【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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第45話 飛行船という、上空の密室

 フィラブー守備隊の基地を包囲していた部隊。

 

 水の精霊ウンディーネによる権能で疑似的に地面の上を滑りつつ、泥沼に変えた地面に埋めることで止めた奴らを無力化。

 

(前にも戦ったからな……)

 

 サーヴァス会戦で蒸気機関を叩いたら、全体の戦力が一気に下がった。

 

 今回も、主要な動力を叩きつつ、野戦司令部らしき場所を制圧したことで終わる――

 

 ヒュウウウウッ

 

 耳をつんざくような風切り音がどんどん近づき、地面が大きく凹みつつ炸裂。

 

 それも、いたるところで。

 

 基地のほうにも着弾していて、悲鳴や破壊音が聞こえる。

 

 立っている俺の耳に、空を見上げている指揮官の呟き。

 

「バカな……。味方ごと!?」

 

「まだ、何かあるのか?」

 

 俺のほうを見た指揮官は、苦々しげに、顔を背けた。

 

 しかし、素直に答える。

 

「おそらく、上空にいる飛行船だ……。爆弾を落としているのだろう」

 

「ふーん?」

 

 俺たちが見上げている間にも、大きな物体が降ってきては爆発する。

 

「フラン、もういい! こいつらを動けるようにしてやれ!」

 

 いきなり叫んだ俺に、周りが注目する。

 

 近くの水たまりが揺れて、フランソワーズの可愛い声が響く。

 

『ハーイ! ティルは?』

 

「上に飛んで、飛行船を叩く! お前らは、離れたほうがいいぞ?」

 

 唖然としたままの指揮官たちに告げるや否や、下にゴムのような弾力がある細長い部分を作って、勢いよく背中から落ちる。

 

 沈み込んだと思えば、次の瞬間に視界が青一色に変わった。

 

 

 ◇

 

 

 飛行船「スレッジハンマー」

 

 前後に細長い風船のような巨体で、下部に吊り下げられたブリッジ。

 

 パノラマビューの窓があるところに、偉そうな軍服を着た男が立っている。

 

「ああ~! これで、味方殺しかよぉ……」

 

 傍に立っている若い女が、すぐに突っ込む。

 

「船長、士気が下がることは言わないでください!」

 

「分かってるって……。爆弾は?」

 

 船長の命令に、副官か参謀らしき女が答える。

 

「ほぼ、落としました! まだ上空にいますか?」

「……帰るよ! 取ーりかじ!」

 

 自棄になった船長の号令に、女が合わせる。

 

「取舵いっぱい! 戦域から離脱しま――」

 ドオオンッ

 

 ぶつかる物がない空で、ブリッジが揺れた。

 

 船長が、すぐに命令。

 

「状況!」

 

 操舵士、航海士などが、すぐに動く。

 

「敵の攻撃が当たった模様!」

「……左舷の動力に、ダメージ!」

 

 けれど、伝声管から、驚くべき報告。

 

『こ、後部より、侵入者! 制圧できませんっ!』

 

 伝声管に取りついた船長が、叫ぶ。

 

「敵の規模は!?」

『……ひ、一人です! ひぃいいいっ!』

 

 ドタバタとした音、悲鳴が伝わってくる。

 

「おいっ! どうした? ……くそっ! 総員、白兵戦よーい! 本船の後部に敵が乗り込んだ! 各自で迎撃しろ! 攻撃を許可する!!」

 

 別の伝声管に叫んだ船長は、自身も腰のホルスターからリボルバーを抜いた。

 

「お前らも、護身用の武器をチェックしろ! すぐに、ここへ来る!」

 

 慌ただしく、ブリッジ要員がリボルバーを抜く音。

 

 支給されていないクルーは、船長と副長が持っていたキーで解錠された武器庫から短めの剣、同じく取り回しがしやすいマスケット銃を手にする。

 

 交代で、大慌ての準備。

 

 特に、先込め式のマスケット銃は、弾丸を前から詰めたうえ、チューブによる蒸気の充填も行う。

 

 蒸気圧をチェックした際の、プシューッという甲高い音と高温が、嫌でも実戦を意識させた。

 

 その間にも、各ポジションと繋がっている伝声管が、敵の接近を知らせてくる。

 

 人がいるのは、飛行船の下部にある船体だけ。

 当たり前だが、逃げ場はなく、隠れられるスペースもない。

 

 ブリッジの空気がどんどん張り詰めて、唯一の出入口のドアに銃口が向く。

 

 次に入ってきた者は、誰であろうと助からない。

 

 前線の兵士ですら、誤射は珍しくない。

 まして、航空機の士官となれば……。

 

 暴発していないだけで、練度が高いほう。

 

 ガチャン! ギィイイッ

 

 気圧を保つように設計されたドアが、ゆっくりと開く。

 

 それを合図に、誰かが発砲して、残りが続いた。

 

 耳がおかしくなる轟音がブリッジを支配するも――

 

 黒い人影はいきなり上に跳ね、天井からすごい勢いで落下する。

 跳ねるゴムボールのような、人外の動き。

 

 跳弾による混乱もあり、全員が敵の位置やコンディションを確かめようと――

 

 青少年といえる侵入者は、1人の前にダンッと着地しながら、反動の勢いで武器を持つ腕を蹴り上げた。

 

 白兵戦に慣れていない人物は武器を手放し、続く打撃で後ろへ吹っ飛ぶ。

 

 それに気づいたクルーで、剣を持つ者が斬りかかる。

 

 だが、彼が片手を振るえば、その剣は半ばから斬り飛ばされた。

 

 唖然とするクルーは、襲撃者がそのまま回転しての蹴りでやはり宙を舞う。

 

 と思えば、何の予備動作もなく、姿が消えた。

 

 人は、想像して観る。

 膝を曲げたバネによる跳躍、体の向きを変えての走り出し。

 

 けれども、彼は違う。

 棒立ちのままで、いきなり消える。

 

 そのあり得ない動きは、戦い慣れていない士官たちを翻弄。

 もはや、どこにいるのかも不明だ。

 

 気づけば、後ろから首筋にダガーを突きつけられた船長の声が響く。

 

「こ、降参する! お前らも、武器を捨てろ!」




過去作は、こちらです!
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