス先生もそういう能力と聞いたが、戦ったらどちらが勝つのだろうか
ただこれに関しては何の参考にならなさそうだ、運だし
別の人を見せてもらう事にした
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その後も色々なディーラーとプレイヤーの戦いを見せてもらったし、解説もしてもらえたので色々と勉強になった
勝負の世界では騙された方が悪い、どんな手段を使ってでも勝てば正義だという事も理解した、そして自分の持つ手札は最後までに使い切ったほうが良いという事も。
「今日はありがとうございました、大人になったらちゃんと客として遊びに来ますね……本当に遊びにだけ」
「普通はギャンブルはそれくらいでいいのよ、日常に対しての刺激程度でね ただ……」
ずいっと顔を近づけてくる、近くで見るとセクシーで美人なうえに良い匂いもするので少し照れてしまう、まぁ俺も負けてないが
「重要な勝負で賭ける場合は最後まで自分を信じることが大事よ、先輩からのアドバイスね 最も、引き際ってのも大事だからケースバイケースって事よ」
「はい!」
ある種、賭けに負けてこの冥界にいる俺だが、次のチャンスではもっといい役が出るように賭けてみたいものである。