【アーデンティア帝国編 「第二章 風の精霊シルフィード VS 水の精霊ウンディーネ」更新中!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!   作:初雪空

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追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
(旧題:剣と弓の世界で俺だけ魔法を使える~最強ゆえに余裕がある追放生活~)
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第8話 踊る炎+旋風=?

「や、やめろ!」

 

 俺の叫びに、焼け焦げた服を身につけたテリヒトが笑う。

 

「ヒャッハハハ! マジックソード学院を追い出された劣等生でも、さすがに知っているようだなぁ!? そうだ! 2つの魔法をかけ合わせることで、無限の可能性があるんだよ! てめえの顔を二度と見られないよう、焼き尽くしてやる! ファイアダンス!」

 

 ゴオオッと炎に包まれる、ロングソード。

 

 しかし、テリヒトは止まらない。

 

「やめるんだ、テリヤキ!」

「俺は、テリヒトだ! 先にやったのは、テメーだからな? もう、容赦しねえぞ! ハイウィンド!」

 

 ロングソードに旋風が巻き起こり、炎が荒れ狂う。

 

 両手で柄を握ったテリヒトは、同じ手は食わないとばかりに、いきなり振り抜く。

 

「おらぁあああああっ!」

 

 その斬撃は、まさに火炎旋風と呼ぶべき現象で俺に迫ってくる。

 

 瞬時に、その振り抜きの延長線を避けつつ、自分のロングソードを相手に投げた。

 

 不意を突かれたテリヒトは、それを避けるために姿勢を崩した。

 

「つうっ! 往生際の悪い奴だ! おら、おら、おらあああっ!」

 

 離れた位置で連撃を振るうテリヒトに対して、俺は四つん這いになり、カサカサと動き出す。

 

 残像が出そうなスピードで地面を這いまわり、あるいは、手足のバネで宙を飛ぶ。

 

「ええっ……。家に出る虫みたい! 駆除しないと」

 

 うるさい、マリカ・フォン・ミシャール!

 

 今は、お前のために戦っているんだ!

 

 キャー素敵! 抱いてー! ぐらい、言ってみろ!

 

「絶対に、いや!」

 

 心の声に反応するな!

 

 会話ができるはずもない状況で、俺は四つん這いの高速モードのまま。

 

 姿勢が低すぎることで、テリヒトも戸惑っているようだ。

 

「くそっ! このっ! このっ! このっ! ハアハアハア……」

 

 テリヒトが息切れしたので、人間に戻った。

 

 念のために、細かいステップを刻み続ける。

 

 肩を大きく上下させているテリヒトは、ロングソードの切っ先を下ろした。

 

「すばしっこいな? ハアハア……。だが、もう終わりだぜ? こっちはまだ戦える――」

「お前さ? まだ、気づかないの?」

 

 怪訝な顔になったテリヒトは、初めて周囲を見る。

 

「はっ?」

 

 ノダック村は、燃えていた。

 

 そりゃ、火炎旋風を全方位にブッパすれば、こうもなるわ!

 

 ゴォオオオッ!

 

 風でかき回したから、火の勢いもすごい。

 

「み、水をくんでこい!」

「リレーだ、リレー! 小川から、一列になれ!」

 

 一部の村人は、すぐに動き出した。

 

 消えていく。

 

 貧乏だが、それなりに安定していた暮らしが……。

 

 ガランガランと、ロングソードを落としたテリヒト。

 

「えっ? ゴッ!」

 

 正面からクロスレンジまで低く飛んだ俺は、地面に沈み込んだ勢いで、顎を下から打ち抜いた。

 

 確かな手ごたえと共に、やつの体は上へ高く飛ぶ。

 

 背中から崩れ落ちたテリヒトは、気絶。

 

 その時に、マリカが動く。

 

 左腰に吊るしているスモールレイピアを落としつつ、右手で抜いた。

 

 左手をかざし、とある魔法を唱える。

 

「ブルーホール!」

 

 深い青色に染まった剣身で、その切っ先が空を向いた。

 

 右手だけでしならせた切っ先は、空に大きな円を描く。

 

 それが完結した瞬間に、その円が深い青となり、水槽からぶちまけたような大量の水が降り注いだ。

 

 ドシャアアアッという轟音に、ジュウウウッという鎮火する音。

 

 マリカは、元の色になったスモールレイピアで風切り音を鳴らしつつ、左腰に吊るし直した。

 

 パチパチと拍手したのは、チェアに座っているジャコメオ・ヴァルガ子爵。

 

「お見事! さすがは、マジックソード学院の生徒ですな?」

 

 立ったままで優雅に会釈したマリカは、笑顔で返す。

 

「恐縮です、子爵……。御身を濡らして、申し訳ございません」

 

 片手を振ったジャコメオは、同じく笑顔。

 

「いやいや! この村の被害が減ったと思えば、たいしたことはありませんぞ! 長老? さっきの情報の礼を含めて、すぐに援助する。ひとまず、当面の食料と住む場所だな……。今年の税についても相談に乗るから、気をしっかり持て」

 

 ずぶ濡れの地面で土下座した長老は、感服した様子で言う。

 

「あ、ありがとうございます! 全員の安否確認と、火が残っていないかを調べろ!」

 

 若者のまとめ役らしき男が、頷いた。

 

「は、はいっ! おい、すぐに動け!」

 

「「「うっす!」」」

 

 若い人間が、散らばる。

 

 マリカは、ノダック村にブルーホールを発動させた。

 

 ゆえに、俺を含めて、全員がズブ濡れ。

 

 呆気にとられたままのエルド・スターンは、何も言わない。

 

 俺がマリカを見たら、彼女はジャコメオを見た。

 

 視線で察したジャコメオが、頷く。

 

 エルドのほうを向いた。

 

「スターン(きょう)? この決闘は、テリヒトの負けだな?」

 

 あ、そっか!

 

 俺の名前を知らないものな……。

 

 そう思っていたら、顔をゆがめたエルドは、やがて首肯した。

 

「はい……。俺の息子の負けです」

 

 お前、もっと別の心配をしろよ?

 

 村を焼き討ちしたの、お前の息子なんだよ?

 

 今夜にでも、事故に見せかけられて村人全員で殺されても、文句言えないよ?




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