VRMMORPGって大体こんな感じのゲームなんじゃないの? 作:プソFブル
EGはオープンワールドタイプのVRMMOであり、ストーリーに沿って行動しなきゃいけないタイプではない。
そしてチュートリアルもないのでゲームを始めても当然『町を歩いてみましょう!』『インベントリを開いてみましょう!』とかの導きはない。EGは「自由にやれ」という放任主義の親みたいな態度でもって新規プレイヤーを放っておく。正気か?
EGはシリーズモノなので、昔から追っかけていた私は慣れているが、そんな私から言える事は一つ、『自分を客だと思うな』である。
EGをやる時は、太っ腹な地主が自分用が遊ぶようの遊具いっぱいな庭に遊びに来たみたいな心構えでいましょう。私達はそこで鬼ごっこをしてもいい。ピクニックをしてもいい。木の上に秘密基地を作ってもいいし、なんならゴミだって捨ててもいい。
ただしこの遊具増やせやとかベンチのペンキ塗り直してとか言っちゃいけない。嫌ならどっか行けというのがEG運営共の考えである。正気か?
まそんなワケで、我々は与えられたもので遊ぶしかないのである。
「まずはギルドに行くか―」
というわけで与えられてる物を活用しましょう。
EG世界においてプレイヤーは全員『出身不明の旅人』となっているので、まずは冒険者という、女の「私愛があればお金とか容姿とか全然気にしないんでー」って発言ぐらい信用が薄い身分証を得る必要がある。
ギルドはとっても優しくとってもガバガバなので、申し込みされたら明らかに指名手配されてますよねって奴じゃない限りは全て冒険者にしてくれるのだ。懐が深すぎる。その調子で私に続く50万人の新規プレイヤーも登録してやってくれ。
あっ。一応言っておくけど、私がやってる事ってプレイスタイルの一種であって、ルートは他にも色々あるからね? ギルド登録しなくても別になんとかなるって運営情報からも過去作からもわかってるし(どこまで信じられるかは微妙)。ただ私はこれが昔っからの慣れたルートだからやってるってだけだ。
プレイヤーが周年のパチンコ開店日のような勢いで走ってる流れに乗り、ギルドへ侵入。次々と
「へーいおねーさん。冒険者登録したいんだけど」
「はい、魔力登録をするので、この機械の上に手をかざ───」
私はおねーさんがまだ機械を出し切っていないというのにカウンターに乗り出し手をかざす。
リアリティを追求したVRMMO特有の、用意される前に行動することで言葉をキャンセルさせる奴。ちなみにリアリティを追求してるのでこのおねーさんからの好感度は下がる。
「次にお」
「カルシアでーす」
「得」
「弓をメインに」
「せ」
「いらないです」
「t」
「把握してます」
うーんこのイベントを最速で催促している感。フルコン中のリズムゲーみたいで気分上がるぜ。なおおねーさんの好感度はどんどん下がっている模様。
「………………」
「どうもー」
ついに何も言わなくなった好感度マイナスおねーさんから『冒険者登録証』を奪い取り、インスタンスイベが解除され見えるようになった他プレイヤーを横目にギルド前転移装置解除、フィールドへ向かう。
前には同じく走るプレイヤー。恐らく私と同じ3年前にPCゲーとしてテストしてた奴の参加者だろう。当代EG、元はPCゲーとして作ろうとしてたのをVRに流用したケがあるもんね。
だからかEG、初のVRMMOだってのにベータテスト行なっていない。正気か?
さてそんなPCテストゲー出身だろう、短く刈りあげた黒髪に薄く広い顎髭、近所のたまーに遊ぶにーちゃんが異世界戦士のコスプレしたらこんな感じなんだろうなという恰好。……というか恰好見覚えあるな、その見た目は、我が友コワムではないか?
「へーいコワム、調子どー?」
「あぁん? 誰だその名で俺を呼んだ奴……ってその見た目、お前カルシアか!」
「はっはー! 奇遇だね! 君仕事どったの?」
「有給取ったに決まってんだろ! 折角第一陣枠勝ち取ったんだからな! おめーもだろ?」
「そりゃね!」
コワム。フルネームだとコップル・ワムネルト・ムオ。長いので付き合いが長い皆は頭文字取ってコワムと呼んでいる。
先代EG(先代のEG4代目はVRMMOではなく普通のMMOだった)でトッププレイヤーの一員だった人物である。
彼は私とは別のクランに所属していたが、人が良いので使い勝手も良く、エンドコンテンツとかで人が足りない時に呼んだら基本来てくれるので好きだ。
「そっちのクランの方は何人来れたの? 50人くらいいたっしょ?」
「あー、俺んトコは俺含め4人で普通に当てた奴がー、1人、だったか? まっ序盤だし運よく出会えたらって感じだ」
雑談しながらも脚は動かす。現状プレイヤーの移動速度は全員一緒なので、PCテストゲーからデジャブってる奴も動画履修勢もとりあえず何か知ってそうな人についてけ勢も一列となって行軍中だ。一方向に走るプレイヤー軍団にNPC住人の皆さんも目を点にして見守っている。なおこのような奇異な行動はプレイヤー全体の評判を下げる模様。
「おっじゃあパーティー組もうぜ。有象無象よりはマシでしょ」
「えぇ……やだよ。だってお前弓なんだろ?」
拒否。私はその言葉を聞いた瞬間インベントリから初期武器の弓を取り出し矢を番える。じゃあなコワム。お前はいい友であったが、利益が無いならばそうではない。
「あー! あー! あー! わあったって! そう直ぐPKに走らんでもいいだろうが! つーか街中なんだからダメージ発生しねーよ!」
ふむ、そう言えば町中はそうだった。ということでワコムをターゲッティングから対戦を申し込む……。
ピコンっ!
『コップル・ワムネルト・ムオ からPT申請が届きました』
む、上書きされた。しゃーないから決闘は許してやろう。
私はポップアップから『はい』を選択し、『PTバフ:経験値・アイテムドロップ率-20%』のバフを得た。いやデバフだろ。
このゲーム、PT組むと経験値もドロ率も下がるから下手な奴とはやりたくないんだけど、コワムなら大丈夫でしょ。