第四話「へばりつく記憶」
私は亜沙匁(あさめ)、玻瓈高校に通う1年生。
私は生まれつき足が不自由で、人並みに走る事も難しかった。
それに目も朱色で、皆とは違った。
そんな私には1人の友達が出来た。
名前は那美(なみ)。
皆が私を軽蔑する中、彼女だけは違った。
彼女だけが、私を同じ人間として見てくれてる。
性格こそ真逆だけど、彼女の一言一言が私の救いになった。
今日も...…
「おはよう! 亜沙匁!」
と何気なく私に挨拶してくれる。
「おはよう」
こんなに大きな声で「おはよう!」なんて言われ慣れてないから、少し動揺してしまった……
「見て見て! これ!」
そう言いながら、那美はパンダのキーホルダーを私に見せる。
「それ、キーホルダー?」
「そう! 可愛くない? 亜沙匁の分もあるよ!」
と言ってポッケからもう一つのキーホルダーを出す。
「私の分?」
私は少し困惑しながらそう聞いた。
「うん! お揃いの方が良いかなって!」
そんな那美に、私は少し笑って――
「...…ありがとう」
そう一言吐露した。
「那美はどうして私に親しくするの?」
全員が私の事を軽蔑する中、私に親しくする那美。純粋な疑問だったから、そう聞いた。
「どうしてって...」
「別に、親しくしない理由なんて無くない?」
その言葉を聞いた瞬間、私の中にカチッとピースがハマったような気がした。
「でも、私って目の色も違うし……」
私はこの朱い目の事を聞いた。
「綺麗な朱色じゃん! 私は好きだけどな〜」
――初めて。
初めて、私の目を綺麗と言ってくれた人だった。
その一言だけで、私は生きていて良いんだと思えた。
私は人生で一度も、他人から肯定された事が無かった。もちろん、両親にさえ。
「本当に……?」
だからこそ、その言葉が信じられ無くて、私は那美にそう聞いてしまった。
「本当だよ! 当たり前じゃん!」
まだ那美を信用出来ない私の目には、那美が気持ち悪く見える程に純粋で、私を肯定してくれる。そんな存在に映っていた。
でも、私に幸せになる権利は無いみたい。
――だって……
その日の放課後――
痛い……痛い……
「や、やめて……」
必死に腕を掴んで抵抗をしてみるけど、
「は? 人間様に抵抗すんの?」
「ウザw」
もちろん、意味はない。2人は私の手を振り払って、殴り掛かる素振りをする。
「お願い……顔だけは……」
那美を心配させない為に、今まで顔は避けて来た。
「あ?」
奴は少し困惑しながらも――
「おっけーw」
企んだ顔をして、奴は勢いよく私の顔を殴った。
「無様だなw」
ともう1人のいじめっ子が言うと、
「やめてって言われてやめるわけねぇのになw」
まるで当たり前かのように……
「う……うぅ……」
私は堪えていた涙を流して、倒れ込む。そうだよね、所詮、私は人間じゃないんだから――
「 うわっwこいつ泣きやがったw」
「気持ちわりぃw」
2人はそう言いながら私を蹴飛ばした。
「何だ! 誰か居るのか!?」
と先生の声。
「やっべ……センコーに見つかるとメンドイから逃げるぞ!」
「撤収撤収!」
そう言って、そそくさと2人は去っていった。
……
また制服が汚れてしまった。
……どう言い訳しよう。
翌日
汚れたままの制服で、私は学校に行った。
「...…」
皆が嘲笑う教室で、私は心が押し潰されそうになった。
「見てよあれ...w」
「男子達にやられたんでしょw」
「本当いい気味ねw」
「アイツマジキショいわw」
「早く消えてくんねーかなw」
「早く"死ね"よ! 」
教室内に響くほど大きな声でそう言った。
その言葉に、涙が出そうになっていた時。
ガラガラ――
木製の戸を開ける音が聞こえた。
音がして少しした時、1人が教室に入って来た。
那美だ。
彼女が教室に入ると、あんなにうるさかった教室内は静まり返った。
那美は真っ先に私の方を見て駆け寄ってくる。