沈んでいく、沈んでいく、緩やかな水の底へと沈む
(僕はどうなって……?)
リードは暗い闇の中で穏やかな浮遊感に包まれて微睡んでいた。
「リード」
(誰……?)
誰かが呼んでいる、それだけはわかった
「リード」
(声が近づいてくる……)
透き通るようなきれいな声だった
その声を聴いているとどこか安心する
「リード」
(光……?)
闇の先から光が近づいて来る
「リード」
(僕の事を呼んでいる? 誰?)
あの青い髪が良く見える距離まで来た
「リード」
(誰なの? 僕と知り合いの誰か……?)
そしてついに手の届くほどの距離まで近づいたそして顔が見えた
「リード、起きて」
(……いやマジで誰???)
リード共に急激に意識が覚醒していく
(君は誰なの?)
「私はウィル、ここに囚われた幽霊よ」
(囚われた……?)
「えぇ、自分からとも言えるのだけどね」
(どういうこと?)
「契約したのよ、魔王様とね。」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
そこからリードにウィルが事情を話していった
曰くウィルは元々少し特殊な事情のある悪魔だった。
魔界の社会とは少し離れた部分で関わる家業を行っており家系能力も危険な為、他の悪魔たちからものけ者にされていつも一人でいたそうだ。
仲間なんていらないと思っていたウィルはその事自体はそこまで嫌なわけではなかったのだが、ある時魔王になる前のデルキラと遭遇。
ウィルの話を聞いたデルキラはたった一言こういった。
「誰かと遊んだほうが楽しくね? 誰とも遊べないんだったら俺が遊び相手になってやるよ」
たったそれだけ、普通の言葉であった。
ただその言葉はウィルが一度も聞いたことが無く、ずっと聞きたかった言葉でもあったのだ。
そうしてウィルとデルキラは仲間同士となった。
月日は流れ、デルキラが魔王になった後、墓守をしていた彼女の元にデルキラが来てこういった。
「次の世代の為に種を残す、魔神達にも手伝わせるが、お前にも手伝って欲しいんだ。」
それはお願いだった、命令でもなく純粋な仲間への頼み。
ウィルはそれを快諾した、しかし家業もあったので次の世代になるまで待ってほしいとデルキラに言った。
ウィルは家業を次の家主に受け継いだ後、デルキラとの約束の為、この遺跡に配属されたのだ。
その仕事はただ一つ、魔神を楽しませて退屈させない事。
しかし、普通の悪魔には不可能な事だ、悪魔も寿命は長いとはいえ、魔神程ではないし魔王や三傑と違って一般悪魔程度の力しかないウィルではずっとここには居られない。
最も、普通の方法を使えばの話だが。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「というわけで、私は幽霊になったのよ」
(思い切りよすぎない!?)
「そうかしら? でもこうでもしないと年とって死んじゃうからなー 私もう千年以上も生きてるしね……あ、死んでたか!」
(ブラックジョーク……)
困惑するリードをよそに、ウィルは何でもないようにそう言った。
「でもね、私も最近はここに居るのもやだなって思ってたのよ」
(そうなの?)
「そうなの! だって、デルキラがいなくなったでしょ? 私心配で心配で……」
(だったら出ればいいじゃん)
「無理なのよね、契約しちゃったからさ レジェンドリーフが完成するまではココに居るってね」
悪魔の契約。
人間同士でも行われる契約と言う物があるが、悪魔の場合は少し意味合いが変わってくるのだ。
悪魔は契約を重んじる生物であり、双方が納得した状態で行われた契約には悪魔を縛り付ける効果が発生する。
その契約をしたら最後、完遂するまでは完全な自由という物は無くなるのだ。
「ってわけで、私はここから出ようにも出られないの デルキラの魂もどこにあるかわからないし、どうしようかなって感じ」
(レジェンドリーフ……あ!! 今、試練の最中じゃん!)
「やっと思い出したか、お寝坊さんめ ほら、きみの仲間が呼んでるよ 早くいってあげて? 私はこうやって試練中に気絶した
(うん、わかった レイラちゃんも待ってるし、速く目を覚まさないと!)
そこまで言ってリードが目を覚まそうとする、その前に一度だけ振り返って口を開いた
「大丈夫だよ、僕と入間君でレジェンドリーフを咲かせるから」
「……ありがとうリード」
(僕も一人で遊ぶ寂しさは知ってるからね。 そしてみんなと遊ぶ楽しさも)
★★★★★★★★★★★★★
リードが溺れているのを助けに行こうとフックの刺し替えを行おうとしていた時だった。
「ごぽっ!」
「ごぽぽっ!(リード君!)」
アウトライン直前でリードが意識を取り戻した、動かないが故にゆっくりと沈んでいたが
単純に既に30秒は経っている、呼吸を止めるのにも限界があるので早く青い床まで行ってほしい
「ごぽっ!ごぽぽっ!(リード君!青い床に行って!)」
「ごぽっ!(わかった!)」
なんか伝わった気がする。
視界自体は暗くないので行けるだろうし、もう少しの辛抱だ
そうしているうちにリードが青い床にたどり着いたので一安心だ。
そして5秒。
「「ぷはぁっ!!!」」
「はぁっ……!はぁっ……!!」
「はぁ……、ごめんレイラちゃん 油断した!」
「お互い様、でも桃色は魅了ってことだね かなり危険だ」
というわけで帽子からいくつかの薬品を取り出して近くの障害物の壁に金槌で簡易的な台を作成して撃ち込んでいく、いつもならこういう作業は筋力強化をするのだがそれも出来そうにないので面倒だ。
二周期分、黄と紫を経由したが何とか完成、リードとの距離も10mくらいまで縮まったがこれ以上待ってはいられない
因みに紫は重力発生、横方向に緩やかな重力がかかって耐えないと落ちる仕組みだった、青でかなり体力が削られた後だったので結構きつかった
「リード君、ここに体力回復薬と着付け薬を置いておくからとっていって! 桃色の時に使って!」
「準備いいね!? ありがとう!」
『緑』
ここで緑か、残りは大体90mで高さは十分
ならばやってやろう
「じゃあリード君、先に行かせてもらうね、リード君は気絶していたから聞こえてなかったと思うから言っとくけど、床が消えている間は経っている時間が5秒経ったら復活だから休憩してて!」
「レイラちゃん?」
そう言って俺は
そして十分な高度にたどり着いた時に帽子からとある魔物の皮膜を取り出した
取り出したものを広げて空気を掴む素材用の物だが大きさは十分なのでこのまま滑空していく、簡易的なパラシュートだが90mなら計算上たどり着ける。
そして今は緑、緑の罠は後だしでの拘束の為これを行うのにうってつけなのだ。
「到着、そしてはい」
『ボタン押下を確認 ガイスト・レイラ クリア』
ボタンを押してクリア。
俺はこれで160枚は確定したが、リードは残り100m頑張るしかない
出来る限り空中で時間を稼いだが、後は彼次第だ
★★★★★★★★★★★★★
(レイラちゃんってやっぱり凄いなぁ、どれだけ準備して来たんだろう)
リードはレイラの残した薬を回収しつつ進んでいく、罠は全て把握出来たので慎重に進みたいのだが
(さっきの気絶の間に進んだんだろうなぁ、後ろ真っ黒だ)
もう数m後ろは既に黒に浸食されている。
急ぐしかない
「よし、行くよ!」
一気に駆け抜ける、青、桃、赤と続けてくるがどれも既に攻略済みだ。
10m、20m、30mと進んでいく。
そして50mにたどり着いた時だった
「嘘でしょ……」
リードの進む先に、見える光景
それは7色の床に加えて進行方向にも黒がある。
しかもその黒の割合が多いのだ
「でもいけるはず!」
『空』
「リード君!それは──」
とにかく駆け抜ける、そして消える直前に空色の上に乗った、その瞬間タイルが消えた
「──えっ」
地面に止まれずそのまま落下していく
何とか羽を広げて床に戻るが、その床を見ると凍っていた。
「忘れてた……!」
空色の罠はまだ確認していなかったのだ、ここまで一度も行われなかったので完全に油断していたのだった。
残り飛行回数は1回だけ。
残り距離は50m、障害物の壁はもうない。
しかしそこでリードは気が付いた、
「……よし、一気に決めよう」
タイルが再出現、それと同時にリードは全力疾走し始めた
残り50mをこの一回で走り切る、そう決めて。
10m、邪魔な壁を避けながら進む
20m、更に駆け抜ける
『赤』
ここで宣言が来た、次にタイルが消えるまで後2秒程度、悪魔の脚力でも足りるとは思えないほどだ
35m地点、そこで時間が来た、床が消える
「っ!!」
そのままジャンプし、羽を広げる
後少し、15mを飛びきるだけ、しかしいつ火柱が来るかわからない。
ここ一番での一か八かの大勝負。しかし、彼はギャンブラーだ。
「いっけええええええええええええ!!!!!!」
運はいつも、最後まで自分を信じる者に味方する。
リードが白い床に到達したと同時に火柱が燃え上がった。
「へへ、どんなもんだい」
『ボタン押下を確認 シャックス・リード クリア』
終わりの鉢の回想シーンの内容はこんな感じだったんじゃないかな!って思ってます。
終わりの鉢の試練が結構長くなりましたが、これで終わりです。