ポンコツ怪盗団に転生したけど、敵のフリして勇者育ててます   作:振り米

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一章 『参上、モノクローム怪盗団!』
1話『参上、モノクローム怪盗団!』


 一章

 『参上、モノクローム怪盗団!』

 

  ――憎めない敵キャラ。

 

 物語の中に時折現れる、実力はそこそこ、頭もそれなり、なのにどこか抜けていて、いつも主人公にコテンパンにされる。けれど、その姿がなぜだか心に残る。そんなキャラクター。

 好きだろ? いや、嫌いな人のほうが少ないはずだ。

 

 当然、俺もその手のキャラが大好きだ。

 特に俺が溺愛してやまないのが、学生時代にどっぷりハマっていたファンタジーRPGの敵キャラ――『モノクローム怪盗団』という三人組の義賊だ。

 

 勇者が魔王を倒しに旅をするという、いわゆる王道ストーリー。

 だが、その中で彼らは異彩を放っていた。ストーリー本筋とは直接関わらないにもかかわらず、各地で事件を起こしては勇者たちの前に現れ、盛大に暴れては返り討ちに遭うという、実にポンコツな三人組。

 

 にもかかわらず、彼らには不思議な魅力があった。ユーモラスで、どこか憎めず、終盤では共闘イベントまで用意されている。

 作中の立ち位置としてはサブキャラ。それでもファン人気は高く、攻略本の人気投票ではメインキャラそっちのけでランクインしていたほどだ。

 

 そんな思い出を語りたくなったのには、理由がある。いや、語らずにはいられなかったのだ。

 なぜなら――

 

「ふははははははははは!」

 

「「ふははははははははは!」」

 

 夜の帳が降りた街の上空。銀の月が静かに照らす中、我々の高笑いが響き渡る。

 

 黒い外套が風をはらみ、ばさりと音を立てる。月光に照らされた俺の姿は、いかにも怪盗らしく、どこか幻想めいて見えた……はずだ。

 

「――白い月光が我らを照らし」

 

 凛とした、冷たいほどに無機質な少女の声が響く。

 

「――黒い夜空に混ざり込む」

 

 対照的に、明るく感情豊かな声が街にこだまする。

 

「――煌めく月夜が広がる時に、善意も悪意も等しく溶け合う」

 

 そして、最後に俺。堂々たる態度で、夜空へと高らかに宣言する。

 

「さあ、今宵も華麗に参上――って、マント!踏んだ!」

 

 ガフッという鈍い音と共に、俺は盛大に前のめりに転ぶ。

 

「……どこが華麗?」

 

「転んでもアッシュはアッシュ! それでいいんだよ!」

 

 ……うん、まあ。カッコよく決まらない日だってある。人生、そういうものだ。

 

「忘れろ忘れろ――せーのっ!」

 

「「「我ら、モノクローム怪盗団!!」」」

 

 今度こそビシッと決めて、俺は懐から煙幕を取り出し、思い切り叩きつけた。

 白煙が屋敷の庭に広がると、混乱した警備たちの怒号が飛び交う。

 

「それでは皆さん、ご機嫌よう!」

 

 夜風に乗って、俺たちはその場を離脱した。

 

 先頭を走る俺の背中には、お宝入りの鞄。後ろから続く二人の少女は、笑顔を浮かべながら、俺を追ってくる。

 

「いやぁ、今回も上手くいったなクロ」

 

「うんっ! リーダー、すっごくカッコよかったよ!」

 

 にこにこと無邪気に笑う少女、クロ。黒髪ツインテールがぴょこぴょこと揺れるその姿は、我が怪盗団の元気印である。

 

「……最後にこけなければね、アッシュ」

 

 冷ややかに言い放つ少女、シロ。白銀の長髪をなびかせながらも、その声にはどこか呆れと優しさが混じっている。

 

「まあまあ、完璧な作戦だったんだし。あれくらい誤差だよ、誤差!」

 

 ああ、読者諸君。話が長くなったな?

 だが大切なことなので、しっかり覚えていて欲しい。

 

 なぜ俺が、こんなコントみたいなやりとりを怪盗団のリーダーとしてやっているのか――その理由を、これから話そう。

 

 そう。俺は今、『モノクローム怪盗団』のリーダー『アッシュ』として、この世界に存在している。




好きだろ?やる時はやるポンコツ主人公。
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