【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」
第44話 戦術を水に流す


「正直なところ、決めかねている……」

 

 俺が言ったら、捕虜になったフィラブー守備隊の司令である中年男はキョトンとしたままで言い返す。

 

「そう言われても……」

 

 困った俺は、傍にいるユーリを見た。

 

 首を振った奴が、言い返す。

 

「俺は、ゲリラの親分に過ぎねーぞ? だいたい、殺さずに占領するって案を出して、ほぼ実現したのはお前だ! どうするんだ?」

 

 全員に見つめられて、言いながら考える。

 

「捕虜にしておいて見せしめというのは、訳が分からん! 食料は、帝国からの配給か?」

 

 フィラブー守備隊の司令が、頷いた。

 

「そうだ! 俺たちが平然と受け取る手もあるが――」

「やめておこう! お前たちを養うのは無理だろうし、餓死させるのは忍びない。武装解除した後なら、近くの帝国軍へ行ってもいいぞ?」

 

 ユーリは責めるような視線だが、もう逃がすしかない。

 

(今になって殺すぐらいなら、捕虜にするべきじゃなかったし……)

 

 退屈そうにしているフランソワーズが、説明する。

 

「ウンディーネである僕が、土地の改善をしてるけどー! 農作物とかは、土の精霊ノームの分野だし」

 

「それでも、助かっているんだろ?」

 

 俺の確認に、ユーリは頷く。

 

「ああ! 水に困らないだけで、俺たちは地元の英雄さ! ただ、食い物をすぐに調達するのは無理だぞ?」

 

「放置すれば、内部から崩壊する……。手近にある補給基地か、倉庫を襲うしかない」

 

 フランソワーズが、肩をすくめた。

 

「周りの帝国軍が、どんどん集結しているよ? こっちに攻めてくるんじゃない?」

 

 ガタッと立ち上がったユーリは、叫ぶ。

 

「ど、どれぐらいだ!?」

 

「うーん? 戦車という乗り物が10以上、兵士は500人以上、武装はマスケット銃、投石器、クロスボウ……」

 

 けっこうな部隊だ。

 

 口をポカンと開けた中年男が、思わず呟く。

 

「は、早すぎるぞ?」

 

「襲撃を予想して、動いたんじゃないか? 広い砂漠を移動し続ける砂上艦よりも、特定の場所におびき寄せたほうが叩きやすい」

 

 俺の推理に、全員がこちらを見た。

 

「進行ルートにバリケードを築くか、無理なら溝を掘ることで――」

「言い忘れたけど、ここに到着したよ?」

 

 フランソワーズが言うや否や、砲撃音と、着弾による爆発。

 

 地面が揺れて、家具も震える。

 

 フランソワーズに叫ぶ。

 

「迎撃するぞ! 俺とお前しか、まともに戦えないだろう!」

 

 焦ったユーリが、俺に叫ぶ。

 

「お、おい? こっちは、どうすればいいんだ!?」

 

「敵に突入されないように牽制しつつ、無理なら退いてくれ」

「ええっ……」

 

 文句を言ったユーリを無視して、ウキウキしているフランソワーズと一緒に外へ。

 

「あはっ! これ、デートだよね?」

「……戦争だぞ?」

 

 ツッコミを入れたが、フランソワーズは笑顔のまま。

 

 こいつ、ヤバい。

 

(うん、知っていた!)

 

 とりあえず、状況の把握。

 

(……風の権能じゃないから、調べにくい)

 

 ちなみに、それを呟いた瞬間に、隣でニコニコしているフランちゃんが激怒して、帝国軍より恐ろしい敵になる。

 

 砲撃の音から、移動できる範囲に戦車か砲台があって、ひたすらに撃っているようだ。

 

 周りに、上空から降り注ぐ砲弾が落ちてくる。

 

 建物や設備がどんどん壊れて、騒ぐ味方。

 

「ユーリは統率できないだろう……。停戦交渉をするにしても、包囲している敵を撤退させる必要がある」

 

「うん! あいつらの水分を全て抜く?」

 

 サキュバスどころの騒ぎじゃない……。

 

 そう思いつつ、指示する。

 

「あいつらの兵器は、スチームで動かしているんだろ? そこの水分だけなくせるか?」

 

 首をひねったフランソワーズは、腕組み。

 

「そんなピンポイント……。やっても、いいけどさ? たぶん、漏れる」

 

「上手くやったら、ご褒美をあげるぞ?」

 

 頭を左右に揺らしたフランソワーズは、悩ましげに声を出す。

 

「無理ぃ! 一部を対象外にするか、間違って人の水分を抜いたら、怒るんでしょ?」

 

「要するに、広範囲で一気にやるのは得意と?」

 

 叱られた忠犬のように涙目のフランソワーズは、一生懸命に頷く。

 

「下の地面をぬかるみにして、奴らの機動力をなくせ! 一時的でいい」

 

 笑顔になったフランが、答える。

 

「それなら、できるよ! 後は?」

「……俺が火力のある戦車や、車とかいう馬車を叩く」

 

 首肯したフランソワーズは、外周にいる帝国軍のほうを向いた。

 

 片手を振ると、彼らがガクンと沈む。

 

「できたよ!」

 

「よくやった! じゃ、行ってくる!」

 

 

 今は、水の権能だ。

 

 足の裏に沈みこまない弾力にした液体を張りつかせつつ、接している地面の上などを滑り出す。

 

(地面をぬかるみにして、俺も一緒に足を取られたら、何の意味もない!)

 

 一瞬で視界が変わりつつ、マスケット銃を持つ歩兵ですら足首を地面に埋めている光景を見る。

 

 風の権能よりも遅いが、水のシールドを何重にも重ねれば、やつらが慌てて発砲してくる弾丸を止めるか、そらす程度は可能だ。

 

 基地の外周をハイスピードで滑りつつ、目についた戦車、破壊力がありそうな武器を水の刃で切り裂いておく。




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