Fate / the Another story 作:宮崎太助
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幼い少年は今日も夢の中にいた。
それは不定期に、しかしよく見る夢だ。
もう何度目だろう。
夢の内容は変わらない。
これから自身に降りかかる異様な現象に身を強ばらせた。
始まった。
世界が歪曲を繰り返し、重力を感じず浮かんでいるかのようだ。
ーー気持ち悪い
身体にも異変が起こる。
潰されながら膨張していき、伸ばされながら縮む。
今、自身の身体がどのような状態なのか一切分からない。
矛盾する事象がさも当然のように存在する空間。
自身の身体と意識が分離するかのようだ。
ーー気持ち悪い
自分の意識が消えてしまいそうだ。
消えてしまうと、一生起きないのではないかと考えてしまう。
すり潰されて消滅しそうな意識の中、
「ーーー」
遠くで誰かの声が聞こえた。
「ーーー」
また聞こえた。
同じ単語を言っているのだろうか。
しかし、何と言っているか分からない。
だが、一つ分かることとして、優しく包まれるような声であること。
「ーーー」
何度も何度も呼んでくれる。
その声がする方向へ必死に手を伸ばす。
明るいの暗いのか。
身体はあるのか、それともないのか。
この伸ばしているだろう手は本当に手なのか。
そもそも、この空間は何なのか。
「ーーー!」
段々と声が大きく聞こえている気がする。
少年は分かっていた。
声が鮮明に聞こえだすと、もうすぐ夢から覚める。
ーー早く覚めろ
「ーーー!」
何度も何度も呼んでくれる。
ーー早く覚めろ
「ーーー!!!」
一際大きい声は頭の中を何かが通り抜けたかのように感じた。
ーー早く覚めろ!!
少年は叫んだ。
そして、その空間の中で中でとうとう意識は消滅した。
ーーー
ゆっくりと目を開ける。
大きく息を吸い、吐く。
両の掌をゆっくり閉じて、広げる。
両膝を曲げて、伸ばす。
少年は消えてなどいない。
現実に存在する一人の少年だった。
この夢から覚めた後、気付けば決まってこの動きを取っていた。
それは、自分自身が消えていないか確認するために。
自身の存在を確認した後、ゆっくりと身体を起こす。
最初は恐怖のあまり泣き叫んでいたが、何度も何度も見るうちに慣れたのか不思議と平気だった。
見渡す部屋は暗闇。
時間は真夜中だろう。
立ち上がって、壁伝いに歩きだした。
少し廊下を歩いた先のトイレに向かった。
ーーー
少年はベッドに戻っていた。
身体を寝かせ、目を閉じる。
夢の影響か、まだ宙に浮いているかのように感じる。
何度か呼吸をする。
気持ちが落ち着いたのか、段々とゆったりとした呼吸に変わっていく。
眠りで落ち行く意識の中、いつも夢で呼ぶ声を思い浮かべる。
その声の主を思い浮かべながら、
「おやすみなさい」