吾輩は猫である。名前はない。
何とも言えない蒸し暑い日だ。
吾輩はこのような蒸し暑い日は嫌いだ。こうも蒸し暑いと、さすがの吾輩でも散歩をする気が起きなくなるというものだ。
それに吾輩の住処にいる魔物もうるさいのである。こうも蒸し暑いのに物を売ったり、あっちこっち行ったり凄く忙しない様子で働いてる。栄えていると言えば結構なことなのだが、吾輩が寝れなくなるのは正直困る。
そろそろ起き上がるとしよう。吾輩はそう思い立ち体を上げた。
前足を前に出して伸びをする。
「今日もこの街は平和そのものであるな」
さすがの吾輩でも争いの耐えない街には住みたくないものだ。
のそのそと歩き出す。
歩いている最中、牙の生えた魔族の子供ににゃーと挨拶をする。しかし、吾輩の思い届かずそのまま走り去ってしまった。まぁ言葉が通じないからしょうがないと言えばしょうがないが、何も反応がないのはいささか心にくるものがあるものだ。
話は変わるが、吾輩はこの世界に来たばかりなのである。
何やらいせかいてんせい?なるものをしたそうなのだが、そんなことはもはやどうでもいい。吾輩は吾輩のやりたいように生きるからな。
雑多な街には様々なものが売ってある。この街では特に飲食店が多い。まぁ吾輩は猫であるゆえほとんどのものが食べれないのであまり気にしないが、食べた人間や魔物が満足そうな顔で店を後にするものだから、最近気になって来たものだ。
近頃は戦争などもないし平和な日が続いていて皆も幸せそうな顔をしている。吾輩は知らぬが、吾輩がこの世界に来る前は何やら羽の生えたやつとこの街の魔族が戦っていたそうだ。まぁ吾輩にとっては関係の無い話だが。しかし、この街の道はしっかりと舗装されていて歩きやすいな。何と良い仕事をしたものだあの牙の生えた魔族は。
歩いているうちにいつもの店に着いたのである。
ここは吾輩の行きつけの魚屋である。ここの店主は吾輩に餌をくれる良い奴なのである。
「また来たのか、今日も余りもんだが持っていきな!」
今日もくれたのである。やはりあそこの店の魔族は良い奴である。
「見て!リムル様だわ!」
何やら街の魔族たちが一際騒がしくなりだしだと思ったらこの街の主が来たそうだ。
吾輩は1匹で気ままに生きるのが好きだから群れを形成する良さのが分からないからな、あの者とは相容れないと思うが、まぁ良い奴なのだろう。
どちらにせよ吾輩には関係の無い話だ。
「ん?あんな猫魔国連邦《テンペスト》にいたかな?」
しばらく歩いているとようやく吾輩の愛用のベンチに到着した。ここはたまにうるさいやつが来るが、基本この街にしては静かなので吾輩のお気に入りのスポットの一つである。
「またいるっすねこの猫」
今日は静かに過ごせそうなのだ。
「お前もよく飽きないっすね」
そう言って緑色の肌をした少年が撫でる。
これがまた以外に優しく撫でてくれるから思わずゴロゴロと喉を鳴らしてしまう。
「おっ!喉を鳴らしてるってことは嬉しいってことっすね!」
そうしてこの少年とのんびり過ごしていたのもつかの間
「ゴブタあいつ仕事サボってどこいった」
どこからか声が聞こえた。
「やばい!リグル隊長っす!!」
そう言って少年は猛スピードでどこかへ行ってしまった。そうかあの少年はゴブタと言うのか覚えておこう。そう思い吾輩は一眠りするのである。
ふと隣に誰かが座った気配がしたので目を開けた。すると紫色の髪をした少女が吾輩の隣に座っていた。
「なに?ボクになにかついてる?」
見ていたのがバレてしまったようだ。
「って言っても猫に分かるわけないか」
そう言って撫でて来たのである。何とも言えない手さばきで吾輩は再び眠りに落ちてしまったのである。
次に目が覚めると辺りが暗くなっていたのである。もうすっかり夜であるな。そう思い吾輩は寝床へ帰ることにした。
この街は夜になると昼間より格段に外を歩く者が居なくなるのである。たまにどんちゃん騒ぎをして楽しそうな夜を過ごしているが基本的には静かな夜である。
吾輩は普段は寝床が多く色々な所で寝ているが、最近はほとんど同じ所で寝ているのである。
そうこうしている間に着いたのである。ここの家の住人は吾輩が寝てたらなるべく音を出さないようにしてくれるからありがたいのである。吾輩もそれに敬意を払って最大限邪魔をしないようにしているのである。
俺ことベニマルは仕事の都合上夜まで続く事が多い。炎霊鬼となり、睡眠が必要無くなったのはいいが、些か多すぎると思う。まぁリムル様のことを思えばこの程度造作もないことだがな。
そんな俺の元に最近猫が来るようになった。最初は厄介者だと思っていたが最近ではその猫を仕事をしながら待っている自分がいる。
「今日も来たのか。この猫」
そう言って俺はその猫を撫でる。そうするとゴロゴロと喉を鳴らして答えてくる。
「俺だから構わないが、リムル様に迷惑はかけるなよ」
俺がそう言うと猫はこちらを向いてニャーと鳴いた。
明日はこいつのために飯でも用意してやるか。そう思い俺はまた仕事を初めた。