【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」まで完結!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった! 作:初雪空
日が暮れたフィラブー守備隊の基地は、呉越同舟のまま。
反政府ゲリラとしては撤収するべきだが、四元素の3つが集まっている場から離れれば、呼応した帝国軍に追撃されての包囲殲滅。
オアシスの拠点に戻っても、先がない。
ここに留まったほうが、安全なのだ……。
そのリーダーであるユーリは、自分たちの領域と決めた敷地の中心で、息を吐いた。
「どーしたもんかね?」
「俺に、選択肢は?」
前向きな消去法でここにいるが、周りは距離を置いている。
笑顔を向けたユーリは、きっぱりと言う。
「ない! お前だって、あの大乱闘に巻き込まれたろ?」
「それは、そうだが……。あいつらの話し合いを待ってから、決めるしかない」
俺の発言で、ニヤッとしたユーリが尋ねる。
「で、お前の本命は誰なんだ? あーっ! いや、冗談だ、冗談!」
言い終わってから、四元素の少女たちが盗聴していることに気づく。
降参するように、肘を下ろしたまま、両手を上げた。
…………
許されたようだ。
ぐったりとしたユーリに、話しかける。
「まだ、考えている! それより、3人がどういう結論を出すのかと、その配置だよな?」
顔を上げたユーリが、同意する。
「そうだ! あいつらの動向によっては、すぐ逃げるしかない」
「誰か1人でも残ってくれれば、中立地帯になるだろうが……」
肩をすくめたユーリは、首を横に振る。
「俺たちのために残ってくれないし、アーデンティア帝国と戦わないだろう? それは、仕方ない」
「ここまで騒ぎになった以上、サクリフィ王国に因縁をつけての侵攻や、スベクル共和国へ何らかの制裁をするのでは?」
頷いたユーリだが、悩んでいる表情。
「割り込んできたソフィア・デュ・ロシュフォールに、考えがあるんじゃないか? 俺たちの助かる未来とは、限らんけど」
「帝国の上層部がどう判断して、どう動くか……」
総括した俺も、息を吐く。
世界の3/4が考えをまとめた後じゃないと、うかつに発言できない。
◇
帝国の親衛隊にいる大尉は、難しい顔。
「申し訳ないが、上の命令だ……。考え直しては、いただけないか?」
視線の先にいるのは、上級将校が使いそうな空間で丸いテーブルを囲む少女たち。
直立不動の大尉とのギャップで、シュールギャグのよう。
しかし、豪華な内装があるサロンは、緊張した空気。
上品に微笑んでいるソフィア・デュ・ロシュフォールが、首をかしげる。
「あなたのお立場も、分かります! けれど、帝都へ召喚されるのは……。それを避けるために、親書をお渡ししたのですが?」
「まったく、その通りです……。しかしながら、聖女リナとシャーロットは我々が保護しており、サクリフィ王国との交渉チャネルで――」
「言っておくけど、私がミシャール伯爵令嬢だから遠慮するとは思わないで? あっちとは敵対に近いし、帝国に亡命する気もない。それから、帝都で高位貴族や将校にネチネチ言われたり、嫌がらせを受けたり、政略結婚を強制されたりしたら、その瞬間に帝都ごと吹き飛ばすわよ?」
マリカ・フォン・ミシャールに告げられ、唯一の突破口を潰された大尉は思わず唸る。
見かねたソフィアが、提案する。
「わたくしが参りましょう! そもそも、親書を渡す役目……。マリカさんは、できれば残ってください! あとは……」
「マリカは、どうするの?」
フランソワーズの問いかけに、座っているマリカは腕を組む。
「ここを空ければ、近隣の帝国軍が襲撃してくるか、水や果物が湧いたことで周りの住民が押しかけてくる……。私は、ここで留守番!」
「えーっ!? ズルい!」
文句を言ったフランソワーズに対して、ソフィアが
「フランさんも、監視できますよね? それに、あなたは水の精霊……。ウンディーネとして帝国に正当性を示せるのは、この機会だけ! わたくしと共に、参りましょう? フォローしますから、お一人での対決よりも有利ですよ?」
「ハイハイ……。マリカ、貸しだよ? あとで、返して」
フランソワーズの文句に、マリカは手を振る。
「いいわ! その代わり、あなた達が帰ってくるまで、イチャイチャさせてもらう」
話がまとまったので、大尉が口をはさむ。
「水と土の精霊のお二人が、帝都へ同行すると……。表向きはロシュフォール様のご一行で、上に報告します」
会釈した大尉がキビキビと反対側を向き、軍人らしく、立ち去った。
静かに閉じられたドアに、少女たちが息を吐く。
「ティルには、誰かがついておかないと……」
「うん! 帝都へ連れて行ったら、絶対に狙われるし」
「いっそのこと、わたくし達を侍らせるぐらいの甲斐性があれば、簡単でしょうに……」
それでも、世界を統一する覇者への道だが。
女として考えた場合、モンモンしたままでキャットファイトをするより、愛する男に愛されてその敵を蹂躙したほうが、よっぽど気楽だ。
息を吐いたソフィアは、自分の本能で落ち着かないまま、提案する。
「帝国の中枢を抑えましょう! 今なら、この3人で分担して動けます」
「そうね」
「分かった!」