ようこそ時魔法使いのいる教室へ   作:ゆーざーめい

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7話 無人島サバイバル試験開始

 7月。期末テストも終わり、ついに夏休みに無人島でのバカンスがある事が茶柱先生から伝えられた。実態はサバイバル試験であり、その後、船上でも特別試験があるのだが。

 

 浮かれるクラスメイトに、俺は忠告する事にした。

 

「全員、この学校がただのバカンスを俺達にプレゼントしてくれると、本気で思ってるのか?」

 

 俺の言葉に、クラスは急に静かになった。何人かは想定していたようだが、やはり大半はただのバカンスだと考えていたようだ。まだまだこの学校に対する認識が甘い。

 

「俺は、このバカンス中に特別試験があると考えている。日程的に、無人島で一つ、船上で一つ。まあ何が言いたいかというと、気を緩めないように。と言っても、まだ先の話だが。それと、当然だが、これも他クラスには他言無用だ」

 

 さて、クラスの空気は程良く引き締まった。この学校の特殊性を考えれば、定期的に緊張感を持つように促すくらいが丁度良い。どうせみんな高校生だ。放っておいても気を緩ませるだろう。

 

「紫苑、夏休みに特別試験があるとして、内容はどんなものだと考える?」

 

 そんな風に考えていると、楓花が特別試験について話しかけてきた。

 

「無人島での試験は、サバイバル的なものだろうな。クラス全員で団結して一週間を共に生活する、チームワークが試されるような試験だと考えている。それだけだとクラス対抗感がないから、追加要素もあるだろう。船上での試験は流石に想像できないが、サバイバルの後だから、体力を使うものではないとは思う」

 

 流石に船上での試験の内容を当てるのは不自然だろうが、無人島からサバイバル、集団生活を連想するのは不自然ではないだろう。そして、折角なので敢えてクラス全体に聞こえるように言っておく。無人島での集団生活だ。心構えをしておくに越した事はない。

 

「なるほどな。私も同じように考えていたところだ。楽しみだな、紫苑」

 

 無人島でのサバイバル生活を楽しめるとは、やはり楓花は変わっている。まあ、俺も少なからず心が躍る気持ちはあるが。

 

「そうだな。それに、2回も特別試験があれば、クラスポイントを一気に他クラスと引き離す事ができる。当然逆の可能性も考慮しなければならないが、これは好機だ」

 

 少なくとも、船上での試験は勝ちが決まっているようなものだ。他クラスには悪いが。

 

「そうだな。私もそれなりに頑張るとしよう」

 

 そう言い残し、楓花は去っていった。

 

「ねえ、さっきの話、本気で言ってるの?」

 

 楓花が去った直後、ユキが不安そうに話しかけてきた。

 

「推測だが、俺はかなり確度が高いと思ってる」

 

「マジか。一週間も共同生活とかキツいんだけど」

 

 ユキは無人島でのサバイバルより、共同生活の方に嫌な感情を持っているようだ。

 

「可能であれば、グループの女子で固まって生活できるように調整しよう」

 

「できるの?」

 

「可能であればな」

 

「じゃあ…お願い」

 

 グループ結成当初はどこか他のメンバーに対して一線を引いているように見えたユキだが、今ではそんな様子もなく、共同生活を気楽に過ごせる、親しいクラスメイトとして、グループのメンバーのことを認識しているようだ。

 

「了解だ。みんなもそれで良いか?」

 

「私は構わないわよ」

 

「オッケー」

 

「私もお願いします」

 

 いつの間にか集まっていたグループのメンバーにも確認を取ると、全員から了承が得られた。

 

「紫苑、オレはどうすれば良いと思う?自分で言ってて情けないが、このグループ以外に友人がいないんだが」

 

 しかし、清隆は男子なので、話は別だ。そして清隆には俺以外に男子の友人がいない。

 

「清隆は、この際俺以外の男子の友人を作ってみればいいんじゃないか?平田とかはハードルが低いと思うぞ。あとは…真田とかはどうだ?物静かだし、気が合うと思う」

 

 と言っても、この時期になって友人を新たに作ろうとするのは、何かきっかけがないと難しい。それこそ、無人島での共同生活は新たな友人を作るきっかけとして最適かもしれないが、その無人島生活のために友人を作ろうとしているのだ。難しい問題である。まあなんだ、候補は挙げたから頑張ってくれ。

 

「…善処する」

 

 これは無理そうだな。まあ、なるようになるか。

 

 最悪清隆には俺と共に行動してもらえばいい。かなりの重労働になるが、清隆は意外と身体能力が高いので問題ないだろう。OAAの数字はC+の60と平均より少し高いくらいなのだが、普段の遊びの際にスポーツ系のアクティビティを行うと、OAAの数値以上の身体能力を発揮するのだ。授業では手を抜いているのかもしれない。

 

 このようなやりとりもありつつ、時は過ぎていく。清隆は予想に反して、平田と真田とそれなりに仲良くなったようだ

 

 平田は元々誰とでも仲良くなれるタイプなので、こちらは意外でもなかったが、真田と仲良くなったのは意外だった。

 

 何でも、図書室に行った際偶然遭遇し、仲良くなったそうだ。因みにそこには、図書室に入り浸っていると噂のBクラスの椎名ひよりもいたそうで、3人で本に関する話で盛り上がったらしい。

 

 …この学校でそんな簡単に他クラスの友人ができるんだな、と思ったが、椎名はAクラスやクラス間競争にはあまり興味がないそうだ。そういう人だから仲良くなれたのか、そうでなくても、俺が思っていたよりもこの学校で他クラスの友人を作るのは難しくなかったりするのだろうか。

 

 俺は他クラスの友人はおらず、連絡先も、暴力事件の時に交換した一之瀬と、Dクラスでは珍しい他クラスとも友好的な櫛田桔梗のものしか持っていないため、あまり分からないが、他クラスとの友好関係の構築というのは不自然ではないのだろうか。友人関係にまで探りを入れなかったからその辺りはあまり分からない。

 

 まあその櫛田はクラス関係なく多くの友人がいるというのは聞いているし、部活で仲良くなるというパターンもあるだろう。俺がクラス間競争というものに集中し過ぎて、他クラスの友人を作るのは難しいと決めつけていたのかもしれない。

 

 これからは他クラスの友人を作るのもいいかもしれない。

 

 とは言いつつも、俺は今の友人関係に満足しているので、正直どちらでも構わないのだが。

 

 そんなこんなで、特に大きな出来事もなく、ついに夏休み期間に突入した。

 

 夏休みに入ってすぐ、俺達は豪華客船に乗り、特別試験の会場である無人島に向かっていた。一応学校側からの通達としてはただのバカンスなのだが、俺はそれが真実ではない事を知っているし、バカンスであると本気で信じているクラスメイトはいない。

 

 しかし、無人島に着くまでの僅かな時間は、バカンスと呼んで差し支えないだろう。

 

 俺達が乗っている客船は、外観は言うに及ばず、施設の充実度も高い。一流有名レストランから演劇が楽しめるシアター、高級スパ、そしてポイントが賭けられるカジノなど、多種多様な施設が完備されている。

 

 しかも、この施設の利用料はすべて無料だ。ポイントの節約を気にすることなく、自由に楽しむことができる。最高のバカンスと言えるだろう。

 

 俺もグループのメンバーと、搭乗後からいくつかの施設を巡って楽しんだ。とにかく楽しかった。

 

 しかし、その時間ももうすぐ終わりだ。

 

『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。間もなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう』

 

 いかにも意味深な放送だ。意義ある景色というのは、これからサバイバル生活をする事になる無人島の地形を覚えておけという事なのだろう。その証拠に、船は態々無人島を一周するように旋回している。

 

 『これより、当学校が所有する孤島に上陸いたします。生徒達は30分後、全員ジャージに着替え、所定の鞄と荷物をしっかりと確認した後、携帯を忘れず持ちデッキに集合してください。それ以外の私物は全て部屋に置いてくるようお願いします。また暫くお手洗いに行けない可能性がありますので、きちんと済ませておいてください』

 

 この放送に関しては、あからさま過ぎないか?どう考えたってこれから無人島でバカンスがあるようには思えない。いや、それも()()()()()()()での考え方か。何も疑問に思わず100%バカンス気分でいたら、気づかないか。

 

 取り敢えず、放送に従いジャージに着替え、携帯だけを所持し、デッキに向かう。

 

 他クラスの殆どの生徒は、これから始まる無人島でのバカンスに心躍らせ、テンションも最高潮といった様子だ。一方、うちのクラスの生徒は、放送の内容から更に疑念を募らせたのか、緊張した面持ちだ。

 

「ではこれより、Aクラスの生徒から順番に降りてもらう。それから島への携帯の持ち込みは禁止だ。担任の先生に各自提出し、下船するように」

 

 拡声器を持ったBクラスの真嶋先生の声で、生徒達が順番に客船の階段を降りていく。Aクラスの生徒は、これから始まるサバイバル生活を予想してか、どこか名残惜しそうだ。

 

「先ほどの放送といい、携帯の持ち込み禁止といい、益々予想が現実味を帯びできたな、紫苑」

 

 そんな中でも楓花は楽しそうだ。羨ましい限りである。俺は他のみんなと一緒で豪華客船でのバカンスが名残惜しい。無人島でのサバイバル生活も少なからず楽しみだが、やはり豪華客船でのバカンスの方が何十倍も楽しいに決まっている。

 

 それから、先天性疾患で船に残る事になった坂柳を除く、島に到着した一年生159名は、先生達の指示に従い、待機して自由時間になるのを待っていた。

 

 しかし、何やら様子がおかしい。先生達の表情は険しく、作業着に身を包んだ大人達が、少し遠くで特設テントの設置を始めているのも見える。長机にパソコンがあるのも違和感を生んでいた。

 

 多くの生徒が困惑に包まれる中、ここで、Aクラスの面々や、一部の鋭い生徒は疑念を確信に変えた。そして。

 

「これより、特別試験を行う」

 

 無人島サバイバル試験が始まる。

 

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