悪魔で霊な元人間   作:P223

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日常回を書くのが一番楽しいので長くなりがち


73 星を見る悪魔(ひと)

 

「久々のソロキャン!」

 

終末日ももう少なくなってきたころ、ふと仕事の間が空いたので前世の趣味だったキャンプに行こうと思い立ったのだ

最近は皆とずっと遊んでいたり、修行したりなので一人でゆっくりとする時間を取ることも兼ねてのこれだ

色々あった分いっぱいリラックスする気概だ

 

「こんにちは」

 

「こんにちはー」

 

キャンプといえば山という事で今回はとある山に来ている

魔界の山は特殊な植物が生えてることもあり危ないのと安全なのがはっきりと分かれているがここは安全な方だ、ゆっくりしたいのでいつも見たいなはちゃめちゃなのは不要なのである

 

山の礼儀としてすれ違うのが誰であれ元気に挨拶は欠かせない

 

「こんにちは!!」

 

「はい、こんにちは 元気だねー」

 

このように小さな子もちらほらと見えるくらいにはここは初心者向けの場所だ

 

「こんにちは」

 

「あ、どうも」

 

今のは俺と同年代だな、眼鏡をかけていて少し大きくがっしりとしているが多分そうで……って

 

「ココくん!?」

 

「おっ? あぁ……レイラさんか」

 

すれ違ったのは俺と同じクラスのオロバス・ココだった

彼も趣味で来たのだろうか

 

「どうしたの、こんな所で」

 

「私の趣味は登山でな、今日は緩めに行こうと思ってここにしたんだ」

 

「へぇー、それでなんだ がっしりしてる理由が分かったかも」

 

「レイラさんもここには趣味で?」

 

「うん、私はキャンプだね、この山ってキャンプ場もあるからさ」

 

「それでその大荷物なのか、重くないのか?」

 

「うちの家系は重力魔術が得意だからねぇ、これくらいなら簡単よ」

 

「なるほど……」

 

実は今俺は結構な量の荷物を背負っている、テントとかは借りれるが他の物は持ち込んだ方が勝手が良いのでそうしている

前世なら車とかで運ぶ量だが魔術様様と言えよう

 

「そう言えば今から帰る感じ?」

 

「いや、飲み物を忘れたんで一度買いに戻るところだ」

 

「だったらこれあげるよ」

 

今日は寝泊まりする予定なので水くらいなら結構持ってきている、分けても余裕で足りるくらいだ

 

「あ、ありがとう……」

 

「新品ね」

 

「いや、そう言うわけじゃなくてな こういうのはあまりなかったんで驚いてしまった」

 

「そうなんだ」

 

そう言えばココはあまり他の悪魔(ひと)と話しているところをあまり見ない気もする、いつも頑張っているところは見るがそれが故か近寄りがたいイメージが付いてしまっているのかもしれない

 

また何か言われるかもしれないが折角の機会だ

 

「折角だし一緒にキャンプしない?」

 

「い、一緒に!?」

 

「寝床は別だけどね、一回ゆっくりと話してみたかったんだよねー 無理にとは言わないけどね」

 

「別に無理ではないが「よし決定!」 ……ああ」

 

よし、一人でチルは一旦なしだ

ココと二人で語るのは楽しそうだし俺のキャンプに巻き込ませてもらおう

 

「じゃ、登ろう!」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「やー、登ったねー」

 

「そうだな、たまにはこういう山もありだな」

 

「あ、ちょっと物足りない感じ? 趣味にしてるくらいだし普段はもっと大きいのとか険しいの行ってる感じ?」

 

「ここよりはもう少し険しいのが多いな」

 

ストイックだもんな、ココは

趣味もきつめが多いようだ、俺はきつめの登山は専門外なのでそちらで会うことはなさそうだ

 

「そう言えばココ君ってお肉とか好き?」

 

「人並みにだが好きだな」

 

「よっし、じゃあBBQ(バーベキュー)だ!」

 

この山のキャンプ場は火器が扱えるスペースも設けられており、機材もレンタル出来るのでソロバーベキューをするつもりだった。

二人になるが余裕をもって食材を持ってきているので大丈夫だったりする

 

「準備手伝ってくれる?」

 

「もちろんだ、食材代もだそう」

 

「そこは割り勘ね」

 

男女二人きりだと男側が出すって文化は悪魔でもなくはないが、俺は割り勘派である

嫌いな相手とかなら別だが、同じだけ払って遊んだほうが心情的にも楽しい

 

一人でもこういうのは慣れてるのですぐだが二人だと更に速い、ココは万能に器用なようでてきぱきと用意をしてくれた

 

「ココ君って何でも出来るよね、勉強も運動も魔術もだしこういうのもやれるもんだねー」

 

「そうでもないぞ」

 

「えー?」

 

なんか言ってるが用意も出来たので肉を焼き始めよう

 

ジュウジュウと良い音を立てて肉が焼き上がる

 

「はいどうぞ」

 

「ありがとう」

 

焼けたのをココに渡して俺も自分の分を確保する

 

「いただきます……うん!美味い!」

 

「これは中々いいな、準備がもう少し楽ならたまにやってもいいくらいだ」

 

「時間かかるし場所も限られるからねー、しょうがないね」

 

肉自体は高級なものではないのだが、場所補正もあってその辺の高級肉よりも美味い。

一人なら一人の良さがあるが、ご飯に関しては誰かと食べるご飯の方がやはり好きだ、魔界の食物庫(デビルズマーケット)で一通りそろえて正解だったかもしれない

 

「これ一回A組皆でやってもいいかもね」

 

「それはいいな、楽しそうだ」

 

なんだかんだ言ってココもノリがいいし話せる、皆に遠巻きにされているが仲介すればみんな仲良くできるだろう、今度やってみよう

 

さて、ご飯も食べ終わったのでテントを立てていく、普段なら魔具を使うのだが今回は手動である。

魔具は便利だがこうやって己の肉体で建てる楽しみというのもある、プラモデルみたいなものだ

 

「完成っと、慣れたもんだよね」

 

「手際が良いな、普段からやってるのか?」

 

「まぁね、他の趣味とか仕事とかもあるから中々時間取れないから偶に、一年に数回あるかどうかってくらいだけどね」

 

そう言うココもあっさりとテントを建てているので多分慣れているのだろう

 

やる事もやったので座って話す事にした

 

「でさ、終末日も終わるわけだけど次の学期は大変だよねー」

 

「ああそうだな、収穫祭に音楽祭と大きなイベントが二つもある」

 

「楽しみだけど頑張らないとなぁ、どっちも位階(ランク)査定に響くっしょ?」

 

「あぁ、出来ることなら高い成績を収めたいな」

 

そう言えばココに対してこんなうわさがあったので聞いてみるか

 

「ココくんって"2番信仰"って本当?」

 

"2番信仰"…宗教自体がそこまで多くはない魔界だがその中でも都市伝説のようなものだ、これを信仰している悪魔は二番というのに並々ならぬ執着心を持っており、何かにつけて二番を狙っていくらしい

かなり変わった宗教ではあるが本当にあるのであれば成り立ちなんかが気になるものだ

 

「……そんなわけないだろう」

 

「だよねー」

 

「大体いつも二番なのは私が未熟なだけでどうせなら一番を目指したいと思っているな」

 

「そりゃそうだ、私だって若王(じゃくおう)目指してるしね」

 

若王とは一年のイベントである収穫祭での優勝者である、収穫祭は個人戦でポイントを競い合うのだが、その最高得点を出した悪魔を若き魔王という意味を込めて若王と呼ばれている。

 

「いやぁ、入試だと私ココくんに負けてるからなぁ 今度は負けないよ?」

 

「ああ、私も負けるつもりは無い」

 

そうは言うのだが少し考え事でもあるのだろうか、微妙な顔だ

 

「なんかあるの?」

 

「そうだな、少し相談してもいいだろうか」

 

「いいよ」

 

学友の不安を取り除けるのであれば幾らでも聞こうじゃないか

 

「収穫祭で本気を出すのだが、少し不安な点があるんだ」

 

「不安な点?」

 

「家系能力の事だ……オロバスの家系能力は【幻燈(トラウマ)】と言って、相手のトラウマを引き起こすタイプの幻覚を見せる魔術だ」

 

「へぇ、結構強そうだね」

 

「だが、私はどうにもこの魔術が好きになれないんだ……この魔術は相手に危害しか加えられない」

 

なるほど、ココは優しすぎるのか

家系魔術は他の魔術と比べても特殊で魔力消費も軽く強力なものが多い。

だが、自分の好きな魔術がそうなるわけでなく、能力自体が自分の趣味嗜好からかけ離れていたり、むしろ自分のやりたいことの邪魔にしかならないものだってあるのだ

ココはそう言うパターンなのだろう、本気で他の悪魔(ひと)と競いたいがそれに家系魔術を使いたくないと……そういう事なんだろう

 

「じゃあ選択肢は二つだ」

 

「選択肢?」

 

「うん、一つは我慢して家系魔術を使う。嫌いかもしれないけどその能力だってココくんの力だ、上手い使い方があるかもしれない。」

 

「上手い使い方か……」

 

「もう一つは一切使わないで基本魔術をとことん鍛える、実はこれ近くに見本があるんだよ?」

 

「見本?」

 

「主席だよ、アスモデウス・アリスくんだ。 彼は今まで一度も家系魔術を使ってないの知ってた?一度そういう話をする機会があったんだけど、どうやら彼も自分の家系魔術に抵抗があるらしいんだよね」

 

「主席がか」

 

最初はあの炎の魔術がそうかと思ったのだが、あれは飽くまで基本の炎系魔術の派生だ、無口頭でアレンジしているから家系魔術のように見えるが実のところそうでもない。

俺も基本魔術のアレンジは好きでやって魔具に使っているので分かったが、それでも相当な精度だと思う。

 

「てなわけで、家系魔術がなくとも一番は狙えるわけです」

 

「そうなのか……そうか」

 

悩みが晴れたようで良かった、キャンプはこういう悩みをすっきりさせるのにも良い。

敵に塩を送るとも言うが、俺としては全力の敵に勝ってこそとも思うからな

収穫祭、とても楽しみだ

 

「あ、空見てよ」

 

「? ……おお」

 

自然豊かな山の中、話しているうちに暗くなった空には満点の星空が広がっていた。

一つ前世でやっていたことを思いだしたので久しぶりにやってみる

 

「私はもう負けないぞー!」

 

「急にどうした?」

 

星に願いを(ウィッシュ アポン アスター)って知ってる?」

 

「いや、知らないな」

 

「占星術の一つとも言えるのかもしれないおまじないなんだけどさ、星に願いを言ってその夢を大切にしようってやつ 自分に対する誓いみたいなものなんだよね」

 

前世のアニメや漫画である物だが、俺はこれが結構好きなんだ。

星に願いを告げるってロマンチックでいいじゃないか

 

「そういうのがあるんだな……よし」

 

それを聞いたオロバスが思いついたかのように立ち上がり、空を見上げた

 

「私は収穫祭で一番になる。苦手な家系魔術に頼らずとも誰よりも凄い最高の一番になってみせよう」

 

「……カッコいいじゃん、応援したいけど 私も負けないよ、誓ったようにね」

 

「あぁ望むところだ ……それにしても、星が綺麗だな」

 

「ちょっ……って知るわけないか、そうだね綺麗だね」

 

夏の夜空に広がる星が、応えるようにキラリと光ったような気がした。

誓いと共に夏は終わり、激動の秋が俺たちを待っている

 




終末日の話は後1~2話分くらいは書きます、収穫祭に入ると日常回が出来なくなるのでやりたいことは先にやるのです。
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