【アーデンティア帝国編 「第三章 悪徳の都に舞い降りたメスガキ」スタート!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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アーデンティア帝国編 「第三章 悪徳の都に舞い降りたメスガキ」
第54話 帝都ロイトフェーン


 要塞のように思える鉄の物体は、横に大きく広げた翼の後ろから高温の空気を噴射し始めた。

 

 現代社会に生きる人が見れば、冗談のような大きさの爆撃機に思えるだろう。

 

「エンジン始動!」

 

 鉄枠で補強されたガラス張りの高い位置にあるブリッジで、艦長が命じた。

 

 ゴオオッ! という噴射音が、くぐもって聞こえる。

 

 立体的に重なっていることから、複数のエンジンが動いているようだ。

 

 巨体が震え出して、ブリッジの椅子に座っている女子たちの足底からも伝わってくる。

 

 立派な軍服に囲まれているのは、ソフィア・デュ・ロシュフォールと、フランソワーズの2人。

 

 ソフィアは慣れたもので、フランは退屈そう。

 

 聖女リナとシャーロットも、この機会に帝都へ行く。

 

「ティル……」

「私たちのほうが、危険よ?」

 

 シャーロットは、ドロドロした感情を積もらせつつ、親友に言い聞かせた。

 

(あいつが素直に抱いてくれれば、こんな気持ちにならなかった!)

 

 思い出しただけで顔が真っ赤になる誘いに、キッパリした拒絶。

 

 少なからぬ好意があるからこそ、許せないし、忘れられない。

 

 やり場のない怒りは、近くにいる者へ向けられる。

 そうするべきではないと、思いつつ。

 

(それでなくても、私たちは人質……)

 

 四元素の精霊が見つかって、まともに交渉できる以上、密かに殺されても不思議はない。

 

 だからこそ、帝都ロイトフェーンで偉い人から、ソフィアについていく許可を得る必要があるのだ。

 

 その時に、ブリッジの1人が叫ぶ。

 

「ルフトフェストゥング、離陸します!」

「……後方の2番機、3番機も、当機に続く!」

 

 地面を削っていた巨体が、宙に浮かぶ。

 

 

 浮遊感に慣れてきた頃、怒声のような報告が耳を打つ。

 

『11時のハイより、飛行物体が降下!』

 

 進行方向のやや左で、その上。

 

 甲高いエンジン音が、キィイイイイイインッ! と近づきつつ、ババババ! という発砲音を重ねた。

 

 金属を貫通する音と衝撃は、広い視界のブリッジにも響く。

 

 窓ガラスの一部が割れ、あるいは、ヒビが入った。

 

 上から落ちるように、小さな物体が通り過ぎた。

 

 時間差で、ルフトフェストゥングが小さな爆発、グラリとよろめく。

 

 ヴィ――ッ! ヴィ――ッ!

 

「くそっ! 速い!! 各銃座、撃ちまくれ!」

 

 別の発砲音がいたるところで響くも、手応えはない。

 

「護衛のエンテは、何をやってる!? 早く落とせ!」

 

 機首を上げた戦闘機は、後続の2番機を下から撃ちまくりつつの急上昇――

 

 空中で左右の翼のどちらかにぶつかったようで、くるくると回転しながらの失速。

 

 帝国軍の小回りが利く攻撃機エンテは、射撃ポジションにつき、正面のロケットランチャーを斉射しつつ、機銃で撃ちまくる。

 

 見る見るうちに被弾した戦闘機だが、煙を噴きつつも、離脱する。

 

 現代でいえば、軽戦闘機、あるいはコイン機に過ぎないが、よくやるものだ……。

 

 それを追撃するエンテは、振り切られたことで戻ってきた。

 

 立ち上がって窓ガラスに顔をくっつけていたフランソワーズは、ボソッと呟く。

 

「ま、こんなものか……」

 

 空中に水の障害物を作り出し、先ほどの戦闘機の翼がぶつかったのだ。

 

 ブリッジにいる誰かが、叫ぶ。

 

「警報を止めろ! 総員、被害を報告! ダメージコントロールも開始!」

 

『機関部、おおむね問題なし!』

『こちらは、生存者なし! 外がむき出しのため、隔壁を閉鎖します!』

 

「2番機は?」

「……発光信号を確認! 飛行に、問題なし!」

 

 殺気だったまま、息を吐く面々。

 

「ギアの奴らか……」

「忌々しい!」

 

「対空監視を厳(げん)とせよ! 全機に、通達!」

 

 監視していた1人が、フランソワーズに近づく。

 

「危険ですので、お戻りください」

 

 騒ぎに乗じての逃走をしないように、という警戒だ。

 

 窓ガラスから顔を離したフランは、大人しく座席へ戻る。

 

 その後に襲撃はなく、やがて高度を下げていく大型機の編隊……。

 

 

 ――帝都ロイトフェーン

 

 足元からの揺れが、大地への帰還を告げた。

 

 減速した大型機の群れは、それに見合った翼を休めつつ、ゆっくり停止。

 

 スベクル共和国からの外交官の一行であるものの、聖女リナとシャーロットは別で連れていかれる。

 

(人質……。まだ、仕掛けてこないでしょう)

 

 ソフィアは、何か言いたげに自分を見ているフランソワーズに向き直り、首を横に振った。

 

 フランが部下の扱いで、世話係のような認識。

 

 それゆえ、外交官にふさわしいゲストハウスでも、隣り合った部屋だ。

 

 スベクル共和国の国土管理局にいる政務官のソフィアは、親衛隊の大尉が手配したドレスや小物類、化粧などを手伝う女官やメイドに慣れた様子で応対。

 

 不慣れなフランを助けつつ、帝城の『謁見の間』で親書を手渡した。

 

 豪華な衣装に身を包んだ皇帝は、初老の男。

 

「遠路はるばる、ご苦労! 親書は、確かに受け取ったああああああっ!」

 

 妙にテンションが高い返事で、行事を終えた。

 

 皇帝の返事は、アーデンティア帝国の決定。

 それゆえ、具体的な内容について、事務レベルで擦り合わせる。

 

 むろん、それでソフィアを帰すわけもなく、豪華絢爛な晩餐会へ。

 

 

 夜の立食パーティーとして、天井が高いホールで給仕する執事やメイドが行き交う。

 

 招かれたソフィアには、スベクル共和国の情報やツテが欲しい貴族や招待客の列。

 

「はじめまして! 私は――」

 

「ロシュフォール様、婚約者は? いえ、これほど美しい方に――」

 

 自分の近くにいるフランソワーズまで、気が回らない。

 

 侍女にしたので、話しかける人はおらず。

 

 であるのに、一段落して振り向けば、フランの姿がなかった。

 

(勝手に動かないよう、言っておいたのに……)

 

 眉をひそめるソフィアだが、次の参加者に声をかけられた。

 

 作り笑顔で、そちらを向く。




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