【アーデンティア帝国編 「第三章 悪徳の都に舞い降りたメスガキ」スタート!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった! 作:初雪空
帝都ロイトフェーンの晩餐会。
主人とされたソフィア・デュ・ロシュフォールに付き添うフランソワーズは、立ったままで周りを見る。
地味目だが、これまで着たこともないドレスで、フワフワした感じ。
(こちらを見ては、目を逸らす……。気分が悪い!)
視線を戻せば、ソフィアは行列を作っている先頭と話しているだけ。
少しばかり抜けても、気づかれない。
自己完結したフランは、1人で見て回り、並べられた料理とドリンクを飲み食い。
外国の使節団を迎えているだけあって、どれも美味!
それでなくても、砂漠のオアシスで食うに食わずだったフランにはご馳走だが……。
「今いいですか、フランソワーズさん?」
聞き覚えのある声に、振り向く。
同じように着飾っている、聖女リナだ。
フランは、口をモグモグさせながら尋ねる。
「何?」
「デアゼー教にいる水の精霊ウンディーネ様が、お呼びです……。ご足労くださいますよう、お願い申し上げます」
困った表情をしていることから、メッセンジャーを強要されたようだ。
見れば、隣にいるはずの巨乳娘がいない……。
「あー、ハイハイ! オッパイちゃんが、人質なの?」
「シャロは、ウンディーネ様のところにいます」
人質のようだ。
(あいつ、ティルに色目を使っているから、始末したいんだけど……)
彼に嫌われたら、泣くに泣けない。
土を操るソフィアや風を支配しているマリカ・フォン・ミシャールが、真実を告げるだろう。
つまり、選択の余地はない。
ため息をついた後で、皿を近くの長テーブルに置く。
「今回は助けるけど、当てにしないでね?」
「申し訳ございません……」
深々と頭を下げたリナに、フランは頭を切り替える。
(知らない間に殺されました、凌辱されましたじゃ、ティルに言い訳できないし……。見ておいたほうが、いいか!)
ソフィアは忙しくて、役立たず。
ここで点数を稼いでおけば、良い印象を与えられるだろう。
「気が変わったよ! 何とかしてあげるから、ティルにちゃんと言ってね?」
「は、はいっ! ありがとうございます……」
急なことで、リナは困惑しているようだ。
しかし、千載一遇のチャンス!
「ところで、ソフィアさんは?」
「……いいから! 呼んでいるんでしょ?」
ソフィアと共同では、意味がない。
焦ったフランソワーズに急かされ、2人でデアゼー教がいるエリアへ。
いかにも聖職者といった服装の一団。
鮮やかなピンク色の長髪、涼しげな水色の瞳をした女子は、フランソワーズを見据えた。
「あなたが、水の精霊ウンディーネを
「お前がね?」
言い返したフランに、溜息をついた女子が自己紹介。
「私は、ルトリシアと申します……。アーデンティア帝国を導くデアゼー教における、水の精霊ウンディーネ! 帝都の聖堂で日々、お祈りを――」
「話の途中で悪いんだけど……。リナとシャーロットを返してくれない?」
フランの率直な物言いに、ルトリシアは首を振った。
代わりに、側近らしき男が答える。
「その2人は、皇帝陛下より預かっています……。聖堂にお越しいただければ、話をできるよう取り計らいますので」
慇懃無礼に言いつつも、探るような視線。
反政府ゲリラとして修羅場をくぐっているフランは、誘い込んでの殺害と、読む。
その時に、ソフィアが駆け付けた。
「フラン? わたくしの傍を離れないよう、言いましたよね?」
すると、暗殺したがっている男が作り笑顔。
「これはこれは……。ロシュフォール様のお時間をいただくわけには、参りません! このお話はまたの機会に――」
「何のことでしょう? デアゼー教の上級司祭のお話となれば、確認しておきたく存じます」
張り付けた笑みの男が、受け流す。
「いえいえ、たいした話ではございません……。滞在される場所へ、後日に連絡いたしますので! 失礼します」
不機嫌なまま、そっぽを向いていたルトリシアを連れていく。
周りの聖職者、信者たちも、静かに立ち去った。
――数日後
スベクル共和国の大使館に住んでいるソフィアは、忙しい。
毎日のように会議をして、アーデンティア帝国の貴族、商会、共和国の互助会との調整。
ソフィア宛だが、デアゼー教からの封書を見つけたフランソワーズは、勝手に開ける。
一通り読めば、聖女リナとシャーロットは水の都ヴァッサーシュタットへ移送されたそうだ。
(ソフィアが気づく前に!)
手紙を放り出したフランは、私物をまとめると、ヴァッサーシュタットへ向かう蒸気バスへ乗り込む。
運賃などを払うために、ソフィアの名義でお金を調達した。
そのうち、返す。
大勢で賑わうバスは、整備された土道を突き進む。
風光明媚な景色も手伝い、座っているフランは居眠り。
フランが気づいたら、真っ暗な場所にいた。
手足を縛られていたから、空中の水分によるウォーターカッターで縄を切る。
ごそごそと動けば、床から振動が伝わってきた。
どうやら、蒸気で動く車のようだ。
外に出られそうなところを、同じく切った。
明るい空間に出てみれば、まさに自分が乗り込んだ蒸気バスだった!
驚く乗客の一部は、取り押さえようと飛び掛かって――
運転手を含めた全員の頭が水球に包まれ、ゴボボと、溺れ出す。
くぐもった声を上げつつ、両手で水球を剝がそうとする面々。
それらを消したフランは、笑顔で告げる。
「とりあえず、運賃を返して? ……あと、僕のお金を盗ったやつは全て出せ」
自分の服の上からペタペタと触ったフランは、現金を奪われたことを知り、さらに激怒した。
さあ、生き延びろ!