悪魔で霊な元人間   作:P223

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過去一長くなりました
原作では閻魔殿と閻魔庁の二つありますが本作では閻魔殿の中にある閻魔庁って感じにしてます

地の文で長めのお話が挟まります、ゆるりとお読みくださいませ
※少しおかしい箇所を修正しました


66 ホテルヘルヘイム・ガイストと冥界

7日目朝、昨日気絶したまま目が覚めると既にこの時間であった

朝食が用意されていたのでそれを食べ、準備をする

部屋の外に出るといつから待っていたのかタナカさんが入り口で待機していた

 

「おはようございます、それでは行きましょうか」

 

「はい? 何処か行くんですか? 魔界ならまだ後だと思ってたんですけど……」

 

「えぇ、課題を達成した以上ガイストの存在というものをきちんとお教えせねばなりませんから」

 

「前に聞いた以上って事ですか?」

 

「えぇ、そうなります」

 

前だけでも俺というガイストの魂について知らされた、まだ何かあるというのだろうか

思うところはいくつもあるが今は大人しくついていこう、その上でわからなければ聞けば良い

 

それはそうと気になったことがある、タナカさんの正体だ

魂視で魂を視る時に抵抗があるのは珍しく、見えた魂も純粋な人間とは言えない混ざりもの、そしてどこか親近感を感じる部分もある。

 

聞いてもいいのだろうか

 

「……私の事なら、この後行く場所の後にでも 貴女には聞く権利がある」

 

「……わかりました」

 

今更気にはしないが心を読まれていると思う、そうでなければ説明が付かない程のスーパーマンだ

だが、それも教えて貰えるのならば待つとする

 

「では向かいましょうか、一度戻ってくる予定ですのでお荷物などはそのままで」

 

「わかりました」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「着きましたよ、ここです」

 

「ここは……」

 

タナカさんに連れられたのは、ただただ巨大な建物だった

城を思わせるような外見で普通の場所ではないと一目でわかる

 

「ここは閻魔殿、閻魔大王のおわす場所です」

 

「閻魔大王って……あの閻魔様ですか!?」

 

日本人ならほとんど誰だって知っている存在である

死んだ人間が閻魔に裁かれて天国や地獄に振り分けられるというあれだ

嘘をつくと舌を引っこ抜かれるとも聞くが本当なのだろうか

 

「その閻魔様で間違いありませんよ、これから会っていただくのも彼になります」

 

「それって私が前世の記憶を持っているからとかで裁かれるって事ですか……?」

 

「いえ、前にも言いましたがガイストの悪魔の魂を作ることが出来るのが閻魔大王ですのでその関係です」

 

「そういえばそんな事言っていたような……」

 

正直修行と天さんとの戦いに集中してたのもあって忘れていた

 

「それでは私はここで待っていますのでここからはお一人で」

 

「えっ タナカさんは来ないんですか?」

 

「私は閻魔殿とは少しありまして、入らないほうがいいのです 大丈夫、全て教えてもらえますので」

 

何があったんだろうか、とはいえここでまた話していてもきりがない

とりあえずは先に用を済ませるとしよう、何を知れるのかはわからないがこれもいい経験になると嬉しい

 

タナカさんに礼を言い、中に入ると全体的に西洋の宮殿を思わせる内装だった

閻魔殿という名前から和風の建物を連想したが外も中も西洋とは意外だ

 

とりあえず何もわからないので近くにいた人を捕まえてどうすればいいか聞いてみることにした

 

「あの……」

 

「はい? ……貴女は確か!」

 

「え?」

 

「お待ちしておりました、こちらへどうぞ!!」

 

「え?」

 

なんかやけに畏まられているような気がする

タナカさんが話は通しているとは言っていたが一体なんと言ったのだろうか?

困惑しつつも倒された先は閻魔殿の中でもとりわけ大きな部屋のようで巨大な扉が鎮座している

 

「こちらです、少々お待ちくださいませ」

 

そう言って職員さん(?)はノックして中へと入っていった、しばらく待つと戻って来て入る様に促されたので入った

 

部屋の中も城のようで、イメージとしては玉座の間と言えばわかりやすいだろうか、そういう感じである

現に正面の巨大な椅子には大きな人が座っている、座った状態で3~4mくらいはある

 

「よく来たね、魔界の」

 

「魔界の?」

 

なんだか気安い感じがする……?

普通偉い人の前とかは独特のプレッシャーなどを感じることが多いのだがそれがない、冥界特有の現象かと言われればそうではなく、例えば料理長のベヘモットさんとかカジノのオーナーのヴォラーノさんなんかはちゃんとプレッシャーがあったのだ。支配人のはずのメイさんには無かったけど

 

「おい、お前ら席を外せ」

 

「「「はっ!!」」」

 

なんか一斉に職員の皆さんがいなくなっていく、何が起きたのか全くわからない

 

「……そんな遠いところにいないでもっと近くにおいで」

 

「あ、はい」

 

そう言われて近づくと隠されていた顔が布越しに見えた、何というかすごく見覚えのある顔に思える

 

「魔界のはまだ子供だったな、確か菓子があった筈だ 食べるか? ほらもっと近くに来い来い」

 

「あ、はい ……いただきます?」

 

甘食を渡されたので食べる。

何だろうこの……遠く離れた実家に住む祖父の家に来た時のような感じは

なんか膝の上に乗せられてるし

 

「で、最近魔界はどうだ?」

 

「最近ですか? まぁ魔王デルキラ様が失踪したのもあってパニックだった時期もありますが今は結構穏やかですよ」

 

「だよね、一応知ってたけど実際にそう聞けて助かった 最近来る悪魔の魂が少ないからねぇ」

 

「あの……」

 

「ん?」

 

「何で私は今膝の上で頭を撫でられてるんです?」

 

「あー……今は確かグレイブだったっけ、彼から聞いてないのか」

 

ここで父の名前が出るという事は閻魔大王とうちの家が関係あるという事だろうか

まさかこの質問で死神だからなんて話ではないだろうし

 

「私はある意味()()()()()()()()

 

「はい?」

 

パパ?パパってあのパパだろうか、父親って意味の

 

「あ、ちゃんと血がつながった両親って意味ならグレイブと……なんだっけ、とにかく二人で合っている」

 

「テレサです、ガイスト・テレサ」

 

「そうそう、そういう名前だった で、ガイストの魂ってのは悪魔と人間界の生物を混ぜて出来るってのは知っているか?」

 

「あ、はい タナカさんに聞きました」

 

「タナカ……?」

 

「あ、いえ た……たまたま! たまたま聞く機会がありました!」

 

「あ……? あぁ、たまたまか」

 

なんかすごく嫌な予感がしたので軌道修正した

タナカさんは何をしたんだろうか、謎が謎を呼んでいる。後で絶対聞き出してやる

 

「とりあえずそれを知っているのなら話は早い、その魂を混ぜる際にただただ単純に人間と悪魔の魂を混ぜているだけではないのだ」

 

「他にも何か材料が? おとさまは普通の悪魔とちょっと違うだけ程度にしか見えませんでしたが」

 

「まぁそうだな、完成すると他の悪魔との違いは集中しなければわかるまい だが決定的に違う部分がある」

 

「違う部分?」

 

「それはだ、ガイストの魂には我々()()()()()使()()()()()()のだ 2割程な」

 

2割も閻魔の魂が……?

それはまた驚きだ、つまり俺は人間と悪魔と閻魔のミックスってことなんだろうか

 

「まぁ驚くよな、説明する そもそも元々ガイストという悪魔は魔界に存在しなかったんだ、悪魔たちの魂を回収するのには冥界人の中でもとりわけ魔界に適性が深いものが行っていた。」

「当然適性があるといえど危険な魔界で産まれたわけではないので仕事はそう上手くはいっていなかったがな、そこで閻魔大王が直々に魔界に視察に行くという大事件が起きた。」

 

今から考えると昔も昔、大昔の出来事である

当時はまだまだ争いの絶えない魔界だった頃、魔王デルキラどころか魔王ドクフェル*1が誕生するよりずっと前の話だ

 

その頃の魔界は日々争いが絶えず、全ての悪魔が元祖返りといった風であった。

その為、悪魔の死者もかなり多く、常に悪魔の魂を裁く作業に追われていたそうだ

更には魔界に多少の適性がある死神も少ない上殺されたりなどして冥界に叩き返される始末、蘇生は出来るが時間はかかるそうだ

 

作業が限界突破して回らなくなった時、遂に当時の閻魔大王は爆発した

いっその事、一度この目で魔界を見て回ることで何か解決策を得られないだろうかと思ったのもあって魔界へと無理矢理強行したのだ

 

そうして魔界に降り立った閻魔だが最初は順調に視察が出来ていた、魔界には魔力があり冥界の魔法が使えたのが大きいそうだ

しかし、トラブルと言う物はいつだって急に起きるもの、閻魔の身体に異変が起き、道半ばで倒れてしまったのだ

今となっては普通の風邪程度の物ではあるのだが、魔界特有の瘴気もとい病原菌に感染することで起きる体調不良だった

当時の閻魔は勢いのまま護衛も付けずに来たせいもあって絶体絶命だったという、もっとも死んでも冥界に帰るだけらしいが

そんな時にとある小さな女性悪魔……当時は堕天使らしいがそれと出会ったのだ、彼女の名は堕天使ムールムールという。

 

グリフォンの背に乗る彼女は空を飛行中、倒れている閻魔を発見し保護したのだ、元々天使だった彼女の善性がそうさせたのかもしれない。

閻魔の看病をしていくうちに閻魔も魔界の瘴気に適応していったのかどんどんと良くなっていった

看病中も声をかけたり、冥界と魔界という違う世界で生きる者同士いろんな話をしたそうだ

結果、二人はお互いに惹かれていったという。

 

そこからは早かった、二人はそのまま付き合って恋人となった。

当然邪魔する者もいたそうだが、閻魔大王という存在は冥界のトップ、当時の魔界では統一されていないので争い合っていることもあってそれはもう無双状態で駆け抜けたという

マグマの滝や針の山、氷の城など色々な場所をグリフォンを含めた二人と一匹で冒険していったらしい、閻魔もその時だけは仕事を忘れて駆け回っていたとか

 

燃えるような恋をした二人だが、別れもまた突然だ。

冥界を長らく留守にしていた閻魔を追って死神たちが現れた。

多少は死神たちでも対処できるものの魂を裁けるのは閻魔大王だけ、そして冥界の悪魔ではないムールムールは気軽に冥界に行くことなどできない。

別れの時だった。

 

閻魔とムールムールは別れを惜しんだが、お互い住む世界が違う、その事は理解していた。

ただ、二人が愛し合った証拠は残したかったのだ。

閻魔はもう少しだけ時間を貰い、ムールムールとの間に一人の子を設けた。

 

その子が初代ガイストである、悪魔と閻魔のハーフである子供はその冥界の力の影響もあって身体を持っていなかったのだ。

魂を感知できるからこそ残したかったはずが死にゆく我が子を哀れに思った閻魔はその子に仮初の肉体を与えることでその子の命を救った、当然これは冥界でも大罪である。

よって閻魔はムールムールに命ずるしかなかったのだ、"この子はお前の子として育てることを禁ずる"と

そうしないと閻魔の罪がムールムールの死後全て彼女に擦り付けられるから、当時の冥界はそういう世界だったらしい。

 

そしてもう一つカモフラージュも兼ねてになるが"我が子以外に純粋な悪魔の子供を設ける事"を命じた、これが今のムルムル家に繋がる。

 

時は経ち、離れているが愛のあるサポートもあって他者と違う疎外感を感じながらも元気に成長したガイストなのだが戦乱の世でもある為、ある日戦いに巻き込まれてしまい死亡してしまった。

そして訪れた冥界、そこで自分の親と再会した。

 

自身の重さが殆どない体質や明らかに他の悪魔と違う固有魔術、そして他者と違うものが見えるなどの疑問が解消された彼を見た閻魔は気が付いた。

ガイストには冥界と魔界の二つの世界に強い適性がある事と閻魔の力を深く受け継いでいる事だ。

理解してしまった閻魔はガイストに頼みをした、父としてではなく閻魔大王として。

 

"魔界の迷える魂を冥界に運ぶ事"そして、"緊急時において閻魔として魂を裁く事"である。

ガイストはそれはもう悩んだそうだ、突然現れた父親からの頼みにしては異質にもほどがある。

しかしガイストはそれを受け入れた、そこに自身の生きる意味を見出したのと、他者の魂を扱うという悪魔より悪魔らしい行為に魅せられたからだ。

 

そうしてガイストは閻魔の頼みを聞き魔界に戻って後に子を設ける、冥界で閻魔に聞かされ寿命以外では死なない事を知ったガイストは自身の家の事も考えて"ガイストは一代に一人"と決めた。

それは今でも続いており、ガイストの家系は綺麗な一本道である、最もムルムル家とのつながりは何処で知られたのか親戚として書いてあるらしい。

 

かつて閻魔がガイストに頼んだ事は今でもガイストの家業として受け継がれて残っている。

そして、ガイストに閻魔の血が流れているせいでいつからか冥界の適性があるだけの特別な悪魔の魂だけでは受け入れられなくなったらしい、それで閻魔の魂を混ぜるようになった、その際人間界の魂も混ぜることで魔界と冥界の行き来が最も安定した悪魔になったとか。

 

いつしか閻魔の血も薄まり安定性の向上のために混ぜていた人間界の魂との比率も逆転していき、今の比率に落ち着いたという話。

 

「と、まあこんな話だ」

 

「つまり私の身体には閻魔様の血が流れてるって事……」

 

「少しだがね、今はそういう悪魔という存在になったことが強いだろうけど血が流れている事に間違いはない」

 

「この体質は良く薄まりませんでしたね、正直生きづらいのでないほうが助かりますが」

 

実の所俺の本来の体重は驚きの21gだ、肉体が仮初で実は魂だけだったという話なので驚きではあるが納得した

 

「その辺は色々とこちらも手を回しているからな、ガイストは冥界でもかなり重要なのだ」

 

「因みに今でも私って非常時に閻魔様みたいなことをするんですか?」

 

「今はグレイブがその役割だが、いずれはそうなるな また時が来たら私が教えるからな、最も今の平和な魔界ではその必要はなさそうだがな」

 

ならば当分は魔界の迷える魂を冥界に導くことだけを考えていればいいだろう、それくらいならモデビルも魔具制作も辞めずにすみそうで大助かりだ。

そういえば、ガイストの歴史なんかもしれて体質の理由とか家系魔術がやけに強い理由とかは知れたがまだ一つだけ残っていることがある。

 

「なんである意味私のパパって話なんです?」

 

「単純だ、お前の魂に私の魂が使われているからだ 純粋な素材として使用したから私の自我に塗りつぶされるとかは無いから安心していい グレイブは我が父の魂が使われているからなぁ……」

 

ある意味俺の自我に塗りつぶされている気もするが……野暮(やぼ)

 

「因みに他者の魂を操作したりするのは閻魔の力だから気をつけて使うんだぞ」

 

「使っていいんだ……」

 

「必要ならな、力の使い方を学ぶっていうのも大事な仕事だ」

 

「わかりました」

 

「あと、二人の時はため口で頼む 娘が出来たみたいで嬉しいんだ」

 

「……閻魔様ならわかってると思いますけど、私元は成人男性ですよ? おっさんですよ?」

 

「気にするものか、私たちの尺度で言えばお前の前世も子供みたいなものだ 記憶があろうがなかろうが変わらない」

 

「……そうですか」

 

その後は当たりざわりない世間話なんかに花を咲かせていった。

部下相手には厳しい人のようだが、俺にとっては三人目の父親で間違いないのだろうし慣れないが慣れる努力はしていこう、まずは言葉遣いから変えていく、一度生まれ変わってからした事でもあるしきっと上手くいくはずだ

 

冥界にはまた何度も訪れるだろうが、その時は挨拶くらいはしに来よう

いろんな話をしていたらうちに時間が来た、今日は冥界最終日だしこの後一度ホテルヘルヘイムに戻らなければいけないのだ。

 

「では私はそろそろ帰るね、魔界でやる事いっぱいあるんだから」

 

「あぁ、いつでも……とはいかないが また来るといい、歓迎する 後、写真集はまた来るときにでも」

 

「はいはい、とびきりのやつを持ってきますよ ……それじゃ!」

 

「行ってらっしゃい、頑張れよ」

 

「……行ってきます!」

 

*1
デルキラの前の魔王




(種族的に)悪魔で(存在的に)霊な(前世が)元人間をよろしくお願いいたします。
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