ようこそ時魔法使いのいる教室へ   作:ゆーざーめい

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10話 無人島サバイバル試験2日目以降

 無人島サバイバル試験2日目。

 

 昨日の夜は点呼が終わった後に清隆と橋本の3人でスポットの占有、早朝は楓花と真澄の3人でスポットの占有を行った。

 

 夜にスポットの占有に行こうと言った時、そこまでするとは聞いていないと言われてしまったが、そういえば言ってなかったと思い出し、夜と早朝は少人数でスポットの占有をする旨を告げた。

 

 話し合いの結果、念には念を入れて3人で行動する事になり、夜担当は清隆と橋本、早朝担当は楓花と真澄になった。

 

 体調を崩さなければ良いが、未来予知をしたところその可能性は限りなく0に近かったため、恐らく大丈夫だろう。

 

 さて、現在は5人での日中のスポット更新が終わり、洞窟に帰るところである。途中、Dクラスがビーチでバカンスをしているのを見つけ、Dクラスが0ポイント作戦を決行しているのを確かめたり、Cクラスの高円寺六助がターザンのような動きをしているのを見つけ目が点になったりもしたが、それはそれとして、俺達はとある問題に直面していた。

 

「神城紫苑、龍園翔にクラスを追い出されたので、あなた達のベースキャンプに泊めてください」

 

 Dクラスの森下藍と遭遇したのだ。当然、スパイである。というか、未来予知ではどの分岐でも必ず森下がスパイとしてうちのクラスにやって来たため、初対面だが森下の顔はよく覚えている。

 

 森下と遭遇したのが洞窟外で良かった。洞窟まで辿り着いた場合、平田を筆頭にお人好し勢が森下をベースキャンプに泊めようとするからな。それでも突き返す事は出来るのだが、クラスに僅かな亀裂が入る事になってしまう。運が良かった。ここでお引き取り願おう。

 

「断る。お前はスパイだろ」

 

「なんと、見破られてしまいましたか。まあ龍園翔も駄目元だったらしいので良いでしょう。そうです。私がスパイです。正直に話したので、ベースキャンプに泊めてください」

 

「何故そうなる。速くDクラスに帰れ」

 

「一応私もスパイという大仕事を任された身。そう簡単に私を帰す事はできませんよ」

 

 未来予知で視た時も変人という印象だったが、実際に会話すると予想以上だな。話が通じない。

 

「いいから帰れ。どうせ他のクラスにもスパイを紛れ込ませてるんだろ?今帰ればお前がスパイとしてうちのクラスに来た事を他のクラスに言わないでおいてやるから」

 

「なるほど、交換条件というやつですか。なかなかやりますね。良いでしょう。ここは素直に帰るとします。それではさよなら」

 

 そう言って、森下は帰っていった。

 

 やけにあっさりと帰ったな。そう簡単に帰す事はできないんじゃなかったのか。

 

 それにしても、龍園は何故森下をうちのクラスにスパイとして送り込んだんだろうか。もっと適任がいるだろう。案外、森下が興味本位で志願したという線もありそうだな。

 

「なかなかユニークなやつだったな」

 

「ただの変人でしょ」

 

 楓花と真澄がそれぞれ森下についての感想を述べる。

 

「それより、よくあいつがスパイだと分かったな」

 

 橋本が俺に問いかける。

 

「クラスから追い出されたならリタイアすれば良い。学力も機転思考力もB+の森下が、仮病を使ってリタイアするという単純な方法を思いつかない筈がない」

 

「おいおい、森下のOAAの数値を覚えてるのか?神城的には森下は要注意人物だったりするのか?」

 

「そういうお前も彼女の名前が森下だという事を知っているんだな」

 

「俺は一年の全クラスの人間の顔と名前は覚えてるぜ。で、どうなんだ?」

 

「俺は3学年全ての人間の顔と名前とOAAの数値を暗記している。ただそれだけのことだ。森下を特別視している訳ではない」

 

 ある意味要注意と言えるかもしれないが。

 

「…やべえな神城、流石にそこまでとは思わなかったぜ」

 

「…信じられない」

 

 橋本と真澄がドン引きしている。一方で楓花は、少しニヤリと笑っただけで、平然とした顔をしていた。清隆に関しては無表情だ。というか、こいつはいつも無表情だ。表情筋どうなってるんだと言いたい。

 

「記憶力には自信があるからな」

 

 取り敢えず適当に返答しておく。嘘は言っていない。時魔法という特殊能力は使っているが。

 

 そんなやり取りがありつつ、俺達は洞窟に戻った。

 

 クラスメイトがかけてくれた労いの言葉を受け取り、未来予知を使うため、人がいない所へと進んでいく。森下に遭遇した事で変化した未来を知るためだ。

 

 しかし、堀北が俺の方に向かってくるのを感じる。

 

「その、神城君。私もクラスのために何か出来る事はないかしら?」

 

 そして、堀北は俺に声をかけてきた。

 

「堀北は今もクラスに貢献しているだろう。食料調達もしてくれているし、何より調理技術が高いから、堀北のお陰で美味い飯が食べられる」

 

「神城君も調理技術は高いじゃない。それに、その食料の場所を見つけたのは神城君よね?あれだけの量の食料を一体いつ見つけたのかしら。」

 

「スポットの占有時に偶然見つけただけだ」

 

 最初の特別試験の時に自信を付けたと思っていたが、どうも堀北は自分がクラスの役に立っているのか、不安に思っている節がある。歴代最高の生徒会長と言われている兄の存在がそうさせているのだろうか。

 

「…いいか堀北、お前は十分クラスの役に立っている。もし兄の事を気にしているなら、それは意味のない事だ。お前はお前だ。兄とは違う」

 

「神城君がそれを言うのね。私には兄と同じくらい、あなたが眩しく見えるわ」

 

「だったらその俺が、堀北が優秀な人物であると保証しよう。それでは駄目か?」

 

「…ありがとう。でも、やっぱり私はもっとクラスに貢献したい。何か出来る事はない?」

 

「…そうか。ならば、堀北に一つ仕事を頼みたい。もう1人にも頼む予定だったから呼んでくる。少し待ってろ」

 

 そう言って、俺は頼み事があると言い、真田を連れてきた。

 

「それで、僕は何をすれば良いんですか?」

 

 真田が問いかける。

 

「お前達2人には、他クラスの偵察に行ってもらう。と言っても、隠れて行う必要はない。昨日共有した作戦通りだ。リーダーを見破ってくれればベストだが、基本リーダー当ては行わない方針だ。無理はしなくて良い。真田、お前はBクラスに行って、椎名に遊びに来たとでも言ってなるべく長い時間話してきてくれ。堀北はCクラスだ。Cクラスには警戒心が強い葛城がいるから追い出そうとしてくるかもしれないが、一之瀬の方に話しかけて長居してきて欲しい。生活の手伝いをするのも良いだろう。なるべく友好的にだ。今後協力関係を結ぶ事もあるかもしれないし、何日も偵察に行ってもらうためには、友好関係が必須だ。それと、先程うちのクラスにDクラスのスパイが来た。BクラスとCクラスにも来ているかもしれないが、都合が良いから泳がせておけ」

 

「分かりました」

 

「分かったわ」

 

 2人ともスパイという言葉に少し驚きを見せたが、すぐに了承してくれた。

 

「じゃあ、2人とも行ってきてくれ。ベースキャンプの位置は、両クラスともだいたい島の反対側にある。少し遠いがよろしく頼む」

 

 こうして2人はBクラスとCクラスの偵察に向かった。

 

 その後、俺は未来予知を使ったり、食材の調理をしたりと、忙しなく働いた。

 

 暫くすると、堀北と真田が同時に帰ってきた。帰る途中で合流したのだろう。

 

「真田、Bクラスはどうだった?」

 

「Dクラスの人は、僕が見る限り見当たりませんでした。椎名さんからもそのような話は聞いていません。それと、坂柳さんがいない間の指揮は椎名さんが取っているようです」

 

 恐らく、予知通りBクラスとDクラスは契約を交わし、椎名はその条件内容にリーダー当ての禁止を盛り込んだのだろう。この条件ならBクラスにスパイを送る意味はない。

 

「なるほど。分かった。明日からも同じようにBクラスの偵察を頼む。ついでにこの辺にある食料でも持って行ってやれ」

 

「良いんですか?」

 

「恩は売っておくに越した事はない」

 

 坂柳や龍園は恩を仇で返しそうだが、基本的には恩には恩が返ってくると思って良いだろう。

 

「分かりました」

 

「Bクラスに関してはこんなところか。Cクラスはどうだ?」

 

「こちらはDクラスの人間がいたわ。葛城君は受け入れに渋っていたようだけど、一之瀬さんが受け入れる事に決めたみたい。どうやらCクラスでは同じ生徒会所属でも一之瀬さんの方が葛城君より影響力が強いようね。ただ、一之瀬さんもDクラスの生徒がスパイである可能性は考えていたわ」

 

「そうか。堀北はスムーズにCクラスに溶け込めたか?」

 

「…私も葛城君に警戒されていたけど、一之瀬さんと互いのクラスの生活に関する情報交換を行いながら、リーダーを探ったわ。恐らく向こうも気づいていたでしょうね。それと、独断で申し訳ないのだけれど、手土産に食材をいくつか持って行ったわ」

 

「いや、問題ない。真田にも言ったが、恩は売っておくべきだ。特に一之瀬のようなタイプにはな。堀北も、明日からも引き続きCクラスの偵察を頼む」

 

「分かったわ」

 

 さて、まだ夜のスポットの更新が残っているが、実質今日やる事は一通り終えたな。

 

 そして、6日目まではイレギュラーが起きない限りやる事は変わらない。しかし、未来予知で確認出来た限りでは、イレギュラーは起こらない。あと3日はルーチンワークをこなす事になるだろう。

 

 それから3日目、4日目と問題なく時間は進み、5日目の夜、みんなが寝静まった頃、俺は茶柱先生に呼び出されていた。

 

「神城、体調は大丈夫か?」

 

「腕時計で問題があるかどうかは確認できるはずですが?」

 

「確かにそうだな。体温、脈拍は至って正常だ。だが、だからこそ不自然だ。あれだけの活動量で体調不良を起こさないとは、一体お前の身体はどうなっている?」

 

「明日か明後日には体調不良になってると思いますよ」

 

「そうか。まあ良い。呼び出して悪かったな。早く寝ると良い」

 

「生徒の体調管理は教師の役目ですからね、構いませんよ。それと、自分は寝なくても大丈夫です」

 

 リーダー以外は仮病でリタイアが出来るが、リーダーは正当な理由がないと交代が不可能。体調不良でのリタイアが必要だ。なので、これから意図的に体調を崩していく必要がある。

 

 そのため、明後日の早朝、スポットの占有が終わってからリタイアするために、調子が悪くても、バイタルに大きな異常が出て強制リタイアになるような状態にならない限りは復元は使わず、今日も睡眠は取らない。

 

 そして、明日は幸い雨が降る。体調を崩すのに都合が良い。

 

「分かった。もう何も言うまい。お前がやりたいようにやり、クラスを勝利に導け」

 

「分かりました」

 

 そんな一幕もあり、6日目の早朝、予知通り雨が降った。

 

 楓花と真澄に今日は1人でスポットの占有を行う旨を告げ、早速出発しようとすると、真澄が心配そうに声をかけてきた。

 

「本当に大丈夫なの?今日くらいスポットの占有はやめても良いんじゃない?」

 

「大丈夫ではない。だからこそ良いんじゃないか」

 

「体調不良によるリーダーの交代って事よね?なにもそこまでしなくても…」

 

「そこまでする価値はある。それに、一応俺はこのクラスのリーダーだからな。クラスを勝たせるためには最善を尽くさなければならない」

 

「紫苑、私は特に止めるつもりはないが、あまり無茶はし過ぎるなよ。船上でも特別試験がある可能性を考えると、そこでお前のパフォーマンスが低下しているのは大きな問題だ。それに、船上で特別試験があったとしても、両立してバカンスに興じる事は出来るだろうが、お前が寝込んでいると、私がバカンスを楽しめない事になる。だから、無茶はするな。なにせ私は友人が少ないのでな」

 

「楓花は俺以外に友人がいたのか?」

 

 揶揄うように楓花に疑問を投げかける。

 

「ここにいる神室とは友人のつもりだが?…そういえば、お前の事は名前で呼んでなかったな。真澄、私の事はこれから楓花と呼んでくれ」

 

「…いきなりね。別に良いけど…楓花」

 

「という訳だ紫苑。私にはお前と真澄の2人しか友人がいない。私のためにも長期間体調を崩すような事は避けてくれ」

 

「仕方ないな。じゃあ行ってくる」

 

 そう言って俺はスポットの占有に向かった。

 

 雨でぬかるんだ道を歩く。昨晩睡眠を取らなかったこともあり、足取りは少し重い。

 

 だが、まだまだ体調不良とまではいかない。そもそも、俺は体調を崩す事が出来るのだろうか。物心ついた時からずっと、俺は少しでも身体に違和感を感じると、復元を使って身体をベストな状態に戻していた。体調を崩すというのは、俺にとって未知の事だ。

 

 一応、未来予知で明日の早朝のスポット占有が終わるまでには体調に異常が起きる事は確認出来ているが、どうにも実感が湧かない。

 

 そんなことを考えながらスポットを巡り、帰ってきて濡れた身体を拭く。

 

 今日は雨が降っているため、事前に雨が降った時用に準備していた食材を使って調理を行う予定だ。食材調達の時間はなし。必然的に暇な時間が増える。

 

 暇な時間は各々談笑し、調理に関しては俺は参加せず、堀北や千秋を中心に任せた。

 

 そして、昼のいつもの時間に1人でスポットの占有に行く。朝より更に体が重い。これが体調が悪いということなのかと実感する。だがまだ大丈夫だ。帰ってきて、朝方と同じように身体を拭き、少し横にならせてもらった。

 

 …気づいたら寝ていた。想定外だ。体調も少し回復している。未来予知で明日の自分の状態を確認する。…問題ない。ここから夜にスポットを巡り、睡眠を取らず早朝にもスポットを巡れば、リタイアは可能だ。

 

 食事を取り、夜のスポット巡りに1人で行く。クラスメイト全員から心配そうな表情をされたが、問題ないと言って洞窟から出た。

 

 夜は懐中電灯があるとはいえ視界が悪い。それに身体の調子も悪いため、いつもよりゆっくりスポットを巡る。段々と体が冷えるのを感じる。

 

 帰ってきて、茶柱先生に声をかけられた。本当に体調は大丈夫か?と。微熱が出ているそうだ。問題ないと言っておいた。

 

 ここから睡眠を取らず、早朝まで過ごす。幸い夕方に仮眠を取ったので、眠気に関しては問題ない。

 

 早朝、スポットを巡る。身体はフラフラだ。寒い。

 

 洞窟に帰ってきた。倒れた。クラスメイトが全員駆け寄ってくる。みんな起きるのがいつもより早い。

 

「清隆、俺を背負って船まで連れて行き、リタイアさせてくれ。点呼には間に合うようにな」

 

「分かった」

 

「茶柱先生、俺がリタイアした場合、リーダーは…姫野にしてください。出来ますよね?」

 

「私?」

 

 倒れたまま言葉を紡ぐ。ユキをリーダーに指名した理由は…なんとなくだ。クラスで目立たない人間で、スポットの占有を共にしていた4人を除外して適当に選んだ。美紀でも良かったんだが、ここで指名するとクラス内で目立ってしまう恐れがあるので避けた。

 

「可能だ。お前がリタイアしたのを確認次第、リーダーを交代する」

 

「ありがとうございます。じゃあみんな、あとは頼んだ」

 

 そう言い残し、俺は眠りについた。

 

 無人島サバイバル試験リザルト

 

 Aクラス 684ポイント

 Bクラス 318ポイント

 Cクラス 145ポイント

 Dクラス 50ポイント

 

 クラスポイント

 

 Aクラス 1779

 Bクラス 1043

 Cクラス 795

 Dクラス 520

 




ストックが尽きたので毎日更新終了です。これからも随時更新しようと思っているので、モチベーション維持のために高評価等よろしくお願いします。
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