【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった! 作:初雪空
低空に浮かぶ飛空艇で、爆発が続く。
地面から見上げている俺は、言葉もない。
「まあ、勝ち目ないよな……」
ウーウー! とサイレンの音が鳴り響きつつ、グラリと傾く飛空艇。
落下し始めるも、不自然に俺たちがいるエリアから離れつつ……。
やがて、何もない荒野へ、中にいる奴らが死なないような着陸のように接地。
それですら、舞い上がる土や砂埃で見えなくなり、地震のような揺れが伝わってくる。
砂漠になりかけている荒野に、新たな城塞ができたような影。
(これで、めでたしめでたし……。とはならないんだよな)
息を吐いた俺は、すぐに始まる惨劇に思いを馳せた。
今のうちに、逃げる?
冗談!
風と水の精霊から、逃げられるわけがない。
そもそも、体内にどれだけ水分があると思っている?
◇
小柄なロリだが、そこそこ胸があるベティ・フォン・トロッケル。
そして、長身で胸ペッタンのイヴリン・リュトヴィッツ。
どちらも、アーデンティア帝国で左遷されたうえに、巻き込まれた技官だ。
女子2人は、飛空艇が墜落したことで、ようやく息を吐いた。
「助かった!」
「……はい」
けれど、荒れ狂う風と空中で残像のように見えることもある少女に、見上げている2人が不安になっていく。
「ウチ、嫌な予感がしとる……」
「奇遇ですね? 私も、そうです」
首が痛くなってきたことで、地面のほうを向いたベティは、青い顔だ。
「上で暴れたのが、風の精霊シルフィードやな?」
「たぶん……」
同じくベティのほうを向いたイヴリンが、答えた。
ベティは、息を吐く。
「シルフのほうは、サクリフィ王国の貴族やったか? マズいな、これは……」
「ティルさんが、よく知っている相手では?」
イヴリンは、話し合いで解決すると告げるも――
「ちゃう! 水の精霊ウンディーネであるフランソワーズは、明らかにティルに好意があるやろ?」
「あ、はい……。そうですね」
生返事のイヴリンに、ベティが語り出す。
「ウチな? 家で、ネコを飼っていたんや!」
「はい?」
話題が飛びすぎて、驚いたイヴリン。
相方を気にすることなく、昔を振り返るベティ。
かつて、ベティの家にはネコが1匹いた。
手探りでの共同生活だが、よく馴染み、ベティも可愛がる。
ネコは帰宅したベティを出迎えて、束の間のスキンシップを楽しむ。
けれど、彼女は思う。
(餌と水は置いてあるし、遊び場も用意したけど、ウチはずっと外におる……)
ある日、名案を思いつく。
(遊び相手がいれば、ええんや!)
思い立ったが吉日、ベティは2匹目のネコをペットショップでお迎えした。
いつものように帰宅して、玄関にやってきたネコに告げる。
『今日はなー! サプライズが、あるんやで?』
そこまで語ったベティは、フッと笑う。
気になったイヴリンが、尋ねる。
「どうなったんです?」
「ウチらも、行こか! もうすぐ、分かるわ……」
達観した表情のベティは、死刑台に行くような雰囲気で、四元素の精霊の2柱が地上で向き合っている場所へ向かう。
そこは、残っている面々に親衛隊なども加えて、遠巻きに見守るギャラリーがいる場所。
幼い雰囲気の可愛いフランソワーズと向き合うは、いかにも貴族のご令嬢といった外見の美人系のマリカ・フォン・ミシャール。
遠くから見たベティは、ぼそりと呟く。
「ああ、やっぱり……。ウチが新入りネコを連れてきた時と、同じ雰囲気や!」
「だから、何があったんですか!?」
焦らされたイヴリンが、イライラした様子で聞いた。
いっぽう、首を振ったベティは、地面で立ったままで向き合う女子2人を見る。
「今、見られる……」
釣られて、イヴリンも、そちらを向く。
次の瞬間、フランソワーズが消えるように後ろへ吹っ飛び、後ろ向きに地面で跳ね続けて、彼らの視界から消える。
ドゴッと鈍い音に、パアンッ! という空気が破裂するような音……。
唖然とするギャラリーに対して、地面から噴き出た水により、フランソワーズが形成された。
今度は、獰猛な笑みを浮かべたフランソワーズが手をグッと握りしめた瞬間に、マリカが内部から破裂する。
口が半開きのままで見物するギャラリーの中で、心の準備をしていたベティが独白する。
「ウチがなー! 新入りネコを連れ帰ったら、先住ネコが唸り出したんや! そんで、新入りネコも同じように威嚇し始めて……」
その間にも、マリカに全身を風で固定されたフランソワーズが空高くへ吹っ飛ばされた。
それを追いかけたマリカが瞬間移動のように追いつき、空中で蹴りやパンチによる連撃へ。
フランも負けておらず、落下しつつも受け流し、あるいは避けつつのカウンター。
水流ジェットによる噴射で、微妙に空中機動まで。
バシバシと乾いた音が響き、器用に打撃戦を続ける少女2人。
地面に降り立てば、大きな溝を掘るような勢いで突っ込みつつ、やはり打撃や関節技へ。
ベティは、懺悔するように呟く。
「ウチは、知らなかったんやー! ネコは縄張り意識が強くて、他のネコを許容せん……。先住ネコの縄張りに他のネコが奪いに来たと見なされるだけなんて」
その間にも、少女2人の物騒なキャットファイトが続く。