「伝説の魔ーメン?」
「そう! 聞いたことある?」
収穫祭も終わって音楽祭のシーズンまで少しあるこの頃、入間がそんなことを言い出した。
「そもそも食べ物に伝説とかあるの? 魔ーメンだって普通にその辺に店あるじゃん」
因みに魔ーメンは単純に魔界の食材を使ったラーメンである、人間界のそれとはまた違う味わいでいろんな味が楽しめるので俺としてはかなり好きだ
もっとも、カロリーは高いし健康にいいわけじゃないのでそこまで頻繁に食べたりはしないけど
「確かに普通の店の魔ーメンも美味しいけど、その伝説の魔ーメンは特別らしいんだ!」
入間は興奮気味にそう続けた、付き合っていくうちにわかったことでもあるが入間は意外と推しが強い、今日はその中でもさらに強い気がする
「それで何でそれを私に? いつもの2人と行けばいいじゃん、遠いならサリバン様に頼めば連れて行ってくれるんじゃない?」
「それはそうなんだけど、これはレイラさんじゃないとダメなんだ」
このワードだけ切り抜くとちょっとしたときめきワードに聞こえてくる、こういうところがモテる秘訣なのかもしれない
「私じゃないと? どういう事?」
「このチラシを見てくれる?」
「チラシあるんだ」
"伝説の魔ーメンを食べよう! 期間限定で伝説の魔ーメンが食べられるかも!?いくつもの試練を乗り越えて、伝説の魔ーメンが食べられるキャンペーン実施中!"
と、まぁ要約するとこんな感じのチラシだった
伝説とはいうものの普通にキャンペーンになる類なのは少し驚きだ
「なんか魔ーメンを食べるのにはちょっと手間があるけどこれなら別に私じゃなくてもよくない?」
「ここが問題なんだ」
そう言って入間が指差した部分に答えがあった。
"魔術禁止、試練を乗り越えた上位2名のみ食事権が得られます"
「なんというか、魔界ならではというか……」
「仕方ないんだ!伝説魔ーメンにはそれぞれ伝説級の食材が使われてるんだよ、おじいちゃんでもそう簡単には手に入らない食材ばかりで今回は奇跡的に集まったらしいんだよね、このイベントも"食王"ベヘモルト様の主催するイベントだから特別なんだ!」
まぁ、理由はわかった
入間の親友や家族はそれぞれ2人いるので全員で行くと1人食べれなくなってしまうということか
次いで魔術禁止という文言、これがある限りある程度動ける人員が制限される、魔術をメインで行動する悪魔はなかなか誘いづらいのだろう
「とりあえず訳はわかった、この魔術禁止って魔具は含まれるのかどうかだよね、私魔術も魔具もなしだと結構弱いからさ 見せたほうが早いよね、【解除】」
髪飾り魔具を操作して音声認証で重量制御を解除した、普段感じてる重みがなくなって今にもふき飛んでいってしまいそうになる
「ちょっと手を握っててくれる? このままだと私どこかに吹き飛ばされるからさ」
「あ、そっか レイラさんってかなり軽いんだったね、普段はその髪飾りで制御してるんだっけ? アガレスくんもそうだけど不思議だよね」
「そうだよ、そういう種族ってのが一番近いかな」
因みにアガレスは10kg程度だったはずだが、俺は21gであるので俺の方が軽かったりする
「とにかく、この体質のせいもあって魔術と魔具抜きだとちょっとキツイかも? ……まぁ対策はなくもないけどさ」
「対策……?」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
日は変わってチラシに書かれていた当日、入間の家の前に俺は来ていた
「相変わらずでっかいなぁ」
三傑サリバン公の家でもある入間の屋敷はウチの屋敷と比べても何倍か大きい
その割にはSDはオペラさん1人というのだから恐ろしいものだ、魔術はあるとはいえ掃除とか大変だろう
「お待たせ!レイラさ……ん?」
「よっ」
屋敷から出てきた入間は俺を見た途端固まった
無理もない、今の俺はいつもの俺とは程遠い見た目となっていた
ブラウンのキャップで長い髪を隠し、上も合わせて少し大きめのブラウンのジャケットに白いシャツ、下は暗めのデニムを履いている
それだけでなくメイクもいつもと雰囲気を変えており、胸も少し潰しているので今の俺は少年のような見た目となっているのだ
「今日は結構離れるだろ? だからたまにはこういうのもいいかなってさ」
「……か、かぁっこいいー!!」
「そうストレートに褒められるとちょっと照れるな……」
「流石モデビル! 男装してもこんなに映えるしそのバイクもよく似合ってる!」
ほめ殺しか?
そういうのはエイコとかにするといい、俺は攻略不可キャラクターだぞと
入間が言ったように今回はバイクも用意している、チラシに書かれていた場所が結構遠いのでサリバン公が車を用意来てくれると言っていたのだがそれを断って、俺が責任持って送り迎えすると約束した
まぁ入間もサリバン公をタクシーがわりにするのには抵抗があったようだし、いいだろう
「じゃあ入間を借りて行きます、夕方までには戻ってきます」
「入間様をよろしくお願いします」
「楽しんできてね〜!」
「うん! おじいちゃん、オペラさん 行ってきます!」
こうしてみるとやはり家族だな
ほっこりしつつも入間にヘルメットを渡して後ろに乗せてバイクを走らせ始めた
「魔界のバイク初めて乗ったけど、やっぱりカッコいいね!」
「まぁな、入間は人間界で乗ったことは無いのか? ……ってある訳ないか、年齢的に中学生だもんな」
「うん、漁船ならあるんだけど……」
「それはそれでおかしいと思う」
漁船は中学生で乗るようなものではないだろう、精々親が漁師なら乗るかどうかってレベルだ
「ところでレイラさん聞いてもいい?」
「おん?」
「今日の口調いつもと違わない?」
「あー、それな 折角誰も知らない場所に行くんだし今日くらいは男として行動しようかなって思ってな」
「なるほど……! いいと思う!」
「サンキュー、というわけで今日はいつもの美人で可愛いレイラちゃんじゃなくてそうだなぁ……まぁレイでいいか、俺の事はレイでよろしく」
「うん!了解!」
こういう風に男として他人と出かける事はなかったので、結構嬉しかったりもする
俺が元男と知っているのは入間以外だと家族とサリバン公とオペラさんくらいだし、エイコ達ですら知らない事である
あの2人なら受け入れてくれるだろうけど、男のノリに付き合わせるのは流石に悪い、というわけで今回はちょうどいいタイミングだったのだ。
「入間って機械いじりは結構得意って言ってたよな?」
「うん、ジャンク品を直して使うとかをよくしてたし、仕事でもあると便利だったから」
「魔具も結構作るの上手くなってきたし、そろそろコンテストとか出てみるか?」
「コンテスト?」
「おう、人間界でいうロボコン的なやつ 知ってる?」
「ロボットコンテストだよね、知ってるよ 魔界にもあるんだ」
「人間界のやつよりド派手ですごいぞー、魔界の魔具コンは 俺も大概色々作ったりしてるけど、俺以上にすごい奴がいっぱいいるしそれぞれのこだわりでとんでもない魔具も見れたりするからな、出ないにしろ見に行くのはアリだと思うぞ、魔具研の活動にもなるし他のメンバーも誘ってさ」
「へぇ! それは行きたいかも!アズくんとクララにエリゴス先輩も誘ってみんなで行こう!」
「よし来た、時期的には音楽祭の後になるから他のことに影響はないと思うぞ、エリゴスはまぁ勝手に行きそうだけど誘ってみるか」
因みに魔具コンはちゃんとした行事なので、上位入賞者は位階の上昇などが狙えたりもする、なにも学校行事だけが位階上昇の場所ではない、こういう方向で成績を稼ぐのも一つの手なのだ
「よっと、ついたぞ」
「ありがとう」
会場に到着したので、バイクを駐車場に停めた
この場所の名前は[
魔界中の食材が集まる超巨大施設だ、そこでは魔界の高級食材を日夜、金と暴力で競り合っているのだがそこが目的地……ではなくその隣である
「今日はいい豚が入ってるらしいぞ!」
「マジかよ!絶対落とそうぜ!」
とか何とかそんな話を横目に俺と入間は伝説の魔ーメンの試練があるという会場に入って行った、あちらはあちら、こちらはこちらである
……屋敷で見送ってくれたはずのオペラさんらしき悪魔が食物庫に入って行ったのは気のせいという事にしておこう
思ったより長くなりそうなので分けます