【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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第19話 戦いは、始まるまでに勝敗が決まる

 立っているシャーロットの拳を避けつつ、その体捌きのまま、崩すように投げた。

 

 彼女も逆らわずに飛ぶも、こちらの片腕をとろうとする。

 

 取られれば、彼女が地上へ落ちる勢いのままにへし折られる、または肩関節などを外されるだろう。

 

 当然ながら、俺は回避する。

 

 手刀で振り払うような動きで弾きつつ、まだ空中にいるシャーロットへ追撃した。

 

 空中で受け流しつつ、ドスンと背中から落ちたシャーロット。

 

 俺が伸ばした片腕につかまりつつ、受け身をとっていた。

 

「ふうっ……。今回は、この辺にしましょう?」

 

 俺の片腕を引っ張りつつ立ち上がったシャーロットは、長い黒髪を指で整える。

 

「私と似たような戦闘スタイルがあったとは……。あの女と同じで、マジックソード学院の生徒だったんでしょ? 魔法剣は?」

 

「剣なら、置いてきた! これからの戦いに、ついてこられないからな?」

 

 引き気味のシャーロットは、突っ込みを入れる。

 

「そ、そう……。でも、私たちが向かっている王都ウルティマナは、あなたが言った通りにサクリフィ王国の中心! 抱かれないってのは、不安よ……。そこは理解して」

 

「金で雇われたわけじゃないし……。言われてみれば、そうだな?」

 

 俺の返答に、シャーロットは息を吐いた。

 

 無意識だろうが、腕を組むことで、下から巨乳を持ち上げる。

 

「あの女……。マリカが敵になったら、どうするの?」

 

「俺は、聖女となったリナを奪還する……。それだけだ」

 

 答えになっていないことで、シャーロットはまた息を吐く。

 

 ムダに色っぽい。

 

 そして、俺のほうを見た。

 

「分かった……。なら、私が戦う!」

「あいつは、強いぞ? 落第生だった俺とは違い、学院の首席クラスだ」

 

 こくりと頷いたシャーロットは、意味ありげに笑う。

 

「私も、手の内を全てさらしたわけじゃない! あとは、そのマリカ次第……。王都にいる主力だけど」

 

「エレメンタル騎士団が、よく分からん! ギフテッド騎士団は、学院の優秀者がスカウトされての就職先と知っているが」

 

 首を横に振ったシャーロットは、指摘する。

 

「エレメンタル騎士団は、大地、水、火、風の四元素よ? 精霊信仰の一種で、それぞれに象徴的な団長がいるだけ! 今は超常的な力がない人間による名誉職だから、気にする必要はない」

 

「……詳しいな?」

 

 肩をすくめたシャーロットは、端的に答える。

 

「リナと関係しているから……。私たちの一族は、そっち系でね? 今となっては、スラムと同じよ! それより、ギフテッド騎士団のことを教えて?」

 

「魔法剣が得意な奴らで、王国の主力……。一旗(いっき)二旗(にき)と、隊ごとに呼ばれている。正確には『一旗隊』だが、呼びにくいから『隊』を省く」

 

 血筋もあるが、基本的に実力主義。

 

 隊長、副隊長は強く、隊員も100人単位。

 

 眉をひそめたシャーロットが、思わず呟く。

 

「厄介ね? その、10隊が全て?」

 

「王国の巡回や反乱鎮圧もあるから……。常備軍は、せいぜい3隊じゃないか? ちなみに、俺も又聞きだし、ギフテッド騎士団の幹部に面識がありそうなのはマリカさんだぞ?」

 

 派手に溜息をついたシャーロットが、俺にジト目。

 

「奴らに、勝てそう?」

「……分からん」

 

 何はともあれ、王都ウルティマナへ向かうのみ。

 

 

 ◇

 

 

 マリカ・フォン・ミシャールは、マジックソード学院で募集された聖女の付き人へ立候補。

 

 伯爵令嬢という保証に、優秀な魔法剣士だったことで、あっさり採用。

 

 ティエリー・レ・サクリフィ王子の帰還に伴い、マリカは聖女リナと同じ馬車に乗る。

 

 護衛を兼ねているため、武装したまま……。

 

 馬上の騎士に囲まれているが、その警備はおざなりだ。

 

 小窓のカーテンの陰から窺えば、リナの声。

 

「あの……。ミシャールさん?」

 

 向き直ったマリカが、応じる。

 

「何でしょう、聖女さま」

「……あなたは、ティルの彼女ですか?」

 

 思わぬ質問に、マリカは息を吐く。

 

「付き合ってはいませんでした……。なぜ?」

 

「学院で聞いた限りでは、男女の関係にしか思えなくて」

「……逆に、聞かせてください。あなたは、どうして聖女に?」

 

 息を吐いたリナは、首を横に振った。

 

「そういう定めだったのでしょう! 王都に着いても、観光はできなさそう」

「……私、ギフテッド騎士団の二旗隊の隊長を知っているの! 良かったら、どうかしら?」

 

 精鋭の騎士団の幹部と会うのなら、許可が下りる可能性は高い。

 

 気を遣われたと悟ったリナは、向かいに座ったままで会釈。

 

「ありがとうございます……」

 

「もう1人の女子……。残念だったわね?」

 

 マリカの指摘に、顔を上げたリナはウェーブがかった栗色ロングを指ですく。

 

「まだ、決まったわけではありません」

「……そうね」

 

 全体の警備は厳重で、順調に王都へ近づく一行。

 

 ほぼ同い年の女子とあって、2人はそれなりに仲が良くなった。

 

(王子は……思っていた以上に顔を出さない)

 

 貴族の機微をよく知っているマリカは、ティエリーは聖女リナをレディとして扱うものの、婚約者への態度ではないと感じていた。

 

(貞操も怪しくなって、見限った? あのデカパイ女は、リナを奪い返しに来るだろうし。ティルはあいつに手を出しても出さなくても、たぶん道連れ!)

 

 口では言ったが、シャーロットが死んだとは思っていないマリカ。

 

(二旗隊の隊長……。いてくれると、いいんだけど)




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