【アーデンティア帝国編 「第三章 悪徳の都に舞い降りたメスガキ」スタート!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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第60話 現実でも意外に多い死亡原因

 どんよりとした、重い雰囲気。

 

 明るい幼女が惨殺された後は、一行に会話らしい会話がない。

 

 より暗くなったが、今度は広く平らな道が続く……。

 

 先頭のフランソワーズは、隣を歩くアティーファに尋ねる。

 

「ここから、どういう場所があるの?」

 

「死んだ女王を柩(ひつぎ)ごと輿(こし)にのせて、大勢で下へ運んでいくのだろう。かなり深く潜るはずじゃ」

 

 納得したフランが、ふと気づく。

 

「階段で?」

 

「そうだな……。吹き抜けになっている縦穴をぐるりと回っていくはず」

 

 想像したフランは、げんなりした。

 

「輿で運ぶ連中は、よくやるね?」

「……死んだ女王も、いずれ復活する! 封印された区域は歴代の女王の住処だから、光栄なことだぞ!?」

 

 怒りをにじませたアティーファの反論に、フランは無言で首を振った。

 

 全員の足音だけが響き、前方の景色が変化する。

 

 ドアがありそうな出入口がポッカリと口を開けたままで、真の暗闇へ。

 

 立ち止まったフランは、緊張した顔に。

 

「ここを通れと?」

 

「妙だな……。こんな広さでは、輿が通れるわけない! 別の通路があるのか?」

 

 腕組みのアティーファは、ブツブツと呟く。

 

 ため息をついたフランが、断言する。

 

「秘密の通路があるにせよ、僕たちには時間がない! 先行して、様子を確かめてくる!」

 

 アティーファは、考え込んだまま、片手を上げた。

 

 他の面々も、反対しない。

 

 

 ――10分後

 

 そわそわした教授の爺さんが、暗闇を覗き込む。

 

「マズいな……。我々も、行くべきか?」

 

「それじゃ、あの子が先に行った意味がありません!」

 

 助手の若い男に指摘され、爺さんはコクリと頷く。

 

「確かに……。だが、老い先短いワシなら――」

「その必要はないよ? わりと、厄介なトラップだったけど」

 

 暗闇から出てきたフランは、思わず退いた爺さんに構わず、スタスタと歩く。

 

 グループの手前で立ち止まり、ドアの形をした暗闇に振り返った。

 

「かなり凶悪だ! 今から、説明するよ? 明かりのない部屋が続いていて――」

 

 ドアのない空間から入れば、有毒ガスらしきものが噴出している真っ暗な部屋。

 

 ただし、入った方向からまっすぐ進めば、同じくドアのない出口がある。

 

 距離は、10mあるかどうか……。

 

「いったん出られるけど、同じような部屋が3つほどあった! そこから先は通路だけど、心配するだろうから引き返した」

 

 腕組みした爺さんは、考察する。

 

「幼い君が無事だったなら、毒ガスとしても――」

「その考えは捨てて! 僕は、ある事情で耐毒だから!」

 

 珍しく真剣な声で、爺さんはまじまじと見つめた。

 

 そして、頷く。

 

「君を信じよう! 連続している部屋で、入口と出口が開いたまま……。おそらく、蓄積することで効果を発揮する遅効性だ! どう思う?」

 

「はい! 油断させておいて、閾値(いきち)を超えたら致死か動けなくなるはず……。もしくは、これも信仰心を試すだけ?」

 

 助手の男が答えれば、顔を見せないアティーファも付け加える。

 

「ここは、閉鎖空間……。復活した女王たちの住まいじゃ! 今度は間違いなく、侵入者を殺しにくるぞ? どれぐらいで致命的になるか、まったく分からん。他に構わず、ただ出口を目指せ! 幻覚作用などで精神を狂わしてくる恐れもある」

 

 誰もが緊張したが、先を進むしかない。

 

 フランがドアの暗闇に飛び込めば、アティーファも続いた。

 

 教授と助手も、迷わずに走っていく。

 

 

 3つのガストラップを潜り抜けて、その度に息を止めていた一行は、荒い呼吸だ。

 

 死の恐怖は、思っている以上に消耗させる。

 

 ホッとした全員に、フランが気づく。

 

「オタクっぽい男は?」

 

 いない。

 

 慌てる一行は、最後尾にいた女ガイドを見つめた。

 

 両手を前に突き出した若い女は、無意識に後ずさる。

 

「し、知りませんよ? 私のせいですか!? なら、探しに行きます」

 

 引き返そうとした女ガイドは、フランに片腕をつかまれた。

 

「今から戻れば、お前も死ぬよ?」

 

 沈黙。

 

 息を吐いた爺さんは、気まずそうに告げる。

 

「そうだな……。君まで死ぬ必要はない!」

 

 幼女が犠牲になった件で怒鳴ったことを悔やんでいるらしい。

 

 くるりと背を向けた爺さんを見たフランは、女ガイドに尋ねる。

 

「他に用事でもあるの?」

 

「……いえ」

 

 間を空けた女ガイドは、切なそうな顔でドアの形をした暗闇を見つめる。

 

 誰もが、犠牲者を救えなかったことに反省していると感じた。

 

 フランは、リーダーとして宣言。

 

「下へ降りる階段があるはず! 休憩できる場所があれば、そこで少し休もう」

 

 ここは、ガスを吸い込む恐れが高い。

 

 それに気づいた一行は、フランに続いて早足だ。

 

 フランの隣を歩いているアティーファが、小声で尋ねる。

 

「あの女、どうする?」

 

「気づいたの?」

 

 意外だという顔のフランに、呆れたアティーファが教える。

 

「お主は、妾(わらわ)を何だと思っている? しかも、あれは有名なほうじゃ」

 

「そうだね……。僕も、帝国博物館の展示で見たよ! 何とでもなるけど、今は面倒かな?」

 

 肩をすくめたアティーファは、独り言のように呟く。

 

「お主が動かんのなら、どうしようもない! ま、妾にはどちらでもいいが?」

 

「許すと言った覚えは、ないよ?」

 

 フランの青紫の瞳と声音が、その意思を示す。




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