【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった! 作:初雪空
気絶したティルは、地面から伸びた土の支えが受け止めた。
同じく、土による凝ったデザインの檻の中……。
様子を見ていた女子2人は、ついに実力行使へ移る。
風の精霊シルフである、マリカ・フォン・ミシャールが、背中から一対の光の翼を噴射しつつ、叫ぶ。
「今すぐ、ティルを解放しなさい! さもないと、私が潰す!!」
「……僕もね?」
それに同意したのは、水の精霊ウンディーネである、フランソワーズ。
やはり、水の羽衣を身にまとい、キラキラと輝きながらの戦闘態勢。
ところが、野外にある土の檻に閉じ込められているソフィアは、息を吐くのみ。
「あなた方は……。ティル様の負担を考えたことがあるので?」
「えっ?」
「……ティルも、喜んでいるし」
反論したフランソワーズに、土の精霊ノームたる、ソフィアが確認。
「本当に?」
「うっ……」
まっすぐ見つめられたフランは、言葉に詰まる。
(言われてみれば、ティルはどう思っているのだろう?)
笑顔になったソフィアが、提案する。
「わたくしが預かります! 四元素で争うのがいかに不毛か、あなたもご理解されたのでは?」
問われたマリカは、息を吐く。
「具体的には?」
「先に申し上げますが、わたくしは同格として仲裁するだけ……。ここでは話が面倒になるので、スベクル共和国へ連れていきます」
可愛くも、凄みのある笑みで、マリカが応じる。
「んー? 私たちが、それを許すとでも?」
「あなた方が協力すれば、わたくしは対抗できないでしょうし、滅びなくても地獄の責め苦を味わうだけ……。ですが、タダではやられません! 安らかな大地や恵みがあるとは、二度と思わないでください」
両腕を組んだマリカが、肩を上下させた。
「文字通りに、不毛ね? ……いつまで?」
指で耳にかかる長髪をよけたソフィアが、相手の顔を見た。
「ハッキリした期限は、申し上げられません! あなた方がティル様について、もっと彼の都合を考えるようになったら……。代わりに、あなた方の権能はそのまま」
攻撃する気配になったマリカは、考え込む。
入れ替わるように、フランソワーズが質問する。
「お前だけ、ティルの傍にいる状態で? 虫が良すぎる!」
「そう言われれば、返す言葉もございません……。その気になれば、あなた方に距離は大きな障害とならず! いつでも、ご来訪くださいませ」
権能によって監視するし、人型として顕現すれば、自由自在。
それぞれ、この世界の風と水だ……。
対するソフィアも、大地と豊穣を司る。
「何もなくても、お茶会はいかがでしょう? 繰り返しますが、これは彼のため」
それぞれに息を吐いた女子2人が、降参する。
「ひとまず、考える時間をちょうだい! 返事は、明日にでも出すわ」
「……ハイハイ」
マリカの視線を受け、両手を上げたフランソワーズも同意した。
どちらも、戦闘モードを解除。
それを確認した、ソフィアも土の檻を崩す。
土の馬に気絶したままのティルを横たえたソフィアに、遠巻きだった親衛隊の大尉が叫ぶ。
「これは、アーデンティア帝国への侵略である! スベクル共和国に正式な抗議を――」
「帝国への親書を運ばせているため、数日の滞在をご許可願います! でなければ、わたくしはティル様を連れて帰国するのみ」
ソフィアの宣言で、マリカとフランソワーズの雰囲気が変わった。
どちらも、横槍を入れた大尉をにらむ。
たじろいだ大尉は、もはや妥協するしかない。
「現在は、私が担当している! 皇帝陛下への親書であろうと、私に預けてもらいたい!」
このラインを破ったら、彼が全ての責任を負わされる。
それを理解しているソフィアは、首肯した。
「存じております……。親書は、こちらへ向かっていますので」
ホッとした大尉が、返答する。
「了解した! こちらでも帝国への報告を行い、我々も滞在するが?」
「構いません……」
深呼吸をした大尉も、頷く。
ようやく、フィラブー守備隊の基地を巡る戦闘が終わった。
思い出したように、ソフィアが付け加える。
「すぐに食べられる食料は、わたくしが提供します! よろしければ、どうぞ?」
パンッと手をたたくと、早送りのように木々などが生えて、果物などが実った。
それを見て、ざわめく人々。
目を見張った大尉は、疲れたように答える。
「貴公の恩情に、感謝する! こちらでも、必需品などの手配をしよう……」
呉越同舟どころではない、混成ぶり。
それぞれのグループで集まり、敵対していたほうをチラチラと見るだけ。
フランソワーズは、反帝国のゲリラ集団へ。
進行方向にいた連中が、ギョッとしたように道を開ける。
残されたマリカは、サクリフィ王国の貴族だ。
「どうしようかしら?」
地面に立ったまま、両手を腰に当てる。
(ソフィアのところへ行ったら、水の精霊ウンディーネが騒ぐか……)
ウィンドボイスで、ソフィアに話しかける。
「いったん、帰る! 話し合いは、いつ?」
『……今日のディナーは、いかがでしょう?』
同時に、戦っていたロリにも。
「分かった! ウンディーネは?」
『……それでいいよ! あと、フランソワーズだから! フランでいい』
話がついたことで、マリカは風になった。