悪魔で霊な元人間   作:P223

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63 ホテルヘルヘイム・遭遇、双剣と大鎌

ホテルヘルヘイム滞在4日目夜、闘技の時間である

昨日の夜は試したいことがあったのでそれの準備と練習にあてていたので2日目と殆ど同じような状況、今日はその成果を見せる日である。

 

「また会ったな、準備はいいか? 嬢ちゃんよ」

 

今日の相手は前に負けた筋肉マッチョな大男だ、前のこともあるし丁度いいと言える。

 

「今日は、ちゃんと戦えますよ」

 

「試合開始!!」

 

前回と同様の相手、たった2日鍛えたりしたところで勝てるわけもない

ならばどうすれば良いか、それは簡単だ

 

「【起動】!」

 

フィィィィン!!

 

何かが動き出すような音、それはおれの武器や服の中から鳴っていた

モーターが起動してさまざまな機構が動き出す、その全ては相手を打ち倒すためのものだ

 

相手はまだ何が起きたのかを理解しきれていない、チャンスだ

大鎌を相手に横から先端部分が当たる様に振り抜く

当然相手も避けようと下がろうとはするのだが……

 

「フッ!!」

 

ゴウッ!!

 

大鎌の後ろの部分に設置した噴出孔から炎魔術による加速、それにより回避行動前に相手に鎌を命中させた

 

「ぐぉぉ……効くががまだやれるぜッ!」

 

まだ火力は足りなかったようで、鎌は途中で止まり切断するとまでは行かないようだ

更に火力を上げていき鎌を押し込んでいく、もう少し

 

「うぷっ……」

 

発作が起きる、相反する感情による体調不良だ

そこで柄の部分にあるボタンを押し込んだ

 

バチィッ!!

 

「くっ……らえッ!!」

 

仕込んだ道具によって俺自身を感電させることで一時的に症状を軽減し、その間に鎌を振りぬいた

大男の身体は真っ二つになり、戦闘を継続できる状態ではなくなった、魂視で確認したところ魂が無くなったわけではなさそうだがピクリとも動かないので何かが出来る状態ではないようだ

 

「そこまでッ!! 勝者ガイスト・レイラ!」

 

「「ウォォォォォ!!!」」

 

歓声が上がる、俺はそれに応えるように手を上げてそのままリングから降りた。

 

「第一段階は良いでしょう、お疲れ様です」

 

「タナカさん」

 

リングを降りるとタナカさんが迎えてくれた、飲み物を渡してくれたので遠慮なく受け取って飲む、どうやらスポーツドリンクのようだ

 

「……はぁ」

 

「気分はどうですか」

 

「最悪です、戦うのもそうですがこの体質と……疑似的にでも他者を殺すっていうのは本当に気分が悪いです」

 

俺は元はといえば平和な時代の普通の日本人だ、戦争どころか生きる為に動物すら直接殺したことが無い

そんな俺は身を守るためは別だが自分から攻撃を仕掛ける行為と言う物自体に忌避感が出てくる、これがいいのか悪いのかは未だに分からない。

 

「いいんですよ、殺しは慣れないほうがいいです 人間であったことを捨てたくないならばですが」

 

「……」

 

だが、殺しに慣れておかなければならない理由は二つある。

一つは元祖返りを相手にする場合の事だ

 

元祖返り相手に殺さないという選択肢を選ぶにはあまりにも未熟、鍛えても手段を講じてもきっと悪い方向にしか行かないだろう

その時に躊躇せず止めを刺すことが出来れば、きっと最終的にいい方向に行くはずだ

 

どちらを選んでも俺はきっと後悔する、ならば奪われないほうを選ぶ方がいいと思う

 

二つ目はこんな堅苦しいことではない、収穫祭の為だ

 

バビルスの収穫祭とは一年の二大イベントの一つである、一定の範囲内でサバイバルを行い、期間内になるべく多くの動植物を収集・提出することでポイントを競うものだ。

当然その中でも動物をポイントにする為には当然殺す必要がある、中にはそうする必要がないのもいるかもしれないがそれは甘えだ、そんなことでイルマ達問題児(アブノーマル)に勝てるとは思わない。

 

正直俺はイルマ達は好きだ、だが彼らに勝ちたいとも思っている、だからこそ正面から全力で勝ちたい、それはきっと俺の欲なんだろう

 

ならばやるしかない、幸いにも俺は悪魔だ、殺しをしたからといって何か問題になる種族でもないから大丈夫

俺の心の問題だけだ、絶対に人間の心を忘れないまま一つの手段として利用できるよう慣れてやる

 

「私、やります 次の試合をお願いします」

 

「……わかりました、では次の相手はこちらです」

 

タナカさんが先導して別の部屋へと案内された

 

「失礼します天くん 前に言っていたお客様をお連れしました」

 

「お前が相棒に師事しているやつか……まだ子供じゃないか、戦えるのか?」

 

「ダメダメです、ですが面白い戦い方をしますよ」

 

通されたのは控室のようで、そこには黒髪で切れ目の良く研がれたナイフを連想するような男性がいた。

素人ながらも俺が戦った大男とは比較にならない程の強者であると直感で分かった。

 

それに、タナカさんとかなり親しいようで相棒とまで言っているし、田中さんも珍しくあだ名で呼んでいる。

 

「紹介します、こちらは天くん、"双剣"と呼ばれる闘士で普段はこのホテルでフローリストをやってもらっています」

「天くん、こちらはガイスト・レイラ様 グレイブ様のご息女であり現在この冥界に滞在してもらっております」

 

「よろしくお願いします!」

 

「あぁ」

 

この目の前の男の人が双剣らしい、この人に一太刀入れるのが目標……正直出来る気がしない。

何か弱点を探るのが必要そうだ

 

「あと何日滞在する予定だ?」

 

「今が4日目なので後3日です……」

 

「……舐めてんのか?」

 

「ごもっとも……」

 

「ったく……相棒の頼みだからちょっとは楽しみにしてたのにこんなお遊びに付き合わされるとはな」

 

お遊びか、確かに普段から戦っている人からするとそうだろう

そしてそれを俺は()()()()()()()()

正直俺にとって戦闘行為は護身や競技以上の意味を持たない、命を賭けて切った張ったするような人たちからするとお遊びだろう、だが……

 

「お遊びだからこそ、足元を掬われることだってありますよ」

 

「……何? ッ!!」

 

キィンッ!!

 

不意打ち気味に鎌を振りぬくが弾かれた、常在戦場とはこの事だろう

警戒させたのは悪手だが、つまらなさそうな顔を変えられたのは気分が良い

 

「不意打ちとはずいぶん行儀が悪いなッ!! ここでやるってのかよ!」

 

「いえ、やりません 全力で戦闘拒否します」

 

ススス……とタナカさんを盾にするように移動する、攻撃したことで少し気持ち悪いが殺したときよりはマシだ

 

「はぁ!? おい相棒!こいつ意味わかんねぇ!?」

 

「どうやら悪魔らしい行動で課題を達成するつもりなようですね、結構 すみませんが天くん、付き合ってあげてください」

 

「お、おい……行っちまった、どういうことだよ?」

 

「……ちょっと私的にも良くないなーって思ったので、説明します」

 

タナカさんは用があるようでこの場を去ったので、俺が今思いついたことを説明することにした

 

「これから3日間、私は貴方を襲撃します ただ、反撃されるのは怖いので全力で戦闘拒否します、従業員とか他の客とかなんでも盾にしますし利用して逃げます」

 

「どういう意味だ?」

 

「タナカさんの課題は双剣に一撃を加える事、ですので 試合とか関係なしに一撃当てちゃおうと思いまして」

 

「それは……ずるくないか?」

 

「ずるいですね、でも私は飽くまで悪魔なので 卑怯上等、ダメと言われて無ければやりますよ (げん)に田中さんも止めなかったじゃないですか」

 

「……はぁ、わかった だが……その程度で俺から一撃を取れると思うなよ?

 

強烈な殺気、一度元祖返りのそれを受けていなければ足がくすんでいたかもしれない程だ

それに反撃を完全に封じているわけでもないので一方的に攻撃が出来るというわけでもない、3日以内に一撃を加える作戦が必要になってくる。

 

理想は正々堂々試合でやる事が最もいいのだろうが、仕方ない

 

元々俺が慣れる必要があるのは二つあるのだ

戦闘と悪戯、肉体的悪事と精神的悪事

 

どちらも同時にこなそうじゃないか。

 

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