ようこそ時魔法使いのいる教室へ   作:ゆーざーめい

9 / 18
9話 作戦

 森に入った俺達5人は、洞窟から離れたスポットから順に、スポットの占有を行っていた。俺は加速と復元により、圧倒的なスピードと無尽蔵のスタミナがあるので、先陣を切って後続のために道を作りながら、未来予知で見た最短効率で道を進んでいる。

 

 因みに他の4人には知らせていないが、BクラスとCクラスのベースキャンプになりそうな箇所のスポットは残してある。他クラスと大きな軋轢を生んでまでスポットを全て独占するのは合理的ではない。

 

 Dクラスは()()()()()ため無視だ。

 

「それにしても、この短い時間でルールの穴を見つけるなんて流石だな、神城」

 

 橋本が俺を称賛してくれるが、未来予知により事前に知っていた情報から、時間をかけてルールの穴を見つけただけだ。俺は時魔法がなければ、そこまで優秀な人間ではない。

 

「たまたまだ。この学校では、常にルールに穴があると考えるように心がけている」

 

 取り敢えず適当に誤魔化しておく。嘘は言っていない。

 

「そんな事よりも、なんであんたは先頭で道を作りながら走ってそんなに平然としてるのよ」

 

 真澄が呆れた目でこちらに疑問をぶつけてくるが、時魔法のお陰だ、とは言えないので。

 

「鍛えてるからな」

 

 そう言っておく。これも嘘は言っていない。まあ、一度鍛えたあとは復元でベストな状態を維持しているだけだが。

 

「それよりも、私は綾小路が全く息を切らした様子がない事に驚いているぞ。紫苑がスポット占有メンバーに選んだのも納得だ。OAAでの身体能力の数値は高くなかったはずだが?」

 

 やはり予想通り清隆は実力を隠していたのか、楓花がその身体能力に驚嘆していた。

 

「昔ボーイスカウトをやっていたんだ。こういう悪路は慣れている」

 

 それだけでは説明がつかない気がするが、まあ良いか。今は清隆の身体能力が高いという事実が確認できれば良い。その後も楓花は興味深そうに清隆を観察しており、清隆は居心地悪そうだった。

 

 そして、敢えて残しておいた2箇所を残し、残りの28箇所のスポットの占有全てを終え、俺達5人は洞窟に辿り着いた。まだ他のクラスメイト達は到着していない。

 

「先に到着したようだな。それで紫苑、スポットの占有とリーダーの交代作戦については分かったが、リーダー当てについてはどうするつもりだ?」

 

 洞窟に到着してすぐ、楓花が俺に疑問を投げかけてくる。

 

「今の所するつもりはない。ほぼ全てのスポットを俺達が独占する以上、他クラスのリーダーを見破るのは非常に難しい。それに、俺と同じようにリーダーの交代作戦を思い付く奴もいるかもしれないからな」

 

 実際は未来予知によってどのクラスのリーダーも3人以下にまでは絞れているのだが、それ以上に絞るのは困難だ。

 

 それに、これは未来予知でも散々確認したが、俺達のクラスがあまりにも積極的にスポットの占有を行うせいで、リーダーの交代作戦に他のクラスも気付き、使ってくる分岐も存在した。

 

 この2点を踏まえると、リーダー当ては非常に難しい。スポットの占有でアドバンテージを得られている以上、リスクを冒して50ポイントを狙う必要もないだろう。

 

「だが、他クラスのリーダーは積極的に探っていく。それも隠れてではなく、堂々とだ。そうする事で、他クラスにプレッシャーを与え、疲弊させると同時に、スポットの占有のやる気を削ぐ」

 

「えげつねえな、神城」

 

 橋本が恐ろしいものを見るような目でこちらを見た。

 

「こちらは殆どのスポットの独占を狙っている。当然そのために取れる手段は取る。しかし、0ポイント作戦を取られた場合、この作戦が使えないのが問題だな」

 

「0ポイント作戦?何それ?」

 

 真澄が当然の疑問を俺にぶつけてきた。

 

「ああ。全てのポイントを予め吐き出し、クラスの殆どをリタイアさせ、少数でスポットの占有とリーダー当てを狙う作戦だ。もしくは、全員がリタイアしたように見せかけてリーダーを探る作戦だな。堀北が茶柱先生に確認したところ、与えられたポイントがマイナスになる事はないらしいからな。このような奇抜な作戦を取ってくるクラスもあるかもしれない」

 

「それってかなり損じゃない?普通に生活するだけでも半分くらいのポイントは残せると思うんだけど」

 

「確かにその通りだ。しかし、ポイントで得られる物資を、プライベートポイントと引き換えに予め他クラスに売った場合はどうだ?」

 

「…それなら、有効な作戦かも」

 

 これこそがDクラスが使う作戦であり、Dクラスのベースキャンプになりそうな箇所のスポットを残しておく必要がない理由だ。

 

 Dクラスは、全員がリタイアしたように見せかけ、スパイを使ってリーダーを探る後者の作戦を使う。物資の売り先は、坂柳不在のBクラスだ。

 

 しかし、実は俺も、少数でスポットの占有とリーダー当てを狙う前者の作戦は検討していた。だが、多くのプライベートポイントが手に入る代わりにクラスポイントの差を広げられない事と、共同生活によってクラスの団結力が深まるメリットを考慮し、この作戦は破棄した。

 

「理解したか。そういう訳で、0ポイント作戦を取られた場合、当然この作戦は使えない上、前者のスポットの占有を狙う作戦だった場合、こちらの邪魔になる可能性がある。こればかりは、どうする事も出来ない」

 

 まあ、未来予知によるとその心配もないが。

 

「…思ったんだが、これ俺達必要か?どの道リーダーを交代するんなら、神城1人でスポットの占有をした方が効率が良いと思うんだが。いや、別に仕事を放棄したい訳じゃないけどよ」

 

 今度は橋本が疑問をぶつけてくる。

 

「それをすると、当然リーダーが俺だと他クラスがすぐに気付く事になる。そして、リーダーの交代作戦にも遅かれ早かれ気付く事になる可能性が高い。そうなった場合、俺たちの独走を恐れて他クラスがペナルティ度外視で捨て身の作戦を決行してくる可能性もある。しかし、リーダーが5人の内の誰かだと考えている内は、誰がリーダーかを考える事に意識が集中する。そして、もし終盤にリーダーの交代作戦に気付いても、時すでに遅しだ。やれる事は限られる。要するに、お前達の存在は抑止力になるという訳だ」

 

「ペナルティ度外視の捨て身の作戦って、そんな事する奴いるか?」

 

「龍園ならやりかねない。というか、5人でスポットの占有をするのは龍園の思考パターンを想定してのものだ」

 

「でもよ、それって龍園側にもデメリットが大きいよな。ポイントを失う事になる訳だしよ」

 

「龍園が0ポイント作戦を使ってきた場合はどうだ?」

 

「…そうか!確かにそれなら龍園側のデメリットは少ないな」

 

「可能性としては低いがな。だが、あり得る話ではある。念の為、お前達には働いてもらう」

 

 低いどころか、0ポイント作戦は龍園が確実に行なってくる作戦だし、俺が1人でスポットの占有を行った場合、龍園のペナルティ度外視戦法も確実に行われる訳だが。

 

 このように俺が考えた作戦を話しているうちに、他のクラスメイトが洞窟にやってきた。

 

「速いね神城君達、スポットの占有はどれくらい出来たのかな?」

 

「28箇所だ」

 

 平田の質問に答えると、クラスメイト達は驚いた表情を浮かべた。

 

「それは…凄いね」

 

「かなり急いだからな。それで、そちらの話し合いはどうなった?」

 

 今度はこちらが平田に質問を投げかける。

 

「うん。取り敢えず、ポイントは80ポイント使う事になったよ。あとは状況に応じてって感じかな。それと、無制限に貰えるビニールとシートを使って、簡易的な布団のようなものを作ろうっていう案も出た」

 

「良いアイディアだな。硬い地面では寝心地も悪くなる。少しでも睡眠環境を整える工夫はすべきだ。誰が考えたんだ?」

 

「私だよ」

 

 平田の後ろにいた松下が小さく手を挙げて前に出てきた。

 

「なるほど。やはり松下は頼りになるな」

 

「それほどでもないよ」

 

「いや、松下は優秀だ。少なくとも俺はそう思っている。それで、松下にはこの特別試験中、女子の統率役をしてもらいたい、頼めるか?」

 

「なんだか煽られてる気がするけど、良いよ。任されました」

 

「という訳だ。女子はこの試験中、基本的に松下の指示に従って生活してくれ」

 

 クラス全体に聞こえるように伝える。

 

「それと松下、少しこっちに来てもらっていいか?平田はポイントを使ってみんなと生活の基盤を整えておいてくれ」

 

「分かったよ」

 

 平田にこの場を託し、俺は松下と少し離れたところで話をする事にした。

 

「それで、用件は何かな?」

 

「ユキと波留加、真澄と美紀なんだが、なるべく同じグループで行動させてやって欲しいんだ」

 

「神城君が勉強を教えてる4人だよね。確かにあの4人は他のクラスメイトとの交流も少ないし、その方が良いかも」

 

「察しが良くて助かる」

 

「任せて。それでさ、代わりと言ってはなんだけど、私の事、千秋って呼んでくれない?その4人と、鬼龍院さんも名前で呼んでるでしょ?」

 

 松下とはそこまで深い接点があった訳でもないが、どういう心境なんだろうか。まあ良い。名前で呼ぶ事に抵抗はない。楓花なんかは初日から名前呼びだ。

 

「分かった。これからは千秋と呼ぶ。俺の事も紫苑と呼んでくれて構わない」

 

「ありがとう、紫苑君」

 

 友好の証的な事だろうか。それなら良いか。

 

 その後、俺と千秋も他のクラスメイトと共に生活基盤を整えるために働き、1時間ほどでAクラスのベースキャンプは完成した。

 

 さて、ひとまずやるべき事は終えたので、これからやるべき事を整理しよう。

 

 まずは食料の確保だ。平田が言うには、今日の夜の分と明日の朝の分の食料と飲料水はポイントで購入したらしいが、これ以上食料や飲料水にポイントを使うのは勿体無い。近くに魚が釣れる川や畑など、食料、飲料水共に確保出来る場所があるから、明日からはその辺りで食事を賄うべきだろう。調理器具などは購入したようだが、釣り竿も購入させた方が良いな。

 

 俺が加速を使って素手で掴むのも良いが、俺に与えられている時間も有限だ。食料調達は極力他のクラスメイトに任せたい。

 

 次に、スポットの確保。これは8時間ごとに行うのが最も効率が良いが、その場合どうしても夜や早朝に動かなければならない。俺は復元で睡眠不要、スタミナ無尽蔵、怪我をした時の即回復が可能だが、他の4人はそうはいかない。やはり当初の予定通り、日中の他クラスに見つかりやすい時間帯は5人で行動し、その他の時間帯は俺1人、もしくはローテーションを組んで2、3人で行動するべきだろう。

 

 どの道、リーダーが俺だとバレても問題はない。逆にバレた上でリーダの交代作戦に気づかれなかったら好都合だ。

 

 そして、他クラスの偵察。Dクラスに関しては必要ないとして、Bクラスは椎名と仲の良い真田が適任だろう。清隆も椎名と仲が良いが、スポットの占有という仕事がある。仕事を二つ任せるのは厳しい。

 

 Cクラスは誰が良いだろうか。あそこは葛城は警戒心が強く排他的だが、一之瀬は警戒はしても、友好的に振る舞えば歓迎はしてくれる。一之瀬とそれなりに親しくしている千秋が適任だが、彼女には女子のまとめ役という役割がある。清隆と同様、仕事を二つ任せる訳にはいかない。正直それなりにコミュニケーション能力があれば誰でも良いが…明日決めるとするか。

 

 取り敢えず今は、点呼の時間まで未来予知を使って明日以降の情報を集める事にする。

 

 …未来予知のために長時間集中していたらクラスメイトに不審がられた。次からは見えないところでやろう。

 




ストックが尽きるので明日で毎日更新は終了です。明日以降も随時更新しようと思っているので、モチベーション維持のために高評価等よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。