【アーデンティア帝国編 「第三章 悪徳の都に舞い降りたメスガキ」スタート!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった! 作:初雪空
どんよりとした、重い雰囲気。
明るい幼女が惨殺された後は、一行に会話らしい会話がない。
より暗くなったが、今度は広く平らな道が続く……。
先頭のフランソワーズは、隣を歩くアティーファに尋ねる。
「ここから、どういう場所があるの?」
「死んだ女王を
納得したフランが、ふと気づく。
「階段で?」
「そうだな……。吹き抜けになっている縦穴をぐるりと回っていくはず」
想像したフランは、げんなりした。
「輿で運ぶ連中は、よくやるね?」
「……死んだ女王も、いずれ復活する! 封印された区域は歴代の女王の住処だから、光栄なことだぞ!?」
怒りをにじませたアティーファの反論に、フランは無言で首を振った。
全員の足音だけが響き、前方の景色が変化する。
ドアがありそうな出入口がポッカリと口を開けたままで、真の暗闇へ。
立ち止まったフランは、緊張した顔に。
「ここを通れと?」
「妙だな……。こんな広さでは、輿が通れるわけない! 別の通路があるのか?」
腕組みのアティーファは、ブツブツと呟く。
ため息をついたフランが、断言する。
「秘密の通路があるにせよ、僕たちには時間がない! 先行して、様子を確かめてくる!」
アティーファは、考え込んだまま、片手を上げた。
他の面々も、反対しない。
――10分後
そわそわした教授の爺さんが、暗闇を覗き込む。
「マズいな……。我々も、行くべきか?」
「それじゃ、あの子が先に行った意味がありません!」
助手の若い男に指摘され、爺さんはコクリと頷く。
「確かに……。だが、老い先短いワシなら――」
「その必要はないよ? わりと、厄介なトラップだったけど」
暗闇から出てきたフランは、思わず退いた爺さんに構わず、スタスタと歩く。
グループの手前で立ち止まり、ドアの形をした暗闇に振り返った。
「かなり凶悪だ! 今から、説明するよ? 明かりのない部屋が続いていて――」
ドアのない空間から入れば、有毒ガスらしきものが噴出している真っ暗な部屋。
ただし、入った方向からまっすぐ進めば、同じくドアのない出口がある。
距離は、10mあるかどうか……。
「いったん出られるけど、同じような部屋が3つほどあった! そこから先は通路だけど、心配するだろうから引き返した」
腕組みした爺さんは、考察する。
「幼い君が無事だったなら、毒ガスとしても――」
「その考えは捨てて! 僕は、ある事情で耐毒だから!」
珍しく真剣な声で、爺さんはまじまじと見つめた。
そして、頷く。
「君を信じよう! 連続している部屋で、入口と出口が開いたまま……。おそらく、蓄積することで効果を発揮する遅効性だ! どう思う?」
「はい! 油断させておいて、
助手の男が答えれば、顔を見せないアティーファも付け加える。
「ここは、閉鎖空間……。復活した女王たちの住まいじゃ! 今度は間違いなく、侵入者を殺しにくるぞ? どれぐらいで致命的になるか、まったく分からん。他に構わず、ただ出口を目指せ! 幻覚作用などで精神を狂わしてくる恐れもある」
誰もが緊張したが、先を進むしかない。
フランがドアの暗闇に飛び込めば、アティーファも続いた。
教授と助手も、迷わずに走っていく。
3つのガストラップを潜り抜けて、その度に息を止めていた一行は、荒い呼吸だ。
死の恐怖は、思っている以上に消耗させる。
ホッとした全員に、フランが気づく。
「オタクっぽい男は?」
いない。
慌てる一行は、最後尾にいた女ガイドを見つめた。
両手を前に突き出した若い女は、無意識に後ずさる。
「し、知りませんよ? 私のせいですか!? なら、探しに行きます」
引き返そうとした女ガイドは、フランに片腕をつかまれた。
「今から戻れば、お前も死ぬよ?」
沈黙。
息を吐いた爺さんは、気まずそうに告げる。
「そうだな……。君まで死ぬ必要はない!」
幼女が犠牲になった件で怒鳴ったことを悔やんでいるらしい。
くるりと背を向けた爺さんを見たフランは、女ガイドに尋ねる。
「他に用事でもあるの?」
「……いえ」
間を空けた女ガイドは、切なそうな顔でドアの形をした暗闇を見つめる。
誰もが、犠牲者を救えなかったことに反省していると感じた。
フランは、リーダーとして宣言。
「下へ降りる階段があるはず! 休憩できる場所があれば、そこで少し休もう」
ここは、ガスを吸い込む恐れが高い。
それに気づいた一行は、フランに続いて早足だ。
フランの隣を歩いているアティーファが、小声で尋ねる。
「あの女、どうする?」
「気づいたの?」
意外だという顔のフランに、呆れたアティーファが教える。
「お主は、
「そうだね……。僕も、帝国博物館の展示で見たよ! 何とでもなるけど、今は面倒かな?」
肩をすくめたアティーファは、独り言のように呟く。
「お主が動かんのなら、どうしようもない! ま、妾にはどちらでもいいが?」
「許すと言った覚えは、ないよ?」
フランの青紫の瞳と声音が、その意思を示す。