【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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第34話 やっぱり愚息が悪いな! 責任を取らせよう!

――精霊が目覚めた時に、世界は滅びる

 

 ララ・リーメルトは、聖女リナの発言を思い出す。

 

(世界の守護者か……。マリカちゃんは、浮世離れしたところがあったけどさ?)

 

 風の精霊、シルフィード。

 

 サーヴァス会戦でアーデンティア帝国を一蹴したのも、そのシルフことマリカだと思われているが――

 

(実際には、ティル君だ! マリカちゃんの言動から、あの子に加護か、似たような力がある?)

 

 マリカが聖女リナの護衛をやめ、王都へ舞い戻ったことで、飛空艇を撃墜した。

 

 真実は、こうだ。

 

 ララが考えをまとめる間にも、謁見の間は揺れ続ける。

 

 すると、玉座に座っている国王が叫ぶ。

 

「分かった! リーメルト隊長が帝国に通じて裏切った情報は、誤りだったようだな?」

 

 さっきと正反対の発言をした途端に、揺れがやむ。

 

 密かに息を吐いた国王が、全員の注目を浴びたまま、ゆっくりと話す。

 

「城を壊されては、かなわん! 風の精霊シルフィードとの関係が分かっただけで、十分……。サーヴァス平原での大敗の原因は、やはり総指揮官で捕虜となった愚息にあったか」

 

 ティエリー・レ・サクリフィ王子が、隣で腰を浮かせる。

 

「ち、父上!?」

 

「何を驚いておる? 貴様が主導しての会戦だったであろう?」

 

 手の平がロボットのように回転し続けている国王に、げんなりするララ。

 

(ここまでくると、逆に清々しいね? ボクとの会話もなかったことにする気か!)

 

 しかし、助かったのも事実。

 

 先ほどの発言だけで、不敬罪による処刑。

 

 再び片膝をついたララに対し、壁際にいるギャラリーの中から反論する声。

 

「お、お待ちください、国王陛下! ティエリー王子に、今一度のチャンスを! シルフィード様が見目麗しい乙女ならば、王子殿下とのご婚約がふさわしいかと! これは敗戦ではなく、苦境に陥った殿下をお助けするために降臨されたシルフィード様との恋の物語でございます」

 

 どうやら、王子の派閥らしい。

 

「よくも、言えた……」

「ティエリー王子のせいで、どれだけの被害が出たと」

 

「我らの教義に、ズケズケと……」

 

 白い目で見る貴族、あるいは、文官や武官だが、それに同意する連中も。

 

「素晴らしい、お考えです!」

「マジックソード学院に足を運ばれた王子殿下を見初めたのでしょう」

 

 ワイワイと騒がしくなりかけた時に、カンカンと、国王の侍従が鳴らした。

 

 静かになる。

 

 それを確認した後で、国王は口を開いた。

 

「色々な意見があろうて……。余は、臣下の考えを否定しないぞ? いずれにせよ、多くの犠牲が出た! リーメルトの嫌疑が晴れたゆえ、二旗(にき)隊の隊長を続けることを許す。副隊長も同様とする! 会戦に出た一旗(いっき)から三旗(さんき)に休暇を取らせると同時に、他の隊で王都の警護と防衛を行え! みな、大変だろうがよろしく頼むぞ?」

 

 ハハッ! と、畏まる面々。

 

 にやりとした国王は、独り言のように付け加える。

 

「ティエリーが風の精霊シルフィードに求婚したければ、すればいい……。だが、余は中立であり、今の時点ではティエリーが責任を取るべきという考えである。二旗の隊長と副隊長は、下がれ」

 

 途中から、風の精霊と見なされたマリカ・フォン・ミシャールの争奪戦へ。

 

 誰もララを糾弾せず、その気もない。

 

 謁見の間を後にしたララに、さっそく売り込んでくる奴ら。

 

「リーメルト様! ミシャール伯爵令嬢をご紹介していただきたく――」

「悪いけど、疲れているんだよ……。二旗の立て直しがあるから、他の人も書面で申し込んでくれ! あとで返答する」

 

 その宣言で、金魚の糞みたいにゾロゾロとついてきた連中が散る。

 

「承知しました! では、後ほど……」

「あなた様の会戦における勇姿、ぜひ拝見したかった! それでは」

 

 調子のいい社交辞令を並べつつ。

 

 呆れた副隊長のナスターシャ・フィルスが、奴らの背中を見ながら、ぼそっと呟く。

 

「何を考えているのでしょう?」

「……勝ち馬に乗ることだよ! 今は、マリカちゃんに乗ることかな?」

 

 唐突な下ネタだが、ナスターシャに言い返す気力はない。

 

「とにかく、二旗の現状把握ですね……」

 

 山のように届いた封書を積んだまま、2人は部隊の立て直しに明け暮れた。

 

 手のひら返しで、また国賊になりかねない身。

 

 封書を開けて、斜め読みする時間すら惜しいし、自分たちを見捨てた奴らの相手をする気もない。

 

 その一方で、王都に二旗隊がサーヴァス平原で支えたことの事実が伝えられ、庶民も手の平を返した。

 

 他の勢力も、降って湧いた風の精霊を巡り、慌ただしく動き出す。

 

 しかしながら、王子派閥の貴族の屋敷では、奇妙な現象が起きていた……。

 

 

 ――王都にある屋敷の1つ

 

 風が吹かない。

 

 そうなったら、どうなるのか?

 

 平たく言えば、サウナと同じ状態になる。

 

 臭いは籠もり、蒸発した水が滞留することで、耐えがたい環境が続くのだ。

 

 滞在している当主は、ダンッと、肘掛けを叩いた。

 

「ええいっ! 今日もか!?」

 

 立ったままで控えている執事が、頭を下げた。

 

「申し訳ございません、旦那さま……」




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