【アーデンティア帝国編 「第三章 悪徳の都に舞い降りたメスガキ」スタート!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった! 作:初雪空
「ここから、信仰心を試される仕掛けが多いぞ? ついてくるのは構わんが、命の保証をせん」
対岸に降り立ったら、アティーファが宣言した。
相変わらず、フードで顔は見えない。
質問したそうな一行を無視して、奥へ続く石造りの通路へ進む。
見事な模様が刻まれているも、ぼんやりと光っている不思議な空間だ……。
踏み出すたびに足元が崩れそうな部分や、左右の端にだけ壁に張り付いて渡れる部分がある通路。
先頭を歩くアティーファは、その度に説明する。
「人間心理を突いたトラップ……。人が通った痕跡もあるし、ミスルヒヤ王国の神官が行き来したのだろうて」
「あれ? ここは不可侵では?」
若い女ガイドが指摘するも、アティーファは言い捨てる。
「神官には、歴代のイシス女王を世話する役目もある……。ハッ! 連中にできることは金勘定だけよ! 今は、デアゼー教に尻尾を振ることもあるか?」
けれど、再び広いホールに出た後は、行き止まり。
落胆する一行だが、戻ったところで助からない。
「おそらく、これも侵入者への対策じゃ! どこかに仕掛けがある。探せ!」
もはや、言い争いをしている場合ではない。
バラバラに散っていく。
それでも、よく知っている人間同士でグループが形成された。
ポニーテールの幼い女子が、現地の女ガイドと奥の通路へ。
「お姉ちゃん、こっち?」
「……そうそう! 行き止まりだけど、怪しいから」
「仕掛けがあるなら……。とにかく、目立つ部分を調べよう!」
「はい、教授!」
アティーファも、そちらに興味があるようだ。
「
適当に座って、考え込む。
オタクっぽい男は、現地の女ガイドに気があるらしく、その後を追ったものの、トボトボ帰ってきた。
他にも、勝手に過ごしている……。
やる気がないフランソワーズは、全員を見回してから、フンッと鼻を鳴らした。
比較的、快適そうな場所に腰を下ろす。
それに
「フランさん? 何か把握したなら、そろそろ素性を明かしては?」
「……このままじゃ、みんな死んでいくわ!」
危機感を募らせる2人に、フランは面倒そう。
「人間は水と食料がないと死んじゃうけどさ? 1つ、気になることがあって……。ここから進むギミックを見つけるほうが、先だ! 『やっぱり戻ろう』と言われても、納得できないでしょ?」
「そうですけど……」
「一通り、見たでしょ? 行き止まりよ――」
ゴゴゴ……
ガガガガガガ!
ドリルで地面を削るような轟音と地響き。
それに合わせて、誰かの悲鳴が聞こえた気がする……。
広いホールで調べていたか休んでいた面々が、飛び上がった。
いつの間にか戻っていた女ガイドは、甲高い声を上げる。
「まさか!」
奥の通路へ走っていけば、他の人間も釣られた。
むせ返るような鉄の臭いが濃くなり、それは奥へ行くほどに強くなる。
老人ながらも健脚だった教授が、目を見張った。
「何てことだ……」
左右の端に並んで立っている石像。
なぜか、自分の前を指さしている。
そのうちの1つだけ、中央で行き止まりの奥を指さしていたようだ。
推測であるのは、床を一直線に削りつつ、奥の壁を突き抜けているから……。
大量の血は、その出発点から終わりまで続いている。
「どこ? どこにいるの!?」
現地の女ガイドが、奥にあった空間で地面を探している。
吐きそうになる面々は、一部が通路に残り、それ以外は女ガイドの傍へ行く。
四つん這いになり、手探りで探している女ガイド。
状況から察した爺さんが、若い女の襟首をつかんで、持ち上げた。
「貴様……。なぜ、1人にしたあああっ!」
激怒した爺さんに、助手の若い男が慌てて止める。
「教授! お、落ち着いてください……」
「ふざけるな! ここが危険なのは、誰でも分かるだろう!?」
びっくりした若い女は、泣きながら謝る。
「ご、ごめんなさい! あの子が、もう少し調べると言うから……」
「私たちで争っても、意味がありませんよ?」
「気持ちは分かるけど……」
リナとシャーロットに
「……すまん」
それっきり、背を向けた。
フランソワーズは、淡々と告げる。
「奥にも空間があったようだね? じゃ、先に行こうか……」
「女王が死ぬのは、50年の単位! なるほど、その度に壁を作っていたと」
感心したように壁の断面図を見ていたアティーファも、フランソワーズに続く。
呆気にとられていた面々だが、1人、また1人と、それを追う。
「せめて、あの子の遺体を見つけてあげないと――」
「僕たちは、先に進むよ! そんな時間はない」
冷たい目で感情を交えずに言ったフランは、闇の奥へ。
アティーファが続けば、女ガイドを気にしつつ、他のメンバーも続いた。
血だまりを見ていた女ガイドも、はあっと息を吐いた後で、足早に追いかける。