【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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第42話 上には上がいる

「まあ、いいだろう! 駐屯地の視察も、立派な任務だ」

 

 偉そうな男の声に、戻ってきたばかりのフィラブー守備隊の司令である中年男はガチガチに固まったまま。

 

「ハ、ハッ! ありがとうございます!」

 

 少佐でありながら、この態度。

 

 それも、そのはず。

 

 相手は、皇帝の直属である親衛隊の中隊長だ……。

 

 中年男より下の階級である、大尉。

 

 だが、見捨てられたフィラブー守備隊とは違い、皇帝とも話せる中央のエリート。

 

 目の前の若造を怒らせれば、部隊長である大佐クラス、その上にいる大将すら出てくるだろう。

 

 大尉は、見ただけで分かる親衛隊の軍服のまま、向き直った。

 

「それで、だ! 我々がサーヴァス会戦で捕虜にした聖女リナとシャーロットについて、貴官が預かってくれたまえ!」

 

 中年男は、線が細いリナと、巨乳のシャーロットを見た。

 

 捕虜と言ったが、現状では貴族に準じる扱いのようだ。

 

 それなりの動きやすいワンピースと、最低限の装飾品を身につけている。

 

 連れ帰った女2人と合わせれば、地元のくたびれた娼館に金を払うよりも充実したストレス発散になるだろう。

 

 そう思った中年男に、大尉が告げる。

 

「貴様が理解できるよう、説明してやる! 聖女リナは、四元素の精霊を鎮められる貴重な人材だ! シャーロットは、その付き人……。現在、この辺境ではタスレドル砂漠に潜伏している反政府勢力に手を焼いており、つい最近も砂上艦2隻が返り討ちにあった! その原因として水の精霊ウンディーネの助力があると、我々が潜り込ませているスパイからの報告」

 

 残念ながら、スパイとの連絡は途絶えた。

 

 付け加えた大尉は、息を吐く。

 

「聖女リナが水の精霊ウンディーネを押さえるか、無力化することを期待している! そもそも、彼女はリナ・ディ・ケーム公爵令嬢だ! くれぐれも、失礼のないように」

 

 中年男が、恐る恐る、質問する。

 

「大尉殿? こ、ここに滞在するのであれば、公爵令嬢にふさわしい待遇が必要かと……」

 

「そうだな! 貴官の責任は、重大だ……。そこの女たちは?」

 

 大尉に見られた女子2人は、すぐに答える。

 

「第35駐屯地に赴任した、技官のイヴリン・リュトヴィッツです!」

「同じく、ベティ・フォン・トロッケルです」

 

 思い出したように、大尉が頷く。

 

「貴様らが……。よろしい! お前たちに、聖女リナの世話係を命じる!」

 

 緊張したまま、イヴリンが言う。

 

「は、発言の許可を願います!」

「……言ってみろ」

 

「私たちは、フィラブー守備隊の指揮下にあります! 聖女リナの世話をする際の命令系統の一本化をお願いいたします!」

 

 立ったままで考え込んだ、大尉。

 

「野戦任官で、貴様らを少佐待遇としよう! 中央の開発研究所の所属とするため、守備隊の命令を聞く必要はない。ちなみに、聖女リナとシャーロットは、親衛隊が保護したままでの貸し出しだ! その意味を忘れるなよ?」

 

 ジロリと見られた中年男は、震え上がった。

 

 それでも、必死に訴える。

 

「ですが、うちに公爵令嬢を迎えられるほどの予算は――」

「我々の移動にかかった費用は、請求しない。さらに、水の精霊ウンディーネへの対抗策も渡した。無償でな?」

 

 この上、まだ要求するのか?

 

 見下すように告げた大尉に、中年男は黙った。

 

「貴官も、帝国軍としての責務を果たせ! 以上だ」

 

 

 ◇

 

 

 フィラブー守備隊の基地。

 

 それでも、灼熱の砂漠に近いゆえ、白い壁の建物が並び、要塞があるだけ。

 

 敬遠された女子4人は、基地の一部を宛がわれての放置プレイへ……。

 

 親衛隊に釘を刺された以上、タダで抱ける娼婦にできず。

 整備員としても、使えず。

 

 急いで掃除した後で、お茶を淹れた。

 

 簡素だが、上級将校が滞在するゲストルームらしい。

 どれだけ古くても、質の良さを窺える。

 

 自己紹介を終えての女子会は、和やか。

 

 親衛隊の肝いりのため、食堂へ行けば、メシをもらえる。

 

 荒っぽい男所帯ゆえ、護身用の拳銃を持っていて帝国軍の少佐待遇であるイヴリンとベティが4人分を取りに行き、食器を返す日々。

 

 ベティが、思わぬ偶然に驚く。

 

「へー! あんたらも、ティルの知り合いか……。世間は狭いなあ!」

「あの会戦にいれば、おかしくはないですけどね?」

 

 イヴリンが、突っ込んだ。

 

 いっぽう、リナは息を吐く。

 

「ティルさんは、無事でしょうか?」

「……サーヴァス会戦は、あいつのおかげで勝ったようなものだし」

 

 シャーロットの発言で、何とも言えない雰囲気に。

 

 イヴリンが、尋ねる。

 

「あの……。サクリフィ王国には風の精霊シルフィードがいると、聞きましたが?」

 

「私たちも、詳しくは知りません」

「……訳も分からず、帝国の捕虜になってココだもの!」

 

 

 ――深夜

 

 ヴィ――ッ! ヴィ――ッ!

 

『当基地は、反政府勢力に襲撃されている! 水の精霊ウンディーネも含まれている。ただちに迎撃されたし! これは訓練ではない!』

 

 サイレンと放送により、女子4人もたたき起こされた。

 

「な、何ですか?」

「……敵よ! すぐに着替えて!」

 

 反応が鈍いリナと、シャーロット。

 

 それに対して、イヴリンは寝巻のままで軍靴を履いている。

 

「2人とも、靴だけ履いてください――」

 ドンドンドン!

 

 バンッと、ドアが蹴破られる音。

 

 外からの人工的な光が差し込むだけの部屋に、短めのマスケット銃を両手で持った兵士たちが雪崩れ込んだ。

 

 その後ろから入ってきた士官が、開口一番で叫ぶ。

 

「聖女リナ! 貴様を殺せば、四元素の精霊はその力を失う! 今こそ、その役目を果たせ! 構えっ!」

 

 金具が当たる音、重いものが擦れる音が響き、横一列に立っている兵士たちが銃口をリナたちへ向けた。




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