悪魔で霊な元人間   作:P223

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今作MVP魔術の話


79 クワルツ⭐︎クワルツ〜魔法の呪文〜

 

「にしてもバルバトスかぁ……」

 

俺が魔具研で収穫祭の準備をしようとしたら入間が師匠を連れてきた、その師匠の名はバルバトス・バチコ、バルバトス家の令嬢に違いない。

バルス家のロビン先生からの流れだろうが、フルフルに加えてこれとはあまりにも豪華すぎる布陣と言えよう。

 

予想はしていたが、三大英雄は皆癖が強いらしいので師匠なんて引き受けてくれるとは思わなかった。

しかし、武器を作るという事なのでその過程を見て俺も勉強するとしよう。

 

「んじゃ、とりあえずやるか」

 

そう言ってバチコは弓を取り出した、というより生成した?

見る限りでは核が無かったので純粋な魔力せいだろう、家系魔術だろうか

 

「あッチは家系能力で弓が出せるが、お前は違う」

「そうだな……おい、なんかいい素材はあるか?」

 

俺に話が振られたので使っていい素材を適当に見繕う事にした

 

「そうですね、何に使うかによるんですが」

 

「しなりがいいやつだな」

 

「じゃあこれとかどうです? 生ける樹(リビングウッド)の枝です」

 

「ん、じゃあ見とけよ……【クワルツ・クワルツ】」

 

バチッという音を立てながら枝が形を変えて大きな弓に変化した。

 

「今のって……」

 

「あ?見たことあったか? まぁとにかくお前はこの魔術で弓矢(ぶき)を作れ」

「まぁ【進化(クワルツ・クワルツ)】で核になる素材を"弓の形に成長させる"ってイメージがちけぇな」

 

「はい、わかります! レイラさんが良く使う魔術なので!」

 

「あん? そうかよ、じゃあお前見本を見せてやれ」

 

「はい?」

 

俺は俺で話を横目に見ながら作業の準備をしていたところにそう言われた。

まぁ【クワルツ・クワルツ】に関しては使いすぎて無口頭で使えるくらいにはなってるので魔力消費的にも問題はないか

 

「で、弓を作ればいいんですか?」

 

「あぁ」

 

「まぁじゃあとりあえずこの辺の金属で良いかな……【クワルツ・クワルツ】!」

 

無口頭で使える魔術は無口頭で使ったほうが細部の調整がきいて楽なんだが見本なのであえて口頭で使用する。

イメージは弓なので俺なりの弓を生成することにした

 

「出来ました」

 

「大したもんだがなんかごちゃごちゃしてんじゃねぇか、いるのか?この滑車とか」

 

「要りますよ、これは滑車を利用してより狙撃に特化したコンパウンドボウって言うちゃんとした弓ですよ?」

 

「普通のでいいんだよ普通ので……お前(入間)はこういうのはやめとけ、これは慣れてるから出来ることだしお前にはこういうのよりシンプルのがいい」

 

「あ、はい (ちょっとカッコいいなと思ったんだけどなぁ)」

 

「じゃあ次は(こち)が!!」

 

エリゴスもやりたいそうなのでスペースを譲る、彼も技術力だけはピカイチなのでちょっと気になるところがある。

 

「【クワルツ・クワルツ】!」

 

素材を何にしたのかは見えなかったが魔術は問題なく発動したようだ、光と共に素材は形を変え、大きくなっていき……

 

 

なぜかアメリさんのフィギュアになっていた

 

「「「……」」」「家宝!!」

 

「……まぁわかるように、【クワルツ・クワルツ】は()()()()魔力を込めたやつの性格が出んのさ、核にだって相性がある しっかり選べよ」

 

ちらっと俺の方を見るが、まぁそうだろう

自慢じゃないが……いや、()()()()俺くらいになると【クワルツ・クワルツ】を自由に操作が出来る、大まかな形だけでなく小さな部品や魔具の組み立てなんかもこの魔術でやっているが、実の所並大抵の練度では出来ないものなのだ。

俺はまだ元人間なのでこの年齢でやれるが飽きやすい悪魔たちなら相当な年月を要するし、そもそも普通はこの年齢では無口頭魔術自体使えない。

 

この魔術に関しては他の技術系悪魔たちを含めても大人込みで誰にも負けていない自負がある、成績の考査に含まれていないのが残念ではあるが

そんな事を考えながらも作業を再開しているとイルマも何度か試していたみたいだが上手くいかないようで怒られていた

素材は金剪(カナキリ)の長の羽を選んだようだ、俺は見たことないが相当に強い魔獣でありながらも確か飛行レースの時に入間が手懐けたとかで話題になったやつである、相性もよさそうで悪くない選択ではあるが、それだけで【クワルツ・クワルツ】を使いこなせるほどに甘い魔術ではない。

 

「チャンスは後一回だ」

 

「え、でもまだ羽根は残って……」

 

「戦場にもう一回はねぇ、次の学校行事"収穫祭"はサバイバル方式の実技試験……いわば戦だ 戦場においてチャンスをものにできない弓使いは生き残れねぇ」

「弓使いになりたきゃここぞで決めなきゃだめなんだよ」

 

魔界において弓使いはスナイパーのような役割を持っているようで、超遠距離からの狙撃を得意としている。

狙撃手はチャンスを見極めて一撃で決めなければ集中砲火によって排除されるので言っていることはわかる、だがまぁそれが出来るかは別なんだが。

 

「じゃ、あッチは買い物に行くわ、お前は弓作ってろ あと、お前らは荷物持ちな」

 

「承知!」

 

「え、私も?」

 

「当たり前だろぉが、行くぞ」

 

入間を一人にしてやりたいってのもあるので大人しく付いて行くが、俺も準備がしたい……

 

「おーいお師殿ー、いいんでござるか?」

 

「諦めんなら……早い方がいいんだよ……」

 

その表情はどこか諦めたような感情を感じる、きっとこれまでにも似たようなことがあって落胆して来たのだろう

これは噂程度の話なのだが、弓とは本来悪魔には使えない武器である。

剣や槍といった武器であれば振ること自体は簡単にできるので使う悪魔も多い、銃に関しても実は使う悪魔がいる。

しかし、己の肉体で制御し遠距離を狙う弓はそもそも真っすぐ飛ばす事すら難しく、相当な練習を要するのだ、飽き性な悪魔がそんな面倒な事をするはずもなく、元々才能があり家単位で技術を叩き込まれるバルバトス家くらいにしか使えない代物となっているらしい。

 

「ところでだ」

 

バチコの歩いている足が止まった

 

「お前、あれはなんだ?」

 

空気が変わる、射るような眼差しで俺を見ている

 

「あれって?」

 

「お前が出したコンパウンドボウってやつだよ」

 

「あれは面白いものでございましたな──」「黙れ

 

エリゴスの話も聞かずに俺に返答を求めている

 

「いや、普通に弓矢を出しただけですけど……」

 

「なわけあるか、少なくともあんな弓……あッチは見た事ねぇぞ、何処で知った?

 

「あ……」

 

しくじった、入間がいることで少し気が緩んでしまっていたのか

コンパウンドボウなんて武器は魔界には存在しない

それもそのはず、コンパウンドボウは人間が弓を強化するために作ったものであるが基本的には弓を使わない悪魔が作るわけがない代物なのだ

 

「それは……」

 

「話せねぇってことだな?」

 

「はい、すみません」

 

人間の情報がある俺の家の事を話せば何とかなりそうだが、これを話すと芋づる式に入間が人間だという事までバレる可能性が生まれてしまうかもしれない

それに、うちにコンパウンドボウの資料なんて無いのでそれがバレれば余計に面倒なことになりそうだ

 

「まぁいい、誰にだって秘密くらいはあるからな ……ところでお前は弓は使わねぇのか?あのへんな弓、変ではあるが出来は良かった、弓の事をちゃんと知らないと作れるはずがねぇ」

 

「弓ですか……」

 

実は俺は弓という武器が好きだったりする、前世でやったFPSとかでも弓があるととりあえず使っていたほどだ。

ただ、俺には致命的な弱点があるのだ

 

「私、その……肉体を利用して物を飛ばしたりするのがとんでもなく下手くそでして……」

 

銃や魔術を撃つのは割と得意なんだが、こればっかりは前世からの苦手分野である、ハンドボール投げの記録はマイナス13mだ

処刑玉砲の時だって何とか【磁力付与(マグネッツ)】を利用して即席の発射台を作れなければとんでもない低評価だっただろうと思う

 

「チッ……まぁいい 邪魔はすんじゃねぇぞ」

 

「はい」

 

もし、俺が弓を使うことが出来たのならこの悪魔(ひと)と一緒に切磋琢磨していい弓使いになれたんだろうか……それともそれでも大鎌を使い続けたのだろうか

 

「話はこんだけだ、さっさと買い物して戻るぞ」

 

「わかりました」

 

その後、俺達が買い物をしたタイミングでモモノキ先生から時間が出来たとの連絡が来てそのまま俺は特別授業に向かうことになった

結局入間がどうなったのかを知ることは出来ないが、きっと彼ならいい弓使いになれるだろう……答え合わせは収穫祭当日だ。

 




因みにクワルツ・クワルツは"進化"と書きますが基本的にはカタカナの方がわかりやすいのでそうしてます
魔主役の作中で使われたこれが汎用性抜群だったので便利に使わせてもらってます、サンキュー魔主役!
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