悪魔で霊な元人間   作:P223

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9 花を咲かせろクワンックワンッ!

 

「ふわぁ~」

 

「眠そうだねレイラ」

 

「まぁね、昨日ちょっと夜更かししちゃってさー」

 

「あらまぁ」

 

「ところでエイコは?」

 

「なんか用事あるとかで先に行ったよ」

 

「ほえー」

 

飛行レースも全クラス終わりその翌日、俺たちは今日もいつも通りの日常を送っている。

 

「そういえば聞いた?イルマくんの話」

 

「知らないけど何かあったの?」

 

イルマくん、今度は何をやらかしたのか

 

「飛行レースを金剪(かなきり)の長に乗ってクリアしたらしいよ」

 

「マジ?」

 

「マジマジ その後も暴れまくったんだってね」

 

「デビヤバじゃん」

 

正直人間(仮)のイルマくんが飛行レースをどうクリアするのかは気になっていたのだが、金剪(かなきり)の長て……

 

面白いなぁほんと彼は

 

「レイラってイルマくんの事お気に入りだよね、話してる時楽しそうだし」

 

「まぁね、恋愛的なのはエイコに任せるけど興味があるのは確かよ」

 

そんな雑談をしている時だった。

 

「入間様のおなーりー!!」

 

俺の前を赤いカーペットが伸びていく、その根元には件の少年。 イルマだった。

 

「お、ド派手な登場だ」

 

「ああ……うん」

 

「あれ?レイラこういうの好きじゃなかったっけ?」

 

「好きは好きなんだけどね……ほら、入学式の時におとさまがさ」

 

「あー…」

 

そう、入学式の時にあそこを渡る側を体験している俺は現在共感性羞恥に苛まれているのである。

あそこにサリバン様がいるので皆が注目……っと上手いな、ミスディレクションだろうかイルマくんがすらりと校内へ向かって逃げて行った

 

「入間様! 流石です! 素晴らしい登校でした!!」

 

首席のアスモデウスだ、彼ってほんとイルマくんの前では性格が変わるようで、あの感じならエイコも怖がらずに済むんだろうが……そうはならないだろうな

 

「ドーン!!」

 

巻き寿司みたいになってる子が首席にぶつかっていった…あの子は確かイルマくんと同じ問題児クラスの子だったっけ?

名前はウァラク・クララさんだったはず。元気いっぱい花丸印って感じの子だな、一緒に居るとこっちも元気がもらえるタイプの子だね。

多分まだ友達だろうが、距離が近い女子は手強いぞエイコよ

 

「イルマさんの気配!!」

 

シュバッっと登場したのは我らが親友エイコである。

 

「おはようエイコ、用事は終わったの?」

 

「ばっちり!それで、イルマさんは!?」

 

「そこに……ってもういないや」

 

「うそぉー!また話せなかったー!!」

 

毎回間の悪いことで残念だね

 

「ほら、授業行くよ」

 

「わ、ガーコ引っ張らないでって、歩けるから」

 

「はは、行こっか」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「この年には魔王デルキラ様が……」

 

今日の授業は魔歴からはじまる、つまりはダリ先生の授業だ。

魔歴はちょっと苦手ではある、人間界の歴史とごちゃごちゃになって変な事書くとまずいのでね

 

「この後の授業なんだったっけ?」

 

「エイコ、授業に集中しないと成績落とすよ? ……確か魔術授業で植物塔に行くはずだよ」

 

「植物かー、あんまり詳しくな……」

 

ドッゴオォォォ!!!

 

轟音、そして大きな揺れがあった。

 

「ッ! 何?」

 

「何かあったのかな?」

 

ダリ先生が音があったほうの窓を覗く

 

「あれは? 植物塔で何かあったのかな、ちょっとみんな待ってて。確認してくるから」

 

そう言ってダリ先生は携帯を片手に教室を出ていった。

植物塔か、今は俺たちの前のクラスの授業中だったと思うんだがどこだっただろうか

 

「なんだ?」「何かあったのか?」「すげぇ音だったな」

 

皆思い思いにざわついている時だった

外から別のクラスの生徒が入って来る

 

「大変だ!! 特待生が授業でピンクのなんかふわふわしたものを生み出したぞ!!」

 

ピンクのフワフワ?

 

「ちょっと見てみよ!」

 

そう言って窓の方へ二人を連れて向かう。

そのフワフワはあまりの大きさからすぐにわかった。

 

「へぇ、これが……」

 

え、これって

 

「さくっ……」

 

思わず口を手で塞いだ。

これは間違いなく()()()()()()()()()()()()であった。

 

「綺麗だねー、あんなの出せるなんてイルマさんってやっぱりすご……レイラ?大丈夫!?」

 

「え?どうかした」

 

エイコが心配そうな顔でこちらを見ている、それをガーコが補足してくれる

 

「レイラ、あんた泣いてるわよ」

 

「……え?」

 

手を頬に当てると手が濡れていた。

どうやら俺は無意識に泣いてしまっていたようだ。

 

「あれ? おっかしいな……止まんないや」

 

拭いても拭いても涙が止まらない、理由はわかるが止めようがないだろう。

 

「大丈夫?教室戻る?」

 

「いや大丈夫 もっと見ていたいから」

 

ああ、もう見られないと思っていた。

この魔界に来てから長い時間、本当に永い時間が経った。

 

かつて俺は日本に住んでいた。

旅をするのも好きで色んな場所に赴いたものだ。

各地を旅して色んなものをみて色んな事を感じてきた。

 

そんな日本にはもう帰れない。

人間界に渡る手段がない訳じゃないが悪魔であるこの身で人間界には行けるものではないのだ

それは前世で感じてきた感動をまた味わうことが出来ないという事でもある。

二度と人間界の者が見られないと思っていたのに現れたのがこのだ。

 

春の旅にて見た桜、その感動が蘇る。

懐かしさと二度と見られないと思っていたものをまた見れたという実感など色んなものが混ざり合って涙があふれたのだ。

 

今は、今だけは邪魔されず見ていたい。

ただただあの桜に見入っていたのだった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「ふぃっ いろいろ気になるかもしれませんが授業ですよぉ」

 

あの後、騒ぎになったのもあったが授業は中止…とはならず何故か普通に行われた。

その授業も終わり、本日2つ目の授業である魔術授業となった

この授業は元々植物塔だったのだが、あの桜が邪魔なのと他の教師陣が調査を行っているなどで使用できなくなったため青空授業となった。

 

「今日の魔術はこちらでぇす この特殊な苗に手をかざして【クワンックワンッ】!」

 

「ふぃっ 花が咲きましたぁ」

 

スージー先生が苗に魔術を使うと苗に花が生えた顔が付いた花のようでどこか先生に似ているものだった。

 

「かわいー! こういう魔術ならいくらでも覚えたいよね!」

 

「まぁね、上手く使えば貴重な植物とかも産み出せそうだし利便性も高いかも」

 

「さっきまでフワフワに感動して泣いてた子のセリフかってくらい現実的な考えね」

 

「う、うるさいなガーコは! 私にだって花を愛でる気持ちくらいあるやい! ただ、他にも使えそうだなって思っただけだし!」

 

あんなの誰だって泣くだろう、2度と見られないと思ってたものが見られたんだから

イルマくんには感謝しかない、今後彼が何か困っていたら勝手に力になろうとは思う

 

そうしているうちにそれぞれに苗が渡された

 

「これに使うんだよね」

 

「よし、私やってみる!【クワンックワンッ】!」

 

エイコが苗に魔術をかけるとみるみるうちにかわいらしい小さな花が生えてきた、中心にはニッコリ笑顔でそんなところまでかわいらしくなっている

 

「いいね、可愛いじゃん」

 

「やった! ちゃんとかわいいのが出来た!」

 

エイコも素直に喜んでていいことだ、ガーコも少しカッコよさげな爬虫類っぽい花を咲かせていたし俺もさっさとやってみることにした。

 

「【クワンックワンッ】!」

 

ひょろり

 

「……これは?」

 

なんだろうか、なんかつるのような微妙なひょろひょろとしたものが生み出されてしまった。

 

「レイラ、それ何?」

 

「さ…さぁ?」

 

何というか、花とは言いづらい微妙なものだ。

これが何なのかわからないので先生に聞いてみることにした。

 

「スージー先生、ちょっといいですか?」

 

「ふぃっ なんですかぁ?」

 

「魔術を試したんですけどこんな感じになっちゃって……」

 

そう言って俺の苗を先生に見せた、先生はすぐに納得したような顔をしてこう答えた。

 

「あぁ、これですかぁ 単純に失敗ですねぇ」

 

「えっ? 失敗?」

 

「はい、失敗です。 これはですねぇ、完成形が上手くイメージできなかったときになることがあるものですねぇ といってもふわっとしたイメージでも意外と出来たりするので本当にイメージが全く決まってなかったんじゃないですかぁ?」

 

そう言われてみればどういう花を咲かせるかのイメージが出来ていなかった。

魔術はイメージとは基本であり本質だ、それをおろそかにしていてはこうなるのも当然の事だろう。

 

 

「なるほど…もう少しよく考えてからまた試してみます。」

 

「はぁい 頑張ってくださいねぇ」

 

先生に礼を言って、苗をリセットしてもらった。

どんな花を咲かせるかを考えようとしたところでガーコが話しかけてきた。

 

「珍しいわね、レイラが失敗するなんて」

 

「ガーコ」

 

「こんなの適当でいいと思うんだけど、レイラはどんな花を咲かせたいの?」

 

「先生にもそれが決まってないって言われたんだよね……どうしたもんかと」

 

「レイラって芸術苦手だっけ?」

 

「いや?そうでもないよ 絵も歌も人並みには出来るつもりだし、魔具のデザインなんかは自分でしてるしね」

 

「それでもパッと決まるもんじゃない…と?」

 

「まぁね、魔具とかなら簡単なんだけどねー」

 

そう、魔具はまずどういう機能を持ったものを作るかを考えてから作成するためある程度の形は先に出来上がるのだ。

それに加えて見た目が良くなるようにデザインを加えていくので、案外難しいものではない。割とパクるし、そもそも慣れているのが一番ある。

 

ただ、花のデザインなんてさっぱりなのだ、花を使ったデザインならまだしも。

なんだかんだ言って俺も凡人、初めての事では当然手間取るものなのだ……という言い訳を内心でしている。

 

「思いつかないー」

 

「ものづくりをしている分変に難しく考えすぎちゃってんのかもね」

 

「そうかな?」

 

「そうだよ、だったらあれを生やしてみたら?」

 

「あれ?」

 

「うん、あれ」

 

そう言ってガーコは上へ指さした。

そこにはイルマ君が生やしたという桜の木。

ガーコはこれを生やせと言っているのだろうか

 

「無理でしょ、こんなの生やすの私の魔力じゃ全然足りなさそうだよ?」

 

「違う違う、あの木っていっぱい花が付いてるでしょ? そのうちの一つだってこと」

 

なるほど、それなら可能かもしれない。

桜の木ではなく花。

それ単体の新たな花ってことなら興味もあるし

 

「それいただき、やってみる」

 

そして、改めて苗に向かってイメージをする。

生やすのは桜の花。 ピンク色でふんわりとした優しい始まりの花だ

 

「【クワンックワンッ】!!」

 

カッ!!

 

一瞬眩い光が放たれて魔術が発動する。

こんな効果は無かったようなとも思いつつも苗の変化を確認した。

 

そこにはちゃんと花が生えていた、先ほどのつるの様にひょろりとしたものでもなくちゃんとした花だ。

 

ただ、その花の色は()()()()()()()()()

 

「あー、どんまい?」

 

ガーコが思っていたのとは違う花だったので慰めてくれるが、俺はそこまで残念には考えていなかった。

 

「ふふっ」

 

確かにこの花は俺に合っている。

そしてこの花は桜と同じく人間界に咲く花だ

 

その花の名前は彼岸花。

真っ赤な血のような色の花であり、死を連想させる花とも言われている。

一度死んで生まれ変わった俺にふさわしい花とも言えるだろう。

 

ただ、この彼岸花は赤でもない。

 

この彼岸花は白い彼岸花なのだ。

前世で見たことがあるか、そこまでは覚えていないがこの花にも懐かしさを感じる。

 

「これ、私に似合うかな?」

 

「似合うんじゃない?」

 

「そっか、じゃあ大事にしないとね」

 

何であれ必ずしも悪い花という事もないのだ、きっとこの花は俺にとって大切な思い出となるのだろう

 

 

そういえば、彼岸花には「再会」を意味する花言葉があるのだが白い彼岸花はどうだったか……

もしや近いうちに懐かしい人物に会ったりするのだろうか?

 

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