第三話「逆行する秒針」
あの女の子が私以外を見ているのは初めてだ。
そんな事を思いながら女の子を見ていた時、三波が教室に入った。
その瞬間、またあの光景が目に浮かんだ。
「ゔっ……」
その瞬間、私の頭には激痛と共に昨日とは違い、人が沢山居る古臭い教室が見えた。
これは……この私に見える光景は昔の玻瓈高校……?
そんな疑問を抱えながら、校内にチャイムが鳴り響く。
キーンコーン――
カーンコーン――
放課後……
「遅いぞー!」
と裏庭で先に待っていた三波。
「ごめんごめん」
そう謝ると、三波は直ぐに話を始める。
「不思議だよね、この木、年中桜が咲いてるの」
確かに。
「確かに……2年間もこの学校に通ってるのに、疑問にも思わなかったな」
「って……何してるの」
視線を落とすと、木の下を駆け回り素手で地面を掘っている三波が見えた。
「何って調査だよ!」
「本によると、この木の下に事件の被害者が埋められてるとか……」
だとしたらせめてスコップぐらいは用意しない……?というツッコミは置いといて、
「怖すぎる……嘘だとしても見たく無いわ」
遺体なんて見ないに越した事は無い。
「え〜? 気にならない?」
「気にならない訳ではないけど……」
そんな話をしながら調査(?)をしていたら、あっという間に下校時間になってしまった。
結局、手掛かりは見つけられ無かった。
「じゃあね〜」
「うん、また明日」
と、私と三波は校門で別れた。
その時、私の目にチラッと映った女の子は――
三波に着いて行った。
――翌日
今日も三波と話す……
事は無く、放課後を迎えた。
今日、三波は体調不良で休みらしい。
まぁ、そういう事もあるか……
この事件に興味が湧いた私は、本の続きを読む事にした。
そういえば、今日は包帯の女の子を見てない。
あれから毎日のように現れて、私を見ていたのに、どうしてだろう?
あの女の子が三波に着いて行ったのが気がかりだった私は、三波に何かあったのかと心配しながらも図書館であの本を探す。
「あの本は……」
「あった」
例の本を手に取り、前回の続きから読み始める。
三波の言っていた木の事も書かれていたが、それよりも……
"この学校には事件以降、奇妙な記憶の残滓が舞っている"
という言葉が気になった私は、ページを捲り続きを見る。
やはり、あの木が関係しているようだ。
新たな情報にいてもたってもいられず、私は残った数ページを見ずに大きな桜の木の麓に向かう。
裏庭、私は桜の木を凝視した。
最初に奇妙な景色を見た時と同じように、風が吹いた。
同時に、秒針が逆行し始める。
地面が、木々が、建物が、若返るように風に吹かれる。
私は今、夢を見ているのだろうか。
目の前に、別の世界が広がる。
今は晩冬だと言うのに、満開に咲いている学校中の桜。全体的に木製で、古臭い校舎。
あれ……
私は記憶が曖昧になる――
私は……私は……
私は……
誰だっけ……?
そうだ……
私は……
――私は"亜沙匁"