【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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第52話 この女子会で、世界の3/4を占めている

 気絶したティルは、地面から伸びた土の支えが受け止めた。

 

 同じく、土による凝ったデザインの檻の中……。

 

 様子を見ていた女子2人は、ついに実力行使へ移る。

 

 風の精霊シルフである、マリカ・フォン・ミシャールが、背中から一対の光の翼を噴射しつつ、叫ぶ。

 

「今すぐ、ティルを解放しなさい! さもないと、私が潰す!!」

「……僕もね?」

 

 それに同意したのは、水の精霊ウンディーネである、フランソワーズ。

 

 やはり、水の羽衣を身にまとい、キラキラと輝きながらの戦闘態勢。

 

 ところが、野外にある土の檻に閉じ込められているソフィアは、息を吐くのみ。

 

「あなた方は……。ティル様の負担を考えたことがあるので?」

 

「えっ?」

「……ティルも、喜んでいるし」

 

 反論したフランソワーズに、土の精霊ノームたる、ソフィアが確認。

 

「本当に?」

 

「うっ……」

 

 まっすぐ見つめられたフランは、言葉に詰まる。

 

(言われてみれば、ティルはどう思っているのだろう?)

 

 笑顔になったソフィアが、提案する。

 

「わたくしが預かります! 四元素で争うのがいかに不毛か、あなたもご理解されたのでは?」

 

 問われたマリカは、息を吐く。

 

「具体的には?」

 

「先に申し上げますが、わたくしは同格として仲裁するだけ……。ここでは話が面倒になるので、スベクル共和国へ連れていきます」

 

 可愛くも、凄みのある笑みで、マリカが応じる。

 

「んー? 私たちが、それを許すとでも?」

 

「あなた方が協力すれば、わたくしは対抗できないでしょうし、滅びなくても地獄の責め苦を味わうだけ……。ですが、タダではやられません! 安らかな大地や恵みがあるとは、二度と思わないでください」

 

 両腕を組んだマリカが、肩を上下させた。

 

「文字通りに、不毛ね? ……いつまで?」

 

 指で耳にかかる長髪をよけたソフィアが、相手の顔を見た。

 

「ハッキリした期限は、申し上げられません! あなた方がティル様について、もっと彼の都合を考えるようになったら……。代わりに、あなた方の権能はそのまま」

 

 攻撃する気配になったマリカは、考え込む。

 

 入れ替わるように、フランソワーズが質問する。

 

「お前だけ、ティルの傍にいる状態で? 虫が良すぎる!」

 

「そう言われれば、返す言葉もございません……。その気になれば、あなた方に距離は大きな障害とならず! いつでも、ご来訪くださいませ」

 

 権能によって監視するし、人型として顕現すれば、自由自在。

 

 それぞれ、この世界の風と水だ……。

 

 対するソフィアも、大地と豊穣を司る。

 

「何もなくても、お茶会はいかがでしょう? 繰り返しますが、これは彼のため」

 

 それぞれに息を吐いた女子2人が、降参する。

 

「ひとまず、考える時間をちょうだい! 返事は、明日にでも出すわ」

「……ハイハイ」

 

 マリカの視線を受け、両手を上げたフランソワーズも同意した。

 

 どちらも、戦闘モードを解除。

 

 それを確認した、ソフィアも土の檻を崩す。

 

 土の馬に気絶したままのティルを横たえたソフィアに、遠巻きだった親衛隊の大尉が叫ぶ。

 

「これは、アーデンティア帝国への侵略である! スベクル共和国に正式な抗議を――」

「帝国への親書を運ばせているため、数日の滞在をご許可願います! でなければ、わたくしはティル様を連れて帰国するのみ」

 

 ソフィアの宣言で、マリカとフランソワーズの雰囲気が変わった。

 

 どちらも、横槍を入れた大尉をにらむ。

 

 たじろいだ大尉は、もはや妥協するしかない。

 

「現在は、私が担当している! 皇帝陛下への親書であろうと、私に預けてもらいたい!」

 

 このラインを破ったら、彼が全ての責任を負わされる。

 

 それを理解しているソフィアは、首肯した。

 

「存じております……。親書は、こちらへ向かっていますので」

 

 ホッとした大尉が、返答する。

 

「了解した! こちらでも帝国への報告を行い、我々も滞在するが?」

 

「構いません……」

 

 深呼吸をした大尉も、頷く。

 

 ようやく、フィラブー守備隊の基地を巡る戦闘が終わった。

 

 思い出したように、ソフィアが付け加える。

 

「すぐに食べられる食料は、わたくしが提供します! よろしければ、どうぞ?」

 

 パンッと手をたたくと、早送りのように木々などが生えて、果物などが実った。

 

 それを見て、ざわめく人々。

 

 目を見張った大尉は、疲れたように答える。

 

「貴公の恩情に、感謝する! こちらでも、必需品などの手配をしよう……」

 

 呉越同舟どころではない、混成ぶり。

 

 それぞれのグループで集まり、敵対していたほうをチラチラと見るだけ。

 

 フランソワーズは、反帝国のゲリラ集団へ。

 進行方向にいた連中が、ギョッとしたように道を開ける。

 

 残されたマリカは、サクリフィ王国の貴族だ。

 

「どうしようかしら?」

 

 地面に立ったまま、両手を腰に当てる。

 

(ソフィアのところへ行ったら、水の精霊ウンディーネが騒ぐか……)

 

 ウィンドボイスで、ソフィアに話しかける。

 

「いったん、帰る! 話し合いは、いつ?」

『……今日のディナーは、いかがでしょう?』

 

 同時に、戦っていたロリにも。

 

「分かった! ウンディーネは?」

『……それでいいよ! あと、フランソワーズだから! フランでいい』

 

 話がついたことで、マリカは風になった。




過去作は、こちらです!
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