ようこそ時魔法使いのいる教室へ   作:ゆーざーめい

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17話 ルール説明(満場一致特別試験)

 CクラスとDクラスと契約を結んでからは特に大きな動きもなく、楽しい夏休みもあっという間に終わり、9月1日。Aクラスには新しく4人の仲間が加わり、クラスの人数は44人になった。教室は若干手狭である。これが50人、60人にもしなったら大きな教室が用意されるのだろうか、などと考えていると、固い表情で茶柱先生が入ってきた。

 

 何かがある。クラス全員がそう思った事だろう。まさか、2学期初日から特別試験だろうか。流石に予想はしていなかったが、実際のところはどうか。茶柱先生の言葉を待つ。

 

「2学期開始早々ではあるが、お前達には明日、満場一致特別試験というものに挑んでもらう」

 

 やはり特別試験か。クラスに僅かに動揺が生まれるが、すぐに沈静化する。皆この学校の異常性にも慣れてきたようだ。

 

「今から簡単に今回の特別試験のルールを説明する。まず内容は、名前からも察する事ができると思うが、複数の中から満場一致になるまでクラス内で投票を繰り返し行ってもらうものだ」

 

「クラス内で投票という事は、別のクラスと戦う訳ではないという事ですか?」

 

 平田が茶柱先生に質問をする。

 

「そうだ。このクラスの中だけで完結する特別試験となっているため、ライバルのクラスと競い合う事はない。当日、試験が始まると学校側からお前達に4つの課題を出題させてもらう。なお、課題の中身は全クラスが共通しているため差別化はない。早速だが、理解を深めるために例題を出す」

 

 例題 クラスポイントを5失うがクラスメイト全員が2万プライベートポイントを得る

 

 選択肢 賛成 反対

 

 …なるほど、こういう形式か。シンプルだな。例題を見る限り、それなりに悩ましい選択が続くのだろうが、そこまで難しい試験ではなさそうだ。

 

「この課題に対し、完全な匿名で39名が提示された選択肢から選び投票する。百聞は一見に如かずだ、実際にやってみてもらおう。色々と疑問に思う事はあるだろうが、本番では1回目の投票前の私語は禁じている。まずは、話し合いの時間なしでやってみてもらいたい。携帯から賛成か反対に票を投じるように」

 

 茶柱先生の言葉に、携帯の画面が切り替わる。携帯には課題の内容が表示され、賛成か反対かを押す事ができるようになっていた。取り敢えず、これは例題なので、この特別試験の理解を深めるため、少なくなりそうな賛成を押してみる。

 

 クラスポイント5を失うと、卒業までに1人あたり1万5千プライベートポイントの損失があるが、2万プライベートポイントを得る事ができるため、プライベートポイントで考えると5千ポイントのプラスになる。しかし、クラスポイントを失う、これは非常に大きな問題だ。たとえ5ポイントだとしても、最後の最後、その5ポイントでAクラスで卒業できなくなる可能性も、僅かながらある。

 

 今のクラスの状況を考えると、それも考えなくても良いかもしれないが。

 

「よし、全員の投票が終わったため、早速結果を表示させたいと思う」

 

 その合図とともに、予め用意されていたモニターに結果が表示される。

 

 第一回投票結果 賛成4票 反対40票

 

 予想通り偏ったな。ここまでとは思わなかったが。

 

「今回の投票では、満場一致ではないため、投票はやり直しとなる。本番では、次の投票までのインターバルは固定の10分間。その間は自由に会話し、時には席を立ち、意見を交換し合う事が認められているが、今回は現時点で省略とする。再び投票を開始するように」

 

 次は反対を押す。

 

 第2回投票結果 賛成0票 反対44票

 

 おそらく俺以外の3人も、俺と同じ思惑で賛成に投じたのだろう。反対で満場一致となる。

 

「2回目の投票結果は、反対44票で満場一致となった。しかし、もし2回目の投票でも満場一致とならなかった場合、再度インターバルを設け10分後に投票を再開する。このように投票とインターバルを繰り返し、最終的に賛成44票、あるいは反対44票の満場一致を導き出す事が試験となる。無論、この選択で選ばれたものは全て実際に可決される。この場合であれば反対で満場一致しているので、この課題は無効となり、一切の効力を発揮しないが、賛成で満場一致していれば、お前達全員が2万プライベートポイントをもらえる代わりに、クラスポイントが5失われる。さて、では、この例題は満場一致となったため、次の例題に移る」

 

 例題 クラスの1人に100万プライベートポイントを与える(賛成が満場一致になった場合、ポイントを与える生徒の特定、及び投票を行う)

 

 これは迷わず賛成を押す。

 

 第一回投票結果 賛成44票 反対0票

 

 当然の結果がモニターに映し出される。流石にここで反対を押す天邪鬼はいなかったようだ。

 

「本番でこのような特定の個人を選定する課題が出題された場合、まずは賛成と反対の票を満場一致にさせるための作業は一つ目の例題と同じだ。反対となればその時点で課題は終了だが、もし賛成による満場一致だった場合には課題は終わらず一歩先へ進み、インターバルを挟み誰を推薦するかで話し合ってもらう。携帯には自分を除く全クラスメイトの名前が表示される仕組みだ」

 

 携帯の画面が強制的に切り替わり、自分以外の名前が並べられる。しかし、その並びからは規則性を見出せない。

 

「匿名性を徹底するため、生徒の名前の位置は投票のたびに入れ替わる。これは賛成や反対といった選択肢も同様にランダムで入れ替わる。隣の生徒を盗み見して、指の位置からどれに投票したかを推測する事を阻止するためだ。そして、話し合いに目処がついて来れば各自好きなタイミングで投票を行う。1人推薦したい生徒を選びタップするだけだ。インターバルの最中であれば、繰り返し推薦する生徒の変更も認められる。10分終了時点で過半数…このクラスの場合23票を集めていた生徒が特定の生徒として認められる。仮に、神城が大勢の推薦によって選ばれていたとしよう」

 

「俺ですか」

 

 仮の話だ。誰でも問題ないか。俺を選んだ意図は読めないが…特に理由はなさそうだな。

 

「当人である神城に投票権は一時的になくなりそれ以外の43人で投票を行う」

 

 俺以外の全員が投票を行うのを確認する。俺は当然静観だ。

 

 第2回投票結果 賛成43票 反対0票

 

「今回の投票では、賛成による満場一致で神城にポイントを与えることが確定したわけだが、もし反対による満場一致となった場合、神城にポイントは与えないことが可決されるが、それは神城が課題の対象リストから除外されてしまうだけで100万ポイントの行方は宙に浮いている。なので残った43人から再び生徒を選定し課題を続けていく。ただし、時間切れまでに付与する対象を定められず満場一致を成せなかった場合、試験は失敗。その上100万ポイントは誰にも与えられることはないので注意するように」

 

「茶柱先生、時間切れがあるという事は、この試験には制限時間があるのですか?」

 

 引っかかった事を質問する。

 

「そうだ。だが、それについては後で説明する。話を戻すが、賛成が1人でも残っていた場合リストから除外される事はない。また、このような課題の場合、立候補者を募ることも可能だ。インターバル中に立候補した場合、先着で特定の生徒として受け付けるものとする。ただし、立候補は課題1人につき一度までだ」

 

「では、もし特定の生徒への推薦票が過半数集まらなかった場合や、立候補者が出なかった場合はどうなりますか?」

 

 今度は平田が質問をした。確かにそのようなケースも考えられるな。今回は茶柱先生が俺を指名したからその可能性はなかったが、本番では有り得る展開だ。

 

「その場合、クラス内からランダムで選出され投票することになる」

 

 ランダムか。その場合は、実質その投票は無効だな。今回の課題の場合は100万プライベートポイントをクラス貯金として徴収すれば良いが、本番では個人を選ぶ場合、より悩ましい課題が出されることだろう。

 

「最後にもう一つだけ例題を出す。今度は実践形式でやってもらおう」

 

 例題 ケヤキモール内に施設を増設する事が決定した。次の内どれを希望するか(4クラスの投票結果を元に最多票の施設が採用される)

 

 飲食店 雑貨店 娯楽施設 医療施設

 

 これまでの例題とは異なり、4択形式か。これは満場一致が少し難しそうだな。

 

「課題が賛成などで可決されると、その内容が実際に承認される。しかし全体に影響を及ぼす課題に限り特殊な方法を取る。こういった形の課題が出題された場合には、満場一致となった選択肢を自クラスの選んだ1票として決定するに過ぎない。このクラスが飲食店で満場一致となったとしても、残りの3クラスが娯楽施設で満場一致だった場合は、3票を得た娯楽施設が追加される事で決定となる」

 

 なるほど。他クラスと戦う訳ではないが、他クラスとは全く無関係の試験という訳ではないという事か。

 

 さて、今回の投票は、あくまで例題だが、少し真面目に考えてみよう。

 

 まず医療施設。これは考えるまでもなく、俺は復元を使えるので必要がない。そもそもケヤキモールの外に出れば病院もあるため、優先順位はかなり低いだろう。

 

 次に雑貨店。これは…個人的な趣向だが、必要ないな。だが、一定数の支持は集めるかもしれない。

 

 あとは飲食店と娯楽施設だが、飲食店はケヤキモールにもそれなりにあるため、増設されるとしても似たような店ができそうだ。その点娯楽施設は、何か完全に新しい施設ができるかもしれない。娯楽施設で決まりだな。

 

 第1回投票結果 飲食店15票 雑貨店4票 娯楽施設25票 医療施設0票

 

「満場一致とはならなかったため10分間のインターバルを行う」

 

 茶柱先生の言葉に、モニターで10分のカウントダウンが始まった。

 

「どうだろう、おそらく議論を重ねても決まるまでに時間がかかるだろうから、ジャンケンで決めるというのは」

 

 制限時間があるという事は、制限時間内で終わらなければ何かペナルティがある可能性もある。そのため、こういう課題が出た時、手っ取り早く決める方法が必要だ。なので、今回はジャンケンというシンプルな決め方を提案する。

 

「良いと思うよ。みんなはどうかな?」

 

 平田が皆に呼びかける。否定の声は上がらない。

 

「じゃあ、代表で1人ずつ出てジャンケンするか。娯楽施設は俺が代表で出る。飲食店は誰が投票した?」

 

 俺の言葉に、15人が手を挙げた。誰でも良かったが、なんとなく千秋を指名する。そして雑貨店も同様に鈴音を指名し、ジャンケンをした。未来予知を使えば勝てるが、わざわざ使う必要もない。普通にジャンケンをする。結果、千秋が勝った。

 

「飲食店で決まりか。みんな、次は飲食店に投票してくれ」

 

 第2回投票結果 飲食店44票 雑貨店0票 娯楽施設0票 医療施設0票

 

「ここで例題は終了とするが、話の流れは理解できたはずだ。この特別試験をクリアするための条件は5時間以内に4つの課題を満場一致にさせる事。もし5時間の中で全ての課題を終わらせる事ができなかった場合は、非常に重いペナルティが待ち構えている。クラスポイントマイナス300の措置だ」

 

 300か。重いな…重いか?クラスポイントの差が開き過ぎて麻痺している気がする。

 

「大体この特別試験の概要が見えてきただろう。ルールをまとめたものを表示する。保存が必要と思った者は自分で画面をキャプチャーして残しておくように」

 

 茶柱先生がそう言うと、満場一致特別試験の概要がモニターに表示された。

 

「どのような課題が出題されるかは我々教師も与り知らないところだ。楽観視するものもいるだろうが、決して油断するなと忠告しておく。また今回の試験、他の生徒に対し特定の選択肢に投票先を縛ったりするような契約等を行う事は固く禁ずる。またそれ以外にも金銭のやり取りをして相手の選択を縛るなども論外だ。これは他クラスだけでなく自クラスにも同等の効力を持つものとする」

 

 難しい試験ではないと思っていたが、茶柱先生の忠告に従って気を引き締め直すか。なにより、投票先の契約を縛る契約ができないというのが難しい。これではCクラスとDクラスに強制力のある指示ができない。

 

 他にも、茶柱先生からは特別試験中の通信機器の回収が告げられた。

 

 さて、今回の特別試験、どうなるか。

 

 

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