羽沢先輩がヤンデレ?ハッハッハ、御冗談を   作:コントラポストは全てを解決する

10 / 17





10.彩りの秋。友達は犬と飼い主

 

「アヤ先輩の頭を見てると、イチゴのかき氷を食べたくなりますよね」

「初めて言われたかな……」

「ピンクのわたあめとかは?」

「ないかなぁ……」

 

 パスパレの母校収録の下準備として、羽丘と花咲川に番組のスタッフが赴いた。両方が滞りなく話が進み、話が円満集結したと同時、事件が起こった。

 

 財力と行動力と想像力のお嬢様が、番組スタッフを見つけてしまったのだ。

 

 そうしてあれよあれよと話が大きくなり、最後には『おかえりパスパレ祭り』として企画そのものが変わってしまった。

 

「それにしても、相変わらずこころちゃんの影響力はすごいね〜。1時間も経たずに出店がやってきて、そのまま収録まで始まっちゃって。しかも、撮影期間が2日も延びちゃったし」

「良いじゃないですか。こうして和牛のお好み焼きが安く食べられますし」

「安いって言っても2000円ぐらいしたよねそれ?秋ちゃんってお金持ちなんだね、普通の学生なのに」

「短発でお嬢様の小間使バイトがあるんですけど、めっちゃ給与良いんですよ。一回受けると九万入ります」

「なにするの?」

「皆にバレないようにお嬢様の家でミッシェルを修理したり、迷子のカノちゃん先輩を保護したり、かおちゃん先輩語の翻訳だったり、はぐちゃん先輩と野球チームでスポーツしたり」

「秋ちゃんだから出来る仕事だね。引っ張りだこで羨ましいな〜」

「それを言ったらパスパレのボーカルなんてアヤ先輩にしか出来ませんし、そのパスパレは人気アイドルですし、先輩もお忙しい人では?もう日本一のアイドルになったようなものじゃないですか」

「え〜?そうかな〜???」

 

 でへへでへへと簡単に調子に乗った彩。相変わらずチョロすぎて将来が心配になる。

 

「パスパレで思い出したんですけど、千聖先輩ってどこにいるんですか?花咲川ですしこっちにいる筈ですよね?」

「あぁ、何か準備?があるんだって。明日絶対に外せない用事があるって言ってた」

「やっぱり忙しいんですねぇ……。久々に声が聞けると思ったのですが」

「そういえば千聖ちゃんも『最近秋に会えてない』ってぐったりしてたな〜」

「ラインでなら毎日やりとりしてるんですけどね」

「流石にそれはノーカンじゃないかな?私だって三日に一回秋ちゃんと電話してるけど、今度遊びに行きたいな〜ってよく思うし。なんていうか、ワガママが言い足りないって感じ?」

「アヤ先輩のワガママですか。聞いてみたいですね」

「気分の話だよ?……あぁ、でも、毎日秋ちゃんの作るご飯が食べたいとかはよく考えるかなー」

「そんな事で良いならいくらでも──」

「いや、やらなくて大丈夫。流石にこれ以上秋ちゃんのお世話になると、年上としての威厳が……」

 

 年上の矜持とは保つのが難しい物なのだと、彩を見て学ぶ秋。

 とはいえ、部屋着がダサいのと部屋が汚いくらいしか欠点はないし、彩の魅力ならそれも可愛さや威厳……というより人望になるので、さして危惧するような物ではない気がする。

 少なくとも、秋はそう感じているのだが。

 

「まあ、そういう事だから、近い内に千聖ちゃんに会ってあげて欲しいな。知ってる?千聖ちゃんってさ、秋ちゃんに会える時だけすごく活き活きするんだよ」

「活き活き……ですか?」

「うん。なんというか、子役をやる前の千聖ちゃんはこんな子だったんだろうなーって分かるの。中々見れないレアな姿だね、あれは」

「へぇ……良いなあ……俺も見たい……」

 

 所謂年相応という姿だろうか……秋の前の千聖は、いつだって余裕綽々で、はしゃぐ子供を眺めるような目で秋を見てくる。

 前に出かけた時も率先して前を歩いたけど、結局犬と飼い主の散歩みたいな雰囲気になってしまった。

 千聖は楽しみの笑顔さえ大人だから、つくしとタメで喧嘩をする秋には到底届かない大きい存在なのだ。早く大人になりたい。

 

「秋ちゃんの前だと取り繕ってるのかな?」

「そ、そうなんですかね……?一応、悩みを打ち明けたりはしていただけてるので、千聖先輩なりに素直にしてるとは思うんですよ」

「へぇ……千聖ちゃんが、お悩み相談……。どんな話だったの?」

「えっと、小さい頃から演じるのを義務付けられて……自分の心が分からなくなったらどうする……とか。あとは、もしも私に心がなかったら……みたいな話もされました」

「む、難しそう……」

 

 思い返せば、彩も以前『演技をする時は役に入りすぎないようにね』と千聖からアドバイスを貰っていた。きっと、演技とは自分をあやふやにするものなのだろう。

 

「秋ちゃんはなんて答えたの?」

「いや、難しすぎて答えなんて出せませんでしたよ。頭をぐるぐるさせてたらタイムリミットでした。アヤ先輩ならなんて答えます?」

「えっ、こう……頭の科学がどうこう……みたいな?メンタリズム?とかそういうの」

「俺が一番苦手なやつじゃないですか……」

「私もだよー……」

 

 同類のシンパシーか、お互いの知恵熱を感じ合う感覚を覚えた秋と彩。

 

「こうして話してみて思ったのですが、あの時の俺、もしかしたら千聖先輩を怒らせてたのかもしれません。真剣に悩みを話したのに、答えがわからないと投げてしまって」

「うーん……それは大丈夫じゃないかな……?千聖ちゃんって秋ちゃんが関わると、どんな事があっても機嫌が良くなるし。あれは好きじゃないとできない反応だよ」

「なら、あの質問はからかいの意味もあったんですかね?」

「かもしれないね。私もよくからかわれるし」

「なるほど……つまり、あの時の楽しそうな顔は、怒りの笑顔でもなんでもなかったと」

「楽しそうだったの?」

「はい、すごいニコニコしていて……。くっ……!いたずらだったならもっと楽しめる答えを出すべきでした……!」

 

 彩と話してるうちに思い出したあの時の一幕。

 真剣な面持ちで尋ねて来たので、ついつい『心とか分からないけど、今の千聖先輩の楽しそうな顔、すごく好きです。だから自信持ってください!』と熱く語ってしまった。答えも出さずに自分は何をしていたのだろうか。

 

「力が欲しい〜」

「あはは、秋ちゃんは相変わらず世話焼きさんだね」

「からかわれてるとはいえ、やっぱり千聖先輩の笑った顔は可愛いですから。こう……普段は綺麗とかそういう方向なので、ギャップがあるというか」

「秋ちゃんにもそういうのあるんだね。女の子の笑顔は全部好きーとか言ってそうなのに」

「俺のことをなんだと思ってるんですか……」

「女の敵……?」

「なら、アヤ先輩は男?」

「いや、私はノーカンじゃない?秋ちゃんと付き合ってる姿が想像できないし。それに前だって、週刊誌に撮られて熱愛報道ーとかなったけど、snsで犬の散歩って言われて勝手に収まっちゃったもん」

「まあ、アヤ先輩ってプードルみたいな雰囲気がありますしね」

「秋ちゃんも柴犬みたいだし」

 

「「……ん?」」

 

 お互いに相手が犬、自分が飼い主だと思い込んでいた二人。そのまま数分威嚇しあった後、彩の腹の音と共に犬と飼い主の勝負はどこかへ吹っ飛んだ。彼らは同類であった。

 

「そういえば今日、お昼食べてなかったな……。あ〜、でも、今食べると夕飯に響くな〜」

「俺のお好み焼き、半分あげましょうか?小腹を紛らわすなら丁度いい量だと思いますし」

「良いの!?」

「はい、あーん」

「あ〜ん」

 

 そのまま永遠彩に食べさせていたら、彩を迎えに来た千聖にバレ、二人まとめてしこたま叱られた。

 

 おかしい、犬と飼い主だから問題ないはずでは。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。