5日目
「確かこの花はこの区画のだったな、メモは確かこの辺に……」
「覚悟ッ!」
「甘い」
「ぎゃっ! ただの不意打ちじゃだめかぁ……また来ます!」
「来るな……ったく」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
撤退撤退
とりあえず朝ご飯食べて早速天さんに奇襲をしかけてみるが、簡単にあしらわれた。
トライ&エラーは得意とはいえまだまだ先が見えなさそうだ。
だが、時間も少ないのでやりたい放題手段を選ばずやっている
とりあえずわかったのは、思った以上に彼は隙がないのだ
いつでも襲いかかると言わなかった方がいいんじゃないかとも考えるが、それでは俺の気がすまない、ズルをするにも俺なりの線引きというものがある
「にしても、天さんってなんであんなにも強いんだろう……魂を見る限りじゃ普通の人間っぽいんだけどなぁ」
それも入間と同じ純粋な人間だ、俺やタナカさんはそういう意味では純粋とは言えないのだがその分強い理由がわかるのだ、悪魔の力や他の力が使えるというのは当然強い
だが人間は殆ど力を持たない、筋力なんかはあるがそれですら悪魔の方が強い。
なのに手も足も出ない、強化魔術を利用してもだ
力でなく技で戦う極致、人間の最高点の存在であると理解した
その上で何かで上回らなければならないのだ、でなければ一撃は入らない。
「でもどうしろってことなんだよなぁ、ね、メイさん」
一人で考えるのも限界があるので、他人を見るのが得意な支配人さんのメイさんを相談役として借りている。
これも仕事とかで時間の制限こそあるが相談相手がいるといないとじゃ段違いなのだ。
「天さんは本当に強いですからね、失礼ですがレイラ様の力じゃ大人と子供以上ですよ」
「ですよねー あ、あとそのレイラ様ってやつやめて欲しいかな、対等でいたいし……友達になりたいなって思ってるので」
「わ、わかりました……レイラさん」
「はい!」
やっぱ可愛いんだよなこの人、照れた顔なんかはエイコと同じだし好みだ
だが今は天さん対策なので愛でるのは後回しだ」
「とりあえず、天さんの事をちゃんと知らないと無理そうなので教えて貰えませんか?」
「わかりました、ではまず天さんとは通称で──」
長々と説明してくれたので一旦まとめてみる
天さんというのはあだ名であり、正確には仏名*1の"二天道楽"からとって天さんとのことらしい
彼は人間であり、その中でも特別な魂が再利用された"御上り"と呼ばれる存在らしく、メイさんには言っていないが俺も特別な魂らしいのでそういう意味では彼と俺は同じような存在なのだろう
元々彼は双剣という異名ではなく双肩いう二人組のフローリスト*2をしていたらしく、その相棒がタナカさんらしい
タナカさんの相棒というだけでもその強さが分かるのだが、気になるのは"二天道楽"という名前だ
まさかとは思うのだが、ここは確認したほうが良いだろう
「あの、メイさん……天さんってもしかして、
「良く知っていますね? そうですよ、生前は宮本武蔵って名前だったと聞いたことがあります!」
「……そりゃ強い訳だ」
宮本武蔵は俺達(元)日本人ならほとんどの人が知っている人物だろう
"二天道楽"という言葉はあまりわからないが近い言葉の"二天一流"という言葉なら知っている。
常在戦場の侍、そんな人が冥界に来てからも成長を続けているのだからそりゃ強い、俺じゃ正面戦闘じゃ勝てるわけがない
そう、
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
メイさんに礼を言って仕事に戻って貰った、俺は自分の部屋で紙を出して考えをまとめている
「まずは目標を順序立てていこう」
一つ目、彼はまだその刀を一つしか抜いていない、これはなめられているのもあるだろうが彼自身が二天一流を使う必要がないと考えているのもあるだろう、彼に二本目の刀を抜かせるのが第一目標だ
二つ目、彼の力は相当なものだとしても弱点がない訳じゃないだろう、それを見つけ出す それが第二目標
そして三つ目の最終目標で彼に一撃を加えるのが大きな目標と言えるだろう
それを俺は一人でやり切りたい、元々俺は他人と協力する方が得意ではあるのだが、ウォルターパークでの出来事を考えると一人でもある程度の力を発揮する必要があることが分かった。
その力を手に入れる……見つけ出すためには、俺一人でやり切る必要がある、これは意地でもある
「次に手段だ」
天さんが宮本武蔵だったという事は江戸時代の人物だという事も分かった。
ならば俺は彼が知らない手段で戦う必要があるだろう。
まず、彼が知っている事は江戸時代までの日本と今までの冥界の事だ
ならば今の冥界にも江戸時代にも無かったものを利用すればいいという事になる
当然そんなものは冥界には存在しないが俺は魔具制作のエキスパート、無ければ作ればいいのだ。
時間がない、早速作成に移ろう 材料は2日目に買ってある、時間は少し足りないが簡易的なものならいけるはずだ
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「まずは一つ目」
本気を出させるために天さんには危険を感じてもらうのが一番だろう、手段は選んでられない
という事で取り出したるはこれだ
「スナイパーライフル!……の偽物」
本物の銃の機構なんざ知らないので魔術で炎系魔術と土系魔術を利用して再現した類似品にはなるが一応遠距離に対応した武器だ、火力はそこそこで当たってもせいぜい骨が折れる程度のはず
冥界の素材にも爆発するタイプの石があって助かった、射程距離は100mくらいだろうが十分だろう
今、天さんはホテルの管理している花畑にいる、ここは結構広いので狙撃するのには丁度いいだろう
俺は霊体化と認識阻害を利用して高い位置に陣取っている、天さんはまだコチラに気づいていないようだ
「じゃあよく狙ってっと……気分悪……」
銃は当然命を奪うための道具である、その為俺の発作も発動してしまうのが難点だ。
自傷することで罪悪感を少しだけ緩めてから撃つことにした
「じゃあ改めてっと……発射!!!」
──ッダァン!!
弾は轟音と共にで天さんの元へと発射された、普通の銃とは違いそこまでの速度も出ず、当然天さんも音で気が付き刀を構えるが本題はここからだ
「【
撃ちだした弾を仕込んだ魔術で巨大化させる、家系魔術の中でも大きさを変える物というのは多いのだが、それを一般魔術である程度再現した応用である。
巨大化した弾は直径1mほどの金属の球体となる、銃ほどの速度でないにしろ高速で飛来するこれを回避することは不可能だろう
「チッ……!」
天さんは舌打ちしつつも刀を二本使い切り刻む、そしてその勢いで刻んだ金属塊をまとめて30mは距離がある入口の方へと吹き飛ばした、恐るべき威力だ
「でたらめだなぁ……でも目標は達成っと」
魔術の効果は一時的なものなので仕込んだ魔力が尽きた金属は元の大きさに戻る、その為回収も必要ないと判断した俺は反撃される前にさっさと離脱した
「とりあえず、銃は有効っぽいかな? 速度は出ないけど二本目を抜かせられたし」
離脱しながら考えを巡らせる、近代兵器ならある程度は初見になるだろうからこその奇襲になる
一方火縄銃などは戦国時代からあるので単発銃は対応されるだろうか、最低限連射できるものが望ましいだろう
「見た限り、あの二本を使う一撃は小細工をまとめて薙ぎ払う力があるっぽいし」
簡単に撃つだけでは難しいか、弾も巨大化させたから当たっただけで俺じゃあ銃を使いこなすにはまだまだ時間がかかりそうだ
それに俺としても大鎌にも慣れたい気持ちがあるのでそれも利用したいところ……
勢いだけでいけばウォルターパークのように対応された終わりだ、最初から最後までルートを考えろ、俺は主人公みたいにその場しのぎで覚醒して心で勝つのは向いていないんだ
考えて結果を導き出すしかないのだ………………
「……見えた、一撃を与える方法が!」
因みにホテルヘルヘイムの設定として"御上り"には生前の記憶が殆どないという設定がある為、別に近代兵器を利用するとかを考える必要はなかったりします