【アーデンティア帝国編 「第三章 悪徳の都に舞い降りたメスガキ」スタート!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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第55話 フランちゃんの沸点は、ものすごく低い

 帝都ロイトフェーンの晩餐会。

 

 主人とされたソフィア・デュ・ロシュフォールに付き添うフランソワーズは、立ったままで周りを見る。

 

 地味目だが、これまで着たこともないドレスで、フワフワした感じ。

 

(こちらを見ては、目を逸らす……。気分が悪い!)

 

 視線を戻せば、ソフィアは行列を作っている先頭と話しているだけ。

 

 少しばかり抜けても、気づかれない。

 

 自己完結したフランは、1人で見て回り、並べられた料理とドリンクを飲み食い。

 

 外国の使節団を迎えているだけあって、どれも美味!

 

 それでなくても、砂漠のオアシスで食うに食わずだったフランにはご馳走だが……。

 

「今いいですか、フランソワーズさん?」

 

 聞き覚えのある声に、振り向く。

 

 同じように着飾っている、聖女リナだ。

 

 フランは、口をモグモグさせながら尋ねる。

 

「何?」

 

「デアゼー教にいる水の精霊ウンディーネ様が、お呼びです……。ご足労くださいますよう、お願い申し上げます」

 

 困った表情をしていることから、メッセンジャーを強要されたようだ。

 

 見れば、隣にいるはずの巨乳娘がいない……。

 

「あー、ハイハイ! オッパイちゃんが、人質なの?」

 

「シャロは、ウンディーネ様のところにいます」

 

 人質のようだ。

 

(あいつ、ティルに色目を使っているから、始末したいんだけど……)

 

 彼に嫌われたら、泣くに泣けない。

 

 土を操るソフィアや風を支配しているマリカ・フォン・ミシャールが、真実を告げるだろう。

 

 つまり、選択の余地はない。

 

 ため息をついた後で、皿を近くの長テーブルに置く。

 

「今回は助けるけど、当てにしないでね?」

 

「申し訳ございません……」

 

 深々と頭を下げたリナに、フランは頭を切り替える。

 

(知らない間に殺されました、凌辱されましたじゃ、ティルに言い訳できないし……。見ておいたほうが、いいか!)

 

 ソフィアは忙しくて、役立たず。

 

 ここで点数を稼いでおけば、良い印象を与えられるだろう。

 

「気が変わったよ! 何とかしてあげるから、ティルにちゃんと言ってね?」

 

「は、はいっ! ありがとうございます……」

 

 急なことで、リナは困惑しているようだ。

 

 しかし、千載一遇のチャンス!

 

「ところで、ソフィアさんは?」

「……いいから! 呼んでいるんでしょ?」

 

 ソフィアと共同では、意味がない。

 

 焦ったフランソワーズに急かされ、2人でデアゼー教がいるエリアへ。

 

 

 いかにも聖職者といった服装の一団。

 

 鮮やかなピンク色の長髪、涼しげな水色の瞳をした女子は、フランソワーズを見据えた。

 

「あなたが、水の精霊ウンディーネを僭称(せんしょう)している方ですか?」

 

「お前がね?」

 

 言い返したフランに、溜息をついた女子が自己紹介。

 

「私は、ルトリシアと申します……。アーデンティア帝国を導くデアゼー教における、水の精霊ウンディーネ! 帝都の聖堂で日々、お祈りを――」

「話の途中で悪いんだけど……。リナとシャーロットを返してくれない?」

 

 フランの率直な物言いに、ルトリシアは首を振った。

 

 代わりに、側近らしき男が答える。

 

「その2人は、皇帝陛下より預かっています……。聖堂にお越しいただければ、話をできるよう取り計らいますので」

 

 慇懃無礼に言いつつも、探るような視線。

 

 反政府ゲリラとして修羅場をくぐっているフランは、誘い込んでの殺害と、読む。

 

 その時に、ソフィアが駆け付けた。

 

「フラン? わたくしの傍を離れないよう、言いましたよね?」

 

 すると、暗殺したがっている男が作り笑顔。

 

「これはこれは……。ロシュフォール様のお時間をいただくわけには、参りません! このお話はまたの機会に――」

「何のことでしょう? デアゼー教の上級司祭のお話となれば、確認しておきたく存じます」

 

 張り付けた笑みの男が、受け流す。

 

「いえいえ、たいした話ではございません……。滞在される場所へ、後日に連絡いたしますので! 失礼します」

 

 不機嫌なまま、そっぽを向いていたルトリシアを連れていく。

 

 周りの聖職者、信者たちも、静かに立ち去った。

 

 

 ――数日後

 

 スベクル共和国の大使館に住んでいるソフィアは、忙しい。

 

 毎日のように会議をして、アーデンティア帝国の貴族、商会、共和国の互助会との調整。

 

 ソフィア宛だが、デアゼー教からの封書を見つけたフランソワーズは、勝手に開ける。

 

 一通り読めば、聖女リナとシャーロットは水の都ヴァッサーシュタットへ移送されたそうだ。

 

(ソフィアが気づく前に!)

 

 手紙を放り出したフランは、私物をまとめると、ヴァッサーシュタットへ向かう蒸気バスへ乗り込む。

 

 運賃などを払うために、ソフィアの名義でお金を調達した。

 

 そのうち、返す。

 

 

 大勢で賑わうバスは、整備された土道を突き進む。

 

 風光明媚な景色も手伝い、座っているフランは居眠り。

 

 

 フランが気づいたら、真っ暗な場所にいた。

 

 手足を縛られていたから、空中の水分によるウォーターカッターで縄を切る。

 

 ごそごそと動けば、床から振動が伝わってきた。

 

 どうやら、蒸気で動く車のようだ。

 

 外に出られそうなところを、同じく切った。

 

 明るい空間に出てみれば、まさに自分が乗り込んだ蒸気バスだった!

 

 驚く乗客の一部は、取り押さえようと飛び掛かって――

 

 運転手を含めた全員の頭が水球に包まれ、ゴボボと、溺れ出す。

 

 くぐもった声を上げつつ、両手で水球を剝がそうとする面々。

 

 それらを消したフランは、笑顔で告げる。

 

「とりあえず、運賃を返して? ……あと、僕のお金を盗ったやつは全て出せ」

 

 自分の服の上からペタペタと触ったフランは、現金を奪われたことを知り、さらに激怒した。

 

 さあ、生き延びろ!




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