【アーデンティア帝国編 「第三章 悪徳の都に舞い降りたメスガキ」スタート!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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第59話 第一の犠牲者、あるいは第二の犠牲者

「ここから、信仰心を試される仕掛けが多いぞ? ついてくるのは構わんが、命の保証をせん」

 

 対岸に降り立ったら、アティーファが宣言した。

 

 相変わらず、フードで顔は見えない。

 

 質問したそうな一行を無視して、奥へ続く石造りの通路へ進む。

 

 

 見事な模様が刻まれているも、ぼんやりと光っている不思議な空間だ……。

 

 踏み出すたびに足元が崩れそうな部分や、左右の端にだけ壁に張り付いて渡れる部分がある通路。

 

 先頭を歩くアティーファは、その度に説明する。

 

「人間心理を突いたトラップ……。人が通った痕跡もあるし、ミスルヒヤ王国の神官が行き来したのだろうて」

 

「あれ? ここは不可侵では?」

 

 若い女ガイドが指摘するも、アティーファは言い捨てる。

 

「神官には、歴代のイシス女王を世話する役目もある……。ハッ! 連中にできることは金勘定だけよ! 今は、デアゼー教に尻尾を振ることもあるか?」

 

 けれど、再び広いホールに出た後は、行き止まり。

 

 落胆する一行だが、戻ったところで助からない。

 

「おそらく、これも侵入者への対策じゃ! どこかに仕掛けがある。探せ!」

 

 もはや、言い争いをしている場合ではない。

 

 バラバラに散っていく。

 

 それでも、よく知っている人間同士でグループが形成された。

 

 ポニーテールの幼い女子が、現地の女ガイドと奥の通路へ。

 

「お姉ちゃん、こっち?」

「……そうそう! 行き止まりだけど、怪しいから」

 

 老爺(ろうや)と若い男のコンビは、石を積み上げたうえで削り出したであろう立派な祭壇(さいだん)をいじり出す。

 

「仕掛けがあるなら……。とにかく、目立つ部分を調べよう!」

「はい、教授!」

 

 アティーファも、そちらに興味があるようだ。

 

「柩(ひつぎ)の中は高位の神官のミイラじゃな? ということは、神官どもが日常的に立ち入るのも、ここまでか……」

 

 適当に座って、考え込む。

 

 オタクっぽい男は、現地の女ガイドに気があるらしく、その後を追ったものの、トボトボ帰ってきた。

 

 他にも、勝手に過ごしている……。

 

 やる気がないフランソワーズは、全員を見回してから、フンッと鼻を鳴らした。

 

 比較的、快適そうな場所に腰を下ろす。

 

 それに倣(なら)ったリナとシャーロットが、不安そうにキョロキョロする。

 

「フランさん? 何か把握したなら、そろそろ素性を明かしては?」

「……このままじゃ、みんな死んでいくわ!」

 

 危機感を募らせる2人に、フランは面倒そう。

 

「人間は水と食料がないと死んじゃうけどさ? 1つ、気になることがあって……。ここから進むギミックを見つけるほうが、先だ! 『やっぱり戻ろう』と言われても、納得できないでしょ?」

 

「そうですけど……」

「一通り、見たでしょ? 行き止まりよ――」

 

 ゴゴゴ……

 

 ガガガガガガ!

 

 ドリルで地面を削るような轟音と地響き。

 

 それに合わせて、誰かの悲鳴が聞こえた気がする……。

 

 広いホールで調べていたか休んでいた面々が、飛び上がった。

 

 いつの間にか戻っていた女ガイドは、甲高い声を上げる。

 

「まさか!」

 

 奥の通路へ走っていけば、他の人間も釣られた。

 

 むせ返るような鉄の臭いが濃くなり、それは奥へ行くほどに強くなる。

 

 老人ながらも健脚だった教授が、目を見張った。

 

「何てことだ……」

 

 左右の端に並んで立っている石像。

 

 なぜか、自分の前を指さしている。

 

 そのうちの1つだけ、中央で行き止まりの奥を指さしていたようだ。

 

 推測であるのは、床を一直線に削りつつ、奥の壁を突き抜けているから……。

 

 大量の血は、その出発点から終わりまで続いている。

 

「どこ? どこにいるの!?」

 

 現地の女ガイドが、奥にあった空間で地面を探している。

 

 吐きそうになる面々は、一部が通路に残り、それ以外は女ガイドの傍へ行く。

 

 四つん這いになり、手探りで探している女ガイド。

 

 状況から察した爺さんが、若い女の襟首をつかんで、持ち上げた。

 

「貴様……。なぜ、1人にしたあああっ!」

 

 激怒した爺さんに、助手の若い男が慌てて止める。

 

「教授! お、落ち着いてください……」

 

「ふざけるな! ここが危険なのは、誰でも分かるだろう!?」

 

 びっくりした若い女は、泣きながら謝る。

 

「ご、ごめんなさい! あの子が、もう少し調べると言うから……」

 

「私たちで争っても、意味がありませんよ?」

「気持ちは分かるけど……」

 

 リナとシャーロットに諭(さと)されて、爺さんは女ガイドから手を離す。

 

「……すまん」

 

 それっきり、背を向けた。

 

 フランソワーズは、淡々と告げる。

 

「奥にも空間があったようだね? じゃ、先に行こうか……」

 

「女王が死ぬのは、50年の単位! なるほど、その度に壁を作っていたと」

 

 感心したように壁の断面図を見ていたアティーファも、フランソワーズに続く。

 

 呆気にとられていた面々だが、1人、また1人と、それを追う。

 

「せめて、あの子の遺体を見つけてあげないと――」

「僕たちは、先に進むよ! そんな時間はない」

 

 冷たい目で感情を交えずに言ったフランは、闇の奥へ。

 

 アティーファが続けば、女ガイドを気にしつつ、他のメンバーも続いた。

 

 血だまりを見ていた女ガイドも、はあっと息を吐いた後で、足早に追いかける。




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