ようこそ時魔法使いのいる教室へ   作:ゆーざーめい

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4話 OAA

 5月1日。予想通り、というか未来予知通り、クラスポイントの事やAクラス特権の事等が茶柱先生から公表された。

 

「なんだお前達、誰も驚かないのか」

 

 一通り説明を終えた後、茶柱先生は薄く笑みを浮かべながらそう言った。

 

「予想していましたから」

 

 俺が代表して答える。予想ではなく予知だが。

 

 そしてクラスポイントに関しては、上から順番にこのような感じになっていた。

 

 Aクラス 980

 Bクラス 770

 Cクラス 630

 Dクラス 560

 

 俺達は無事Aクラスになれた。流石に減点0は無理だったが、上々の出来だろう。

 

 因みにBクラスは先日チェスをした坂柳がいるクラスで、Cクラスは()()()()()()()一之瀬穂波という女子生徒と葛城康平という男子生徒がいるクラス、Dクラスは龍園翔という男子生徒が独裁を行なっているクラスだ。

 

「そうか。それにしても素晴らしい結果だ。5月1日時点でこれだけのクラスポイントを保持していたクラスは歴代でもいない。褒めてやろう。それで、何か質問はあるか?」

 

 誰も手を挙げない。茶柱先生の説明が予想通りだったため、質問することがないのだろう。自分達がAクラスだった事実に安堵しているのもあるかもしれない。

 

「…ないようだな。当然だが、この結果に慢心せず、日々の研鑽を怠らないように。ホームルームは以上だ」

 

 そう言って、茶柱先生は教室を出て行った。

 

「神城、やはりお前の予想通りだったな」

 

 直後、神崎が俺の所に来て、声をかけてきた。平田や橋本も近くに来ている。

 

「ああ。クラスポイントの減点を最低限に抑える事ができて良かった」

 

「他のクラスとの差は、Bクラスが210ポイント差、Cクラスが350ポイント差、Dクラスが420ポイント差か。結構な差があるな」

 

「油断は禁物だよ。それにクラス対抗での特殊な試験の事を考えれば、そんなに大きな差とは思えないかな」

 

「それもそうだな」

 

 橋本の言葉に、平田が警戒を促し、橋本もそれに肯定する。確かに特別試験の事を考えると、今のポイント差は油断できる数字ではないだろう。特別試験は一度で数百ポイントほどのクラスポイントの変動の可能性があるからな。

 

 それよりも、まずは目先の事を済ませよう。クラスが少し騒がしいので、俺は目立つように席を立ち、教卓に立った。自然と俺に注目が集まる。

 

「みんな聞いて欲しい。俺達の予想は概ね当たっていた。クラス対抗の特殊な試験があるかはまだ分からないが、まずは予定通り、勉強会を開きたいと思う。改めて、誰か教師役を引き受けてくれる人はいるか?」

 

「当然僕はやるよ」

 

「俺もだ」

 

「私も」

 

「僕も立候補します」

 

 平田、神崎、松下、そして真田康生という男子生徒が教師役を引き受けてくれた。楓花も頭は良いのだが、やはりと言うべきか、勉強会については我関せずといった態度だ。

 

「…私もやるわ」

 

 予想外だったのは、堀北も志願したことだ。関わりは少ないが、普段から一人で行動しているところはよく目にしている。こういう人が多く絡む事には関心がないと思っていた。性格を読み違えていたか、心境の変化でもあったのか。どんな理由にせよありがたい。

 

 これで俺も含めて教師役は6人。一人あたり5、6人程度受け持つ事になる。勉強会に参加したくない人もいるかもしれないが、そこは同調圧力で勉強会に参加しないという選択肢は与えないつもりだ。自分のためになると思って諦めて欲しい。楓花も参加したくない派だろうが、まあ楓花は参加しなくても構わないか。楓花の実力と性格を考えると、勉強会には参加しない方が良いだろう。

 

 割り振りは部活動の兼ね合いと学力を考えて決める。俺が受け持つメンバーに関しては、多少私情を挟ませてもらうが。

 

 さて、割り振りを考えるにあたり、まずはクラス全員の学力の把握をしなければならない。自作でテストでも作ろうかと考えていたのだが、お誂え向きに先日丸一日かけての抜き打ちテストがあった。

 

 難易度は中学生レベルの問題から大学の入試レベルまで幅広く、分量も多かった。勉強の先取りと思考加速がなければ満足に解けなかっただろう。難易度が高過ぎるため、これにも何か裏があるのかと、真相を探るために未来予知を使おうと思ったが、日時が絞れないのと、どの道テストの返却時に何か分かる可能性が高いと考え、止めた。

 

 その日の終わりには全員が疲労を隠し切れない様子で、あの楓花も疲れを見せていた程だ。俺は復元を使ったので疲れはなかった。楓花から化け物を見るような目で見られた。あながち間違いではないが。

 

 時は少し経過し、その日の帰りのホームルーム。茶柱先生によりテストの結果が公表された。1教科100点の5教科500点満点で、俺の点数は500点満点だった。現代文で怪しいところがあったが、ミスはなかったようだ。クラス全員から化け物を見るような目で見られた。

 

 他にも、楓花は403点、堀北は392点、真田は381点、平田は359点、松下は354点、神崎は350点と、教師役の6人プラス楓花で上位を独占した。計算すると平均点は263.4点だったが、300点以上取るには授業で習った範囲より先の勉強をしていないと難しいため、上出来と言えるだろう。特に上位7人は想像以上によく勉強している。

 

「先生、今回のテストは少々難易度が高過ぎたように思うのですが、何か理由があるのですか?」

 

 気になっていたことを尋ねる。

 

「それは、今から説明することに関係している。全員、携帯を取り出せ。もし忘れた生徒がいれば、これから行う作業を帰ってからしてもらうことになるため、説明だけ聞いてもらうことになるが…流石に忘れた生徒はいないようだな」

 

 茶柱先生は教室全体を見渡して確認を取る。

 

「今から全員に、学校から配られた携帯端末のシステムアップデートを行ってもらう。完了したら、『OAA』という新しいアプリが追加されている筈だ。そのアプリを開け」

 

 茶柱先生の言う通りにして、アプリを開く。正式名称はover all ability。中を見ると、3年Aクラスから1年Dクラスまで、全てのクラスが項目分けされていた。

 

「このアプリには全学年の個人データが入っている。例えば1年Aクラスの項目を押せば、お前達の名前が五十音順になっている。試してみろ」

 

 言われた通り1年Aクラスをタップすると、合計40名の顔写真と名前が、確かに五十音順に並んでいる。

 

「誰を見ても構わないが、まずは自分のデータを確認するのが良いだろう」

 

 言われるがまま、自分の名前をタップする。そこには、見たことのない項目と数値が表示されていた。

 

 1ーA 神城 紫苑 (くじょう しおん)

 

 学力      A+ (100)

 身体能力    A+ (100)

 機転思考力   A+ (98)

 社会貢献性   A  (92)

 総合力     A+ (98)

 

「確認できたか?これは中学生時代の成績、入試の成績、4月の成績を基に学校側が作成したお前達の個別成績だ。学力に関しては、今回返却したテストの結果が大きく反映されている。神城、質問の答えはこれで十分か?」

 

「問題ありません」

 

「そうか、では説明を続ける。画面右上のクエスチョンマークを押してみろ。そこには項目ごとの詳しい説明が表示されている」

 

 言われた通り『?』のマークをタップして、説明文を読む。

 

 学力……主に筆記試験での点数から算出される

 

 身体能力……体育での授業の評価、部活動での活躍、特別試験等の評価から算出される

 

 機転思考力……友人の多さ、その立ち位置をはじめとしたコミュニケーション能力や、機転応用が利くかどうかなど、社会への適応力を求められ算出される

 

 社会貢献性……授業態度、遅刻欠席をはじめ、問題行動の有無、生徒会所属による学校への貢献など、様々な要素から算出される

 

 総合力……上記4つの数値から導き出される生徒の能力だが、社会貢献性に関してのみ総合力に与える影響は半減される

 ※総合力の具体的な求め方

 (学力+身体能力+機転思考力+社会貢献性×0.5)÷350×100で算出(四捨五入)

 

 なるほど、個人の成績が全体に可視化される訳か。俺の数値はかなり高いんじゃないだろうか。

 

「先生、身体能力の説明にある特別試験とは何ですか?」

 

 俺が比較のために他のクラスメイトの成績を確認しようとすると、平田が説明文の特別試験という言葉を読み、質問する。俺は未来予知で少なくとも無人島でのサバイバル試験と船上での試験がある事は知っているが、他のクラスメイトにとっては初耳だろう。だが、殆どのクラスメイトが以前の話し合いで俺が予想として話したクラス対抗での特殊な試験の事だと考えている筈だ。平田もそれを確定させるために質問したのだろう。

 

「良い質問だ平田。特別試験とは、簡単に説明すると、クラスポイントが大きく変動する特殊な試験の事だ。折角だ。OAAの説明は後にして、これから行われる特別試験について説明しよう。特別試験の名称は、一対一筆記テスト。内容としては非常にシンプルで、一年生の全クラスの生徒のOAAの学力の数値を上から順番に並べた時、上位から2人ずつをペアとし、ペア同士で中間テストの合計点数を競うというものだ。ペアが同じクラスだった場合、異なるクラスでなるべく近い学力の者がペアになるよう、学校側で調整する。勝利した者が所属するクラスには、敗北した者が所属するクラスから5ポイントのクラスポイントが譲渡される」

 

 茶柱先生の言葉通り、サバイバル試験よりは格段にシンプルな試験だが、クラスポイントが変動するという点は変わらない。それに、各クラスメイトに平等にチャンスがあるのも重要な点だ。勉強会の存在がより重要になってくるだろう。

 

 その後、OAAに関する追加の説明を受けて、長いホームルームは終わった。

 

 茶柱先生が去った後、俺は即座にクラス全員分のOAAの学力の項目を確認し、勉強会の割り振りを決めた。

 

 因みに一応他の項目も確認したところ、俺の評価は飛び抜けて高かった。悪い気はしない。

 

 肝心の勉強会の割り振りだが、俺が受け持つクラスメイトは、綾小路、神室、長谷部、姫野、そして、山村美紀という女子生徒だ。

 

 それを伝えたところ、俺が担当するクラスメイトの平均学力が少々高過ぎるのではないかと神崎と堀北に苦言を呈された。

 

 5人のOAAの学力の数値は、綾小路がCの50、神室がB-の61、長谷部がCの48、姫野がB-の64、山村がB+の76と、平均が凡そ55である事を考えると、A+の100の俺が教えるには確かに平均学力が高い。特に山村は、テストの点数が神崎に次ぐクラス8位だ。教師役に回っても良いくらいである。

 

 しかし、この5人は普段から1人で行動する事が多く、扱いが難しいだろうから一つに纏めたと説明すると、渋々納得してくれた。実際そういう意図を持ってメンバーを決めたのは事実だが、扱いが難しいとは言ったものの、1人行動を好むという事は、手がかからないという事でもある。要するに、自分が楽をするための方便だ。俺はクラスをAクラスとして維持していくつもりはあるが、そのために全力を捧げようとは思っていない。任せられる部分は他人に任せるに限る。

 

 そしてもう一つ、というかこちらが主な理由だが、このグループ構成にした理由がある。それは、()()()2()()を自分のグループに入れる事だ。1人は神室、そしてもう1人は、山村だ。

 

 山村は、言葉を選ばずに言うと影が薄い。その特性は偵察などの隠密的な役割に向いている。それを見込んで個人的に頼み事をしたいと、若干駄目元でお願いしたのだが、自分がクラスの役に立てるならと、喜んで引き受けてくれた。

 

 手駒の神室と山村の2人が同じグループにいれば、色々と都合が良い。そう考えた結果、この2人を俺のグループに入れる事にした。

 

 こうして勉強会の割り振りが決まり、指導法については、教師役個人の判断に委ねた。教師役の6人はグループのメンバーと話し合い、各々の場所、時間帯で勉強会を開く事になった。俺もグループのメンバーと話し合ったが、やはり一匹狼集団な事もあり、集まる時間も短く非常に楽が出来る事になった。とは言っても、指導自体は真面目に行うつもりだ。まずは中間テストの特別試験、俺のグループの5人が全員他クラスの生徒に勝利できるよう、頑張ろう。

 




変更点
4月末の小テストがない
中間テストの過去問は同じ問題ではない
赤点は退学ではなくクラスポイントの減点
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