【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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第40話 精霊の彼女たちに感情はない(例外アリ)

 ユーリは、顔を上げた。

 

「あいつは……他人を気にしていないんだ! どんな残酷なことも、平気で行える」

 

 対面に座っている俺は、すぐ指摘する。

 

「ゲリラをしてるんだろ? 可愛くても、気性が荒くなるさ」

「そうじゃない! フランの場合は、虫を引きちぎるように殺せる」

 

 言い切ったユーリは、首を振った。

 

 理解できない俺が、反論する。

 

「待ってくれ! 今のフランの態度が、全て演技だと?」

 

「説明が難しい……。というのも、お前は知らないんだ。あいつの普段の姿を」

 

 情報を整理した俺は、考えながら口にする。

 

「えーと……。俺に対してだけ、人間味があるのか?」

 

「そんな感じだ! お前が見聞きする範囲では、俺が知っているフランは出てこないだろう。いくら説明しても、お前には理解できんと思う。そこは気にするな」

 

 青い顔のままで、ユーリはお茶を口にする。

 

 それに釣られて、俺も――

 

(不自然に揺れている、水面……)

 

 フランソワーズが、盗聴している?

 

 風の精霊シルフィードのマリカ・フォン・ミシャールにかかれば、大気があれば盗聴もハグも暗殺も可能だ。

 

(それに比べれば、可愛いもの……。ん?)

 

 ボーっとしている間にも、ユーリが話し続けていた。

 

「そういうわけで、フランを襲おうとした男は内部から破裂した! おそらく、体内の水分を弄ったんだろ……。血液だって、ある意味では同じだ」

 

 訂正しよう。

 

 水の精霊ウンディーネも、大概だった!

 

 長くなりそうだから、口をはさむ。

 

「フランは危険で、上手く管理して欲しいってことだろ?」

 

「ま、まあな?」

 

 首肯したユーリは、必死に動揺を抑えている。

 

 俺も、妙に動いている水面を気にせず、お茶を飲んだ。

 

「いずれ耳にするだろうから、言っておく! サクリフィ王国にいた俺は、風の精霊シルフィードのマリカと一緒に学んでいた。色々あって、今はここにいるわけだが」

 

「風の精霊まで、いるのか!? お前は、その女を愛している――」

 

 すかさず、片手を向けた。

 

 俺のジェスチャーに、思わず口を閉じたユーリ。

 

 伸ばした指で、自分のカップにある水面をさした。

 

 次に、自分の片耳を指差す。

 

“水を通して、フランが聞いてる”

 

 伝わったようで、ユーリはガタッと立ち上がる。

 

 それを見た俺は、何事もなかったようにお茶を飲む。

 

「落ち着け! 今の質問に対する返事だが、ひとまず反帝国として最寄りの拠点を奪取する。フランと協力してな?」

 

 これなら、問題ないだろ? という視線を投げかけた。

 

 案の定、近くにある水は暴れ出さない。

 

「そ、そうか! なら、いいんだ……」

 

 顔を引きつらせたまま、ユーリも座った。

 

 けれど、お茶を飲む気配はない。

 

 仕方ないので、俺が話を続ける。

 

「昔話だから、いちいち怒るなよ? マリカが風の精霊だと知ったのは、つい最近だ。あいつが何を考えていたのか? 最初から目覚めていたのか? どちらも不明だ。でも、聞く機会はあるだろ」

 

「どうして?」

 

 理解できない表情のユーリに、説明する。

 

「フランが、マリカに俺が恋人になったと報告したらしい……。あいつは激怒したようだから、遠からず飛んでくると思う。文字通りに」

 

「はあっ!? ど、どうなるんだ?」

 

 すがるような視線のユーリに、俺は達観したままで告げる。

 

「さあ? 世界が終わるかもしれん……」

 

 俺としても、本当にキレたマリカがどう行動するのか、読み切れない。

 

 ただ……。

 

(四元素の精霊には、感情というか、共感性がないのかも?)

 

 普通の人間は、他者におきたことを自分に置き換えて、喜怒哀楽を示す。

 

 もし、精霊にその部分がないとすれば。

 

(どれだけ虐殺しても、毛ほども感じない……)

 

 それは、世界のバランスを保つための最終兵器。

 

 女は周りに合わせるのが上手いから、普通の振りをするのは難しくないだろう。

 

(自分の感情を揺さぶる存在が、たった1人しかいないとすれば……)

 

 そこに、妥協はない。

 

 邪魔をするのなら、殺してでも奪い取る。

 だって、代わりがいないから。

 

「ユーリ? 四元素の精霊は、そもそも世界を滅ぼすために存在しているのかもしれん」

 

「なっ! おい、それは本当――」

「思いついただけの仮説だ! ともかく、俺も早めに動いたほうがいい。命を助けてもらって、その恩人をマリカの怒りの余波で吹き飛ばしたでは、笑い話にもならん! 最悪、俺があんたらと離れれば、その意味での巻き添えはない」

 

 息を吐いたユーリは、ようやくリーダーらしい顔に。

 

「そうだな……。どうするにせよ、まともな拠点を奪還しないと」

 

 ここで、世間話に移った。

 

(反帝国として勢力を増やしたら、俺をどうするのか、怪しいもんだ……)

 

 ユーリは、話が分かるやつだが。

 

 俺を犠牲にして、全体を栄えさせる決断をしても、不思議はない。

 

(それに、マリカの性格から、帝国ごと吹き飛ばしてもおかしくない!)

 

 問題は、彼女とフランソワーズが戦った場合に、どちらが勝つのか?

 

 戦わずに和平は、まず無理だ。

 

(そういえば、アーデンティア帝国の捕虜になった聖女リナとシャーロットは?)

 

 幸薄そうな女子2人までは、手が回らない。

 

 マリカにとっても、助ける義理はないだろう。

 

 彼女たちの幸運で、上手くいくかどうかってところ……。




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