【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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第50話 感情的なメスが人の話を聞いた試しはない

 俺は銃口を突き付けられたままで、悩む。

 

(フランも、やはり強いな……)

 

 空中だろうと、お構いなし。

 水と風の精霊たちが、迫力のあるバトルを繰り広げていた。

 

(で、それを見ていたら、帝国の親衛隊にとっ捕まった!)

 

 元々、敵と味方が入り乱れて、困っている状況。

 

 女子2人が、撃墜されたばかりの飛行艇や、さっきまで展開していた地上部隊を上回る戦力を見せつければ、こうもなる。

 

(俺を人質に、言うことを聞かせたほうが早いよな?)

 

 親衛隊の大尉は、告げる。

 

「君からも、あの2人を説得したまえ! 上手くいけば、まだ生かしてやる――」

「俺、マジックソード学院でマリカを怒らせたことがあってさ?」

 

 とつぜん、自分語り。

 

 目を丸くした大尉だが、黙る。

 

「あいつ、わりと容赦なく攻撃するんだよ!」

 

「ほう?」

 

 だから、何だ?

 

 冷たい視線が、そう告げている。

 

 しかし、すぐに分かるだろう。

 

 嫌でも……。

 

「俺は、今から水の精霊ウンディーネの権能を使う! あとは、分かりますね?」

 

「何を言っているんだ、お前は? どのような力があろうと、この人数に――」

 

 空中で立ったまま、お互いに向き合っていたマリカ・フォン・ミシャールと、フランソワーズ。

 

 こちらを見ていて、対照的な顔だ。

 

 マリカさんは、見覚えのある笑顔。

 

(激怒している……。あいつの分までスイーツを食べつくした時と、同じ)

 

 口元がひきつったまま、目はガンギマリ。

 

 風の精霊シルフィードだから、今の会話を聞いていただろう。

 

 上品に微笑んでいる視線だけで――

 

『ティル? あなた、この女の権能を使うの? 嘘よね? ねえ? ねえねえねえ――』

「この状況をどうにかしないと……。今は、お前の権能がない」

 

 一瞬だけ、沈黙。

 

 けれど、マリカさんは俺の耳元で泣き言を続ける。

 

(器用なもんだ……)

 

 そう思いつつ、宥める。

 

「落ち着け! とりあえず――」

『じゃあ、私の権能もつけ直す!』

 

 感情的な叫びが、声だけで俺の耳に届く。

 

 ほぼ同時に、傍に立っている大尉はホルスターから拳銃を抜いた。

 

「我々が、主導権を握っている! 殺さずに痛めつける術は、いくらでもあるぞ?」

 

 それは、脅しのつもりだったろう。

 

 片手で握る銃とやらの黒い穴がこちらを向いたから、反射的に飛びすさる。

 

 けれど、銃口の延長線上を避けつつ、距離を空けるだけの動きは、地面から少し浮かんだままで何かに思いきり押されたような吹っ飛ばしへ。

 

「くっ!」

 

 シルフの権能だ。

 

 久々に使ったうえ、完全な不意打ち。

 

 瞬く間に、俺の視界がくるくると回転しつつ、浮遊感が続く。

 

「ちいいいいっ!」

 

 使い慣れてきた水の権能で、衝撃を受け止めつつの減速。

 

 本来なら風の権能で止まるが、俺は混乱している。

 

 濡れない程度のクッション、眠るときに便利そうな弾力に包まれつつ、俺は地面に立つ。

 

 親衛隊の部隊は、俺が吹き飛んだ方向だけ、人がいない。

 というか、俺の勢いに巻き込まれて、吹っ飛ばされた。

 

 低空に立っていた女子2人は、どちらも困惑している。

 さっきまで満面の笑みだったフランソワーズも、今は悩ましい顔。

 

(俺がマリカの権能を使った後に、フランの権能も使ったから、判断に困っているのか……)

 

 ここで、さっきの大尉が騒ぎ出した。

 

「くそっ! 構わん、やつを狙え! 動けない程度にしろ!」

 

 その命令で、隊列を組み直してのマスケット銃がこちらを向いた。

 

「撃てっ!」

 

 仕方ないから、風の権能で自分を上へ飛ばした。

 

 ありえない加速によって、今度は360°の視界へ……。

 

 同時に、どこか別の世界で響いたような発砲音が、微妙にズレて聞こえる。

 

「よっと!」

 

 くるりと、視界が地上にいた時と同じ、足を下にした状態へ。

 

 空中だが、風の権能で立つ。

 

 すると、一瞬で移動したマリカが俺に抱き着いた。

 

「ああ、ティル! 信じていたわ! あんなメスガキよりも――」

 

 可愛らしい顔でビキついたフランは、空中に立ったままで、両手をふるう。

 

 壁のような水流が、襲い掛かってきた。

 

「うわっ!?」

 

 俺の正面から抱き着いていたマリカが、俺を見たまま驚き、一瞬で消えた。

 

 視界いっぱいに、水の壁がせまる。

 

 さっきまで愛を囁いていたマリカの裏切りに、無表情で水の権能を使う。

 

 ここまで、ほぼ反射。

 

 間に合ったようで、俺を含めた空間を大量の水が通り過ぎた。

 

 そして、メスの顔になったフランソワーズが飛び込んでくる。

 

「ティルー! あんな女よりも、僕のほうがいいよね!?」

 

 正面から手足で俺をホールドしたフランに対して、離れたマリカがわなわなと震える。

 

「ティル……。私というものがありながら!」

 

「ついさっき、俺を見捨てただろ?」

 

 俺のツッコミに、マリカは目をそらした。

 

 けれど、すぐに開き直る。

 

「私、ずっと学院で支えてきたのよ!? それを行きずりのデカパイと浮気旅行をするわ、今度はよりによって発育不良のメスガキでウンディーネと! 許せない!!」

 

「節操なしに女と遊んでいるみたいな風評被害は、やめろ!」




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