【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった! 作:初雪空
この世界を構成する、風と水。
四元素の2つがタイプの違う美少女となり、大地から空中までの三次元戦闘……。
(どうするんだよ、これ!)
マリカ・フォン・ミシャールが全てを吹き飛ばす突風で押し出せば、フランソワーズも負けじと、相手を貫く水の弾丸でハチの巣にする。
背中に一対ある、輝く翼は、噴射し続ける風のよう。
空に浮かぶマリカの周りが歪んでいて、強い気流が渦巻いていることが分かる。
いっぽう、フランソワーズも、幻想的に光を反射する水の羽衣を服の上から身にまとっているような姿だ。
同じように、空中に立つ。
風が吹き荒れる音に、大量の水が流れる音が混ざっていく……。
親衛隊から離れたおかげで、俺は1人だ。
先ほどの人間が巻き込まれたら死ぬだけの大暴れを見たせいか、もう狙ってこない。
シュゴオオオォォォ!
ザァアアアアッ……。
「2人とも従順になってくれれば、素直に最高だが――」
ピタッ!
音が消えた。
マリカとフランソワーズは、どちらも俺を見ている。
ガン見だ。
目が据わっているのではなく、困惑した表情。
次に、お互いで見つめ合う。
また、俺を見る。
それに釣られて、ギャラリーになった親衛隊たちも見てきた。
(え? 何だ、この雰囲気……)
とはいえ、無限ループ。
(ひとまず、あの2人を落ち着かせないと!)
休戦させないと、俺たちの寿命が終わるまで、延々と戦い続けるだろう。
「聞いてくれ! 俺はマジックソード学院で、マリカと一緒にいた。彼女の世話がなかったら、もっと早くに退学させられただろう」
「そうね!」
「…………」
それを聞いたマリカの顔が明るくなり、フランソワーズは暗くなった。
しかし、構わずに続ける。
「タスレドル砂漠では、フランに助けられた! 彼女がいなければ、俺は死んでいた」
顔が真っ赤になったフランソワーズは、もじもじする。
「う、うん……。あまり、言わないで?」
「…………」
剣呑な表情になったマリカが、頭を左右に振る。
(あいつの威嚇行動だ)
身の危険を感じつつ、説得を続ける。
「俺には、2人とも大事だ! 最終的にどうするかは別として、ひとまず落ち着いてくれ」
「あー、うん!」
「……仕方ないね」
体を動かしつつ悩んだ2人は、見つめ合う。
「じゃ、そーいうことで」
「ハイハイ」
お互いを警戒しつつも、戦闘モードを解いた。
危なげなく、地面に降り立つ。
(しかし、どうするんだ、これ?)
どちらも気にしている俺が言ったから、ひとまず休戦。
逆に言えば、何かの拍子に派手なバトル……。
「お困りですか?」
「そりゃ、困っている……え?」
おっとりした女子の声が、すぐ近くで聞こえた。
明らかに、2人とは違う。
そのままの姿勢で見れば、マリカとフランが戦闘態勢へ。
(今までとは違い、共闘するように……)
俺も、とっさに風の権能で離れようと――
ガガガッ!
地面が揺れたかと思えば、俺の四方と上を塞ぐように土の壁がそびえ立つ。
見る見るうちに、デザイン性が高い柵になった。
ムダに凝っているうえ、マリカたちが見える状態。
すると、背中から噴射する翼が一対あるマリカが、叫ぶ。
「その紋章……。スベクル共和国! 誰!?」
どうやら、第三勢力らしい。
状況が分からず、動くに動けず。
その時に、さっきの女子の声が近くで響く。
「お初にお目にかかります……。わたくしは、スベクル共和国の国土管理局で政務官を務めております、ソフィア・デュ・ロシュフォールでございます」
そちらを見ると、ワインレッドで目立つ色だが、クラシックな造形のドレスを着た少女が立っていた。
両手でカーテシーを行い、両端が持ち上がったスカートのままで上下。
優雅に戻った後で、俺のほうを向いた。
ふんわりとボリューム感のある、ライトブラウンの長髪。
前髪はセンター付近で分けられていて、顔の横にある毛束は少し長め。
(まさに、深窓のお嬢様だな……。守ってあげたい系の)
妹キャラで、知的な雰囲気の童顔。
そこにある藤色の瞳が、俺を映した。
「初めまして、ティル様……。ご覧の通り、わたくしは四元素が1つ、土の精霊ノームです!」
たおやかな少女は、マリカたちの戦いで荒れ果てた場所に咲いた花のよう――
ソフィアの背後で急成長した花々が、一斉に咲いた。
俺の視界に合わせたかのように、伸びた枝が太い線を描いていき、額縁のように四角を作っていく。
(セルフで、自画像にした!)
絵になるものの、これからどうする――
微笑んでいるソフィアが、スススと、近づく。
「失礼ですが、これまでの様子は見させていただきました……。お困りですよね、お二人を止められず」
「まあな?」
生返事をすると、ソフィアは別の方向を見た。
そちらをジッと見ているため、俺が不思議に思っていたら――
「いえ、何でもありません! あっ!」
足をもつれさせたようで、正面から抱き着いてきた。
ちょうど、ソフィアの頭にある大きな花が顔にぶつかる。
(あれ? こいつの頭に花飾りなんて、あったか――)
とても良い香りを飲み干すように吸った瞬間に、俺の意識は途切れた。