【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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第33話 会戦終わりて、スケープゴート死する?

 かくして、サーヴァス会戦は終了した。

 

 サクリフィ王国とアーデンティア帝国の衝突は、痛み分け。

 

 王国軍は、ギフテッド騎士団の一旗(いっき)隊、三旗(さんき)隊が総崩れ。

 それぞれの隊長も、戦死または再起不能。

 

 さらに、総指揮官のティエリー・レ・サクリフィ王子が捕虜に……。

 

 傍にいた聖女、リナ・ディ・ケーム公爵令嬢も、同じく。

 

 帝国軍も投入した蒸気機関を破壊され、新型の戦車部隊が壊滅。

 

 どちらも追撃するほどの余裕はなく、大量の捕虜を抱えたことから、文官のすり合わせで捕虜交換と相成った。

 

 しかし、王都ウルティマナも上空から攻撃されており、王侯貴族が支配する国といえども反感は無視できないレベルに高まっていたのだ。

 

 上から壊れた建物が目立つ王都。

 

 死体は、どこかへ運んだようだ。

 

 戦場から戻った二旗(にき)隊の隊長ララ・リーメルトと副隊長ナスターシャ・フィルスは、大通りの端に並んだ群衆の刺すような視線を潜り抜け、同じく敵意に満ちた人間ばかりの王城へ入る。

 

 謁見の間へ足を踏み入れれば――

 

(なるほど! ボクに責任を押しつけて、みんなの鬱憤晴らし……)

 

 広いホールの端には主だった貴族が並び、ギフテッド騎士団の隊長と副隊長もいる。

 

 数段の高さがある奥では、中央の玉座に国王の姿。

 

 作法に従い、真ん中ぐらいで片膝をついて待つ。

 

 低い男の声が、静かなホールに響く。

 

「ララ・リーメルト……。貴様に二旗隊を任せたのは、間違いだったようだ」

 

 続いて、感情的な若い男の声。

 

「貴様が裏切ったせいで、高貴なる私が捕虜となったのだ! 見よ! この王都までも蹂躙された! 楽に死ねるとは思うな!」

 

 国王が、隣で絶叫した息子を窘める。

 

「落ち着け、ティエリー! だが、これで分かっただろう? リーメルトよ、王国の一部を任せた信頼を裏切り、帝国にどのような報酬を約束された? 聖女リナは奴らの手の内だ。王子を捕虜にされたことで、外交としても不利! サーヴァス平原で多くの将兵と物資が失われ、王都も半壊したのだ……。貴様は、どのように償う? 申してみよ!」

 

 長い銀髪と童顔の美少女。

 

 片膝をついているララは、顔を上げた。

 

「無実のボクを悪者にして、お前らは知らんぷりだろう?」

「……貴様!」

 

 怒気を発しながら剣の柄に手をかけたり、立てていた槍を前へ向ける近衛騎士。

 

 帯剣している騎士も、同じく。

 

 ギフテッド騎士団の隊長と副隊長も、戦闘準備。

 

 しかし、他ならぬ国王が、片手で制するジェスチャー。

 

「良い! こやつは、どうせ助からん……。続けろ」

 

「ありもしない罪状で、書類と証人がそろっているんだね? たいしたもんだよ! その有能さを、サーヴァス平原でも活かしてくれ」

 

 敬意が全くないララは、立ち上がっての発言。

 

 いっぽう、国王も、肘掛けに体を預けつつの返答。

 

「ふんっ! その指揮官が貴様だろう? これだけの犠牲を出して、我が息子を捕虜にされながらも、おめおめと帰りおって……。殊勝な言葉があれば、命は助かっただろうに! ギフテッド騎士団の名誉のために、という考えはないのか? 貴様1人の問題ではないぞ?」

 

「ボク1人でどうにかしろと言うのなら、すぐに玉座から降りなよ? その権限がないんだもの」

 

 苦笑した国王は、ワガママ娘に接するに言う。

 

「口の減らん奴だ……。貴様がすぐ八つ裂きにされないのは、聞きたいことがあるからだ! サーヴァス平原から何者かが空に飛び立ち、この王都へ飛んできた飛空艇と呼ばれる兵器を残らず落とした。どうやら、貴様が親しい人間のようでな?」

 

 知らない間に、とんでもないことに……。

 

 それを知ったララは、眉をひそめつつも、平静をよそおう。

 

「心当たりがないけど?」

 

「マリカ・フォン・ミシャールだ! 目撃者がいた……。エレメンタル騎士団の団長! 説明しろ!」

 

 壁際で控えていた集団から前に出てきた男が、バッと頭を下げた。

 

「ハッ! 今回の王都防衛で活躍したミシャール伯爵令嬢は、風の精霊シルフィードそのものか、器として選ばれたと思われます。我らエレメンタル騎士団の管轄ゆえ、即時引き渡しを!」

 

 鋭い眼光だが、老齢の男。

 

 そちらを一瞥したララは、国王に向き直る。

 

「マリカちゃんが? 冗談キツい……。ミシャール伯爵に聞けば?」

 

 ため息をついた国王は、玉座で座り直す。

 

「言われんでも、とうにやった! 逆に聞かれる始末だ……」

 

「彼女は今どこに……知っていたら、ボクを脅さないか」

 

 エレメンタル騎士団の団長が、今にもララを掴みそうな勢いで叫ぶ。

 

「無様に負けて王都も破壊された以上、シルフィード様のお力が必要なのだ! 貴様の態度によっては、うちで保護しても構わんぞ?」

 

 騎士団長ごときが口をはさむのは、不敬だ。

 

 ララは、ちらりと国王を見た。

 

 けれども、煌めく冠を頭にかぶった老人は、つまらなさそう。

 

(打ち合わせ済み……。劇場の役者になれば?)

 

 こいつらの頭の中では、世界を構成する四元素の1つが具現化したうえ、帝国軍を一蹴できる戦力と知り、皮算用が進んでいるらしい。

 

 風の精霊シルフィードの武力で脅し、有利な外交、あるいは侵略……。

 

(こいつらの計算には、1つミスがあった!)

 

 全員の注目を浴びたララが、それを教える。

 

「あのさあ……。そもそも、世界の一部である風の精霊だよ? どうして、人間ごときが管理できると思ったの?」

 

 それを合図にしたかのように、謁見の間で地震。

 

 いや、王城そのものが震え始めた。




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