【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
(旧題:剣と弓の世界で俺だけ魔法を使える~最強ゆえに余裕がある追放生活~)
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第4話 「俺、除籍されるから!」と言いに行く気まずさ

 マジックソード学院で、邪神のように扱われる俺。

 

 不合格になった追試を担当した試験官のおかげで、聞こえよがしに嫌みを言う奴もいない。

 

 いたらいたで、5階ぐらいの差があっても駆け付け、そのまま男女関係なく全力のパンチを頭に打ち込むが……。

 

 俺の友達は、自分の拳だけ。

 

 殺気立ち、目が据わっている俺に、食堂のおばちゃんはいつもより大盛にしてくれて、向かった先のテーブルにいる奴らは謝りながら逃げていく。

 

 学院で札付きの不良も、俺と目が合ったら、泣きながら謝っていた。

 

 金がない騎士爵の息子とあって、学生寮にある私物は限られている。

 

 高位貴族や成金は、召使いを控えさせつつも、特注の家具やらを運び込んでいるが……。

 

 ともあれ、俺は1日も経たずに、ここを立ち去る準備を終えた。

 

 だが、それはいい。

 

 今は、どうでもいいんだ……。

 

 殺風景な自室で、備え付けの学習デスクに向かいつつ、独り言。

 

「親父に、何て言おう?」

 

 それよ!

 

 わざわざ手紙で最終勧告をしてきた、親父。

 

 間違いなく、勘当される。

 

「くそっ! 騎士爵になれなかったら……」

 

 口にしながらも、ふと思う。

 

「あれ? 田舎の騎士爵って、そんなにいい立場だっけ?」

 

 他国と戦争になっても攻められないであろう、辺鄙な土地にある小さな村。

 

 年功序列で気を遣い、上の貴族にも太鼓持ち。

 

 それでいて、役得と呼べるものはない。

 

「……ちょうど良かった?」

 

 どうせ、地元の村娘の誰かと政略結婚だ。

 

 ロリならいいほうで、下手をすれば、二回りは違う未亡人とかに。

 

 粗末な椅子で後ろにもたれつつ、天井を見た。

 

「除籍された後は、日銭を稼ぎながら旅するかな?」

 

 そう考えたら、せいせいする。

 

 とはいえ、最低限の義理を果たさなければいけない。

 

「親父に説明することが、最後の親孝行か!」

 

 学院に関する費用や生活費について、礼を言うべきだ。

 

 費やした分を返せ、と言われた場合は、親父の態度による。

 

「勘当はともかく、集金した後に放り出すのは都合が良すぎるからな……」

 

 あの脳筋に腹芸ができるとは、思えない。

 

 村で働きながら返すことは不可能で、どっちみち、出稼ぎだ。

 

 同調圧力なんぞ、あの村の中でしか通用しない。

 

「俺が納得した場合にのみ、できる範囲で返済しよう」

 

 家族と故郷がなくなれば、必然的に義務もなくなる。

 

 どうするのかは、俺の意志で決めること。

 

「実際に会う前に、相談しておくか!」

 

 

 いつも通りに会った、マリカ・フォン・ミシャール。

 

 こいつだけ、態度を変えない。

 

 追試の前日に訓練していた場所で、話し合う。

 

 俺の意見を黙って聞いたマリカは、頷いた。

 

「いいんじゃない? どうせ勘当されるし、あなたが決めればいい」

 

 村へ行って、親父と直接話すことで、肯定的だった。

 

 座り直したマリカが、思わぬ発言をする。

 

「1人だと言いにくいだろうから、私も同行する! 学院には、休暇を申請済み」

「はあっ!? 実家に報告されるぞ?」

 

 チッチッと指を振ったマリカが、笑顔で説明する。

 

「大丈夫よ! お父様は、私に甘いから!」

 

 それ、男と一緒に旅することを含めているよな?

 

 心の中でツッコミを入れるも、こいつは一度言い出したら引かない。

 

「別に、いいけどさ?」

「……ところで、旅費はあるの?」

 

 あっ!

 

 よく考えたら、故郷の村までの旅費がない。

 

 仕事がある大きな街へ戻ることを考えたら、往復分だ。

 

 冷や汗を流す俺に、笑顔のマリカが首をかしげる。

 

「心配しないで? 私が出してあげるから……」

 

「そ、そうか! あとで返すよ」

 

 俺の顔を見たままのマリカが、スーッと、頭を戻した。

 

「私、ずっと飼いたかったペットがいるの!」

「突然、何だ?」

 

 驚いている俺に、目を細めたマリカが話を続ける。

 

「もうすぐ、飼えそうだから……」

 

 お小遣いを溜めていたのか、入手が難しいのか。

 

 不思議に思っていると、俺をジーッと見ているマリカが呟く。

 

「うん、もうすぐ……」

 

 怖くなってきた俺に対して、普段の態度に戻ったマリカが尋ねる。

 

「そういえば、あなたのお父様には?」

 

「学院から早馬を出したって! 追試の面接官に聞かれたけど、先に知らせたほうがいいだろ?」

 

 マリカは自分の指で長い髪のはしを触りつつ、首肯した。

 

「そうね! となれば、村へ行ったら囲まれる?」

 

「ありそうだ……。行きたくねえ!」

 

 腕を組んだマリカが、忠告する。

 

「すぐに言わないと(こじ)れるし、あなたの中でもケジメをつけられないわよ? 変に美化したあとで罵倒されれば、ムダにダメージが大きいし」

 

「それな? 分かったよ!」

 

 

 マジックソード学院の会議で、俺の除籍が決まった。

 

 これにより、俺は名実ともに無関係。

 

 見送りに来てくれた、追試の試験官が言う。

 

「君が二番目に戦ったフィルス君ですが、もう会えないことで落ち込んでいます! ガイアルドーニ君も、何だかんだで君を認めていますから! 君が思っているほど、生徒たちに嫌われていなかったと思いますよ?」

 

「はい、お世話になりました……」

 

 頭を下げた俺は、旅装束のままで正門を通った。

 

 会釈したマリカと共に、故郷の村へ続く道を進んでいく。




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