ようこそ時魔法使いのいる教室へ   作:ゆーざーめい

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12話 船上試験

 部屋に戻ろうとすると、今度は美紀と遭遇した。…そして何故か自販機と自販機の間に挟まっていた。

 

「何してるんだ?美紀」

 

「!?…紫苑君。いえ、ここはすごく落ち着くので」

 

「…そうか」

 

 なんとなく気まずい。どうしよう。

 

「…そうだ、美紀にはいつも助けられているからな。臨時収入も入ったことだし、100万ポイント渡すから受け取ってくれ」

 

 最近ではクラスのリーダー格への定期的な偵察も止めさせたが、それでも俺の役に立ってくれているのは事実だ。なので、お礼の意味を込めて先程手に入れたプライベートポイントの一部を渡そうとしたのだが…。

 

「け、結構です。そんな大金受け取れません」

 

大した金額ではないんだが…いや、感覚が麻痺してるな。100万ポイントは大金だ。

 

「じゃあ、50万ポイントでどうだ?」

 

「いらないです」

 

「30万ポイント」

 

「…いらないです」

 

「仕方ないな、10万ポイントだけでも受け取ってくれ」

 

「…それくらいなら」

 

 という訳で、美紀に10万ポイントを送金した。…結果的にドア・イン・ザ・フェイス・テクニックを使ったみたいになったな。まあ良い。働きに対するお礼としては少し足りない気もするが、暫く経ったら追加でもう10万ポイント渡そう。真澄にも渡さないとな。

 

 というか、今まで2人には正当な報酬を渡していなかった気がする。たまに飯を奢ったりはしていたが、明らかに対価としては不足しているだろう。2人ともこれまで文句は言ってこなかったが、反省しなければならない。

 

「今まで報酬を渡さずに悪かったな、美紀。これからは働きに見合ったポイントを渡そうと思う」

 

「いえ、大丈夫です。お役に立てれば、それで十分です」

 

 前から思っていたが、美紀はどうも自己評価が低いというか、自己肯定感が低いというか、もっと自分に自信を持ってくれれば良いんだが。

 

 だけど、こういうところが影の薄さに繋がっていそうな気もするんだよな。難しい。

 

 まあ、最悪美紀の影の薄さという長所はなくなっても構わない。影の薄さがなくても美紀は諜報系の仕事に向いている。やはり美紀にはもう少し自信を持って欲しいと思う。

 

 と、突如俺と美紀の携帯が同時に鳴った。キーンという高い音。それは学校からの指示であったり、行事の変更などがあった際に送られてくる、マナーモード中であっても強制的に音が鳴る、重要性の高いメールだ。

 

 遂に来た。これは、次の特別試験の合図である。

 

「もしかして、次の特別試験でしょうか?」

 

 美紀も察したようだ。俺が事前に船上でも特別試験があるかもしれないと言っておいたからだろう。

 

 そしてその直後、船内アナウンスも入る。

 

『生徒の皆さんにご連絡いたします。先ほど全ての生徒宛に学校から連絡事項を記載したメールを送信しました。各自携帯を確認し、その指示に従ってください。また、メールが届いていない場合には、お手数ですがお近くの教員まで申し出てください。非常に重要な内容となっておりますので、確認漏れのないようお願いいたします。繰り返しますーーー』

 

 アナウンスに従い、携帯を操作してメールを開くと、そこには次のことが書かれていた。

 

『間もなく特別試験を開始いたします。各自指定された部屋に、指定された時間に集合して下さい。10分以上の遅刻をした者にはペナルティを課す場合があります。本日20時40分までに2階202号室に集合して下さい。所要時間は20分ほどですので、お手洗いなど済ませた上、携帯をマナーモードか電源をオフにしてお越し下さい』

 

「やっぱり特別試験みたいですね」

 

 美紀が携帯を見ながら言う。

 

「そうだな。美紀の集合時間は何時だ?」

 

「18時です」

 

 予知通り、か。

 

 一応他のクラスメイトにも何人か連絡を取る。すると、全員予知で見た通りの集合時間だった。

 

 変更点はなし。ただ、サンプルが少ない。俺は念の為未来予知を使ってこの試験のグループ分けと()()()を確認する。

 

「…あの、紫苑君、どうかしましたか?」

 

 未来予知のために集中していた俺を見て、美紀が心配そうに声をかけてくる。

 

「大丈夫だ、問題ない。それより、勝つぞ、この試験」

 

「はいっ」

 

 それから美紀と分かれ、適当に時間を潰した後、()()()()()()()()()()()()()()()()。クラスのグループチャットでは、何やら先に試験の説明を聞いた者が情報を開示していたり、僅かながら意見交換が行われていたようだが、俺は静観していた。この段階で言える事は少ないし、今回に関しては言う必要もない。

 

 そして20時30分。俺は指定された場所、2階フロアに足を運んでいた。

 

 予知通りなら、このグループは坂柳、一之瀬、葛城、龍園と、各クラスのリーダー格が揃っているが…。

 

「神城君、先程はどうも」

 

 2階フロアには、既に坂柳が来ていた。鬼頭隼と伊吹澪を護衛のように傍らに置いている。この2人は坂柳と共にいる事が多いらしいが、2人とも口数が多い方ではなく、無言で俺を見ている。

 

「会うのは4月以来だったかと思うが?」

 

「私と綾小路君の逢瀬を盗み見ていたでしょう?」

 

 …坂柳にもバレていたか。というか、あの場に客は4人しかいなかった。バレていない方が不自然か。

 

「そういえばそうだったな。ところで、清隆とはどういう関係なんだ?」

 

「関係ですか。私と綾小路君は幼馴染ですよ」

 

「それだけか?」

 

「それだけです」

 

 坂柳も本当の事を話す気はないようだ。まあ良いか。

 

「それで、チェスの再戦の話だが…」

 

「是非、すぐにでもお願いします。あれから私も成長したんですよ。綾小路君には負けてしまいましたが」

 

 坂柳が清隆に負けた?てっきり清隆が負けたと思っていたが。身体能力だけではなく、知能面でも実力を隠していたのか?それともチェスが得意だっただけか。益々清隆の事が分からなくなる。…まあ良い。清隆は友人だ。それは変わらない。

 

「そうか。では、試験終了後にでもやろうか」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 坂柳と再戦の約束を交わす。

 

 すると、今度は一之瀬、葛城、龍園が姿を現した。

 

「ヤッホー、神城君」

 

「一之瀬か。それと、葛城は初めましてだな。神城紫苑だ。よろしく」

 

「葛城康平だ。よろしく頼む」

 

 葛城が手を差し出してきたので、握手を交わす。

 

「おいおい、俺は無視か?流石はAクラス様だな」

 

「お前と話すのは面倒そうだからな」

 

「連れねえ事を言うなよ神城。無人島の時はやられたが、今回は俺が勝つ」

 

「そうか。精々頑張れ。それよりも、俺ばかり注意していて良いのか?ここには坂柳や一之瀬、葛城もいるぞ」

 

「牙を抜かれた奴らに興味はねえよ。なあ、坂柳、一之瀬、葛城」

 

「何の事でしょうか。少なくとも、龍園君に負けるつもりはありません」

 

「神城には負けを認めてるようなものじゃねえか」

 

「にゃははー。私たちのクラスもちょっと今は自信なくしてるんだよね。無人島の特別試験で、Aクラスとは結構な差がついちゃったから。でも、負けるつもりはないよ」

 

「そうだな。現在Cクラスに不安が渦巻いているのは事実だ。だからこそ、この試験でそれを払拭させてもらう」

 

「その思考が既に負け組のそれなんだよ。俺はどんな手段を使っても、神城、お前を倒すぜ」

 

「手段は選んでくれ」

 

「無理な相談だな。精々震えて待ってろ」

 

 そう言って龍園は部屋の中に入っていった。

 

「では、私も失礼します」

 

 坂柳もそれに続く。

 

「俺達も行くとしよう、一ノ瀬」

 

「そうだね。それじゃあね、神城君。今回は負けないから」

 

「ああ」

 

 葛城と一之瀬も同じ部屋に入っていった。それを確認し、俺は202号室に入る。中には、同じグループの平田と堀北と真田がいた。

 

「神城君、遅かったね」

 

「時間ギリギリよ」

 

 入室して早々、平田に声をかけられ、堀北に苦言を呈される。

 

「すまない、少し話し込んでいた。すみません、遅れました。真嶋先生」

 

「いや、定刻通りだ。全員揃ったようなので、これより、特別試験の説明を行う」

 

 真嶋先生の説明が始まる。

 

 さて、即行で特別試験を終わらせよう。

 

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