【凍結】星の兵士   作:ジュネープ

1 / 2
完全に一話だけで作ってた短編でしたが、長くなったので前編として投稿します。


序章:ある惑星のある戦場にて

ジャングルに覆われた惑星。

惑星を支配している複数の国家が覇権争いを繰り広げており、惑星の80%を占める森林地帯には50%ものブービートラップが仕掛けられている。

その結果交通インフラのほとんどが壊滅。戦争は泥沼の様相を呈していた。

 

人が2人ほど入ることが出来る蛸壺に男が銃を構えている。表情を感じさせないその瞳で銃口の向き先を眺める男には濃い疲労がうかがえる。

 

「・・・・はぁ」

 

ふとため息をついた彼は蛸壺の中で腰を下ろし、自身が持っている銃の銃口を上に向けると抱きしめるようにしてタバコを取りだし、ニコチンを摂取する。煙を空に向けて吐く。

 

穴から見上げた空はどんよりと曇っていた。

 

「この扱いにくいシリーズとも長い付き合いになったな」

 

辟易とした表情で自分の武器を眺めた。

 

 

【ミクロ社製アングスト16】

 

銀河で1、2を争う巨大武器メーカーが手掛けたアングストシリーズの16世代。銀河でシェアを獲得しているリアクティブガンや、リアクティブガンを改良したネクストガン等、他の突撃兵専用武器とは使用難易度や使い勝手に難がある武器だが、ミクロ社の持ち前のブランド力を武器と責任の追及のしやすさから一部惑星の国家で正式採用されている武器だ。現時点では18世代が販売されているらしいが、17世代で他社製品を意識した機能を追加した事で大量の既存ユーザー離れを引き起こしてしまった銃だ。

 

俺が所属している国家ではそれを踏まえて16世代の武器を採用しているらしいが、個人的にで習熟していた武器シリーズを採用して欲しかったと思う。

 

 

味方前線基地から泥を踏みしめる音が近づいてくる。空を見上げていた俺の視界に士官帽をかぶった男が現れた。

 

「おい、【グリーンマン】」

 

「・・・・なんだ?」

 

 

タバコをふかしていた俺は、この仕事をするようになってから付けられた二つ名を呼んだ男に返事をした。

 

「ボスから呼び出しだ」

 

そう言うと彼は総司令部のある方角を顎でしゃくった。

 

「それって俺じゃねぇといけないのか?」

 

「指名なんだ。早く向かえ」

 

「はいはい分かりましたよ。ビークルを借りるぜ」

 

蛸壺から這い出ると、前線基地に向けて歩き出す。

 

「傭兵風情が図に乗りやがって」

 

すれ違いざまに聞こえた言葉は無視する事にした。

 

 

 

 

国境地帯から60kmの地点に作られた大規模な軍事基地。

陸軍と空軍が共同管理してる基地をビークルで走行していた。

 

俺が傭兵として雇われた当初、首都近くに迫った敵軍の猛攻により、防衛虚しく幾度も首都への侵入を許し、指揮系統は麻痺していた。

中央からの指令は馬鹿の一つ覚えのように【撃滅せよ】の一言だけの状況に堪忍袋が切れた部隊長は俺ら傭兵部隊に対して、敵の侵攻を食い止めるようにとだけ言うと前線指揮所に籠ってしまった。

 

そんな思い出のある前線指揮所跡地に建てられたのがこの基地だ。

 

「基地司令に呼び出されたんだが?」

 

「・・・確認しました。会議室Bに向かってください」

 

そんな経緯で建てられた基地は、たった1週間で建造されたとは思えないほどしっかりとした作りとなっている。

空調の効いた部屋、ネット空間に安定接続できる環境、基地の人員だけなら2年は籠城できるだけの備蓄食糧。

 

ほんの60km先で地獄が広がってるとは到底思えないような設備だ。

 

案内された会議室Bの高級感漂うシックな扉を叩く。

 

 

「入りたまえ」

 

室内には2人の将校と1人の・・確か俺と同じ傭兵として参加している物静かそうな女性が着席していた。

 

「会えて嬉しいよ。【グリーンマン】」

 

「俺は緑より黒か白が好きなんだ」

 

「基地司令に向かってなんて口を聞くんだ貴様ッ」

 

「落ち着きたまえセサル君・・・立ち話も辛いだろう。席に座りたまえ」

 

青筋を浮かべている部下を諌め、にこやかに席を指し示す司令官。

有無を言わせぬ雰囲気に圧倒された俺は同業者の女の横に移動する。

 

「君たちはB戦線での数少ない生き残りだ。大量の敵の侵攻を1個大隊で食い止めたどころか殲滅した事は我が軍にとって大きな白星だよ」

 

「どの口が言うんだ?。使えない大隊長の指揮で文字通り全滅するところだったんだぞ?」

 

「我々だってB戦線の実態を把握出来てなかったんだ。大隊長のスウェン君から聞いている報告が楽観的すぎて我々としては増援がいらないと思っていたのだよ」

 

「その結果、熟練の傭兵は軒並み戦死。所属していた分隊だって先任の仲間は全員死んで俺ただ1人だ。増援が早ければ違う結果になったはずだ」

 

「君の言うことも最もだ。しかしね?その増援だって生き残ったのは3人だけで、その内の1人がここに居るイア君だ。遅かれ早かれ結果は同じだと思うがね?」

 

何も言えない。

あの戦場の過酷さを最初から最後まで体験した自身の勘が司令の言う事は正しいと告げてくる。

 

「そもそもだ。増援部隊だって補充要員と他戦線から人員をなんとか抽出して作った部隊だった。遊撃部隊として担当戦線の救世主になり得ると確信していた。それがたった1回の防衛支援作戦で失った絶望を貴様は理解しているのかッ!」

 

司令の部下・・・セサルがこれ幸いとばかりに口撃する。

 

「セサル君、その辺にしておきなさい」

 

「そうだぞセサ坊。パパの言う事を聞かないと立派な大人になれないぞ?」

 

「2人ともいい加減にせんか!!」

 

「セサル中佐。軍人とは規律あってこそ軍人たり得る。肝に銘じるように」

「承知・・・しました」

 

「そしてグリーンマン。いくら金で雇われた傭兵とはいえ度が過ぎる。これ以上悪化するようなら所属会社に苦情と改善要求を求める事になりますよ?」

「・・・・わかった。以後気をつける」

 

「セサル・・・その、悪かったな」

「いや、私こそ軍人としてあるまじき姿を見せてしまった。少々気が立ってしまっていた様だ。すまなかった」

 

「さて、話を本筋に戻そうか、グリーンマン。立ってるのは辛いだろう?席に座りなさい」

 

素直に着席したのを確認すると、セサルがホワイトボードを引っ張ってきて咳払いをした。

 

「私たちが所属している戦域内にて、先日発生したB戦線の大規模攻勢の結果、習熟訓練中だった増援部隊・・・もとい特別遊撃部隊とB戦線を防衛していたオーダー部隊が全滅した。当作戦に従事したオーダー部隊1000人、特別遊撃部隊500人のうち生存者は9名。うち指揮官クラスを除く戦闘要員の生存者は4名のみだ。

これを受け、オーダー部隊及び特別遊撃部隊は解体、再編成を行う。諸君らはオーダー部隊で副隊長を務めていた南雲大尉の指揮下に入り、新設される【第06特務小隊】の部隊員とする事が決まった」

 

「まてまて、特務小隊って言えば最低でも30人以上で構成されるもんじゃないのか?これじゃ【特務分隊】じゃねぇか」

 

「一旦黙ってくれグリーンマン・・・さて、諸君ら特務小隊の任務はC戦線の防衛任務だ。以前のB戦線防衛戦時に確認された敵兵2000人を上回る9000人、一個師団相当の進軍を確認した。

敵は他戦域から兵力を無理やり抽出したものと考え、総司令部は各戦域に対して一斉侵攻命令を発令した。

諸君らには敵陣地の撹乱任務に当たってもらいたい。特務小隊の指揮官である南雲大尉はすでに現地に到着している為、詳しい指示は大尉から聞くように」

 

ブリーフィングルームから退出した足で輸送機に乗り込むと現地に向けて飛び立った。

 

輸送機のなかで一人イヤホンを着用してリリースから数百年も経過してすっかり老舗アプリと化した動画配信サービスで暇を紛らわしていた。

傭兵になるといつ死めかわからない恐怖からタバコに始まり、酒、女と手を出す輩が多いが、俺の場合はこの仕事を始める前からやっていた動画漁りとタバコ。休日に同業者より飲む量は少ないが、民間人からしたら充分大量の酒を飲む事をルーチンワークとしていた。

 

携帯端末から目を上げると書類を黙ってみているイアが視界に移る。

決して美人というわけではなく。顔面を見る限り中の下程度の眼鏡女。しかも身長は目測で150cmで胸も尻も大きくない機能的な見た目だ。

 

「あの・・・さっきから私のことを見ていますが、どうかされましたか?」

 

「・・いや、君が見ている紙は何だろうなと思ってな。書類は電子で見ることはあれ、紙で見ることは滅多にないからな」

 

何とか適当な理由をでっちあげてイアを見ると、彼女は合点がいったという感じて席を立つと、俺の真横に座った。

 

「編入した部隊員の名前とスキル、経歴を見ておこうと思いまして。そしたら戦場で何かしら役に立つかなと」

 

そういって彼女は俺に3枚の紙を渡してきた。一番上の紙は俺がこの戦場に入る前にクライアントに渡した経歴書だった。

 

----------------------

名前:イトウ アキラ

年齢:24歳

性別:男

経験兵科:工兵、突擊兵

勲章:

・岩手攻略戦参加勲章

・NTD協商連合特別功労勲章

・銀河集積地帯特別任務勲章

略歴:

・岩手攻略戦にて、極東エリア軍工兵として参戦

・水星戦役にて、NTD協商連合突撃兵として参戦

・銀河集積地帯にて、惑星連合軍突撃兵として複数の特殊作戦に参戦

 

----------------------

 

 

「イトウさんって結構お若いんですね。もっと年配の方だと思っていました」

 

「しょうがないだろ?この業界に入ったからには色々思い詰める事もあるものさ。まぁ老け顔なのは元からだけどな」

 

「・・・略歴に書いている岩手攻略戦って、もしかして例の?」

 

「あぁ:・・そうだ。その時俺は新卒でな。初めての戦場が地元の惑星だったんだ・・」

 

「それは・・・大変でしたね」

 

「大変なんて言葉で片付けられたらどれほど幸運なんだか」

 

今から5年前、俺の出身惑星である地球に隕石が落下した。

幸い落下した隕石は野球ボールほどの大きさで被害は軽徴な物だった。

しかし、その隕石には人類を凶暴な化け物に変えてしまう細菌が混入していて、あとはわかるな?

ゾンビパンデミックよろしく地球はてんてこ舞い。就活に失敗して入った人材派遣会社が傭兵会社として登録してたもんだから即座に戦場に配属された。

当時、雪が降りしきる戦場にリクルートスーツで戦っていたんだからバカにも程がある。

 

「イアの紙も見ていいか?」

「どうぞどうぞ」

 

---------------------

name: イア・ヘルツ

age: 27

carrier: spoter

 

---------------------

 

「会社によってこの手の経歴書に違いはあると思うが・・・簡素すぎるし、なんで名前だけ銀河標準言語なんだ?」

 

「私にもわからないです。強いて言うなら数百年前のイケてる会社ってこんな感じだったらしいですよ。そういえば何でグリーンマンなんて呼ばれているんですか?」

 

「知らん。プライベートでも縁系統の服をいつも着ているからじゃないか?」

 

「・・・そんな安直な感じで決まるもんなんですか。二つ名」

 

「まぁ見た目の特徴で二つ名をつけられることだってあるからな。旧世紀の軍隊映画にもそんなシーン合っただろ?・・おっと、そろそろ着陸みたいだ。準備をしないとな」

 

何か言いたげな彼女を無視していそいそと準備を始めた。それに倣うように準備を行っている彼女をしり目に、開いた後部ハッチから地上に降り立った。

そんな俺らを待ち構えていたかのように一台のビークルが目の前に止まると、土官服を身にまとった一人の青年将校が下車した。

 

「久しぶりですね。グリーンマン」

 

挨拶をするこの男こそ、副隊長としてB戦線を支えた土官であり、防衛作戦の終盤には俺と一緒に銃を手に取り戦った男

 

南雲大尉だ。

 

「久々ってほどじゃないだろ?あの戦いからまだ3日程度しか経ってないぞ?」

「そう思えるほどこの戦争は目まぐるしく変わっていくってことさ。もう君とは10年来の親友のような存在だよ」

 

 

この男。俺と同郷らしいが余裕そうな表情を崩さす腹の底が見えない所が嫌いだ。後、美人な女を食いまくっている所も嫌いだ。

 

「そうかよ。よろしく頼むぜ。新隊長さん」

 

形ばかりの敬礼をすると後ろからついてきたイアも南雲に向かって敬礼した。

 

「よろしく。早速だが我ら第06特務小隊。通称ピクシー小隊の任務は「まてまて」・どうかしたかね?グリーンマン?」

 

「なんだその・・ピクシー小隊って。もう少しまともな名前はなかったのか?」

 

「そう思うのは仕方ないが、この隊は「特務小隊」なんだ。名前に恥じない任務内容だから今は少し黙っててくれ」

 

「お。。おう。すまなかった。続けてくれ」

 

「話を続けるぞ?我々の任務は敵陣地深くに浸透し、敵の補給路及び敵高官、重要施設の破壊工作を実施する」

 

「いたずら好きの妖精だからピクシーってか。それにしてはいたずらの度が超えてないか?」

 

「確かに。しかし数だけは大量にいる敵からしたら我々にとって度が越えている事でも、あちらにとっては些細な問題と思われるかもしれないよ?。せいぜい殺虫剤で殺されない程度に活動する感じていこうか」

 

「笑えねぇ」

「・・・」

 

俺、イア、南雲と三者三様の表情を浮かべているが、少なくとも2人はこの作戦に乗り気ではないのは確かだ。

 

「何も準備なしにこの作戦を実行させるわけじゃない。司令部から試作兵器を預かっていてね。付いてきたまえ」

 

そう言うと俺らの返事を待たず止めているビークルに乗り込む南雲。

エンジンがかかる音に慌てて俺とイアも乗り込む。

 

「試作品って何なんだ?今の段階で簡単にでいいから教えてくれ」

 

「そうだな・・・世界の戦場をハイテクにしてくれる兵器・、ってところか」

 

「・・・ますます疑問が湧いてきちまった」

 

「ハハ、もうそろそろ到着するからあと少し待っててくれよ?」

 

子供のようにあしらわれてしまった。

隣を見るとイアはまだプロフィールを凝視していたので声をかけてみた。

 

「イア、そういえば南雲のプロフィールがあると思うんだが、見せてくれないか?」

「いいですけど・・」

 

声を潜め、歯切れ悪そうにして紙を渡してきた。

その怪訝そうな表情を訝しげに眺め、受け取った紙を見るとその理由が分かった。

 

---------------------

名前:南雲道天

年齢:30

性別:男

対応可能スキル:部家管理、工兵、突撃兵、[アクセスレベル3以上で閲覧可能]、狙撃兵

キャリア:

地球連邦軍[アクセスレベル4以上で関覧可能]からマクギリア軍[アクセスレベル3以上で閲覧可能]に移籍。

マクギリア軍総司令部付特務部隊[アクセスレベル2以上で閲覧可能]での勤務後、マクギリア軍第2戦域B戦線にて、部隊長補佐として勤務。

---------------------

 

 

「・・・・なんだこれは」

「あまり詮索しない方が良さそうですね」

 

「・・・確かに」

 

「諸君!武器庫についたぞ〜。我々の新兵器を受け取りに行くぞ!」

「おーけー隊長・・・・なんだかきな臭いな」

 

そこは武器庫というより極めて小規模な車両整備工場の様相を呈していた。気になる所といえば、堅備士は存在せず四方1.5mほどの穴が空いているくらいだ。

 

 

「さて、君たちに装着してもらうのはマクギリア王国の新興開発メーカー、オープンフィールド社が開発した試作装備だ」

 

「・・・なんだ。ただの防具かよ。それて?その防具を付けると化け物レベルに強くなるってか?」

 

「フフッ!まぁ、見るがいいさ」

 

南雲は近くに備え付けれていた赤いボタンを押すと、中央に置いている穴が徐々にせり上がってきた。

 

「・・・・なんだこれは」

「・・・・・」

 

俺とイアは開いた口が塞がらなかった。

目の前にはそれぞれ形状の異なる3つのアーマーが鎮座していた。

 

軌道上や宇宙空間で白兵戦を繰り広げる人員が装着するようなバワードスーツよりも、人体の構造に限りなく近いスリムな形状だった。

 

「この【GAPアーマー】は文字通り全ての戦場で兵士の生存性を上げる目的で作られたアーマーだ。

酸素供給システムも搭載されているから宇宙空間だろうが水中だろうが活躍できる想定で作られたらしい。

試作型は3つのタイプに分かれててね。まずは突撃兵科向けのこのアーマー」

 

そう言って中央のアーマーを指差した。他のアーマーより再腕の装甲が若干厚い気がする。

 

「これはグリーンマンに着用してもらうアーマーだ。確か正式名称はAssault Unit Component EXP・・・試作型突撃兵コニットって言ったところかな?

光学兵器以外にも実弾防御も可能になっててね?関節部分は極力音を立てない作りになっているから奇襲も容易にできる優れものさ」

 

「一度着用しないと何とも言えないな」

 

「まぁ確かに・・・・さて、次はイア君のアーマー紹介だ」

南雲はテンポ良く俺の隣に鎮座するアーマーを指差した。どのアーマーよりも装甲が薄く作られているようだ。特に両腕の装甲が一層薄く・・・いや薄すぎないか?

最早装甲というより薄手の生地を付けたかのような見た目だ。

 

「このアーマーはSuport Unit Component EXP・・試作型支援ユニットだ。半径10kmに及ぶ素敵機能と機動性は僕たちに支給されたアーマーの中では一番かな。装甲が賛弱で特に腕部分がね?宇宙空間での戦闘時、腕に被弾したら・・まぁそうならないように注意してくれ!」

 

「・・・つ、使いこなせるかわかりませんがやってみます」

 

「その意気だ。さて、僕のアーマーについても軽く紹介しておくとしようか」

 

「アンタのアーマーは他のアーマーよりもゴツイ見た目をしているな」

 

「このアーマーは君たちに支給される試作型ではなく、【教育】と【指揮機能】に特化した物なんだ」

「指揮機能はわかるが・・・教育ってどうゆうことだ?」

 

俺の疑問にイアも同意する視線を南雲に送った。彼は少し考えるそぶりを見せた後言った。

 

「もう少し詳しい背景を説明しないとね。マクギリア王国としては銀河でほとんどのシェアを獲得してる武器よりも、まだまだ参入障壁が低い防具産業に目を付けたんだ。国の方針とオープンフィード社の思惑が一致した結果、戦場で得られたデータをリアルタイムに提供することを条件として、僕たちにこのアーマーが回されたってわけさ」

 

「なるほどな・・つまり俺らは敵地の奥深くで新型アーマーのテストを行うための試験小隊ってわけか」

 

「そうゆうことになるね。話を戻すが、君たち2人には兵科に応じた挙動結果に基づくフィードバックを期待している。対して僕は全体的な部隊運用と【全ての兵料】でも適応できる挙動のフィードバックを提供するために作られたのが・・」

 

言葉を切り、目線をゴツイ見た目の・・・しかし従来のパワードスーツよりかはスリムなアーマーに向ける

 

「Professor Unit Component(教導ユニット)・・・ティターニアだ!」

 

「女っぽい名前だな」

「うるさい黙れ」

「・・・フヒ」

 

気色悪い声が聞こえたが無視して説明書を読み漁った。

 

 

「なぁ」

 

時間にして30分程度だろうか。説明書を読み込んだ俺らは早速アーマーを装着した。

 

「どうしたんだい? グリーンマン」

 

「このアーマーは自分たちで整備するのは分かるんだが、これだと兵士一人当たりのコストが高くつくんじゃねぇか?」

 

「一昔前の会社に所属していないフリーの傭兵ならそう考えるだろうね。ただ君たちは会社に所属している傭兵だ」

 

「……っあ、なるほど」

 

「イアはもう分かったのかよ。。続けてくれ」

 

「OK。フリーの傭兵の場合、成果報酬とかで雇われることが多いが、企業に所属する君たちが主流となった現在の戦場において、1か月〜3か月分の金を請求される契約形態になっている。仮に君たちが契約更新前に戦死した場合でも、日割り計算した額を払わなくてはいけない。場合によっては、死んだ月の金を払う必要も出てくるわけだ。ここまで話せば分かるかな?」

 

「つまり、死んでしまった傭兵の金を払いたくないってことだろ? 参戦して日が浅い内に死んじまったら、受け入れにかかるコスト分の損害が発生してしまうより、高価でもアーマーを支給した方がいいってことか」

 

「そう、その通り。ただこのアーマーが普及したら、各社はこぞって暇な兵をアーマー研修にぶち込むだろうね。それを見越してオーブンフィード社はアーマーの取り扱い専用の教官育成にも力を入れているんだ」

 

「そう考えると俺らは無料で今後普及するかもしれない新しい技術を体験しているわけか」

 

「そういうこと。さて、2人ともアーマーを装着したようだし、そろそろHUDを起動しよう」

 

「OK隊長」

 

「承知しました」

 

説明書によれば、フルフェイス型のヘルメットを装着すれば自動的に起動するらしい。ヘルメットをかぶり、カチャっという音が鳴るのと同時にHUDが起動した。

 

「おぉ。こりゃすごい! まるでFPSのUIみたいだ!」

 

「そうだろう? このUIなら新兵だとしてもすぐに慣れることができるって寸法だ」

 

はしゃいでいる俺たちを尻目にイアは武器ラックからライフルを手に取る。

 

「気になるんですが、なんで手に取った武器の残弾数が表示されるんでしょうか? 武器をリンクしている訳でもないのに……」

 

「オーブンフィード社の技術者曰く、手に取った武器の見た目と本体の重量から、内蔵しているAIが何発入っているかを算出しているらしい。まぁ、そんな細かいことは気にしないことだ」

 

「はぁ」

 

どこか釈然としないのか、彼女は弾倉を抜いたり差したりしてHUDの変化を確認していた。

 

「後は例の件だな。少しだけ言及したが、諸君らには専属のサポートAIが常駐している。グリーンマンのAIは【ナイト】、イア君のAIは【シーカー】だ。名前を呼んでみれば現れるはずだ」

 

「OK隊長……ナイト、起きろ」

 

言われた通り、名前を呼ぶと目の前にゲームに出てきそうな女騎士風の可愛らしい妖精が現れた。

 

『イトウさん。サポートAI【ナイト】参上しました。私は主に目的地のナビゲート及び使用者のサポートを実施します』

 

「これまたキャラの濃いAIだな……ナイト、君の見た目的に俺のことはマスターと呼んでほしい」

 

『承知しました、マスター。他に命令はございますか?』

 

「いや、特にないよ。ありがとう」

 

ナイトが目の前からいなくなった。目線を2人に向けるとイアがヘルメット越しからでも分かるレベルで不機嫌な雰囲気を醸し出していた。

 

「……なんだよ」

 

「いえ、AIには優しいのに、なんで現実の女に興味がないのかな……と」

 

それはお前が可愛くないからだよ、このブサイクが……とは口が裂けても言えず、隊長が運転するビークルに乗り込んで戦場に向かった。

 

 

 

C戦線に到着した俺たちを出迎えたのは、疲れ果てた兵士たちだった。

彼らの目は一様に生気がなく、気が緩めばそのまま倒れてしまいそうなほどに傷だらけだった。

 

どうやら、俺たちがここに到着する20分ほど前に敵の強硬偵察を受けたらしい。

 

「なぁ、アンタら、今日ここに配属されるっていう特務小隊だろ?」

 

「そうだ。にしても、強硬偵察ごときで手ひどくやられたな」

 

俺に声をかけてきたのは、一人の兵士。

片目に包帯を巻いており、本来なら後方の病院に運ばれるレベルの傷だ。

 

『マスター。彼の経歴のアクセス許可が降りたため、HUDに表示します』

 

ヘルメットに内蔵されている通信機からナイトがそう言った瞬間、画面上にダイアログが表示された。

 

名前:ジャン・オニール

年齢:31歳

階級:No

兵科:突撃兵

勲章:対敵性生命体特殊技能勲章

 

(対敵性生命体ってことは、こいつ……俺と同じ戦場にいたことがあるってことか?

それにこの雰囲気……恐らく精鋭だろうな)

 

「確かに、そんな反応になるだろうよ。

ただな? 今回の攻撃は、数が尋常じゃなかったんだ。目算で100人くらいってところだ……」

 

「アンタほどの精鋭でも苦労するってことは、相当な人数だったんだろうな」

 

俺はそれだけ言って、その場を離れた。

 

「ナイト。今後は俺に確認する必要はないから、自己判断で最適なサポートを頼む」

 

『承知しました、マスター』

 

「……グリーンマン。私たちのこと、そっちのけで話されても困る。そろそろ出撃しようか?」

 

後ろを振り向けば、呆れたような雰囲気で俺を見ている二人。

彼らの頭上には、それぞれの名前が表示されていた。

 

(これじゃあマジでFPSじゃねぇか)

 

そんなことをおくびにも出さず、彼らに軽く謝罪して、森の奥深く──

敵の勢力圏内へと侵入した。

 

 

 

30分程度前進した俺たちは、1mほどの間隔でひし形になるような陣形を組み、慎重に前進していた。

 

「……そろそろか。各員、音声外部疎通モードをオフにしようか」

 

中央にいる南雲の指示に従い、二の腕部分に配置されているコンソールパネルを操作する。

 

「確認する。俺の声は聞こえているか?」

 

「こちらイア。感度良好です」

 

「聞こえてるぜ」

 

「君たちの声は確認した。これで我々の声が外部に漏れることはないな」

 

そう言うと、俺たち三人は無言で前進を続けた。

 

「……ッ?! レーダーに感あり。敵です」

 

「規模は?」

 

「分隊規模。おそらく哨戒部隊と思われます」

 

「どうするよ? 隊長さん」

 

「現状、敵を目視で確認できていない。イア君、共有機能を使って敵兵を偵察してくれ」

 

「承知しました」

 

そう言うと、HUDの画面右上にイアの視界が表示された。

 

「映った! 本当に便利だな。正式量産型にも搭載してほしい機能だな」

 

「おそらく搭載されると思うが、確認できるのは指揮官機とかだけになるだろう。兵士一人一人に対して共有機能を追加したらコストが増大してしまうからね」

 

「やだねぇ」

 

「……隊長。そろそろ出発します」

 

「おっと、すまんすまん。行ってくれ」

 

南雲の言葉を聞くと、彼女はものすごい速さで林の中に姿を消した。

5分ほど経った頃、森林に生えている樹木の上から見下ろす視点で、警戒態勢を取りながら移動する敵分隊の映像が送られてきた。

 

「これは……動きを見るに、何かしらの特務部隊に所属しているか、精鋭を集めた分隊だろうね」

 

「違いねぇ……もしかして、指揮官は若干後ろで通信端末を弄っている奴か?」

 

「いや、コイツは通信兵だろう。僕の見立てでは、先頭を歩いているのが隊長だね」

 

『それで……どうしますか? 隊長』

 

マクギリア王国軍と交戦中の勢力──アダムス協議会は・・・所謂反乱軍だ。王国の王政に不満を持った村民アダムスを中心として、共産主義思想をベースに作った勢力。

 

最初こそ民兵に毛が生えたレベルの集団だったが、時が経つにつれ王国側から離脱した者を顧問に据え、軍の練度を上げた。さらに王国のオフィス街を占拠して惑星外とのツテを持つようになり、結果的に王国と同等レベルの勢力にまで成長した。

 

そうなって初めて、王国は自分たちだけでは対処できないと判断し、俺たち傭兵会社に人員派遣を依頼した……という背景がある。

 

奴らの装備は、王国軍が採用しているウォーター社製の防御力はあるが機動性に難のある旧式防具ではなく、アジャスター社の機動性重視型の最新防具を採用している。

 

身体全体を覆うスタイリッシュな装甲と、ゴーグル一体型のヘルメットは正直かっこいい。

実際、その姿に憧れて彼らに合流した農村部の若者も多く、ある意味これも敵の優れた戦略なのだろう。

 

 

「これくらいの戦力ならイア一人でも制圧可能だろう。隊長を除き、敵を排除してくれ。僕とグリーンマンもそちらに向かう。万が一危なくなっても、到着まで耐えてくれ」

 

俺と南雲は現地に向けて走り出した。

その間、HUDのカメラにはイアの動きが映し出されている。

 

彼女は分隊の最後尾を歩いている兵士に狙いを定め、サイレンサー付きのハンドガンで1発──射殺。

 

周囲の環境に溶け込む光学迷彩モードを起動し、音もなく木々を跳び移る。敵は錯覚的に反対方向へ銃撃を始め、彼女はその隙を突いて意識外から次々と兵士を仕留めていく。

 

3人目を射殺したあたりで、半狂乱になった火力支援兵が腰だめに構えてマシンガンを乱射。

しかし、彼女はその様子を頭上から冷静に見下ろしていた。

 

そして──飛び降りた。

 

グチャ!

 

通信越しでも伝わる、生々しい音。

残り2人の兵士がフルオートで応戦するも、イアが身に纏うアーマーにより、銃撃は効かぬとばかりに接近し、ハンドガンを収納。右手にコンバットナイフを構え、左手で兵士の肩を掴んで固定し──喉を切り裂いた。

 

兵士が必死に喉を押さえようとする中、彼女は肺、心臓、胃の位置へと素早く、何度も何度もナイフを突き刺した。

 

最後に残った指揮官は、あまりの惨状に恐怖でその場に失神した。

 

「……何やってんだよこのバカ女」

 

「こればっかしは君に同意だよ」

 

さながら旧世紀に地球で流行ったエイリアンの狩人のような動きを見せたイアは、マスクの下で音声をミュートにしながら──不気味に笑っていた。

 




──戦場ってのは、何度経験しても慣れないもんだ。
血の匂い、硝煙、焼け焦げた肉、誰かの叫び声……そして、自分がそれに慣れ始めてることへの嫌悪感。

今回の任務も地獄の入り口ってやつだった。
あのサイコパスな女、イアと組まされてる時点で嫌な予感はしてたけど、
案の定、始まって早々で敵は全滅、捕虜は泡吹いて失神。やりすぎにも程があるだろうって話だ。
……それでも、生きるためには進むしかない。
この先にどんな地獄が待ってようと、俺は“次の仕事”に向かうだけだ。

(アングスト16の絵が書かれている)

【挿絵表示】


──イトウアキラの日記より引用

この作品連載にした方がいい?

  • 連載希望
  • 短編でいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。