Fate / the Another story 作:宮崎太助
外は日も落ちてしばらく経っている。
外気は少し肌寒く感じるが、日中暖められた空気を感じられる季節だ。
この街の北側、山の斜面に自生する桜は花を散らせ、若葉を芽吹いていた。
その山の中腹に簡素な山小屋がある。
小屋の中の照明は剥き出しの電球のみで、暖色の灯りだけでは少し薄暗い。
その部屋には自衛隊の着るような緑が主体の迷彩服を来た青年が一人。
今は分解した自動小銃を清掃していた。
壁にはボルトアクションの狙撃銃、自動式拳銃、短機関銃が掛けられており、用途で使い分けているのであろう。
小屋の隅。
そこには現代的な銃火器とは真逆、大昔の武士が纏う大鎧が展示物のように鎮座していた。
重厚で無骨。
そこにあるだけで圧力を感じるような立派な作りだ。
銃を整備する金属音が響いているが、物音はもう一つ。
鎧が擦れる音がする。
よく見ると、ゆっくり呼吸するように肩が上下に動いている。
間違いなくこの大鎧は人間が纏っている。
眠っているのか、少し俯いているようだった。
しかし、青年は明らかな違和感である大鎧を一切気にしていない。
そこにあることが、さも当然かのようだ。
青年は一通り整備が終わったのか、組み上げた小銃のストックを肩の付け根に当て、射撃態勢を取る。
照準を覗き、銃を下ろしては再度射撃態勢を取る。
何度かその動作を行い、入念に確認している。
青年と大鎧の男には会話は無い。
しばらく、小さな物音しか響いていなかった。
静寂を破ったのは大鎧の男だった。
とはいえ、それは頭を上げただけで、今までより少し大きな音を立てただけだ。
「大丈夫、"バーサーカー"」
青年が言う。
すると、フェードインするかのように虚空から老人が一人現れる。
それはアルダンの元に現れた、あの老人だった。
「どうだった、"アサシン"」
青年が聞く。
アサシンと呼ばれた老人はバーサーカーの対角に立ち、腕を組んで壁に寄りかかる。
お互い、警戒しているのか空気が張り詰める。
「"まだ"じゃ。直に始まるのは間違いなかろう」
「もう一つは?」
青年はそう言うと、タブレットを取り出し机へ置く。
そして、次に地図アプリを開く。
それが合図かのように、アサシンは青年へ近づく。
バーサーカーの鋭い視線がアサシンへ刺さる。
アサシンは気にも留めず、タブレットを二人で覗く。
アサシンは地図上を指差し、
「まずは、ここと……ここ。伏せやすい場所じゃ」
青年は無言で頷く。
地図を拡大や縮小を繰り返し、道幅や経路を確認している。
「せっかくの時間じゃ。他を見て回る」
そう言うと、アサシンはフェードアウトするように虚空へ消えていった。
少ない言葉を組み合わし、再び静寂が包む。
アサシンが消え、バーサーカーは再び伏せる。
青年は近くの椅子に深く座り込む。
椅子が軋む音は、周りの静けさのせいでやけにうるさく感じる。
細く深い呼吸をしながら天井をぼんやりと眺める。
深く、深く、頭の中で考えを巡らせる。
そのまま、深く夜が更けていった。