魔法少女リリカルなのは 黒の残響   作:世紀末ドクター

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第14話『お茶会をしよう!』

 

 

 ――グレアム提督の私室。

 

 そこには重装備の武装隊が押し寄せていた。

 扉が開かれると、そこには穏やかな表情で椅子に座るグレアム提督の姿があった。傍らには双子の猫の使い魔、リーゼロッテとリーゼアリアが控えている。

 

 

「…思ったより早かったな、クロノ。お前が内部犯を疑うとしても、もう少し後だと思っていた」

 

 

 グレアムは少しだけ意外そうに言った。

 彼の視線は、部屋に入ってきたクロノ・ハラオウンと、その背後に控える武装隊の隊員たちに向けられている。

 クロノは一瞬だけ、目を伏せた。

 

 

「ある人物に内部犯の可能性を明確に指摘されたのが大きかったですね。僕の心情的には……指摘されなければ、調べるのを先送りしていたかもしれない」

 

 

 グレアムの口元に、薄い笑みが浮かぶ。

 彼は静かに、しかし、どこか納得を含んだ声で言った。

 

 

「ふむ……あの黒い魔導師か。お前がそこまでの信頼を置くとは……どうやら私も彼女のことを甘く見ていた、ということかな」

 

「その強さと合理性だけは、正直、他の誰より信頼してますよ。……良くも悪くもね」

 

 

 クロノはS2Uを構えつつ、冷静に答える。

 

 

「提督の行動履歴と仮面の魔導師とリーゼ姉妹との魔力波長の一致……証拠は十分です。グレアム提督、あなたを闇の書関連の内通者および違法封印計画の主犯として逮捕します」

 

 

 グレアムはゆっくりと立ち上がり、両手を広げて抵抗の意思がないことを示した。

 

 

「抵抗はしないよ。……ただ、一つだけ言わせてくれ。私の計画は、はやて君を犠牲にしてでも、多数を救うためのものだった。凍結封印が唯一の道だったんだ」

 

 

 クロノの瞳がわずかに揺れるが、すぐに硬く引き締まる。

 

 

「それは法の論理ではありません。彼女はまだ犯罪者ではありません。……提督、あなたの『正義』は現行の法律下では違法でしかない。仮に提督の計画を本当に遂行するなら……正式な法手続きと承認を得てからやるべきだった」

 

 

 武装隊がグレアムに手錠をかけ、リーゼ姉妹にも拘束をかけようとする。その瞬間、リーゼアリアが静かに口を開いた。

 

 

「……ロッテ、アナタは逃げなさい」

 

「アリア姉さん!?」

 

 

 リーゼロッテが驚きの声を上げるが、姉リーゼアリアはすでに魔力を集中させていた。デュランダルを押し付けるようにロッテに渡す。彼女の周囲に青い魔力の渦が巻き起こり、瞬間的に空間転移魔法を発動。ロッテの身体が光に包まれ、瞬時に姿を消す。

 

 

「!?」

 

 

 クロノがS2Uを振り上げるが、遅かった。

 アリアは転移の反動で膝をつきながらも、静かに微笑む。

 

 

「妹は……私が守る。ロッテ、提督の意志を、最後まで」

 

 

 武装隊がアリアを押さえつけ、手錠をかける。グレアムは静かに目を閉じ、呟いた。

 

 

「……すまない、アリア」

 

 

 アリアは答えず、ただ静かに連行される。

 ロッテの転移先は不明。追跡魔法を即座に展開するが、痕跡は巧妙に消されていた。クロノは拳を思わず握りしめる。

 

 

「ロッテは……逃げられたか」

 

 

 リンディ提督が静かに近づき、肩に手を置く。

 

 

「グレアム提督の逮捕は成功したわ。ロッテは追跡を続けましょう。ロッテが何かを仕掛けて来るとしたら、はやてさんに対しての可能性が一番高い。私達も、はやてさんへの接触を急がないと」

 

 

 クロノは頷き、ホログラム画面に八神はやてのプロフィールを表示させる。

 

 

「はい。グレアム提督の計画が露見した今、はやてさんを守るためにも、真実を伝える必要があります。問題は守護騎士たちがこっちを信用してくれるかどうか……」

 

 

 ロッテには逃げられた。

 しかも、封印計画の要でもあったデュランダルを渡されて、グレアムとアリアに意思を託されるような形で送り出された。この状況ならロッテは、はやて凍結計画の残党として、計画の続行に動いて来る可能性が高い。クロノとリンディはそう考えたし、だからこそ、はやてを守るためにも接触を急ぐべきだという判断になる。そして、二人がそう思えるということは、二人が極めて理性的な思考をしている証拠だろう。しかし、感情というのは、理屈だけで割り切れるものではない。

 

 

 ――理屈ではこうなるはずなのに、時に感情はそれを上回ることがある。

 

 

 後に、彼らはそのことを思い知ることになる。

 

 

 ◆

 

 

 ――グレアム提督が逮捕されてから2日後。

 

 結果として、フェイルの拘留も解除されていた。

 拘留室から出た彼女は身体の調子を確かめるように軽く身体を動かす。

 

 

「…ま、ちょうどいい休養にはなったわね」

 

 

 預けていたデバイスも返却され、彼女の手元に戻って来ていた。

 腕輪型の待機状態のデバイスを受け取り、自分の左手首に嵌める。

 

 

「フェイル、お勤めご苦労だったね」

 

「あのね…。結局、不起訴だったし、懲役を喰らった訳でもないんだから『お勤め』ってのは違うでしょ」

 

 

 言いながら、ユーノをジト目で睨む。

 その視線をサラリと受け流しつつ、ユーノは今後のことに話題を切り替えた。

 

 

「それより、これからの方針について作戦会議があるから一緒に行こう。もしかしたら、本当に『闇の書』の問題全部を平和的に解決できるかもしれない」

 

「ふぅん?」

 

 

 会議室へと向かう二人。

 部屋の中に入ると、リンディ提督とクロノを始めとするアースラのクルー達に加えて、なのはとフェイトの二人も揃っていた。

 

 

「全員が揃ったので、会議を始めましょう。フェイルさんは、しばらく振りだし、まずは現状の確認から始めます」

 

 

 リンディが会議開始の指揮をとる。

 まずは現状の確認からであり、リンディ提督が口火を切った。

 

 

「グレアム提督の逮捕は成功したわ。でも、使い魔のロッテがデュランダルを持って逃亡した。痕跡は完全に消されて追い切れなかったけど……おそらく、転移先は地球圏内よ」

 

 

 クロノが頷き、画面を操作した。

 画面上には車椅子に乗った少女…八神はやてが映っている。

 

 

「画面に映っているのが、今代の闇の書の主だ。下肢の麻痺があるのは、おそらく闇の書の侵食によるものだろう。グレアム提督が計画してたのは、闇の書を完成させて、そのタイミングで主ごと凍結封印するというものだった。残っているのはロッテ1人だけだが、デュランダルを託されて逃亡してる以上、計画続行のために動いて来ても何ら不思議はない。ロッテは依然として警戒の対象だし、追跡を続けている」

 

 

 はやて凍結封印の計画は、ほぼ確実に頓挫した。

 だが、封印計画の要の一つであったデュランダルは今もロッテの手にある。はやて凍結計画の残党として、計画の続行に動いて来る可能性が高い。だが、仮に動いて来るとしても、闇の書の完成のタイミングだろうし、差し当たってはそれ程の脅威ではないだろう。

 フェイルは、腕を組んだ姿勢のまま、クロノに訊ねた。

 

 

「守護騎士たちは、まだ魔力の蒐集を続けてるの?」

 

「守護騎士たちの魔力蒐集は相変わらずだ。そして、騎士達が闇の書を完成させようとしている理由は、おそらく……」

 

「主の病気を治すためって考えていいのかしら?」

 

 

 フェイルの答えにリンディが頷いた。

 

 

「その可能性が高いわ。でも、闇の書を完成させても、今の主はどっちにしろ侵食されて死ぬことになる。多分、守護騎士たちは、それを知らずに蒐集を続けているのよ」

 

「だったら、主であるこの子に直接会って伝えればいい話でしょう。主からの命令だったら騎士達も従うんじゃないの?」

 

 

 そこでクロノの表情が曇った。

 

 

「そうしたいのは山々なんだが……偵察班の報告だと常に守護騎士の誰かしらが側について護衛してる。……この状況でこの子に直接接触しようとしても、守護騎士がそれをさせてくれない可能性が高い」

 

 

 万が一、主の少女を連れて逃走でもされたら追跡・捕捉からやり直しになる。流石にそれは避けたい所だった。

 

 

「つまり、主人よりも先に守護騎士に話を聞いてもらって、しかもそれを信じてもらわないと駄目ってことね」

 

「その通りだ。だが、少しばかり難航している。実際、昨日も守護騎士のヴィータとなのはの遭遇戦があったんだが……そもそも話自体を聞いてもらえなかった」

 

 

 なのはがシュン…とした感じで落ち込んでいる。

 フェイルはなのはを一瞥だけすると、クロノに訊ねた。

 

 

「コイツがどんな関わり方をしたか知らないけど……闇の書の暴走と転生をどうにかする方法は考えてるの?守護騎士たちは、闇の書を完成させるのが主を助ける唯一の方法だと思ってる可能性が高い。代案を示さないと止まらないって、私、言っといたわよね?」

 

 

 クロノが静かに頷く。

 

 

「一応、ユーノからの調査結果を踏まえた上で、代案は考えている。それを今からキミにも説明しておく」

 

 

 クロノは代案となる作戦の概要を説明。

 確かに、この作戦が上手くいくならば、主の少女も助かるし、無限転生機構での将来の被害も無くすことが出来る。

 説明を聞き終えたフェイルは、鼻で小さく笑った。

 

 

「…ま、いいんじゃない?かなりの部分を、この主の子の気合いと根性に頼ることになるけど……失敗してどうしようもなくなったなら、アルカンシェルで消し飛ばすだけよ」

 

 

 彼女は席から立ち上がり、周囲を見回した。

 その赤い瞳には一切の迷いがない。

 

 

「作戦自体は決まってるんでしょう。だったら、迷うだけ無駄よ。私は無駄と面倒が嫌いなの。私が話をできる状況だけ作ってあげるから、後の説明と説得はそっちでやりなさい」

 

 

 フェイルはそのまま踵を返し、会議室の扉に向かう。

 クロノが慌てて声を上げた。

 

 

「いや、ちょっと待て!? 話を聞いてたか!?だから、接触は慎重に……!」

 

 

 クロノの制止も無視。

 だが、一人で勝手に進む彼女を放置も出来ない。

 結局、フェイルについていく形でアースラのクルー達は地球へと向かうのだった。

 

 

 ◆

 

 

 地球圏、海鳴市。

 八神家周辺の住宅街は、午後の柔らかな陽光に包まれていた。

 フェイルは一瞬、周囲を見回すと、淡々と指示を出した。

 

 

「とりあえず初手で逃げられないように、八神宅を中心に結界を張ってくれる? 後は私がどうにかするから」

 

 

 クロノが即座に眉を吊り上げた。

 

 

「結界!? そんなもの張ったら警戒されるどころか、確実に敵対されるぞ!? ホントにやる気あるのか!?」

 

「いいから黙って見てなさい」

 

 

 フェイルはもう議論の余地がないという顔で、玄関のインターホンに向かった。そして、容赦なく連打。

 

 ピンポン、ピンポンピンポンピンポン。

 

 中から慌てた足音が聞こえ、ドアが開く。

 当然ながら守護騎士の面々が殺気立って現れた。ヴィータが最初に飛び出してきて、鉄槌を構える。

 

 

「てめぇ、いい加減にしろよ!?チャイムが五月蝿いんだよ!!何しに来やがった!? 」

 

 

 シグナムがヴィータの肩を押さえ、静かに前に出る。

 シャマルは無言で後衛に控え、ザフィーラがはやての前に立ち塞がった。

 車椅子に座った少女は、騎士達に守られながら突然の訪問者達に目を丸くしている。

 

 

「え、えっと……どちら様でしょうか?」

 

 

 フェイルは名乗ることもなく、淡々と告げた。

 

 

「時空管理局の者よ。逃げられたら困るから結界だけは張らせて貰ったけど……今日は話をしに来ただけで、戦うつもりはないわ」

 

 

 ヴィータが目を剥く。

 

 

「そんな言葉に誤魔化されるか! 和平の使者は槍を持たないんだよ!」

 

 

 一触即発の空気。

 フェイルの後ろで控えているクロノ達もハラハラした気分で見ている。

 フェイルはため息をつき、サンサーラを地面に放り投げた。金属音が響き、黒い錫杖が無造作に転がる。

 

 

「これで満足?」

 

 

 フェイルは両手を軽く上げ、肩を竦めた。

 

 

「アンタらが主のために動いているのは知ってる。けど、だからこそ、まずはこっちの話を聞きなさい。その上で、信じるかどうかは、そっちの勝手にしたらいい」

 

 

 シグナムが低く問う。

 

 

「……それが我らを一網打尽にするための罠でない保証はあるのか?」

 

「アンタらの実力を舐めたつもりはない。本当に罠にかけて一網打尽にするつもりなら、不意打ちでやってる。こうして正面から来てあげたのが、こっちの誠意よ。それに、もし後ろの連中がアンタらを害しようと先走るなんてことがあったら、アンタらよりも先に私がぶちのめすわ。それで文句ないでしょ?」

 

 

 守護騎士たちの視線が交錯する。

 シグナムが、ゆっくりと頷いた。

 

 

「……分かった。話を聞こう」

 

 

 フェイルは小さく鼻を鳴らし、背後のなのはに顎で示した。

 

 

「賢明ね。…ま、私が話してもいいんだけど、やたら話し合いに拘る誰かさんが居るから、説明はコイツに任せるわ」

 

「え!?わ、私が、説明するんですか!?」

 

 

 いきなり説明を振られて、困惑するなのは。

 

 

「何を驚いてるの? アンタ、いつも『話し合い』をしたいって言ってたし、願ったり叶ったりの状況でしょう。私、たしか『プレゼンの準備と練習をしておけ』って言っておいたわよね?」

 

「あ、あれは、冗談半分だったんじゃ…!?」

 

「もう半分は真面目な話だとも言ったわよ。だから後はよろしく。あと、クロノは結界を解除させなさい」

 

「ああ、分かった。けど、上手くいったからいいものの……いくら何でも無茶をし過ぎだ」

 

 

 クロノは渋々頷き、結界スタッフの局員へ連絡を入れる。結界が解除され、周囲の空気がわずかに軽くなった。

 そして、八神家の中へ招き入れられる形になった一同は、リビングに移動。はやては車椅子を中央に寄せ、守護騎士たちはその周りを固めるように立った。

 なのはは緊張で少し震えながらも、深呼吸をして前に出る。

 

 

「えー……今から闇の書の完成が、何をもたらすかについて説明します……」

 

 

 リビングの壁にプロジェクターで投影したスライドの資料画面が映っている。

 内心で「私のやりたかった『話し合い』ってこんなのだっけ?」と思いながらプレゼンを始めようとするなのは。なのはだけでなく、守護騎士たちも「なんか違う」と思いつつ、シュールな説明会が開始される。

 しかし――

 

 

「このふざけたスライド資料を作ったのは誰だぁ!?」

 

 

 スライドが次のページに切り替わった瞬間にフェイルがキレた。

 

 

「ひぅ!? わ、わたしですけど……! な、なにか駄目でした……?」

 

 

 フェイルのキレ声に思わずなのはが縮こまる。

 なのはが用意したスライド資料は、丸っこいフォントとかを使ったキャピキャピ(≧∀≦)した感じな資料で、それを見たフェイルは海原雄山ばりにブチ切れていた。無駄が嫌いで合理主義な彼女の性格が、これでもかと爆発した形だった。

 

 

「なによ、このフォントは!? それにスライド全体がやたらキャピキャピしてるのは一体何!? このアニメーションは何の意味がある!? 色使いが派手すぎて目がチカチカするわ!?」

 

「そ、その方が親しみやすいかなって……?」

 

「いらんわ!! ここで必要なのは分かりやすさと説得力だけよ!! クロノとリンディ提督は何をしてた!? スライド資料のチェックくらいしときなさいよ!?」

 

 

 監督責任を問われるクロノとリンディの二人。

 だが、まさか本当にこんな『説明会』みたいな状況になるとは思っておらず、なのはのスライドを誰も真面目にチェックしていなかったのだ。

 本来であれば、なのは以外の大人が守護騎士たちへの説明資料を作っておくべき状況であったが、フェイルが最速最短で突っ込んだ所為で、誰も「説明用の資料」は作っていなかったのである。むしろ、フェイルに言われて、律儀にスライド資料を作っていたなのはは凄い。

 

 

「……すまない。完全にこちらの失態だ」

 

「……申し開きもないわ」

 

 

 クロノが苦々しく頭を掻き、リンディも肩を落とす。

 フェイルは盛大な溜め息を吐いて、なのはの首根っこを掴んだ。

 

 

「……悪いわね。ちょっとコイツの資料、作り直してくるから、20分……いや、30分だけ待ってなさい」

 

 

 そのままなのはを隣の部屋へ引きずっていく。

 皆が呆気に取られる中、フェイトが慌てて追いすがり、二人を仲裁しようとする。

 

 

「ね、姉さん、落ち着いてぇー!?」

 

 

 守護騎士たちも、予想外過ぎる事態に呆然としていた。

 そんな中、はやては困惑しながらも、皆に微笑んで提案する。

 

 

「えーっと……何か飲み物でも用意しましょうか?」

 

 

 かくしてスライド資料の手直しをする間、八神家のリビングでは『お茶会』が開かれることになった。以前のシグナムの引き渡しの時にフェイルが皮肉で言ったはずの「まさか、優しく『お茶会』でも開いて話し合うつもりじゃないわよね?」という台詞がまさかの現実になって返ってきた瞬間だった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 八神宅での説明会と同じ頃。

 海鳴市の市街地の路地裏の一角でロッテは一人、膝を抱えて座っていた。灰色の髪が乱れ、猫耳がぴくりと震える。彼女の瞳には、燃えるような恨みが宿っていた。

 

 

「グレアム提督……アリア姉さんも……」

 

 

 グレアム提督の逮捕。

 姉であるリーゼアリアも捕縛された。

 すべてが、クロノの執務官としての「正義」によるもの。

 各々が自分の正義のために動いた結果であり、しかも法に外れているのは自分たちであるのだから、誰かを恨むのはお門違い。デュランダルまで託されて逃がされた以上、グレアム提督の意志を継いで計画の続行を目指すべきだということは、理性では分かっている。

 だが、それでもロッテの心には、一人の少女の影が浮かぶ。

 

 

 ――あの黒い魔導師。

 

 

 彼女が最初にシグナムを捕縛し、計画を狂わせ、グレアム陣営の焦りを生んだ。彼女がクロノに「内部に裏切り者がいる」と指摘し、調査を加速させた。彼女がいなければ、こちらの計画はもっと静かに進んだはずだ。彼女が……すべてを壊した。

 

 

「…許さない」

 

 

 ロッテの拳が、床を叩く。

 小さな爪が食い込み、血がにじむ。

 

 

「アリア姉さんを返せ。提督を返せ。あの女さえ……いなければ……!」

 

 

 彼女は立ち上がり、デュランダルを握る。

 青い魔力が、静かに、しかし確実に渦を巻く。

 

 

「フェイル……お前を、絶対に……!」

 

 

 潜伏は続く。

 ロッテは一人、闇の中で牙を研ぐ。

 もはや、こちらの計画はもう殆ど破綻している。主人であるグレアム提督も、姉のアリアも捕らわれ、残ったのは自分一人。だが、まだ終わっていない。

 

 ――彼女の復讐は、ここから始まる。

 

 





あとがき:

 リーゼロッテが余計なことをやらかすフラグ構築が完了しました。
 しかし、デュランダルまで渡されて、意志を託されるように送り出されたなら、普通は意志を継いで計画を続行することを考えるべきと思うんですよね。多分、理性的な人間ほどそう考えますし、恨みがフェイルに集中してるとは、クロノもリンディも、フェイル本人も殆ど予想してないです。使い魔の多くが主人のことを第一に考える性質なのがデフォルトですし、彼らにとってはロッテの復讐は完全に想定外な事態になります。特に、徹底した合理主義のフェイルからしたら「いや、恨む気持ちは分からないでもないけど、まずは計画を優先しなさいよ。復讐は後からでも出来るけど、計画は今しか出来ないはずでしょ?」と言いたくなる状況だと思います。
 あと、闇の書事件を一番平和的に解決する方法は、ユーノを出来るだけ早い段階で無限書庫に放り込んで、そこで得られた情報をはやての病状が決定的に悪化する前に守護騎士たちに説明して、説得することだろうと自分は考えています。

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