魔法少女リリカルなのは 黒の残響   作:世紀末ドクター

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今回からいよいよStrikers編になります。




Strikers編
第21話『最強の敵』


 

 

 ――それは突然の腹痛から始まった。

 

 

「うっ……」

 

 

 スクライア一族の発掘調査隊が設営したベースキャンプ。

 夜になれば、見上げる夜空には文字通り「星の数ほど」の先人の遺産が、冷徹な真理のように瞬く場所。

 その天幕の一つで、明日の発掘計画を巡る打ち合わせの最中、フェイルは自身の腹部に走る鋭い激痛に、人知れず眉をひそめていた。

 

 

(右下腹部痛に、反跳痛……。この熱感と局所的な緊張は……)

 

 

 じわりと冷や汗が額を伝う。

 その激痛の最中にあっても、彼女は静かに息を吐き、自らの肉体に起きている異常を冷静に分析していた。

 魔導師としての資質や鍛え上げた強さとは一切無関係に訪れる、人間という生物としての機能不全。

 

 

(虫垂炎、か……)

 

 

 自らの武術を極める過程で修めた医学・解剖学の知識が、痛みの原因を過不足なく告げていた。

 

 

(クソ……まさか、こんな生物的な不具合で……)

 

 

 意識が遠のきそうになるのを気合いで繋ぎとめるが、内臓の悲鳴は精神の制御を容易に裏切る。

 不自然に硬直したフェイルの異変に、スクライアの長老がようやく気付いた。

 

 

「フェイル、どうかしたのか? ずいぶん顔色が悪いが……」

 

「……何でも、ないわ」

 

 

 そう言い残して天幕を出ようとした瞬間、視界がぐにゃりと歪んだ。

 立っていられないほどの痛みが走り、フェイルは膝をつき、そのまま地面に倒れ込んだ。

 

 

「フェイル!?」

 

「おい、誰か担架を! 急いで病院へ搬送するんだ!」

 

 

 周囲の慌ただしい怒号が、暗転していく意識の向こうで遠ざかっていった。

 

 

 ◆

 

 

 ――ミッドチルダの総合病院。

 

 抗生剤による緊急の初期治療が奏功し、病室のベッドに横たわるフェイルの顔色はいくぶん持ち直していた。

 ベッドの横のパイプ椅子には、見舞いに訪れたユーノ・スクライアが座っている。かつてのフェレットの姿ではなく、一人の青年としての佇まい。彼だけは、フェイルがどれほど冷徹な言葉を吐こうとも、その生き方と軌道を変えようとはせず、ただ静かにそこに在り続ける。

 

 

「虫垂炎だって聞いたけど、大丈夫なの? 見たところ、抗生剤での治療が効いてるみたいだけど」

 

「炎症は落ち着いて来たけど、糞石が詰まってるとかで待機的に手術の方針になったわ。明日、手術の予定よ」

 

 

 ベッドから上体を起こしたフェイルが、不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 

 

「……まさか、人生で初めての敗北が、自分の内臓だなんてね。笑えない冗談だわ」

 

「人間の身体だもの。誰にだってそういうことはあるよ。魔導師のバリアジャケットだって、内臓の感染や炎症までは防いでくれないしね」

 

 

 ユーノは少し困ったように眉を下げると、手元の書類に目を落とした。

 管理局の社会保障制度や、スクライア一族の共同保険を使えば、治療費や手術費の大半はカバーできるはずだった。しかし、彼女が病院へ提出しようとしている書類には「全額自費負担」のチェックがなされている。

 

 

「ところで、今回の治療費……保険を使わずに全額自費で払うつもりみたいだけど、本気?」

 

「本気よ。私は誰の施しも受けない。管理局の社会福祉のシステムにも、スクライア一族の互助会にも依存しない。私の肉体の不具合は、私の資産だけで解決するわ」

 

 

 徹底的に他者へ依存することを許さない。

 あまりにも彼女らしい徹底された美学と態度に、ユーノは困ったように、しかし、どこかその頑なさを包み込むように苦笑した。

 

 

「相変わらずだね。でも、無理だけはしないでよ」

 

 

 ユーノの視線が、ふと壁に掛けられたテレビの画面へと向く。

 画面には、DSAAプロ部門の試合のハイライトが映し出されていた。そこでは、かつてU19の世界大会の決勝で戦ったクリスが、圧倒的な剣技で対戦相手をねじ伏せ、今やDSAAの総合魔法戦競技のプロ部門のランキング1位として華々しく報じられていた。フェイルが表舞台から去ったプロの世界。

 

 

「……まだまだ動きに無駄が多いったらないわ」

 

「手厳しいね。プロ部門での最年少チャンピオンなのに」

 

 

 DSAAの競技から引退した後、他人の試合には殆ど興味を示さないフェイルだが、例外的にクリスの試合だけはチェックしていることをユーノは知っていた。戦いの強さを極めようとする彼女が「そこそこ強かった」と評したのは、ユーノが知る限り、これまでにシグナムとクリスの二人しかいない。それだけ認めた相手ということなのだろうが、彼女は決してそれを言葉にはしない。ユーノは少しだけ遠くを見つめるような瞳で、ふと呟いた。

 

 

「もしも、キミがプロになってたら、どうなってたかな……」

 

「私がトップに君臨するだけで、インターミドルの時と何も変わらないわ」

 

 

 フェイルはユーノと同じ画面を見つめながら、淡々と言い切った。

 

 

「ダントツの最強ってのは、興行としての競技を面白くするには却っていない方が良いのよ。『どうせアイツが勝つんだろ』ってのが透けて見えるのはエンターテイメントとしては最悪の部類だわ」

 

「だから、プロにならなかったの?」

 

「それも理由の一つではあるわね。短期的には客を呼べるでしょうけど、絶対に誰も勝てない存在がずっと王座に居座り続けるのは、コンテンツの寿命を縮めるだけだわ。DSAAのプロ部門での試合の勝ち負けは、スポーツくじ…ミッドチルダの公営ギャンブルにもなってる。私の試合はそもそも賭けが成立しなくなるわよ」

 

 

 淡々と語る彼女の横顔を、ユーノは静かに見つめる。

 たとえば、将棋のプロ棋士で史上最強の圧倒的な強さを誇る天才であっても勝率は8割程度。しかし、フェイルという特異点は、本当に「10割」を叩き出し、システムそのものを機能不全に陥らせてしまう。彼女の強さは、社会的な枠組みには収まらないのだ。

 

 

「それなら……他の理由は?」

 

「プロになれば試合のスケジュールや、メディア対応のような余計なことに時間を縛られる。インターミドルの大会には自分の技の検証のために出場したけど、それはもう終わったのよ。あとは今の方向性で突き詰めていけば、勝手に辿り着く。だったら、試合に出るより、鍛錬に時間を費やしたほうが良いってだけよ」

 

「辿り着くって……どこに?」

 

「さあね。でも、辿り着いたらアナタには見せてあげるわ」

 

「……うん。楽しみにしてるよ」

 

 

 ユーノはそれ以上深くは追及せず、ただ穏やかに微笑んだ。

 彼女が目指す先にある境地――それがどれほど遠く、どれほど孤独な場所であったとしても、彼女が「見せてあげる」と言うのなら、自分はそれを見届ける観測者であり続けよう。彼は心の中で、ただそれだけを決めていた。

 

 

「じゃあ、僕はそろそろ行くよ。明日、手術が終わった頃にまた来るから」

 

「ええ。私のデバイス…サンサーラはアナタが持ってなさい。手術室に持ち込んでも邪魔なだけよ」

 

 

 フェイルは自分の左手首に嵌めている腕輪…待機状態のサンサーラを外し、ユーノに手渡した。

 サンサーラを受け取り、冷たく、しかし確かに彼女の体温が残る金属の感触を掌に感じながら、ユーノは病室を後にした。

 

 

 ――これが、フェイルの「日常」における最後の会話になるとは、その時のユーノには知る由もなかった。

 

 

 

 ◆

 

 

 そして、翌日。

 

 手術室へと運ばれたフェイルは、手術台の上で天井の無機質なライトを見上げていた。

 無機質な機械音と、消毒液の匂い。衣服を剥ぎ取られ、医療のシステムに身を委ねる。彼女の嫌う「受動」の極致だが、こればかりは生体である以上、どうしようもなかった。

 

 

「それでは、麻酔を導入しますね。深く息を吸ってください」

 

 

 マスクから流れ込む、冷たい気体。

 いかに限界まで研磨された肉体と精神であっても、生化学・薬理学的な作用には抗えない。脳の演算が、末端の神経から順に遮断されていく。

 

 

(……一眠りするだけよ)

 

 

 彼女が最後にそう思考した瞬間、意識は完全に寸断された。

 だが、その「静寂」は、最悪の形で破られることになる。

 

 ――手術開始から数十分後。

 

 虫垂炎の手術自体は、それほど難度が高いものではない。

 腹腔鏡下での手術だったが、工程は何の問題なく進み、最後の創部の縫合の段階。

 しかし、最後の閉創を終えて執刀医の手が止まった瞬間、手術室の照明が一斉に赤く明滅した。結界魔法の駆動音が途絶え、アラートが鳴り響く。

 

 

「な、なんだ!? 停電!? バックアップはどうした!」

 

「駄目です、外部からの魔力供給が完全に遮断されています! これは――AMF(アンチマギリンクフィールド)!?」

 

 

 ガシャイン、と重々しい音を立てて、手術室の気密隔壁が強制解除された。

 白煙の向こうから現れたのは、病院のスタッフなどではない。複数の女性の戦闘機人を引き連れた、一人の男。

 

 

「実にスムーズだ。病院の警備網というのは、本当に脆くて助かるよ」

 

 

 男の名は、ジェイル・スカリエッティ。

 後にミッドチルダ全土を震撼させることになる、狂気の天才科学者。

 

 

「だ、誰だキミたちは……! ここは手術室だぞ!」

 

 

 執刀医の制止を完全に無視し、スカリエッティは手術台の上で眠るフェイルを見下ろした。

 全身麻酔によって完全に弛緩し、今は呼吸さえを人工呼吸器に委ねている次元世界で最強の魔導師。

 本来であれば、これだけの強者を拉致することなど天文学的な確率の奇跡が起きない限り不可能だった。

 

 

「本当に、実に素晴らしいタイミングだ。絶対に手に入らないと思っていた魔導師が虫垂炎というどうしようもない不具合で搬送され、自らこの脆弱な医療システムに身を委ねてくれたのだからね。チャンスを待ち続けた甲斐があったというものだよ。……さあ、回収したまえ」

 

 

 スカリエッティの合図とともに、控えていたナンバーズが手術室の医療スタッフを制圧した。

 そして、フェイルの身体にいくつものコードと拘束具を取り付けていく。人工呼吸器や点滴のラインは、手際よく携帯用の医療維持ユニットへと切り替えられた。

 

 

「ドクター、これで、いつでも運び出せます」

 

「ご苦労。すぐに潜伏先の研究所へ向かおう。……ああ、忘れるところだった」

 

 

 スカリエッティ達は動き出す寸前、手術室にある制御端末に指を滑らせた。

 

 

「この病院での彼女に関わるすべての医療記録、防犯映像のログを消去したまえ。その上で、この偽の医療記録に書き換えて、と……よし、これでフェイル・スクライアは、『手術を無事に終えて退院した』ことになった」

 

 

「彼女が全くと言っていいほど、他者と関わらない個人主義な性分なのが幸いでしたわね。このまま消えたところで、殆ど誰も不自然には思わないでしょう」

 

「全くだね。さあ、行こう」

 

 

 手術室から、静かに、しかし迅速に、最強の魔導師の身柄が運び出されていく。

 

 

 ◆

 

 

 どれほどの時間が経っただろうか。

 麻酔薬によってもたらされた霧が徐々に晴れ、最初に回復したのは皮膚の感覚だった。

 いつも肌に馴染んでいたはずの病院のシーツではない。硬く、冷たい、金属質の感触。

 鼻腔を突くのは消毒液の匂いではなく、高度に管理された無機質な機械油と、かすかなオゾンの臭気。

 

 

(……病院、じゃない?)

 

 

 ゆっくりと、フェイルは瞼を持ち上げた。

 視界に飛び込んできたのは、病院の白い天井ではなく、巨大な培養槽や太いケーブルが這い回る、薄暗い空間だった。

 

 

「――ふむ。予想よりも三分も早い。素晴らしい生命力、そして驚異的な代謝能力だ」

 

 

 聞き覚えのない男の声。

 フェイルは上体を起こそうとしたが、両手首と両足首、そして体幹を強固な拘束具で固定されていることに気付く。

 だが、彼女の赤い瞳に動揺の色は一切なかった。ただ、冷徹に状況を観察し、思考を巡らせる。

 

 

(ここは……どこかの研究施設か。手術自体は……終わってるのか。綺麗に縫合された痕がある)

 

 

 フェイルは首だけを動かし、声の主を正面から見据えた。

 白衣を羽織り、その瞳の奥で狂気的なまでの知性をギラつかせている男。

 

 

「……まさか。ジェイル・スカリエッティ?」

 

「おや、キミにまで知られているとは光栄だな」

 

 

 男――スカリエッティは、心底嬉しそうに両手を広げて微笑んだ。

 

 

「フン、手術の麻酔に乗じて拉致されたってところかしら?」

 

「理解が早いね。普通に真正面から拉致しようとしても絶対に無理だろうから、こんな形を取らせてもらったよ。正面からの戦闘だったら、私の可愛い娘たちを何人犠牲にしても足りやしないからね。病院のセキュリティというのは脆弱で実に助かったよ」

 

「私を拉致しての目的は? 改造・洗脳でもして手駒にしたいってところ?」

 

「その通りだよ。あと、私は、そのうち管理局に反旗を翻すつもりなんだが……その時に、キミみたいな桁違いに強いのが、ミッドチルダの在野にフリーで居るのは都合が悪いんだ。予測不能なイレギュラーは、あらかじめ排除するか、こちらの計算式に組み込んでおくのが私の主義でね」

 

「……なるほどね。事前のリスクヘッジというわけか」

 

 

 フェイルは小さく息を吐き、拘束具に預けたままの身体の力を抜いた。

 危機に瀕しているとは思えない。その余りにも落ち着き払った態度に、スカリエッティはわずかに眉を上げる。

 

 

「しかし、嫌に落ち着いてるね。自分で言うのもなんだが、私は相当な悪党だよ? 洗脳されて悪党の手駒に堕ちるなんて、嫌だとは思わないのかい?」

 

「完全に詰みの状態なんだから、慌てたってどうしようもないでしょう。それにアンタは、自分のことを悪党と言ったけど……人間社会の善悪なんて、私にとってはどうでもいいことよ」

 

「どうでもいい?」

 

 

 スカリエッティが興味深そうに目を細める。

 

 

「私にとって大事なことは、ただ自分の『武』を極めること。それが出来るなら、所属するコミュニティの善悪は、正直、どっちでもいいのよ。単に善側に所属してた方が、周囲との関係におけるノイズ……軋轢が少ないってだけ。アンタの手駒になることで私の『武』の追求が止まるってなら抵抗もするけど、そうじゃないなら、ただの環境の変化でしかないわ」

 

 

 スカリエッティは一瞬、呆気に取られたように目を見開いた。

 そして、次の瞬間、腹の底から湧き上がるような狂笑をアジト内に響かせた。

 

 

「ハハハハハ! 素晴らしいな、実に素晴らしい! 社会の道徳にも、正義という感傷にも染まっていない、私と同じ純粋な意味での『真理の追求者』だ!まさかこれほどの逸材が、管理局の生ぬるい世界に転がっていたとはね!」

 

 

 まさに『善悪の彼岸』に立つ者。

 一般社会の善悪や道徳観は、宇宙の真理などではなく、単に人間が社会を維持するために設定したルールでしかない。たとえば、『人を殺してはならない』という基本的な道徳規範ですら、突き詰めれば『公理』に過ぎない。殆どの人間が共有しているルールだから、無意識に『真理』だと錯覚しているだけだということをスカリエッティは知っている。そして、目の前の魔導師もまた、それを明確に知っている者だった。

 

 

「クク…ある意味では私と同類だな。社会が押し付けて来る価値観の外で生きる者、という意味ではね」

 

 

 スカリエッティは、フェイルという個体が持つあまりの純粋性に歓喜していた。

 社会が正しいと押し付けて来る価値観に染まらず、独自に構築した世界観の中で生きる者に対してのシンパシー。彼は興奮に顔を上気させながら、フェイルの拘束ベッドの傍らにある操作パネルに歩み寄る。

 

 

「安心するといい、フェイル・スクライア。私はキミのその美しい『武』を汚したりはしない。下らない悪趣味で肉体をいじくり回すような真似もしないさ。ただし、その力を出力する方向…戦ってもらう敵だけは、こちらで指定させてもらうがね」

 

 

 言いながら、スカリエッティは麻酔を追加する。

 追加された麻酔薬が、点滴のラインを通じてフェイルの血管へと滑り込んでいく。静かに瞼が閉じ、彼女の意識は再び、深い暗闇の底へと沈降していった。その様子を満足げに見つめていたスカリエッティの背後から、コツコツと硬質な足音が近づいてくる。姿を現したのは、ウェーブがかった薄紫の長髪をした女性戦闘機人――ナンバーズの1番、ウーノだった。

 

 

「ドクター。私達には、能力の最適化のために色々と肉体的な手を加えてくださいましたわよね? 彼女には、その種の改造は加えませんの? ゼストやルーテシアのようにレリックウェポンに改造することもできますが……」

 

 

 ウーノの問いに、スカリエッティは首を振った。

 彼は、まるで至高の芸術品を眺めるような瞳でフェイルを見つめている。

 

 

「確かに、キミらにはそれぞれの特性に合わせた最高の強化をしたさ。けど、彼女の場合、過去の試合データを見る限り、表に出していない技とかも山ほどありそうだからね。下手に肉体を改造して神経伝達のバランスとかを変えたら、今の彼女の持ち味を殺してしまうかもしれない。それは科学者として、あまりにも不条理で悪趣味な損失だよ。強化デバイスを新規に設計・装備させて、記憶の封印と管理局への敵意を植え付ける洗脳処置……それだけで十分さ」

 

 

 ウーノが淡々と手元の端末を操作し、フェイルの頭部を固定するヘルメット状の装置を起動させる。

 

 

「まあ、今のまま運用するだけでも、対個人・対魔導師での戦闘では間違いなく最強ですものね。余計なノイズを取り除くだけで、彼女は完成された兵器になります」

 

 

「その通り。さあ、始めようか」

 

 

 スカリエッティがレバーを引くと、洗脳装置が稼働し始める。

 脳の記憶領域に直接干渉し、彼女のこれまでの歩み、一族の記憶、そして――病室に残してきたあの少年の残像を、強制的に漆黒の底へと沈めていく。

 

 

 ――未来に設立される『機動六課』にとって、最強最悪の敵が誕生しようとしていた。

 

 





あとがき:

 Strikers編での主人公は、スカリエッティ陣営の一員としてなのは達の敵として登場します。
 最強キャラが味方に存在すると物語の緊張感が失われるので、それを回避するためにこの展開を採用しました。なのは達の絆と真っ向から対立する価値観で動く人間であり、無印編のラストで決裂した経緯を考えても、最後の最後は「vs高町なのは」という展開と決着に持っていくのが自然だと思っています。
 余りにも強過ぎるキャラが敵に回ってしまって、「いや、なのはじゃ勝てなくないか?物語として成立するのか?」と思われるかもしれませんが、一応、決着までのプロットを組んだ上で書いてるので、自分のやる気さえなくならなければ大丈夫のはずです。

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